著者
別所 義隆 河野 能顕 SAULIUS Klimasauskas
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

tRNAメチル基転移酵素と人工補酵素のAdoMet類似体を用いて、メチル基以外の非天然官能基がtRNA分子に高効率で取り込まれる技術を開発した。tRNA分子に転移される非天然官能基末端を蛍光標識することで、tRNA基質の均一な蛍光標識試料を準備し、tRNA・タンパク質複合体の蛍光結晶を作成した。大型放射光SPring-8のマイクロビームBL32XUビームラインにて、レーザー照射により結晶からの蛍光発色を観測し、微小結晶X線回折測定法を開発した。
著者
ヴィゴ レジャン LAUNEY THOMAS 千村 崇彦 池田 時浩
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は分子や粒子をイオン化・加速して特定の神経細胞に穿通させるナノ電子スプレー微小管を設計、2本の同心の表面疎水処理ガラス管内部の溶液を電子スプレーにして標的に局所的に到達させた。液滴の安定噴射には管配置と電圧波形が重要で、20-250nAのパルスピーク電流が得られた。しかし陰イオン色素と蛍光顕微鏡で観察すると粒子は管先端-培養液面境界のほか外管内壁にも急速に蓄積、終には管内部への引水と溶液流出が生じ、菅形状の調整を重ねたが不可避だった。静電的性質のシミュレーションによる改良型を提示する。
著者
永井 美之 審良 静男 菅村 和夫 柳 雄介 吉開 泰信 堀井 俊宏 光山 正雄 山本 直樹
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本特定領域は感染と宿主応答の分子論的な最高度の基礎研究を推進し、感染症制御のための技術を開発することを目的とする。総括班は本特定領域研究の目的を厳正かつ遅滞なく達成するために組織された。総括班は班員に理論的、実質的なガイドラインを提示し、且つ、彼らの成果を評価したが、単に研究の質を問うのみではなく、微生物学と免疫学のように異なる研究分野の研究者間の共同研究を支援してきた。そのため、総括班は毎年全体班会議を開催した。会議では各班員が各年度の研究成果を報告し、その評価を受けた。さらに、総括班は、遺伝子操作マウスの作成、霊長類を用いた研究の支援を行うとともに、若手研究者を育成するために、沖縄フォーラムをはじめとする種々の会議を主催した。平成16年、17年度は顕著な研究成果を上げつつある45研究課題を計画研究とし、公募研究課題は100課題を採択した。研究期間中に審査制度のある国際的学術雑誌に3,993編の掲載または掲載確定の論文が公表された。特にImpact Factor (IF)が高いとされるNatureに27編、Scienceには17編が掲載または掲載確定された。その他、IF 10.000以上の一般学術誌では、EMBOに35編、JEMに101編、PNASに87編が掲載または掲載が確定された。これらの研究業績には微生物学者と免疫学者の共同研究による優れた業績も少なからず含まれている。また、これらの業績は総括班が共催する「あわじしま感染症・免疫学国際フォーラム」(平成14年、15年)において発表された。平成17年度には国際シンポジウム「Molecular Bases Underlying Microbial Infections and the Host Responses」を開催し、5年間の成果を発信した。さらに、基礎研究の成果を社会に還元するため、抗マラリア薬N86化合物とDNA/センダイベクター骨格のAIDSワクチンの前臨床試験及び、SE36マラリアワクチンと抗エイズ薬CCR5阻害剤(AK602)の第I相臨床試験を実施した。
著者
石井 俊輔
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

熱ショックストレスなどによるエピゲノム変化がATF-2ファミリー転写因子を介して誘導されるメカニズムが明らかにされ、それが次世代に遺伝することが示された。そしてATF-2ファミリー転写因子が、自然免疫系の免疫記憶、精神ストレスによるテロメア短縮にも関与することが示された。さらに、栄養条件や精神ストレスによっても、ATF-2ファミリー転写因子を介してエピゲノム変化が誘導され、それが次世代に遺伝することを私達は観察している。このように、ATF-2ファミリー転写因子が「多様な環境要因によるエピゲノム変化とその記憶」に大きく関わっていることが示された。
著者
NORI FRANCO 丸山 耕司 サヘル アシュハブ ランバート ニール ブリオック コンスタンティン ヨハンソン ロバート ツイ ウェイ 石田 夏子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人工原子としての超伝導量子ビットに関する研究を行い、自然にある原子に対するものと類似した問題を追及しました。巨大人工原子がどのように、光、伝搬路, 電磁的共振器, 機械的共振器等と相互作用するか、という課題を含み、量子光学、原子物理、固体物理、ナノサイエンス、コンピューターサイエンスに及ぶ、分野横断的な理論的研究を行い、その研究成果は物理学のトップレベルのジャーナルに掲載されました。
著者
高橋 政代 JIN Zi-Bing
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

網膜色素変性(RP)は網膜視細胞の機能が障害される遺伝性の疾患群であり、遺伝性失明、また、60歳以下視覚障害者の最大の原因である。原因となる遺伝子変異は多数解明されているものの遺伝子診断を一般的な臨床検査とするまでにはまだまだ多くの課題が残っている。まず、全身疾患を伴わないRPについてこれまでに原因遺伝子が判明しているのは少なくとも40個と多数ある。RP患者の半分以上は弧発や遺伝形式不明であり、遺伝子診断や遺伝カウンセリングはほぼできないのが現状であり、多数の患者が遺伝子診断及び遺伝カウンセリングを受けられないのである。そこで、我々は効率とコストの面を考えながらdHPLCを用いた方法で遺伝形式を問わず全てのRP患者における網羅的な変異解析を試みた。約15%の弧発例や遺伝形式不明の患者で原因と思われる遺伝子変異を検出。結果はその内、18個が新規変異であった(Journal of Medical Genetics,2008)。効果的な治療法が現れない現状では、世界の研究者はES細胞やiPS細胞からin vitro分化してきた視細胞あるいは前駆細胞などを網膜細胞移植の重要なソースと期待しており、我々は世界初マウス、サル及びヒトES細胞から網膜視細胞への分化を効率よくできた(小坂田、高橋らNat Biotech 2008)。この成果により、視細胞分化誘導法及び移植細胞源に関する問題を解決できた。しかし、胚性幹細胞の生命倫理学的な配慮と移植における免疫拒否などの問題は残っている。そこで最近、皮膚などの組織体細胞から再生医療の大きな武器である「多能性幹細胞」を人工的に作ることに成功した(山中)。我々はこのips細胞を用いて視細胞の前駆細胞及び視細胞への分化に取り組み、ヒトips細胞から視細胞の分化に成功した(Hirami et al.,unpublished)。更に小分子を用いて新たな分化方法を効率よくできた(OsaRada F,Jin ZB et al.,unpublished)。これらの研究結果から、網膜色素変性症患者に対して遺伝子診断の臨床応用をでき、また、網膜再生の移植ソースとして視細胞分化を効率よくできた。
著者
ファガラサン シドニア TAKAHASHI Lucia TAKAHASHI Lucia
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

The aim of the project was to dissect the contribution of the adaptive immune system in establishing the symbiosis between host and bacteria in the gut.We found that: 1) mice deficient for B cells, T cells or both, fail to support complex bacterial communities in the gut; 2) the reconstitution of T cell-deficient mice with CD4+ T cells expressing the transcription factor Foxp3 (Foxp3+ T cells) restores both the diversity and the phylogenetic structure of bacteria; 3) Foxp3+ T cells helped diversification particularly of the non-virulent Clostridia species, which were recently reported to induce Foxp3. This means that not only Clostridia induce Foxp3, but that the Foxp3+ T cells contribute to the persistence and diversification of Clostridia of the Firmicutes (the most diverse bacterial species in both mice and humans); 4) Foxp3+ T cells act outside and inside germinal centers, by preventing inflammation and by regulating selection of IgAs, respectively; 5) the coating of bacteria with selected IgAs was required to maintain the bacteria in the gut and to prevent the expansion of opportunistic species which could become pathogenic.The research was published in Immunity, 2014.
著者
吉見 彰洋 旭 耕一郎 内田 誠 内田 誠
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

素粒子の崩壊において発見され、宇宙の物質・反物質非対称性の原因と考えられているCP対称性非保存の起源は現代物理学の未解明の謎である。このCP対称性を破る永久電気双極子モーメント(EDM)の探索に向け、希ガス元素129Xeの核スピン歳差周波数を超精密に測定する開発研究を行った。様々な変動要因の研究及び高感度磁力計の開発を行い、低周波核スピンメーザーの周波数安定度を向上させ、5×10-28ecmのEDM感度(45,000秒測定、電場強度E=10kV/cmを仮定)を達成した。
著者
豊島 学
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、統合失調症の発症メカニズムやその病態に対してNG2(+)細胞がどのように関与しているかを明らかにするため、統合失調症薬理モデルマウス、精神疾患治療薬投与マウスを作製し、NG2(+)細胞数の変化やNG2(+)細胞特異的な遺伝子発現変化を解析した。その結果、Lithium を投与したNG2DsRed マウスにおいて、NG2(+)細胞数の減少とRbpj 遺伝子の発現増加が認められた。Rbpj は、Notch シグナルの主要な伝達因子であることから、Lithium はNotch シグナルを介してNG2(+)細胞の分化や増殖を制御する可能性が示唆された。
著者
中川 真一
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

網膜の最もマージン側の領域には長期間にわたって多分化能と分裂能を保つ網膜幹細胞が存在しており、それらは分泌性のシグナル分子であるWnt2bによって維持されている。本研究においては、Wntの下流で働いている転写因子に注目し、それらが作るネットワーク構造を解明することを目指した。その結果、Wntによって活性化されるβ-catenin/LEF1複合体がc-mycを含む複数の転写因子群を活性化していること、それらが協調して転写抑制因子であるc-hairy1を活性化していること、c-hairy1はWntの幹細胞維持活性を細胞に伝えるためのノードとして働いている事などを明らかにした。
著者
深井 朋樹 竹川 高志 姜 時友 寺前 順之介
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

測定技術の進歩により、脳研究は詳細な回路メカニズムを解明する段階に入りました。そこで多電極記録や光計測によって得られるデータから、多数の神経細胞の活動を半自動的に分離するための新しい数学的手法を提案しました。また大脳皮質回路の非ランダム構造が自発発火生成や、記憶と意思決定の情報表現において果たす役割を、神経回路モデルを構築して明らかにしました。また脳がそのような構造を獲得するシナプス可塑性機構を理論的に同定し、それを用いた聴覚野神経回路モデルが、雑音の存在下で複数の音声信号を分離して認識できることを示しました。これはカクテルパーティ効果と呼ばれています。
著者
伊藤 陽子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

これまでTALENをはじめ人工ヌクレアーゼの活性評価としては、培養細胞や受精卵を用いたin vivoアッセイが広く用いられてきた。しかし、in vivoアッセイのみではTALENタンパク質の性質を十分理解するのは困難である。そこでまず、活性のある組換えTALEN・TALEタンパク質を調整し、in vitroでのTALEN活性評価系を確立し、super-active TALENはDNA結合活性が高いことを明らかにした。更に、構造生物学的実験も行い、TALEタンパク質の高活性化機構を詳細に調べた。この様なin vitroでの活性評価は、更なる人工ヌクレアーゼ応用研究に貢献できると思われる。
著者
垣矢 直雅
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

申請者は、ネプリライシン活性の制御機構として、局在が細胞内ドメインのリン酸化により制御されることを明らかにしており、その過程で、細胞内ドメインがネプリライシン自身の代謝・アロステリックな活性変化にも関与する可能性を見出している。本研究では前述の可能性を検討し、ネプリライシンのライフサイクルの全容を明らかにすることで、ネプリライシン活性制御を基盤としたアルツハイマー病 予防・治療のための創薬標的を多角的に提起することに成功した。
著者
脇坂 崇平
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究実施者らは、認知心理実験装置・代替現実(SR)システムの第二世代版を作成した。基本的機能の大幅な改善に加え、幾つかの基礎的な機能を追加した:1)視線追跡装置(2)床振動再現(3)Open Sound Protocolに準拠した体験シナリオ制御システムやその他外部機器との連動等。また、いくつかの応用を実施した:(1)『MIRAGE』(理化学研究所と日本科学未来館共催)(2)『没入快感研究所』(SONY)など。また2012年度デジタルコンテンツエキスポにてInovative Technologiesに採択。成果の一部は先端技術館@TEPIAにて体験することができる(2014年5月現在)。
著者
間 陽子 小沼 操
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本及びアメリカ大陸のウシ材料を用いて独自に開発したsequence-based typing(PCR-SBT)法を、フィリピン牛のDNA を用いて、東南アジアのウシにも適応できるように改良し、牛白血病発症に対して抵抗性・感受性の牛主要組織適合性遺伝子複合体(BoLA)クラスIIDRB3 遺伝子のアジア地域における分布調査を行った。最初に、フィリピンの5 つの島に生育するHolstein、Sahiwal、Brahman、固有種およびその交雑種の計981 頭のDNA を収集し、nested PCR によりBLV の検出を行ったところ、BLV 感染率は1.6%~11%と島によって異なるものの全体的に低かった。次に、フィリピン牛に適応できるように改良したPCR-SBT 法に6 種類の新規を含む81 種類のBoLA-DRB3 アリルが検出されたことから、アジア牛のMHC が高度な多様性を示すことが示された。また、白血病発症を規定するアリルはフィリピンのウシ品種では非常に低い頻度であることも示された。
著者
櫻井 哲也
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

公共データベースGenBank(NCBI)および理研キャッサバ完全長cDNAの配列データを用いて、約22,000の目標遺伝子配列から各々60塩基プローブ配列を選んだキャッサバオリゴマイクロアレイチップを開発した。この開発したマイクロアレイチップを用いて、キャッサバの3品種、2ストレス条件についてのマイクロアレイ実験を行い、各品種、ストレス条件についての異なる遺伝子発現プロファイルを獲得できた。CAGE法についても、同様に各条件の遺伝子発現解析を行い、2つの解析手法による遺伝子概観を獲得した。
著者
河合 克宏
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

IRBITによるCaMKIIα活性制御の分子機構およびその生理的意義を明らかにし、脳神経系におけるIRBITの役割を解明するため、in vitro kinase assay,細胞株発現系、培養神経細胞およびIRBITを全身で欠損したIRBIT KOマウスを用いてIRBITがCaMKIIα活性に及ぼす効果を検討した。いずれの実験系においてもIRBITがCaMKIIα活性を抑制する事を明らかにした。さらにIRBIT KOマウスが学習行動試験や社会性行動試験等の行動実験において行動異常を示す事を明らかにした。
著者
花見 健志 伊藤 昌可
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

5-hmdCを含むDNAオリゴマーを長鎖アルキルアンモニウム塩が共存する状態でアプロティックな溶媒に溶解させたうえで、5-hmdC選択的な保護反応を行った。その結果、4位のアミンと5位のヒドロキシメチル基を架橋する形で保護する試薬と選択的に反応していることを示唆する結果を得ることが出来た。さらに、この保護基は脱アミン反応に対して安定であった。
著者
小林 隆嗣
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

エステル結合を含むポリマーを遺伝情報に基づいて合成できれば,規則正しいポリエステルの合成が可能となる.本研究では,リボソームにおけるエステル結合の導入を実現するために,アミノアシルtRNA合成酵素のひとつを改変した.その結果,効率よくエステル結合の構成要素となるα-ヒドロキシ酸を認識する酵素が得られた.それらを用いることで,エステル結合を形成させるのに必要なα-ヒドロキシ酸が2つ連続して導入できる試験管内の系を確立することに成功した.