著者
解良 武士 古泉 一久
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.767-775, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
35
被引用文献数
4

最近,マラソンブームもあり持久系競技選手への呼吸筋トレーニングが注目されるようになった。しかし持久系競技選手に対する呼吸筋トレーニングの是非については議論されるところである。これまでのところ呼吸筋トレーニングによって持久性運動パフォーマンスが向上した報告と呼吸筋機能は向上しても持久性運動パフォーマンスは向上しない報告の双方がある。本稿は呼吸筋機能と持久性体力との関係,これまでの持久系競技選手への呼吸筋トレーニングに関する研究を解説し,持久系競技選手への呼吸筋トレーニングについて考察する。
著者
解良 武士 河合 恒 大渕 修一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-233, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
41

サルコペニアの最初の概念が提唱されてから,サルコペニアの操作的定義はいくつかの変遷を経てきた.2018年,欧州連合学会(EWGSOP2)から新しいコンセンサスが発表された.新しいサルコペニアのコンセンサスの特徴は,筋力をより重視したことと,SARC-Fと呼ばれるスクリーニングツールを使うことを提唱していることである.本稿ではこのSARC-Fについて,その特徴,サルコペニアや他のスクリーニングツールとの関連,妥当性,さらにその問題などについて解説する.
著者
解良 武士 武井 圭一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.153-156, 2007-08-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

健常男子大学生7名を対象に,呼吸運動出力の指標である気道閉塞圧(P0.1)と換気量を無負荷と1kgの重錘を把持した姿勢で比較した.その結果,上肢を挙上するとP0.1は増加するが,1回換気量は増加しなかった.このことは呼吸運動出力に見合う換気量が得られないと息切れを感知するというモデルと一致し,慢性閉塞性肺疾患患者が上肢挙上時に息切れが起こりやすいことと関連があると考えられる.
著者
玉木 彰 大島 洋平 解良 武士
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.DcOF1088, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】呼吸理学療法では,胸郭柔軟性の改善を目的に,胸郭伸張法,肋骨の捻転,胸郭の捻転,シルベスター法などの徒手的な胸郭可動域練習を実施している。これらの治療対象は呼吸器疾患のみならず,神経筋疾患や脳血管障害患者など幅広く,呼吸理学療法におけるコンディショニングの一つとしてプログラムに組み込まれることが多い。ところで,これらの胸郭可動域練習によって期待できる治療効果としては,胸郭柔軟性の改善だけでなく,換気量の増大,胸郭周囲筋の筋緊張抑制,リラクセーションなどが挙げられているが,これらの効果を裏付ける根拠となるデータは殆どないのが現状である。そこで本研究では,徒手的な胸郭可動域練習の効果を明らかにする目的で,治療前後における肺・胸郭のコンプライアンスや呼吸運動出力などを分析し,胸郭可動域練習の生理学的意義について検討した。 【方法】対象は健常な成人男性13名とした。年齢は22.1±2.8歳,身長は176.1±5.4cm,体重は66.5±9.7kgであった。各対象者に対し,初めにスパイロメーター(ミナト医科学社製AS-407)を用いて肺活量(VC)を測定した。測定は3回行い最大値を採用した。次に背臥位となり安静時の一回換気量,呼吸数などの換気パラメーターおよび,呼吸運動出力の指標として気道閉塞圧(P0.1)を測定した。方法は気道閉塞装置(Inflatable Balloon-Type™ Inspiratory Occlusion)に流量計とマスクを直列に接続し,対象者の口から息が漏れないよう,測定担当者が固定した。さらに最大吸気位からゆっくり力を抜いて段階的に息を吐かせ,各肺気量位における肺容量と気道内圧の関係から圧量曲線を求め,肺・胸郭のコンプライアンスを測定した。これらの測定を以下に示す胸郭可動域練習の治療前後で同様の手順で実施した。 治療として実施した胸郭可動域練習は,全て背臥位における徒手胸郭伸張法,肋骨の捻転,胸郭の捻転の3種類とした。手技方法は,「呼吸理学療法標準手技(2008)」に掲載されている方法に準じて両側の胸郭に対し実施した。治療時間は実際の臨床を想定し,各手技の実施時間を約2分間,合計約6分間とした。統計解析は,治療前後における各測定項目について,対応のあるt検定を実施し,有意水準は5%未満とした。【説明と同意】全ての被験者には,本研究の主旨を口頭および書面で説明し,同意を得た上で測定を実施した。【結果】肺活量は治療前後でそれぞれ,4.98±0.57L,5.01±0.61Lと有意な増加は認められず,また圧量曲線から求めた肺・胸郭のコンプライアンスは治療前後でそれぞれ,5.22±1.59L/cmH2O,5.65±1.86 L/cmH2Oと有意な改善は認められなかった。一方,安静時のおける一回換気量も治療前後で変化が認められなかったにも関わらず,呼吸運動出力を示すP0.1(1.81±0.45cmH2O,1.18±0.45cmH2O)や呼吸数(14.21±4.33回/分,12.76±3.59回/分),吸気時間(1.96±0.54秒,2.64±0.84秒),呼気時間(2.32±0.55秒,2.84±0.78秒),吸気呼気時間比(0.85±0.11,0.93±0.13)には治療前後で有意な改善が認められた。【考察】本研究では,呼吸理学療法におけるコンディショニングとして実施されている胸郭可動域練習の生理学的意義について,呼吸機能や肺のコンプライアンス,呼吸運動出力の面から検討した。その結果,肺活量や肺のコンプライアンスには治療前後における改善は認められなかったが,P0.1や吸気時間,呼気時間などにおいて有意な改善が認められた。P0.1は中枢からの呼吸運動出力を反映すると考えられ,横隔神経活動との相関があることから,呼吸努力を間接的に捉えることができるため,呼吸困難に関する研究の指標として使われている。したがって,従来は胸郭可動性を改善することで胸郭柔軟性(胸郭コンプライアンス)や肺活量(肺のコンプライアンス)の改善などが得られると考えられてきたが,本研究の結果から,胸郭可動域練習の生理学的意義は呼吸運動出力の低下,すなわち呼吸困難の軽減やリラクセーション効果であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は,これまで実施されてきた胸郭可動域練習の効果に関する生理学的意義を明らかにするものであり,今後の呼吸理学療法のエビデンス作りに寄与するものである。
著者
解良 武士
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-6, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
33
被引用文献数
10 1

呼吸筋力の測定には,最大口腔内圧を用いることが一般的である。最大口腔内圧は様々な因子で変化するが,肺気量の変化が最も大きな影響を及ぼす。この呼吸筋力の低下は肺胞低換気による高炭酸ガス血症を伴う低酸素血症の原因となるため,呼吸器疾患を持つ患者には重要である。呼吸筋力はいくつかの原因で低下するが,閉塞性換気障害と拘束性換気障害を例に取り解説する。呼吸筋力低下がもたらす症状を持つ患者にとってその改善は重要であるが,そのトレーニング方法についても紹介する。
著者
一場 友実 解良 武士 島本 隆司 糸数 昌文 丸山 仁司 大久保 隆男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.195-198, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

抵抗負荷による呼吸筋トレーニング器具を用い健常成人男性7名を対象に,負荷量を変化させて呼吸筋活動を検討した。最大口腔内圧とその時の筋電活動,最大随意収縮時の筋電活動そして5段階の吸気・呼気抵抗負荷時の口腔内圧とその時の筋電活動を記録した。測定筋は吸気補助筋群(胸鎖乳突筋,僧帽筋),呼気筋群(外腹斜筋,腹直筋)である。筋電活動レベルの評価には,最大随意収縮時の筋電活動に対する百分率を用いた。結果として吸気・呼気口腔内圧と負荷量の間には,直線的な関係が認められた。また筋電活動と負荷量を二要因とする二元配置の分散分析の結果は有意な主効果が認められたが,その筋の活動は各筋群間によって差が認められた。吸気負荷では胸鎖乳突筋の筋電活動が最も高値を示し,全ての筋において筋の活動は負荷量増加に伴い直線的に増加した。呼気負荷では外腹斜筋の筋電活動が低負荷から高値を示したが,その他の筋は負荷量増加によっても著明な活動は呈さなかった。
著者
荻野 智之 玉木 彰 解良 武士 金子 教宏 和田 智弘 内山 侑紀 山本 憲康 福田 能啓 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.124-130, 2014-04-30 (Released:2015-11-13)
参考文献数
29

【目的】健常成人を対象に,体幹前傾角度や上肢支持姿勢の違いが肺気量位,胸腹部呼吸運動,呼吸運動出力に及ぼす影響を調査した.【方法】測定肢位は,安静立位,体幹前傾30°位,60°位,各体幹前傾姿勢での上肢支持(on handとon elbow)の7姿勢とした.肺気量位の測定は呼気ガス分析器を用い,胸腹部呼吸運動はRespiratory Inductive Plethysmograph(RIP)を用いて測定した.さらに呼吸運動出力として各姿勢時のairway occlusion pressure 0.1 s after the start of inspiratory flow(P0.1)を測定した.【結果】上肢支持位で肺気量位は有意に増加し,胸郭も拡張位となった.しかし,同じ体幹前傾角度での上肢支持による有意な変化や上肢支持姿勢の違いによる有意な変化はみられなかった.P0.1も姿勢による有意な変化はみられなかった.【結語】健常成人男性においては,上肢支持位で肺気量位は増加し,胸郭も拡張位となるが,上肢支持と体幹前傾姿勢による加算的効果や交互作用は認められないものと考えられた.
著者
宮村 章子 解良 武士 一場 友実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D3O3084, 2010

【目的】<BR><BR> 呼吸リハビリテーションでは、Rapid-shallow patternによる呼吸困難感の緩和に意識的な呼吸数の調整が行われる。これは呼吸数を減じ一回換気量を増大させることにより、肺胞換気量が増大し死腔換気率が改善するからであるが、我々は呼吸数の減少そのものも呼吸困難感と関連がある呼吸運動出力の抑制に関わっているのではないかと考えた。本研究は、呼吸数の調整が呼吸運動出力の指標である気道閉塞圧(P<SUB>0.1</SUB>)に及ぼす影響を検討することを目的とする。<BR><BR>【方法】<BR><BR> 健常成人10名(男性6名、女性4名、20.8±0.4才)を本研究の対象者とした。呼吸運動出力の指標としてP<SUB>0.1</SUB>を測定するために、T字状の2way-rebreathing valveにバルーン式閉塞装置を組み合わせた気道閉塞装置(Huns Rudolph、死腔量48.9ml)を用いた。気道閉塞装置の口側にはマスク(MAS0215, ミナト医科学)を接続し、マスクはストラップで被験者の顔に固定した。また気道閉塞装置のサイドポートに直径4mmのチューブを介して差圧トランスデューサー (TP-602G, 日本光電製)を接続し、気道閉塞装置の呼気側に呼気ガス分析器(AE-300S, ミナト医科学)の熱線式トランスデューサーを接続した。差圧トランスデューサーと呼気ガス分析器のアナログアウトプットをADコンバーター(PowerLab 16/sp, ADInstruments)へ接続し、それらの信号をPCに取り込んだ。呼気終末時に気道閉塞装置の吸気側に備わる閉塞用バルーンを拡張させて吸気口を閉塞し、気道内圧が陰圧に転じてから100ms後に得られる口腔内圧をP<SUB>0.1</SUB>値とした。対象者を背臥位におきマスクを装着した後、電子式メトロノームにより呼吸数を10回/分、15回/分、20回/分に調整した上で4分間呼吸を行わせた。呼吸数の調整はランダムとした。測定開始後2分後から4分後まで至適の間隔で計5回P<SUB>0.1</SUB>を測定し、その絶対値の平均値を算出した。呼吸数、一回換気量、分時換気量、呼気終末炭酸ガス濃度(P<SUB>ET</SUB>CO<SUB>2</SUB>)は、呼気ガス分析器からの信号を波形解析ソフト(Chart Ver.5.3, ADInstruments)で解析して算出した。統計処理は反復測定による一元配置分散分析を、その後の検定として多重比較検定を行った。統計ソフトウエア-はSPSS Ver.13.0 (SPSS)を用い、有意水準はP<0.05とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR><BR> 対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。また対象者のデータは、すべて統計量として処理し、さらに暗号化されたUSBに保存して個人情報保護に配慮した。<BR><BR>【結果】<BR><BR> メトロノームに合わせて呼吸数は10.4±0.7、14.9±0.2、20.1±0.3回/分と変化し、呼吸数の増加に伴い一回換気量は1.1±0.54、0.78±0.41、0.57±0.22Lと有意に減少した(F=17.37, P=0.001)。一方、呼吸数が増加しても分時換気量は変化しなかったが、P<SUB>ET</SUB>CO<SUB>2</SUB>は有意に減少した(F=7.44, P<0.05)。呼吸運動出力の指標であるP<SUB>0.1</SUB>値は一回換気量が減少したにもかかわらず呼吸数の増加とともに上昇し、それぞれ1.2±0.5、1.5±0.9、2.2±1.6cmH<SUB>2</SUB>Oであった(F=6.12, P<0.05)。<BR><BR>【考察】<BR><BR> 呼吸数が増加しても一回換気量が増加しても呼吸運動出力は増加しうるが、今回のように換気需要が同じであっても、呼吸数を増加させ一回換気量を減少させるとP<SUB>0.1</SUB>値は呼吸数の増加に比例して増加した。これはほぼ同じ換気量であれば、肺胸郭系の弾性抵抗の増加よりも気道系の粘性抵抗増加に対して呼吸筋が動員されやすいことを示していると考えられる。逆に呼吸数を減ずると一回換気量が増加するにもかかわらずP<SUB>0.1</SUB>値が減少することから、呼吸リハビリテーションにおける呼吸数調整によるアプローチは、呼吸運動出力の抑制の観点からも効果があると考えられた。ただし本研究の場合、呼吸数の増加に伴いP<SUB>ET</SUB>CO<SUB>2</SUB>が低下していることから、本来の換気需要よりもやや過換気または低換気に調節されていた可能性も考えられ、今回のP<SUB>0.1</SUB>値の増加は正当な換気需要に見合わない意識的な呼吸数増加によってもたらされた可能性も否定できない。従って呼吸数増減方法を変えて検討する必要もある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR><BR> Rapid-shallow patterに対する深くゆっくりとした呼吸パターンの効果は、主に肺胞換気量の増大や換気効率の面から述べられていた。本研究の結果から、このアプローチは呼吸運動出力の抑制の面からも呼吸困難感を減少させていると考えられた。<BR><BR>
著者
解良 武士 宮村 章子 一場 友実 下井 俊典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2014, 2010

【目的】<BR><BR> 気道閉塞圧(P<SUB>0.1</SUB>)は横隔神経の電気活動と直線的な関係があるため、呼吸運動出力の指標として用いられている。P<SUB>0.1</SUB>は一回換気量や呼吸数の測定に比べて肺、胸郭の物理的特性に影響を受けにくいうえ非侵襲的に測定が可能なため、運動生理学や呼吸リハビリテーション分野の研究へ応用されている。しかしながらP<SUB>0.1</SUB>値は安静時であっても呼吸運動自体の揺らぎや測定誤差によって測定値にばらつきが出現するが、その測定値の信頼性については十分検討されていない。本研究はP<SUB>0.1</SUB>測定の信頼性を検討することを目的とする。<BR><BR>【方法】<BR><BR> 健常成人11名(男性7名、女性4名、20.8±0.4才)を対象とした。呼吸運動出力の指標としてP<SUB>0.1</SUB>を測定するためにT字状の2way-rebreathing valveにバルーン式閉塞装置を組み合わせた気道閉塞装置(Huns Rudolph、死腔量48.9ml)を用いた。気道閉塞装置の口側にはマスク(MAS0215、ミナト医科学)を接続し、マスクはストラップで被験者の顔に固定した。P<SUB>0.1</SUB>は、呼気終末時に気道閉塞装置の吸気側に備わる閉塞用バルーンを拡張させて吸気口を閉塞し、気道内圧が陰圧に転じてから100ms後の口腔内圧を測定することで得られる。気道閉塞装置のサイドポートに直径4mmのチューブを介して差圧トランスデューサー (TP-602G, 日本光電製)を接続し口腔内圧を測定し、気道閉塞装置の呼気側に呼気ガス分析器(AE-300S, ミナト医科学)の熱線式トランスデューサーを接続し、呼吸数、一回換気量、分時換気量、呼気終末炭酸ガス濃度(P<SUB>ET</SUB>CO<SUB>2</SUB>)を測定した。差圧トランスデューサーと呼気ガス分析器のアナログアウトプットをADコンバーター(PowerLab 16/sp, ADInstruments)に接続し、それらの信号をPCに取り込みChart Ver.5.3 (ADInstruments)で解析を行った。対象者を背臥位におきマスクを装着した後、6分間静かに呼吸を行わせた。測定開始後1分後から6分後まで、30秒に1回の割合でP<SUB>0.1</SUB>を測定し、10回の測定値を得た。検者は測定に熟達した同一の1名とした。P<SUB>0.1</SUB>値はすべて絶対値で表した。信頼性の検討には級内相関係数(ICC)を用い、検者内信頼性にはICC(1,k)を用いた。ICC(1,k)は測定回数を2回より10回まで1回ずつ増加させてICC(1,2)~ICC(1,10)を、一元配置分散分析により標準誤差(SEM)をそれぞれ求めた。統計ソフトにはSPSS ver.13.0 (SPSS)を用いた。<BR><BR>【説明と同意】<BR><BR> 対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。また対象者のデータはすべて統計量として処理し、さらに暗号化して保存して個人情報保護に配慮した。<BR><BR>【結果】<BR><BR> 11名の被験者から得られたP<SUB>0.1</SUB>の平均値は0.7~4.8cmH<SUB>2</SUB>O、変動係数は16.6~50.7%であった。ICC(1,1)は0.704(95%信頼区間0.509-0.885)で、ICC(1,2)~ICC(1,10)はそれぞれ0.877、0.940、0.956、0.973、0.975、0.967、0.952、0.961、0.960(95%信頼区間0.565-0.966 ~ 0.912-0.987, SEM; 0.48-0.65)であった。目標係数を0.9とし、10回反復測定で得られるICC(1,1)から求められた予測される必要な最小反復回数は4回(3.8回)であった。<BR><BR>【考察】<BR><BR> 安静時でも呼吸数、一回換気量には変動があり、P<SUB>0.1</SUB>にも同様の現象が起こる。したがって数回の測定を行い、その平均値を代表値として用いる必要がある。今回の10回の試験で得られたICC(1,1)は0. 704(95%信頼区間;0.509~0.885)であったので1回の測定でも信頼性がある程度は確保されると考えられるが、信頼区間を考慮すると少なくとも3回以上の測定値の平均が必要と考えられる(ICC(1,3)の95%信頼区間;0.837-0.982)。これまでのP<SUB>0.1</SUB>を用いた研究は経験的に5回程度の平均値を用いるものが多かった。今回の研究では5回の測定ではSEMが0.48と大きかったものの、ICC(1,1)は0.973(95%信頼区間;0.937-0.992)、求められた最小反復測定回数は4回であったことから、これまでの5回の平均値を用いる方法は妥当だったと考えられた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR><BR> 呼吸運動出力の指標であるP<SUB>0.1</SUB>測定は、非侵襲的で簡便な方法として従前より主に呼吸生理学の分野で用いられていた。本研究の結果から信頼性の高い測定値であるので、呼吸リハビリテーション分野での基礎研究や効果判定に応用することが可能であると考えられた。<BR><BR>
著者
解良 武士 渡部 由紀 猪股 高志
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.116-117, 2012-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4

理学療法士や健康運動指導士のメディカルフィットネス分野における活用や,理学療法士の雇用の可能性を探索するための基礎資料をつくるために調査を行った。調査対象として選定した206ヵ所のメディカルフィットネスのうち59ヵ所より回答を得た。内容は,施設の概要,利用者,運動指導,医療機関との連携,他の関連事業,理学療法士および健康運動指導士の必要度,今後について,とした。これまでの調査と同様にメディカルフィットネスで雇用されている理学療法士はごくわずかであった。理学療法士のメディカルフィットネス部門への参画に関して否定的な意見は多くなかった。理学療法士に求める能力としては,軽い疾病あるいは障害を有している対象者への運動指導能力がもっとも多かった。利用者の多くは中枢神経や整形外科的な問題を有している場合が少なくなく,当分野における理学療法士の必要性は低くないと考えられる。
著者
西田 和正 河合 恒 解良 武士 中田 晴美 佐藤 和之 大渕 修一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.518-527, 2020-08-15 (Released:2020-09-01)
参考文献数
28

目的 我々は,フレイル高齢者では,地域における役割がないことが,社会からの離脱を早め,二次的に心身機能維持の意欲が低下していると考え,地域保健モデルであるコミュニティアズパートナー(Community As Partner:CAP)に基づく介入によって地域における役割期待の認知を促す,住民主体フレイル予防活動支援プログラムを開発した。本報告では,このプログラムを自治体の介護予防事業等で実施できるよう,プログラムの実践例の紹介と,その評価を通して,実施可能性と実施上の留意点を検討した。方法 プログラムは週1回90分の教室で,「学習期」,「課題抽出期」,「体験・実践期」の3期全10回4か月間で構成した。教室は,ワークブックを用いたフレイル予防や地域資源に関する学習と,CAPに基づく地域診断やグループワークを専門職が支援する内容とした。このプログラムの実践を,地域高齢者を対象としたコホート研究のフィールドにおいて行った。基本チェックリストでプレフレイル・フレイルに該当する160人に対して案内を郵送し参加者を募集し,プログラムによる介入と,介入前後にフレイルや地域資源に対する理解度や,フレイル予防行動変容ステージについてのアンケートを行った。本報告では,参加率やフレイルの内訳,脱落率,介入前後のアンケートをもとにプログラムの実施可能性と実施上の留意点を検討した。結果 参加者は42人で(参加率26.3%),プレフレイル25人,フレイル17人であった。脱落者は10人であった(脱落率23.8%)。介入前後でフレイルの理解は5項目中4項目,地域資源の理解は,11項目中6項目で統計的に有意な向上を認めた(P<0.05)。フレイル予防行動変容ステージは,維持・向上したものが26人(81.2%)だった。結論 住民によるグループワークを専門職が支援するプログラムであっても,専門職が直接介入する従来型プログラムと同程度の約3割の参加率があった。一方,脱落率はやや高く,事前説明会で参加者に教室の特徴を理解させることや,教室中はグループワークに参加しやすくするための専門職の支援が重要であると考えられた。また,アンケート結果から,プログラムによってフレイルや地域資源への理解度が向上し,フレイル予防行動の獲得も示唆された。

1 0 0 0 OA 高齢者の転倒

著者
解良 武士
出版者
社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
埼玉理学療法 (ISSN:09199241)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-13, 2002 (Released:2003-06-27)
参考文献数
17
被引用文献数
2

転倒は様々な原因によって発生するが、その防止には要因の分析とそれに応じた対応が必要となってくる。本稿は転倒、特に高齢者の転倒について、文献考察を交えて理学療法士の立場より解説する。