著者
畝田 道雄 渋谷 祐大 後藤 道治 石川 憲一
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.665-670, 2013-10-01 (Released:2014-04-22)
参考文献数
24
被引用文献数
1

過去に堆積した地層の堆積場を推定する手段として,古生物学あるいは堆積学に立脚した情報は非常に重要である.そこで,著者らは「過去の地質現象は現在の自然現象と同じ作用で起こった」とする斉一観に基づいて,地層中に少なからず存在する礫(れき)の堆積場の新しい推定法として,現在の河川礫に着目した研究を開始している.また,河川を流れる礫は,人為的作用を受けない自然界での流砂などによる擦過作用を日々受けると考えることができ,それは生産原論の観点からも擦過作用に基づくものづくり技術の起源を探る上で興味深い研究対象である.本研究では,河川のほぼ全域に存在し,その生成過程が異なる2種類の礫(泥岩と安山岩)の表面構造(表面粗さと硬さ)から採取地(河口からの距離)を推定することを目的に,これらの関係を調査した.その結果,複数の礫の表面粗さと硬さの平均値を用いて重回帰分析を行うことで,河口から礫の堆積場までの距離の推定値は実測値と高い相関を示すことを明らかにした.このことは,地層中に存在する礫の表面粗さと硬さを知ることで,その堆積場推定の一助になる可能性を有する結果である.
著者
池野 順一 斎藤 弘憲 斎藤 奈美子 竹村 貴人
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.174-179, 2009-03-01 (Released:2010-07-09)
参考文献数
7

研磨加工に替わって効率よくクリーンな鏡面創成が実現できれば有益である.対策の1つとして研削加工が挙げられるが,砥粒を微細化しただけの従来仕上げ用砥石では,研磨加工に及ばないのが現状である.そこで本研究では,研磨加工に匹敵する仕上げが可能となる研削砥石の開発を試みた.開発のヒントを天然砥石の仕上げ砥(合砥)に求め,その組成や構造を調した.その結果から合砥に基づいた人工砥石を提案し,積層構造を持つシリカ雲母砥石を開発した.この砥石を用いて3インチシリコンウエハの定圧研削を行った結果,1nmRa,7nmRzの鏡面創成が可能であることがわかった.
著者
上原 義貴 太田 稔 南部 俊和
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.796-799, 2013

輸送機器や産業機械の摺動部の摩擦低減が求められている.これまでの研究で摺動部の摩擦を低減するためには,摺動表面に断面形状を制御した3次元微細形状を加工することが効果的であることがわかっている.本研究は,この断面形状を制御した微細形状を高能率で加工できる3次元微細塑性加工技術を開発することを目的として研究を行った.本報では微細塑性加工を応用したマイクロフォームローリング(Micro Form Rolling, MFR)を提案し,この加工法を実現するための加工装置を試作し,加工実験を行った.その結果,MFR法にて,高能率で3次元微細形状の加工が可能であること,工具形状を考慮することで工具寿命を向上させることが可能であることを明らかにした.
著者
畝田 道雄 松永 敬弘 高橋 佳宏 澁谷 和孝 中村 由夫 市川 大造 石川 憲一
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.448-453, 2016-08-01 (Released:2016-11-25)
参考文献数
16

本研究では,サファイア基板(ウェーハ)のCMPを対象とし,接触画像解析法に基づく研磨パッド表面の定量評価の観点から,研磨パッド表面温度と研磨レートの関係解明を目的とする.その手法として,研磨ヘッドと定盤(研磨パッド)の回転数が研磨レートに及ぼす影響,ならびにチラーによって設定される研磨定盤の温度が各評価パラメータ(研磨パッド表面温度,研磨レート,研磨パッド表面性状,研磨パッド硬度)に及ぼす影響を実験的に検討し,相関関係からの影響解明を試みた.その結果,研磨パッド表面温度の増加に伴って研磨パッドは幾分軟化し,接触点数が増加することで研磨レートは増加すること,ならびに不織布パッドは研磨パッド表面温度の影響によって研磨パッド表面性状および研磨パッド硬度が変化することを明らかとした.
著者
佐藤 崇弘 田中 久隆 佐藤 昌彦 小出 隆夫
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.451-456, 2014

小径ドリル加工における回転振れの発生は,工具径に対する回転振れの比が大きいため,加工挙動に大きな影響を及ぼす.回転振れのあるドリルは,被削面食い付き後に回転中心に収束していく場合があるが,ドリル先端形状の影響など不明な点が多い.そこで,本報告では回転振れのあるドリルの加工挙動について解析と実験から考察した.とくに,食い付き時における回転中心からみた切れ刃の向きが,加工挙動に及ぼす影響について調べた.その結果,加工中,ドリル先端中心がシャンク端面中心に対して回転方向の位相遅れが発生する場合,切れ刃の向きが時々刻々と変化することで被削材より受ける力が変化し,加工挙動に影響を及ぼすことがわかった.
著者
川崎 宏 高木 史明
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.400-407, 2012-06-01
参考文献数
2

水溶性研削油には主にソリューション系油剤が使用され,その主成分は防錆剤からなる.しかし,主要な基材の環境・人体への有害性が確認され,化学物質排出把握管理促進法をはじめ法律で規制強化されつつある.そこで,基材の安全性を踏まえて各種二次性能(防錆性,消泡性,耐腐敗性,切粉沈降性)の評価を行い,より環境・人体に優しいソリューション系油剤を開発した.こうして新しく開発したソリューション系油剤について,二次性能が既存の市販油以上の性能を有することはもちろん,ブロックオンリング試験による研削性試験および旋削加工試験においても既存の市販油と同等以上であることを確認した.
著者
森田 昇 川堰 宣隆 田代 雄介 大井 慶太郎 山田 茂 高野 登 大山 達雄
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.547-552, 2007

本研究は,GaAs半導体の研削加工におけるクラック発生機構を明らかにすることを目的としている.単粒研削時のクラック発生過程を詳細に検討するため,傾斜ステージをもったスクラッチ加工機を試作した.これを用いてGaAs(100)のスクラッチ加工実験を行い,とくに結晶方位依存性の観点から,GaAsにおけるクラック発生機構の特異性について検討した.これより,GaAsにおけるクラックの発生は結晶方位に強く依存し,[0¯11]方向に加工したときに最も脆性破壊が生じやすく,[011]方向の場合に最も生じにくいことがわかった.また,脆性破壊部の形状は加工方向によって大きく異なる.以上の結果より,GaAsにおけるクラック発生機構は結晶方位によって変化し,その傾向はSiのそれとは異なることがわかった.
著者
山口 智実 古城 直道 樋口 誠宏 島田 尚一 松森 昇 尾倉 秀一 小田 廣和
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.557-561, 2010-09-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

転がり軸受面の性能向上を目的として開発した,セリア (CeO<SUB>2</SUB>) 砥粒とcBN砥粒を混合しビトリファイボンドで結合したメカノケミカル超砥粒砥石の設計システムの開発に着手した.本論文では,その初期段階として,砥石の作用面形状や強度を左右する砥石の構造モデルの構築を行った.先に通常砥石の構造モデルに適用した拡散律速凝集アルゴリズムおよび砂山崩落アルゴリズムに基づく砥石の凝集/焼成モデルをベースにして,本砥石の構造特性を考慮し,新たに"セリアクラスタ凝集アルゴリズム"と"砥粒脱落判定アルゴリズム"を開発・適用することで,本メカノケミカル超砥粒砥石の構造モデルを確立した.本モデルと実砥石におけるセリアおよびcBN砥粒の分布に関するフラクタル次元解析を行った結果,非常によく一致し,本モデルの有効性を確認した.
著者
川久保 英樹 土屋 和博 佐藤 運海
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.31-36, 2010-01-01
参考文献数
6

磁気研磨法は,金型の仕上げ工程を自動化するための手法として期待されている.金型は磁性工作物材料であることが多く,磁気研磨法によって仕上げを行う場合,強磁性材粒子が工作物表面に磁気吸引されて残留するなどの問題点が指摘されている.そのため,磁性工作物材料の磁気研磨技術の確立が切望されている.本研究の目的は,磁性工作物材料のR溝およびテーパR溝の内面磁気研磨法の提案とその研磨特性の検討である.本報では,マスキングテープを用いたR溝内面の部分研磨法を提案し,溝半径Rと強磁性材粒子半径rとの組み合わせが研磨特性に及ぼす影響を検討した.その結果,粒子半径rは溝半径R未満であり,半径比r/Rが1.0に近づく程,良好な仕上げ面が得られることを明らかにした.さらに,テーパR溝を均一に内面研磨するための分割研磨法を提案し,溝内全体を同程度の表面粗さに仕上げることを可能にした.
著者
佐藤 隆史 呉 勇波 林 偉民 島田 邦雄
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.425-430, 2010-07-01 (Released:2011-05-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

磁性流体(MF)や磁気粘性流体(MRF)と同様に,磁気に感応する機能性流体の一種である磁気混合流体(MCF)は,新たな効果の発現のため多くの工業分野への応用が検討されている.MCFはMFと粒径数μmのカルボニル鉄粉で構成される流体であり,本研究ではMCFに砥粒とα-セルロースを混合することによりMCFスラリとして利用する.MCFスラリは流体であることから,工作物形状に倣って自由に変形できることに加え,強磁場下において流体中の磁性微粒子が磁力線方向に沿ってクラスタ(鎖状配列)を形成し粘度が増大するため,砥粒を半固定保持することができる.したがって,永久磁石に吸引したMCFスラリを工作物に押し付け,相対運動を付与することで,従来の研磨技術で困難とされる3次元形状工作物に対する高能率研磨技術への応用が期待できる.本報では,静磁場下におけるMCFスラリが高い加工力を工作物に付与できる反面,元の形状に復元されるのに時間を要することを実験的に確認する.また,変動磁場下では強制的に磁性微粒子の再配列が促され,形状が復元されることを確認し,その復元機構を明らかにする.また,変動磁場下のMCFスラリは工作物に付与できる加工力が低下するものの,能率的な加工が可能となることを明らかにする.さらに,3次元形状工作物に対する加工特性を評価する.
著者
雪永 敏志 杉原 達哉 廣瀬 研二 榎本 俊之
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.116-121, 2013-02-01 (Released:2013-09-18)
参考文献数
11

被削材と工具とが連続的に接触する旋盤加工においては,加工中に工具-切りくずの界面へ切削液を供給することが困難であるため,工具へ高い熱的・機械的負荷が加わる.さらに旋盤加工で排出される繋がった切りくずは,被削材や工作機械・工具へ絡み付くことが問題となっており,自動運転を実現する上での妨げとなっている.そこで,本研究ではこのような現状を打破することを目的に,工具へ低周波数域の振動を付与し加工を行うという,低周波振動切削加工に関する検討を行っている.ここで,低周波振動切削加工では1振動中における加工時間および工具離脱時間が,加工能率・加工特性に大きな影響を与える.そこで,切りくずの凝着が大きな問題となっているアルミニウム合金の旋盤加工に対してNCプログラムにより工具への低周波振動の付与を行い,その基本的な加工特性を評価するとともに,1振動あたりの切削距離と工具への切りくず凝着量の関係を明らかにした.また,得られた結果を基に振動切削における切削液の効果に関する検討を行い,微細な3次元周期構造を表面に有する切削工具を本手法に適用した結果,より加工能率の高い振動条件下においても切りくず凝着を著しく抑制できることを示した.
著者
臼杵 年 佐藤 公紀 古屋 諭 佐藤 眞 鈴木 利治
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.496-501, 2005 (Released:2006-08-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は, チタン合金の低コスト加工化を目的として, ハイスを母材とするコーテッドエンドミルを用いたチタン合金の高速ドライ加工の可能性を調査した. その結果, ハイス工具を用いてTi-6Al-4VをV = 100m/min以上と, 従来の同材料をハイス工具で加工する切削速度よりも高速での加工が可能であったが, 加工能率は超硬工具の約1/2であった. しかし仕上げ面粗さは, 超硬工具の約1/2と, 良好な加工面が得られることがわかった. このことから, 仕上げ切削での適用が推奨される.