著者
樋口 雄三 河野 貴美子 小谷 泰則 林 義貢 樋口 博信 佐藤 眞志 百瀬 真一郎
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.216-222, 2001-03-01

気功法の異なるレベルの高い気功師3名により遠隔送気を行い、約2〜4km離れたそれぞれ2名づつの受信者における静脈血中のコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、β-エンドルフィンなどの変動を測定した。遠隔送気40分後において血漿コルチゾール及びノルアドレナリンが有意に減少し、アドレナリンも減少傾向を示した。これらのことから受信者はストレスが緩解し、リラックスし、交感神経活動水準が低下していることが考えられる。遠隔送気時においても対面時と同様な変化が認められ、遠隔送気が受信者に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
成田 健一 下仲 順子 中里 克治 河合 千恵子 佐藤 眞一 長田 由紀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.306-314, 1995-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
61 51

The purpose of this study was to examine the reliability and validity of a self-efficacy scale (SES: Sherer et al., 1982) using a Japanese community sample. The SES comprised 23 items measuring generalized self-efficacy. The SES and other measures were administered to a total of 1524 males and females whose ages ranged from 13 to 92. Exploratory factor analyses were conducted separately for sex and age groups and the factor structures obtained from these were compared. The results revealed a clear one-factor solution for the sample as a whole. A similar one-factor structure was obtained across sex and age groups. The SES was found to have satisfactory test-retest reliability and internal consistency. The correlations of the scores on the SES with other measures, such as depression, self-esteem, masculinity, and perceived health, provided some supports of construct validity. Some evidences of the construct and factorial validity of the SES in the Japanese community sample were found.
著者
佐藤 眞 SATO Makoto
出版者
岩手大学教育学部社会科教育科
雑誌
岩手大学文化論叢 (ISSN:09123571)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-111, 2009

学校から職業社会への移行パターンが大きく変容した現在,さまざまな角度から「若者と仕事」が論じられ,キャリア教育,フリーター・ニート論の隆盛はブームの感さえある。 「日雇い派遣」,「ネットカフェ難民(事実上のホームレス)」に象徴される,きわめて不安定な労働と生活を強いられている多くの若者たち。その実態がマスコミでも採り上げられ,「年越し派遣村」の報道が世論を喚起した。こうした失業・貧困をめぐる状況は若年層に限定された問題ではなく,すべての年齢階層にひろがる生活不安,深刻化するワーキングプア問題として,その実相が明らかになるにつれ,何らかの政策的対応をせまる諸運動が随所で形成されつつある。 小論は,いま「未曾有の危機」にあるとされる日本経済のもとで,不安定雇用の動態をスケッチするための基礎的作業を試みたものである。
著者
成田 健一 下仲 順子 中里 克治 河合 千恵子 佐藤 眞一 長田 由紀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.306-314, 1995-09-30
被引用文献数
22

The purpose of this study was to examine the reliability and validity of a self-efficacy scale (SES : Sherer et al., 1982) using a Japanese community sample. The SES comprised 23 items measuring generalized self-efficacy. The SES and other measures were administered to a total of 1524 males and females whose ages ranged from 13 to 92. Exploratory factor analyses were conducted separately for sex and age groups and the factor structures obtained from these were compared. The results revealed a clear one-factor solution for the sample as a whole. A similar one-factor structure was obtained across sex and age groups. The SES was found to have satisfactory test-retest reliability and internal consistency. The correlations of the scores on the SES with other measures, such as depression, self-esteem, masculinity, and perceived health, provided some supports of construct validity. Some evidences of the construct and factorial validity of the SES in the Japanese community sample were found.
著者
江崎 治 佐藤 眞一 窄野 昌信 三宅 吉博 三戸 夏子 梅澤 光政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.123-158, 2006-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
209
被引用文献数
2 5

日本人のn-3系多価不飽和脂肪酸 (以下n-3系脂肪酸と略す) の摂取基準策定 (2005年版) に用いた論文をエビデンステーブル (表) として提示し, 策定の基本的な考え方を詳しく述べた。n-3系脂肪酸は一定量以下のある摂取量で皮膚炎, 成長障害が認められる必須脂肪酸であるので, 下限の設定 (最低必要量) が必要である。しかし, 報告症例が少なく, 一定量以下のある摂取量を求めることができないため, 摂取量の中央値で表される目安量を用いた。すなわち, 大部分の日本人では皮膚炎は認められていないので, 日本人の各年齢階層における男女別にみたn-3系脂肪酸摂取量の中央値を日本人の大多数で欠乏症状が認められない十分な量と考え, 目安量とした。このように安全幅が広めに設定されているため, 実際の摂取量が目安量より少なくても欠乏症状はあらわれないと思われる。n-3系脂肪酸を多く摂取すると, 虚血性心疾患罹患が少なくなることを示す欧米の報告は多い。しかし, 現在の日本人のn-3系脂肪酸摂取量の中央値は, 欧米人の検討成績の中で, 虚血性心疾患罹患率の最も低い, 最高分位のn-3系脂肪酸摂取量のグループの中央値よりも多い。このため, 日本人のn-3系脂肪酸摂取量の中央値程度を摂取していれば, 虚血性心疾患罹患率を十分低くできると考えられる。そこで, 18歳以上に対し, n-3系脂肪酸摂取量の中央値を, 目標量 (生活習慣病予防を目的とした食事摂取基準の一つ) の下限と設定した。設定された18歳以上の目標量は2.0-2.9g/day以上となる。この値は必須脂肪酸としての目安量と一致するため, 18歳以上については目標量のみの設定となっている。n-3系脂肪酸を多く摂取した場合の弊害についても検討した。出血時間の延長, LDL-コレステロール値の増加が多く報告されているが, 臨床的に問題となる出血例の増加は報告されていないし, 虚血性心疾患罹患率が増加したことを示す報告もない。このため, 今回の策定では, 目標量の上限値設定は行わなかった。しかしながら, 日本人のおもなn-3系脂肪酸摂取源である魚介類には, 水銀, カドニウムなどの重金属, ダイオキシン, PCBなどの環境汚染物質が微量ながら含まれる。食事摂取基準では, 有害物質の摂取量について取り扱っていないため, これらの影響については考慮されていない。この点を補完するために, 本稿では水銀摂取の影響についてエビデンスの収集を行い, 妊婦が魚を摂取する場合の注意点についても言及した。
著者
原田 亜紀子 吉岡 みどり 芦澤 英一 木下 寿美 佐藤 眞一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.201-209, 2019-04-15 (Released:2019-04-26)
参考文献数
18

目的 本研究は,特定健康診査(特定健診)を受診しなかった者に対し,未受診の理由や健診受診に対する意識を調査し,未受診に影響する要因と現状の問題点を明らかにすることを目的とした。方法 千葉県海匝地域にある三市の各国民健康保険(国保)で実施した特定健診の未受診者を対象とし,健診を受けなかった理由,新しい健診制度と国保保険料との関係,健診に対する要望,次年度の健診受診の希望などを調査した。調査対象については,翌年の健診受診の状況も合わせて調査した。各調査項目について,市別,性別,年齢階級別に集計を行い,項目間の関連についてはχ2検定を行った。次年度の健診受診の意向の有無,次年度に実際に受診したかどうかをそれぞれ従属変数とし,関連する要因の検討にロジスティック回帰分析を用いた。さらに,次年度の健診意向と翌年の受診状況を組み合わせ(意向あり・実際に受診,意向あり・実際に受診なし,意向なし・実際に受診なし)を従属変数とし,関連する要因につき名義ロジスティック回帰分析を用い検討した。結果 次年度の健診を希望せず,実際に受診しない傾向は,会社員,「通院中・経過観察中」などを未受診の理由にあげた者でみられた。一方で,健診受診の意向がありながら,実際に健診を受診しない傾向は,自営業の者,メタボに該当する者,未受診理由で「健診が日中だった」,と回答した者においてみられた。また,これらの要因とは別に,健診受診率と後期高齢者医療制度への支援金の関連を知らなかった者において,健診受診の意向と実際の健診受診の割合が高かった。結論 健診受診の意向と実際の受診行動を組み合わせて,受診に関連する要因を検討することで,未受診者の特徴を分類することが可能であった。未受診者をひとくくりに考えることなく,特徴に応じて切り分け,各々に対し効果的なアプローチを考えていく必要がある。
著者
佐藤 眞一 下仲 順子 中里 克治 河合 千恵子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.88-97, 1997-07-30
被引用文献数
3

年齢アイデンティティのコホート差, 性差, およびその規定要因を生涯発達の視点からとらえるために, 8-92歳の一般住民女性1,026名, 男性816名の合計1,842名を対象に調査を実施した。年齢アイデンティティの指標として, 感覚年齢(実感年齢, 外見年齢, 希望年齢の3種類)および理想年齢の4種類の主観年齢を測定した。主観年齢の暦年齢からの偏差を年齢コホートの変化過程に沿って検討すると, 主観年齢が自己高年視から自己若年視へと転じる現象のあることが明らかとなった。男性ではその転換が青年期(18一24歳)前後でみられたのに対して, 女性では思春期G3-17歳)前後に生じていた。また, 感覚年齢では, 男性が成人前期(25-34歳)から成人中期(35-44歳)で変化が少なく, 女性では青年期から成人前期(25-34歳)にかけての変化が少なかった。理想年齢では, 男女とも青年期以降変化が少なくなる傾向にあったが, 男性の場合には成人後期(45-54歳)から, 女性では初老期(55-64歳)から再び変化が大きくなった。年齢アイデンティティの規定要因を検討したところ, 教育年数, 健康度, 自尊感情, タイプA, 女性性に何らかの有意な効果がみられたが, いずれの主観年齢においても暦年齢の効果が最大であった。このことから, 年齢アイデンティティあるいは主観年齢に対しては, 社会的な要因ばかりでなく加齢に伴う心理学的時間感覚ないし時間評価も同時に影響していると思われた。
著者
金本 郁男 井上 裕 守内 匡 山田 佳枝 居村 久子 佐藤 眞治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.96-101, 2010 (Released:2010-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

野菜サラダ(キャベツ,オリーブ油,酢)と米飯の摂取順序を変えた時に食後の血糖値とインスリン値のプロファイルがどのように変化するのかを確認するため,10名の健常成人において試験を行った.その結果,米飯摂取後に野菜サラダを摂取した場合と比較して,米飯摂取前に野菜サラダを摂取した場合には,食後20, 30, 45分での血糖上昇値(ΔC)は有意に低下し(p<0.01),最高血糖値(ΔCmax)に到達する時間は約40分遅延した(p<0.01).ΔCmaxは平均21%低下し,食後0∼120分までの血糖値上昇曲線下面積は,平均39%低下した.血清インスリン値は血糖値とパラレルに推移し,食後のインスリン分泌が節約できる可能性が示唆された.以上より,野菜サラダは米飯よりも先に摂取するほうが食後の血糖上昇を抑制するために有効であることが示された.
著者
池田 和子 佐藤 眞知子 渡部 旬子 宮川 由香
出版者
品質工学会
雑誌
品質工学 (ISSN:2189633X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-43, 1994-02-15 (Released:2016-03-24)
参考文献数
7

It is important to develop a measurement technology that can be used to quantify the comfortability of wearing. Up to now however, the most effective way of evaluating comfortability is still the sensory tests conducted by human being . ln this paper, the discriminating ability of panels, which is the sensor in sensory evaluation, was studied. An experiment was conducted to investigate the ability of discriminating the difference in jackets patterns. lt was found from the experiment that the rate of panel members having a high discriminating ability was only 6 percent, which is less than forecasted. lt was also found that the threshold value of discrimination was about 10 mm. SIN ratio. applied in measurement technology was used as an index for discriminating ability, and we concluded that its use was valid and effective.
著者
木山 昌彦 今野 弘規 前田 健次 磯 博康 佐藤 眞一
出版者
財団法人大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、地域住民を対象に、食行動・身体活動・社会心理要因とメタボリックシンドロームおよびその構成因子との関連を明確にし、さらに食行動と社会心理要因との相互作用を確認する疫学研究を実施した。その結果、男性では、朝食欠食が体重増加に関連しており、特に睡眠時間が短いほどその関連が顕著であった。また肥満関連食行動数が多いほど、将来の2 型糖尿病発症リスクが高いことがわかった。ただし、肥満関連食行動が自覚的ストレスによりその後の体重変化に与える影響を分析したが、明確な影響は得られなかった。
著者
早瀬 康博 花田 孝二 片岡 久美子 秋田 和俊 佐藤 眞 藤木 知一 岸 幹二 青野 要
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会
雑誌
歯科放射線 (ISSN:03899705)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.10-16, 1987-06-22 (Released:2011-09-05)
参考文献数
38

Thermography was clinically applicated in 155 cases of various diseases in oral-maxillo-facial region. An attempt was made to evaluate the detectability of thermogram compared with the one of radiographic examination, the distribution of difference of temperature in various disease, the relationship between pain and the difference of temperature and the relationship between pain after operation and temperature change. Thermography was able to detect the influence of the lesions in soft tissue which was not detectable by radiograph. Thermographic findings was quite in accord with those of clinical symptom but not always with radiographic findings. In the cases of acute inflammation the difference of temperature with the opposite side showed wide range of distribution correlated with clinical symptom. In the cases of chronic inflammation no apparent difference was observed in the range of temperature. In cystic lesions without any acute inflammation the area of lesion was demonstrated as a cold spot. In cases of malignant tumor the area was shown as a hot spot between 0.5°C and 1.5°C In the cases of arthrosis painful areas were shown as localized hot spots. Correlationship was observed between pain and the differences of temperature and it was suggested that thermography might represent the painful area as an objective sign. It was also possible to demonstrate the changes of pathological conditions after operation by using thermography in lapse of time and it was indicated that thermography yielded much useful data as an excellent functional analyzing method.
著者
春日 彩花 佐藤 眞一 Takahashi Masami
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.384-403, 2018 (Released:2020-01-18)
参考文献数
84

While wisdom is generally understood as one of the ideal psychological states in late adulthood, its precise definition remains unclear. In this article, we first present a comprehensive review of its definitions and assessment tools to date. We then propose a new inclusive approach to wisdom that takes into account its functional and structural aspects. This approach enables us to discuss issues related to wisdom in a new light, and includes continuity/discontinuity characteristics and age-related psychological changes.
著者
吉岡 みどり 原田 亜紀子 芦澤 英一 木下 寿美 相田 康一 大森 俊 木下 裕貴 大橋 靖雄 佐藤 眞一 水嶋 春朔
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.728-742, 2021-11-15 (Released:2021-12-04)
参考文献数
41

目的 人生の最終段階を可能な限り長く自立して過ごしていくためには,Activities of Daily Living(ADL)のような身体的な自立に加え,高次生活機能(「手段的自立」,「活動」,「参加」)があわせて必要となってくる。そこで,地域住民を対象とした長期追跡研究において,手段的自立,知的能動性,社会的役割と健康状態(総死亡,要介護発生)の関連性を検討した。方法 鴨川コホート研究の参加者データを用いて,2003年から2013年までに千葉県鴨川市民を対象に,医療サービス利用状況,健康状態,疾病有病率,介護保険サービスの利用状況を調査した。鴨川市民の生活習慣と高次生活機能の違いを死亡状況別,要介護発生状況別に比較した。高次生活機能は,老研式活動能力指標を用いて評価し,各質問への回答,各領域の得点,合計得点を調べた。結果 40-69歳の成人6,503人がコホート研究に参加し,2013年末までに810人の死亡を把握した。総死亡と高次生活機能との関連をみると,手段的自立得点4または5に対する3点未満のハザード比2.03(95%CI: 1.59-2.60),知的能動性得点4に対する3点未満のハザード比1.39(95%CI: 1.09-1.77),社会的役割得点4に対する3点未満のハザード比1.28(95%CI: 1.03-1.59))であった。性別の層別解析では,手段的自立得点の低さは,男女ともに総死亡発生に対して関連がみられたが,知的能動性,社会的役割については,女性においてのみ総死亡発生との関連がみられた。同じ期間に917人の要介護発生を把握した。同様に高次生活機能との関連をみると,手段的自立,社会的役割についてはハザード比が有意であった(手段的自立1.93(95%CI: 1.55-2.40),社会的役割1.30(95%CI: 1.07-1.58))。男女別では,手段的自立得点の低さは,男女ともに要介護発生に対して関連がみられたが,社会的役割については,女性でのみ関連がみられた。結論 総死亡,要介護発生に対して,高次生活機能の手段的自立,知的能動性,社会的役割のいずれのドメインにおいても,得点が最も低いカテゴリーは,総死亡,要介護発生に対して有意に関連していた。
著者
伊集院 睦雄 近藤 公久 島内 晶 佐藤 眞一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2008 (Released:2008-11-10)

高齢者では若年者に比べてTOT現象の頻出することが知られており,その原因としてi) 加齢により語の検索機能がうまく働かなくなるというdecrement viewと,ii) 高齢者は単に語彙が豊富なためTOT状態に陥りやすいとするincremental-knowledge viewが提唱されている.本研究ではii) に注目し,同じ高齢者でも語彙数の違いにより,TOTの生起数に差が認められるか否かを検討した.健常高齢者をWAIS IIIの単語課題素点で二群(高語彙群15名,低語彙群15名)に分け,絵(高頻度語160枚,低頻度語160枚)の命名課題を実施し,TOTの生起数を比較した結果,対象者の語彙数の多さはTOTの生成数を増加させないが,語彙数の多い対象者のみ,単語の頻度が高い場合にTOTの生成数が減少した.本結果は,高齢者でTOTが増加する現象をincremental-knowledge viewでは単純に説明できないことを示唆する.
著者
小野里 拓也 佐藤 眞木彦 井田 憲一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.157-165, 2019-10-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

病棟看護師の勤務スケジュール作成は, 看護師長ら多忙なスタッフが多大な作業時間と労力を費やす消耗的な作業である。従前より自動化が強く望まれているこの問題は, ナーススケジューリング問題 (NSP) と呼ばれており, 異なるレベルの制約が縦横に絡まった複雑な組合せ最適化問題である。NSPに対して, 多くの最適化手法により様々な研究がなされている。中でも遺伝的アルゴリズムなどのヒューリスティクス手法が有望な結果を出しているが, その多くは実用規模の問題に対して, 全ての制約違反を解消した解の導出を実現できていない。またNSPには, 有料の製品も幾つか提供されているが, 経費が予算と折合わないことが間々ある. 更には, 商用ソフトのあるものは膨大な計算コストが必要だったり, また別のものは問題の性質によっては探索性能が安定しないなど, 問題を抱えているものもある。そこで本研究では, 遺伝的アルゴリズムを用いて, 実用時間内に安定して最良スケジュールが導出できるNSPシステムの開発を目指す。このシステムでは, 看護師間の勤務バランスを考慮しながら, 勤務シフトに関する要請とシフトパターンの制約を充足する解を導出することを目標とする。
著者
土井 教史 佐藤 眞直 陰地 宏
出版者
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
雑誌
SPring-8/SACLA利用研究成果集 (ISSN:21876886)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.97-99, 2017-01-31 (Released:2021-01-15)
参考文献数
3

加圧水型原子力発電プラントの一次冷却系構造材として主に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金においては、一次冷却水系へ溶出するNiを低減することが急務となっている。最近、耐Ni溶出低減対策として、いくつかの表面処理法を見出しつつあるが、そのNi溶出抑制メカニズムに関しては不明な点が多い。今回は、表面処理を行っていない初期材において、その初期状態皮膜成分の金属元素の深さ分布や存在状態への理解を深めるため、HAXPESを用いた非破壊分析を実施した。
著者
上野 大介 権藤 恭之 佐藤 眞一 増本 康平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.71-80, 2014-02-28 (Released:2014-08-06)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

これまでの研究では,顕在記憶にポジティヴ優位性がみられることが報告されているが,潜在記憶に感情価が及ぼす影響の年齢差については明らかにされていない.本研究では感情価が顕在記憶と潜在記憶に及ぼす影響に関する年齢差を検討した.実験1では,48名の若年者群と48名の高齢者群がポジティヴ,ネガティヴ,ニュートラルの写真をニュートラル単語の直前に呈示することによって感情価を付加した単語を記銘し,その後,自由単語再生課題を受けた.実験2では,27名の若年者群と30名の高齢者群が実験1と同様の記銘後,語幹完成課題を受けた.顕在記憶では若年者群のネガティヴ条件の成績が高く,高齢者群にポジティヴ優位性が確認された.潜在記憶では両年齢群ともポジティヴ条件とネガティヴ条件の成績がニュートラル条件の成績よりも高かった.これらの結果は,ポジティヴ優位性が意図的な処理で生起していることを明らかにし,社会情動的選択性理論を支持するものであった.