著者
近藤 友子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.385-390, 2009-08-01

日本の出版界においては,読者層に障害者を包摂するような視点がみられない。昨今の厳しい出版状況では,障害者向けの出版物に目を向けていくことは難しいのかもしれない。アメリカの場合はリハビリテーション法504条により,障害を持つ人に対する差別の禁止がうたわれている。電子書籍や録音図書などを墨字資料と同じように販売することで,障害による差別をなくして,出版の枠を広げる機会としている。最近の日本においても,バリアフリー出版などの動きが少し見られるようになってきた。本稿では,日本の出版物におけるユニバーサル・デザインへの取り組みを検討していく。
著者
長谷川 寿一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.138-144, 1995-04-01

「論文を執筆できる」ということは、大学教育における大きな到達目標のひとつであるに違いない。にもかかわらず,大学生にとって論文を書くことがどのような意味をもつのか,また大学人は学生に対して論文執筆をどのように教育したらよいのか,といった基本的な問いに対しては,従来,正面から答えられることが少なかった。本稿では,論文執筆の原点は,他者との交流を通じて自らの主張を節度をもって根拠づけることであるとの認識から出発し,レポートと論文の相違点,論ずるに足る主題とは何か,論拠の示し方などについて述べ,さらに,執筆上のトラブルや悩みの対処の仕方などを論じた。
著者
固武 龍雄
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.411-418, 2009-08-01

オンライン検索が始まる以前に行われていた検索,即ち,手めくり調査,ハンドソート・パンチカード,マシンソート・パンチカードを用いた検索から,コンピュータを使用したバッチ検索までを,私の経験したことを中心として振り返ってみる。手めくり調査のなかでも,特色のあるユニターム方式での検索やピーカブー・カードについても解説する。その他,マイクロフィルムによる検索や化学構造式を蓄積,検索するのに用いられたWLNにも言及する。
著者
熊谷 俊夫 重里 信一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.996-1005, 1993-11-01

学術研究の急速な進展は,学術資源としての学術情報の急激な量的増大と多様化をもたらした。学術資源の共有を理念とする学術情報システムの進展により,学術情報へのアクセスと相互利用体制は格段に整備が図られている。しかし,一方では,大学図書館の書庫の狭隘化をもたらし,全国的な規模での一次資料の効果的な保存システムの実現が望まれている。本稿では国立大学図書館協議会での検討を踏まえ,一次資料の保存システムと共同保存図書館のあり方について考察する。
著者
牛崎 進
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.74-79, 1995-02-01

多くの大学図書館が蔵書収納スペースの確保に追われ,保存書庫を建設したり書庫から溢れでた資料を保管会社に委託するという例が増えつつある。本稿では,立教大学図書館を事例として,廃棄待ち資料の発生を収集と利用の側面から整理し,図書館資料のパーマネントな保存よりも,その利用環境を重視せざるをえない大学図書館の事情が報告されている。増大化する蔵書数に上限を設定して軽量化を試み,蔵書の鮮度を維持するためにワーキング・コレクションという発想を紹介している。また,保存書庫における重複資料の発生とその処分の現状を紹介し,最後に廃棄資料の再活用を探る事業を展開しつつある私立大学図書館協会の動向をとりあげている。
著者
福嶋 聡
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.192-197, 2007-04-01

「図書館型」の書店の代表格と見なされてきたジュンク堂書店に勤務する筆者が,何ゆえに図書館を利用してきたか,図書館に対していかなる提言をなしてきたか?前半部で,ジュンク堂書店のこれまでの展開の中で目指された理念とその実践を紹介し,後半部で,図書館を利用する理由,図書館に対する提言を述べながら,「本と人の出会いの場」としての書店と図書館の役割分担,連携の可能性について考えたいと思う。一読者として本の魅力,読書体験のもつ魅力を体験してきたからこそ,書店,図書館という枠を乗り越えて,多様な「本と人の出会いの場」を形成していきたいという筆者の思いが,何よりの出発点である。
著者
後藤 嘉宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.534-539, 2003-11-01

ディジタル化時代の新聞では,記事のデータベース利用が増え,また速報記事が増すことで,記事が価値から離れ,事実の報道が尊ばれる。データベース利用される記事は,新聞紙面上の記事と異なり,何面に記事があるか,見出しの大きさがどの位あるかといった価値づけから解放される。その意味で検索者が主体的に個々の記事に臨める。しかしこれらの記事は,記事の置かれた背景や文脈を失う。各種データベースが充実しているディジタル化時代においても,新聞切り抜き業務が存在している理由も,このような記事の置かれた文脈・背景を重視し,さらにそれらを切り抜きのイメージ情報によって思い出す点に関係しよう。
著者
平 紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.404-409, 2007-08-01
被引用文献数
1

近年,医療を取り巻く環境の変化に伴い,医療系図書館員が提供するサービス内容が拡大している。しかし,図書館員は情報の専門職としての教育を受けていない。また,医療に関する専門的な教育を受けていないことなどが要因となり,医療従事者のニーズを的確に受け止め,適切なサービスを提供できる専門的知識・技術を備えた情報専門職としての対応が充分にできていないのではないかと考えられる。そこで,医療系図書館員が持つ知識,技術・意識と医療従事者の情報ニーズ,図書館員に対して持つ意識を調査し,両者におけるギャップの有無を明らかにするために,北海道内の医療系図書館員129人(回答52人),医療従事者2,093人(回答839人)を対象に調査を行った。その結果,期待度を尋ねた10項目の全てに両者の意識に有意差がみられた。また,医学図書館の利用満足度では,10項日中の「講習会の開催」と「適切な文献複写費用」に有意差がみられた。図書館員の多くは,自らを情報専門職として意識しておらず,新しい知識・技術への自己評価レベルが低く,図書館員は医療従事者からは情報専門職員として期待されていないと認識していた。
著者
小田島 亙
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.362-367, 1994-07-01

北米の図書館では,この4年間に従来の約30%の予算が削減されてきたという制約から,特に学術図書では資料購入費の約60%を占める雑誌の購読件数を減らさざるを得ない状況になっている。一方,エンド・ユーザーからの増え続ける論文要求に,従来のサービスを低下させずに対応して行く手段を考えなければならず,ドキュメント・デリバリーが注目を集めている。従来型のドキュメント・デリバリーとは異なる革新的な雑誌論文索引データベースと結びついたドキュメントの配信サービスであるUnCoverについて,米国に於ける状況と日本での利用方法を紹介する。
著者
吉岡 康明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.254-260, 2012-06-01

電子出版はいつでもどこでも本が入手でき読める環境を提供できる,出版市場拡大の切り札として,また読者層の拡大,新たな価値の創造や日本文化の継承などの観点でも大きな期待をされている。日本でも立ち上がった電子出版であるが,本当の意味での電子出版世界の実現には,まだまだ多くの課題が制作,流通面で存在し,電子出版の特徴とその可能性を活かしきれていないのが現状である。技術面では,ハードウェアとソフトウェアの両面からの解決が不可欠であり,ビジネス面では,多くの関連ビジネスの可能性を追求するとともに,電子出版そのものの価値を高めるだけでなく,印刷出版とのハイブリッドでより多くの価値を生み出すことが重要である。
著者
落合 早苗
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.248-253, 2012-06-01

本稿では,ケータイコミック/ケータイ小説を軸に,そもそも電子書籍とはなにか,にアプローチする。電子書籍市場を牽引したケータイコミック市場や,世界的にも話題を呼んだケータイ小説に対する国内評価は高くない。その要因を分析し,また日米の市場を比較しながら,「新たなプラットフォーム」に向けてのヒントを探る。
著者
星野 渉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.236-241, 2012-06-01

日本の出版産業は,書籍と雑誌の両方を扱い,物流から商流までを担う取次システムがインフラとして機能することで,戦後一貫して成長してきたが,出版物の内容が電子的に流通することが,この構造に大きな変化をもたらす可能性が強い。産業構造の変化と,出版物の電子化による影響を考察する。