著者
宇陀 則彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.390-395, 2007-08-01

本稿は電子図書館の評価を複雑にしている要因を実証的観点から明らかにし,質的評価の重要性を主張する。その上でWebユーザビリティの議論を取り入れながら,「電子図書館としての使い勝手」を導き出す。さらに,電子図書館利用による「知的生産の向上度」を電子図書館のアウトカムとして提案する。
著者
大友 敏明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.528-533, 2005-12-01

山梨大学附属図書館は, 平成14年10月に旧山梨医科大学附属図書館と統合し, その後法人化を経験した。大学統合と法人化という2つの要因は, 図書館に, (1)図書館資料の集中管理, (2)資料費配分構造の見直し, (3)電子資料費の共通経費化などの懸案の改革を実行する絶好の機会を生んだ。現在, 増築・改修計画と資料の仲介システムの検討が進められる一方で, 学習用図書費の数値目標の設定, 電子資料費の傾斜型予算配分など資料費の配分構造の見直しが決着した。一連の改革は, 統合によって生じた摩擦を法人化という外的ショックが吹き飛ばし, いっきに2つの附属図書館をひとつにした。
著者
根本 彰
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.358-364, 2010-09-01

書誌コントロールは,知的コンテンツの流通体制をどのようにつくるのかという問題群である。これがデジタルネットワークへの移行状況のなかで,どのように変化しつつあるのかについて,筆者の旧著をベースにしながら論じた。これまで知的コンテンツは紙を中心とするパッケージに収められて流通し,図書館において物理的に保存されていたが,これがデジタル化することにより不定形となる。こうして「書誌レコードの機能要件(FRBR)」における体現形を対象とする書誌コントロールから,著作と表現形を対象とする書誌コントロールへの移行が必要になることを論じる。
著者
Calhoun Karen S. 小鷹 久子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.378-383, 2010-09-01

目録作成並びにメタデータサービスは岐路に直面している。電子時代は図書館のコレクション構築と,図書館がサービスする社会に興味あるものとして働きかけるコレクションとその仕様に根本的なチャレンジをもたらした。Webの進出が,図書館ならびに高等教育に必須であったもの,また専門知識や最高の実技を構成してきたものを新しい条件下ですべてくつがえし書き換えた。この稿は図書館運営の現実とメタデータ作成と管理を動かす新しい要因と傾向を明らかにすると共に,OCLC共同機構が計画している将来の目録作業,メタデータ操作,そしてWorldCatを取り巻くエキスパート目録作成共同体の支援と進展につながる次世代のメタデータ作成と管理用プラットホームの大要を示す。
著者
金子 康樹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.79-82, 1999-02-01

大学図書館が新たなサービスを展開する上での計画について, マーケティング理論を応用することを考察する。大学図書館を取り巻く情報環境の変化に注目した上で, 大学図書館における新たなサービスにはどのようなものがあるか, またそれを評価するための理論基盤としての, マーケティングミクスにおける製品ミクス, 製品アイテム, 製品の付随機能の面からの検討を行った。
著者
山名 早人
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.84-89, 2004-02-01
被引用文献数
1

今や検索エンジンは,インターネットを利用する上でなくてはならない存在となっている。しかし,そのアーキテクチャは明らかにされていない部分が多い。本稿では,世界最大の検索エンジンであるGoogleを例にとり,検索エンジンのアーキテクチャについて, Web情報の収集,インデックス化,検索の3つに焦点をあてて紹介する。また,大量の検索クエリーをどのように処理するかや,運用にはどの程度のコストがかかるのかなどの運用に関わる問題についても取り上げる。
著者
妹尾 大
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.521-529, 2004-10-01

情報は管理できるが,知識は管理できない。この考え方が,知識経営の基本的スタンスである。なぜならば,情報と違って知識には個人の価値観が含まれているからである。知識経営とは,知識を管理するのではなく,リーダーシップと場づくりによって知識創造プロセスを促進することである。本稿は,NTTドコモのオフィス改革の取り組みを事例として取り上げ,知識創造プロセスを促進する場がどのようにして創設・活性化されるかについて検討した。具体的には,「オフィスレイアウトの変更」を物理的環境の変更・整備,「イントラネットの構築」を仮想的環境の変更・整備と捉え,これらが場の創設・活性化にどのような影響を与えうるのかについて考察を加えた。
著者
伊藤 真理
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.66-71, 2012-02-01

音楽分野では,グレイリソースとしてエフェメラの収集や管理について検討されている。本稿では,音楽分野のエフェメラとして,楽譜の種類の1つであるsheet musicと,演奏会プログラムをとりあげた。また,録音資料については,流通と媒体の一過性に着目して検討した。デジタルアーカイブズの構築に伴って,エフェメラに関するメタデータの検討も重要となっている。楽譜に関しては,アメリカ音楽図書館協会によるガイドラインが策定されており,演奏会プログラムについては,国際音楽資料情報協会のワーキンググループによって検討が進められている。様々なグレイリソースへの効率的なアクセスについて,さらに検討が必要であろう。
著者
橋元 良明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.8-14, 2011-01-01

インターネット利用をめぐる信頼と不安といった場合,インターネットの情報内容やメディアイメージをめぐる信頼・不安と,インターネット利用に際し,トラブルや被害に巻き込まれる不安が考えられる。筆者が中心となって実施してきた『日本人の情報行動』調査からは,インターネットの情報内容に対する信頼度は,この10年で着実に漸増してきているものの,まだまだ新聞やテレビに及ばないことが明らかになっている。また,ネット利用の際の不安に関し,筆者らが実施した10ヵ国比較調査によれば,日本人は概して,被害経験が少ないにもかかわらず他の国と比較しても不安度が高い。その背景に,トラブルや事故をめぐる報道への高い接触率があげられる。しかし,報道への接触と不安との関連は,すべての国で共通のものではない。
著者
正 奈奈絵 佐々木 肇
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.467-474, 1980-10-01

国際標準化機構の第46専門委員会(ISO/TC 46)Documentationは,1979年5月24日付けで国際規格案ISO/DIS30,Biblidを回付している。逐次刊行物のBiblidとは,逐次刊行物を構成する巻,号,ぺ一ジ,論文等を単位として識別するためのものであり,書誌記述するためのものではない。本稿では,規格案のもととなった推薦規格ISO/R30-1956書誌票と対比させて,Biblidという新しい概念の構造と機能について解説した。人文・社会・科学技術及び図書館情報学各分野の専門誌(計103誌)について,Biblidに含まれる項目を調査した結果,人文・社会系の和文誌にはBiblid項目が少く,科学技術系の洋雑誌及び国内発行欧文誌には多く記載されていることが判明した。最後に,Biblidを記載した場合の効果と問題点について述べた。
著者
矢田 俊文 庄 ゆかり 野原 ゆかり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.501-506, 2011-12-01

デジタルネイティブ世代が増加している現在,外国語文献データベースと文献管理ソフトについて,伝統的訪問講習会への参加者は減少傾向にある。しかし,講習会参加者に対するアンケート結果には,依然として講習会が有意義であることが示されている。ウェブで開催するセミナーであるウェビナーを使って,大学に潜在的に存在する多くの利用者が参加できる新しい講習会のスタイルとして,広島大学の「図書館を活用した音声対話式ウェビナーの事例」と九州大学の「分野ごとに的を絞った内容をシリーズで提供した事例」を報告する。
著者
畠山 珠美
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.483-488, 2011-12-01

国際基督教大学図書館では,ラーニングコモンズにおける新しいサービスとしてライティングサポートデスクをスタートさせた。ライティングサポートデスクはライティング・センターのパイロット版という位置づけで,学生のニーズの把握,運営方法とチューターの研修制度の確立を目的としている。開設してまだ日は浅いが,利用は少しずつ高まっており,利用者の満足度も大変高い。将来的には,ライティング・センターをラーニングコモンズの機能の1つとして定着させ,大学の情報基盤というだけでなく,教育支援機関として活動していくことが図書館の発展につながっていくと考える。
著者
山内 祐平
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.478-482, 2011-12-01
被引用文献数
2

本稿では,米国の大学図書館における学習支援の系譜と大学の学習支援組織をレビューした上で,日米の大学における学習支援の位置づけの違いを明らかにし,その差がラーニングコモンズの展開に与えている影響について考察を行う。結果として,大学進学率と中退率の差,大学に設置されている学習支援組織の差,学習支援組織を支える仕組みの差,インフォメーションコモンズの不在という4つの相違点が明らかになり,相違を前提とした日本型ラーニングコモンズの学習支援について提案する。
著者
寺岡 岳夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.465-469, 2011-11-01

利用している商用データベースに収録されていない国の特許を調べるときは,各国特許庁サイトなどを使うことになる。しかし,使ったことのないウェブサイトや,非英語圏の国だったりすると,検索の方法や,どのような情報が収録されているのかもわからないことが多いと思う。本稿では,非英語圏でもあるブラジル特許庁のウェブサイトを取り上げ,特許情報へのアクセス手順や検索項目,検索方法を紹介する。ブラジル特許庁ウェブサイトは,ポルトガル語による表記であるため,図による説明を多くしている。
著者
尾城 孝一 杉田 茂樹 阿蘓品 治夫 加藤 晃一 阿蘓品 治夫 アソシナ ハルオ 加藤 晃一 カトウ コウイチ
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.475-482, 2004-09-01
被引用文献数
2

近年,海外の大学図書館を中心として学術機関リポジトリと呼ばれる,インターネット上の電子公開書庫の設置が相次いでいる。学術機関リポジトリは,学術コミュニケーションをめぐる危機的な状況と大学からの情報発信強化という2つの問題に対する解決策として注目されている。本稿では,まず学術機関リポジトリの誕生の背景と問題の所在について概観し,その定義および成立要件について述べる。続いて,海外の代表的な事例を紹介し,さらに国内の状況について,千葉大学附属図書館と国立情報学研究所におけるプロジェクトを取り上げる。最後に,学術機関リポジトリの普及に向けた協調的活動の重要性について触れたい。
著者
柳沢 芳夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.1152-1162, 1992-12-01
被引用文献数
1

清水建設が,シミズ情報資料センター(SIRC)という新組織をつくり,多角化する企業の中で貴重な資料,重複する資料のうち,共有化できる資料を集約管理するという集中分散方式の情報管理を行っている。情報創造の効率を上げようとする試みについて,発足以来一年と数ヵ月経過した時点で当初のもくろみとその経過を,設定された機能ごとにたどって見た。こうした企業ライブラリーの働きについて,そこのスタッフのあるべき資質にもふれながら,これからの情報収集支援組織の,企業内での一事例として紹介したものである。