著者
唐木田 健一
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.17-21, 1983-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
13

我々は主として量子論の発生と展開を対象とし, 理論変化の過程を考察した。我々の結論は次のようにまとめることができる : 自然科学における基本理論の変化とは, (1) 伝統的理論に対抗して新理論が出現し, それが何らかの事情で多数派を形成してゆき旧理論が廃棄されるという過程ではなく, (2) 伝統的理論が《自滅》していく過程であること。イ) ここにおける自滅とは理論内部の矛盾に基づくものであり, ロ) 理論の外から, すなわち競合する理論あるいは伝統的理論を反証する実験事実によって, もたらされたものではないこと。(3) 理論は自滅によって完成される (すなわち限界づけられる) こと。(4) 理論の自滅の過程は同時に新理論の誕生と確立の過程とも呼ばれること。
著者
小川 祐輔
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.81-96, 2020 (Released:2020-04-11)
参考文献数
45

This paper discusses John McDowell's disjunctivism. Through the Argument from Illusion, many philosophers have accepted that subjectively indistinguishable perceptual experiences share an underlying mental state (a highest common factor). McDowell, by contrast, thinks of this conception of experience as problematic, developing disjunctivism, which claims that a veridical experience and a corresponding delusive one need not be taken as having a common state-even if they are indistinguishable from one another. However, his writings are difficult to read, so that his thought on disjunctivism, it seems, is still not properly understood or evaluated. Given that the validity of disjunctivism is an important topic in the philosophy of perception, and given that McDowell is one of the standard-bearers of the position, such a situation would be quite unsatisfactory. Therefore, in this paper I work on two things: namely, I try first to give an interpretation of his relevant thought, and then to reveal its significance.
著者
本多 修郎
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.67-77, 1965-02-28 (Released:2010-01-22)
参考文献数
61
著者
古田 智久
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-88, 1998-03-31 (Released:2010-05-07)
参考文献数
23

クワインが『ことばと対象』において提起した翻訳の不確定性テーゼをめぐっては, そのテーゼについてのクワイン自身の説明が決して十分なものではなかったこともあり, 様々な解釈の下に多数の検討・批判論文が著されてきた。本論文の目的は, 定った解釈が確立されているとは言い難い状況にある翻訳の不確定性テーゼの主張内容を見極めることである。本論文での議論の進め方としては, 翻訳の不確定性テーゼの内容を説明する際にクワインが言及する, (1)証拠と翻訳マニュアルとの結び付きが緩いこと, (2)複数の翻訳マニュアルが存在しうること, (3)事の真相がないこと, という三つの特徴の各々を検討することにより, クワインがそれぞれの特徴によって意図していることを明らかにしながら, 翻訳の不確定性テーゼの核心に迫るという手法が採られる。本論文の考察によって, 翻訳の不確定性が, 専ら〈証拠と翻訳マニュアルとの結び付きの緩さ〉という認識論的な特徴によって説明され, 〈事の真相がない〉という存在論的な特徴によって科学理論の決定不全性と区別されること, そして, 上述の〈複数の翻訳マニュアルが存在しうる〉という特徴は, 〈実際問題として複数の翻訳マニュアルが存在する〉という主張ではなく, むしろ〈証拠と翻訳マニュアルとの結び付きの緩さ〉という認識論的な特徴から導かれる副次的なものであることが確認される。
著者
田中 裕
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.177-183, 1990-03-25 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14

1982年のアスペによるベルの定理の実験的検証は, 遅延モードを採用する事によって量子力学的相関が光速度以下の因果作用によって引き起こされたものでない事を示す点で画期的なものであったが(1), この検証実験に対するベル自身のコメント (1986) は「何かがベールの陰で光速度以上の速さで伝達されている」こと, 即ち遠隔作用の実在性と「相対性理論をアインシュタイン以前の問題状況に戻す必要性」即ち「ローレンツ不変性を持つ現象の背後にローレンツ不変性を持たない深層レベルがあり, このレベルでは絶対的な同時性と絶対的な因果の順序があると想定する」ことによって量子論的遠距離相関 (EPR相関) を説明する可能性に言及している(2)。またエーベルハード (1989) のEPR問題の歴史的回顧と様々な解釈の包括的要約も, 冒頭に「光速度を越える遠隔作用は (アインシュタインにとって受入れがたい観念であったが) 今日では様々な実験結果と理論的な分析によって実在的な効果である可能性が強い」という視点を提示し, この遠隔作用が, いかなる意味で「実在的」であるかをめぐる様々な解釈の違いを分析している。量子力学を「観測者に言及せずに」実在論的に解釈するポパー (1982) は, 「遠隔作用があるならば何か絶対空間のようなものがある」ことを理由に「量子論に絶対的同時性を導入すべき理論的理由があるとするならば, 我々はローレンツの解釈に戻らなければないだろう」と言っている。
著者
細川 雄一郎
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-34, 2019

<p>By applying the extended system of modal logic developed in [32], we present a logical analysis of the Gettier problem. Based on the result, in particular, we clarify the following point. In the literature on the Gettier problem, most authors seem to share the opinion that in general 'belief' precedes 'knowledge': we believe a proposition while we do not necessarily believe ourselves to have known it to be true. Interestingly, our analysis suggests that the story is the other way round in a sense: in general, for some proposition <i>p</i>, we <i>believe</i> that we <i>have known</i> that <i>p</i>, <i>then</i> we <i>believe</i> that <i>p</i>. Accordingly, even if given some reason for wanting to believe that <i>p</i>, we usually do <i>not</i> have the bare belief that <i>p</i>. Instead, in such a situation, more deliberately we think that <i>it might be that</i> <i>p</i>, or <i>it can be hypothesized that p</i>. Then, we can say, what we have at the start is <i>not</i> the bare belief that <i>p</i>, <i>but "might possibility"</i> or "hypothetical possibility" that <i>p</i>, which presumably involves <i>abductive reasoning</i>.</p>