著者
脇中 洋
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.53-81, 2008-03

1995年7月に大阪市東住吉区の住宅密集地で発生した火災は、娘Mの死亡保険金目当ての詐欺未遂および放火殺人事件(いわゆる東住吉事件)として母親Aと内縁の夫Bが立件され、2人には2006年11月最高裁で無期懲役刑が確定している。本件は放火を裏付ける物的証拠がなく、AおよびBの自白のみを証拠としている。特にBには大量の供述があり、その大半で放火殺人を認めて克明に犯行様態を記しているが、その供述には数多くの疑問点が指摘されている。筆者は控訴審の段階から弁護団の鑑定依頼を受けて、B供述が「真犯人が体験を記した」ものか、「無実の者が犯人に扮して記した」ものかを明らかにするための供述分析を行なった。この鑑定書のうち、本稿では夫が自白に落ちた当日の供述を紹介して、自白の生成プロセスに関する評価を行なう。
著者
佐々木 閑
出版者
花園大学
雑誌
花園大学文学部研究紀要 (ISSN:1342467X)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.35-52, 2014-03
著者
三品 佳子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.11-33, 2008-03
被引用文献数
1

本研究は、イングランドの脱施設化の歴史と背景にある思想を辿るなかで日本にACTを普及するために必要なことを明らかにすることを目的にした。イングランドの精神科病床削減は、1954年に始まり、現在も引き続き進行中であり、急激ではないが、着実に減り続けている。一定の地域を定め、サービスがどの家庭にも届けられるよう配慮されている。特に北バーミンガムでの取り組みは、ケアマネジメントを機能分化させた上で、バーミンガム市の社会福祉局やボランタリーセクターと連携を図りつつ、国民保健サービス(National Healty Service:NHS)のいくつかの機能的チームが地域生活支援を展開している。包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)は、重い精神障害のある人への最も効果的な地域生活支援の方法である。英国の精神保健の歴史とバーミンガムの実践から、ACTを日本に普及するためには、1.援助者の人間観や援助観、2.ACTのための予算の確保、3.援助者の使命感、4.援助者の技能の向上、5.援助者の待遇改善の5点が必要であることがあきらかになった。
著者
澤野 純一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.59-79, 2014-03

児童自立支援施設(当時の教護院)で福祉実践を展開した辻光文は、仏教者として本物の道を求めるにあたって、あえて僧侶にはならず、在家仏教者として生きる道を選択した。27歳の時に初めて児童福祉分野の仕事に出会い、その後、児童自立支援施設の小舎夫婦制を知るにあたって、自分の進むべき道を見出す。後年、辻の仏教者としての歩みと福祉実践者としての歩みは、同一線上に重なり、深い仏教理解による「いのち」への眼差しを根底に据えた独自の福祉実践が展開されることになるが、本稿では、両者の歩みが重なる以前の辻の悪戦苦闘の時代を取り上げる。この時代、辻は、仏教者としても福祉実践者としても苦闘の中にあったが、小舎夫婦制における子どもたちとの境目のない生活を繰り返す中で、子どもたちと辻自身を貫く「いのち」の存在を見つめてゆく。本稿は、辻が後に展開することになる「いのちそのもの」を「共に生きる」福祉の黎明期を考察する。
著者
保田 恵莉
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.49-57, 2014-03

今、モンテッソーリ教育が再び注目されている。幼児教育への関心の高まりと先進国各国で行きづまった教育の方向模索の中で、再評価され始めているのである。モンテッソーリ教育そのものというよりも、今日の教育観、人間観、子ども観に「人格形成」の確立を迫るものとしてのモンテッソーリの貢献が、取り上げられている。本稿では、近代以降の教育思想の歩みの中で、モンテッソーリによってなされた子ども観の転換と幼児教育の転換の特質を考察し、モンテッソーリの唱えた子どもの創造的使命擁護の方法が、今日こそ必要性を増していることを考察した。
著者
鈴木 康子
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の第一の課題は、近世の幕府による対外政策の推移を、長崎奉行の職掌の変化や、就任者の傾向を分析することにより明らかにすることであった。これについては、『長崎奉行の研究』(思文閣出版、2007)により明らかにした。特に注目すべき点は、(1)近世初期の長崎奉行とその職掌これについては、さまざまな論考を紹介しつつ、重要な職掌としてはキリシタン取締、貿易統制にあったとした。そして、この段階において、長崎奉行の地位は低く抑えられており、幕府直轄領の長官として政治的な役割が重視されていた。(2)貞享〜元禄長崎奉行制度の変化1685年に御定高制度が設立さ…れ、それに多大な貢献をした川口摂津守の活躍により長崎奉行の地位は、90年代に上昇してゆく。一:方その背景には、幕府財政が窮乏してきたため、長崎貿易からの利潤をを収公しようとする幕府の思惑も働いていた。これにより、幕府は外国貿易を評価するようになり、これに伴い近世初期から根強くあった幕府の外国(人)蔑視に変化が見られた。それと同様に、長崎奉行職の重要性も認識されるようになった。(3)長崎目付創設1715年の正徳新例制定時に長崎目付も創設された。これ以後享保期においては、長崎目付経験者が長崎奉行に就任する事例が多くなった。これは、一面長崎地下人の統制に幕府が目を向けるようになったためである。(4)元文〜天明期までの長崎奉行就任者の傾向1732年に享保の大飢饉が起こり、長崎貿易も停滞:した。それを打開するために1736年に、それまで勘定所関係役職を歴任してきた萩原伯看守が長崎奉行に着任した。これ以後、長崎奉行就任者は、勘定所と緊密に関わる者が就任する傾向が見られるようになった。その中で、寛延〜宝暦初期には松浦河内守、宝暦後期〜明和期には石谷備後守が勘定奉行と長崎奉行を兼職して、長崎貿易改革を実施した。この時期、長崎奉行は急速に経済官僚化して勘定所との関係を深めてゆく。そして近世初期のキリシタン取締から、幕府財政を支える長崎貿易の管理者として、貿易から最大の利潤を幕府に収公させること:が重要な職務となったのである。本研究の第二の課題は、オランダ東インド会社による対日貿易政策であるが、2回にわたってオランダのライデン大学とハーグ国立公文書館において、関係文献、史料の収集に努めた。また、東京大学史料編纂所に所蔵されている「日本商館文書」のマイクロフィルムも複写した。これにより、今後18世紀を中心としたオランダ側の対日貿易政策の推移と、その背景としてのアジア・ヨーロッパ市場の動向を分析する予定である。
著者
川井 蔦栄 高橋 美知子 古橋 エツ子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.83-96, 2008-03
被引用文献数
3

近年の日本ではTVゲームなどの発達により子どもの本離れが社会的問題になっている。とりわけ幼児期における親子のコミュニケーションの欠落にもつながる最も重要な要因の一つと考えられるため親が子どもに絵本を読み聞かせることの効用(効果)に注目した。本研究では子どもが通う幼稚園で「絵本の読み聞かせボランティア活動」を実施している保護者(親たち)へのインタビューをし、その結果と過去の保育所の結果を比較して、相互作用解析を行った。その結果、本の読み聞かせを行った親子ではそうでない親子と比べ親子間の話題、コミュニケーション(身体的接触を含む)の増加が顕著に見られた。本の読み聞かせは読書離れだけでなく幼児期の親子のコミュニケーションの改善にも有益と期待できる。
著者
張 龍龍
出版者
花園大学
雑誌
花園大学文学部研究紀要 (ISSN:1342467X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.11-24, 2013-03
著者
Del Raye D. A.
出版者
花園大学
雑誌
花園大学文学部研究紀要 (ISSN:1342467X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.1-9, 2013-03
著者
渡辺 恵司
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.41-53, 2013-03

精神障害者の精神科病院における社会的入院患者は、7 万人以上いると言われており、社会的入院者の解消は、早急に行われなければならない精神保健福祉の課題の1 つに挙げられている。京都府・京都市では、平成17 年度から精神科病院における社会的入院者の退院を促進するための事業を実施しており、平成22 年3 月末で50 名の方に地域移行推進員が関わりを持ち、29 名の方が退院に至っている。本研究は、平成17 〜 21 年度の地域移行支援事業(以下、事業)を利用し退院された方を対象とし、生活状況等の調査のほか、事業利用者の自由な意見も聴き、それらをまとめて考察を行った。特に事業利用者の意見として、退院して良かったことや、苦労していること、これからやってみたいことなど、入院生活では感じられない「ふつうの生活」の中で、「あたりまえの生活」を望んでいることが浮かび上がってきた。一人一人の生活における悩みや希望は様々であるが、退院し生活の中に「自由さ」という環境が生まれ、その自由さから生活の質の向上が得られていることがわかった。
著者
安田 三江子 澤野 純一
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.15-29, 2013-03

禅宗に関心をよせる人の実践がさまざまな分野で私たちのくらしに大きな影響を及ぼし、くらしの創造に貢献している。その実態と理由の探求のため、禅宗及び禅仏教徒の思想と行動を研究することは重要であるといえよう。本稿では、児童福祉分野における実践者辻光文が、僧侶ではなく在家仏教徒としてみずからの道を生きていくようになるまでを考察することから、このテーマにせまる。若き日の辻は、他人のつらさにいてもたってもいられず、ほんものの生きかたを、切に探求し、苦闘のなかにあった。やがて、辻は師である柴山全慶を通じ、あらゆる場で禅仏教徒としての実践があることを体得する。そして、在家仏教徒としての道を歩むようになる。辻は、自ら及び向き合うひとやことがらに対し恐ろしいほどに真摯である。そこには「勢い」とでもいえるものがある。この「勢い」は、実は、禅仏教徒のひとつのあらわれではないだろうか。「勢い」が自らの行為が展開する「現場」への強い志向となり、実践となってあらわれ、その実践がさらなる実践をよび、「螺旋」のように展開していく。この禅仏教徒の「螺旋」こそが、人びとのくらしに大きな影響を及ぼす実践として展開していくのであろう。禅への理解を深めるとともにこの「螺旋」についての解明が今後のテーマといえる。もちろん、辻が在家として生きることになったのちの、福祉分野での実践の考察も、今後も、引き続き探求すべきテーマであることはいうまでもない。
著者
丹治 光浩
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.111-117, 2013-03

子どもの対人関係能力形成の機会が減少していることを背景に、学校教育の中でグループワークを応用した取り組みが活発化している。しかし、その導入にあたっては未だ試行錯誤が繰り返されているのが現状である。そこで、筆者は学校教育におけるグループワークの方法と課題について考察した。グループワークの実施にあたっては、参加を拒否する子どもがいた場合、シェアリングの時間が足りない場合、介入が思うようにできない場合など、工夫を要する場面が少なくない。しかしながら、グループワークは進路指導、教育相談、クラブ活動、宿泊行事はもとより、通常の教科学習や保護者会など、幅広く応用することができる有用な技法として位置づけることができる。今後、新しいワークや効果測定法の開発とともに、研修の機会や実施時間が確保されることでグループワークはより発展するものと考えられる。