著者
赤澤 晃
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.201-204, 1997

近年, 天然ゴム製品に対する即時型アレルギー反応であるラテックスアレルギーが報告されるようになってきた. 欧米では, すでに医療従事者, 特殊な患者集団においてアナフィラキシーショックや死亡例があることから, 対応策, 予防策が考えられている. 国内においても今後増加する可能性がありラテックスアレルギーに対する啓蒙活動, 予防対策が必要である.
著者
西村 武 市川 陽三 千葉 忠二郎
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.11, no.8, pp.638-643, 1957

The present paper deals with the characteristics of cold-agglutinin, found in a particular case of blood-group B. The case was noted at the time of cross-match test, when its serum showed pan-agglutination to all groups of tested red cells, including group B.<br>At room temperature, its serum agglutinated all types of human red cells tested. At 20°C, the serum agglutinated its own red cells and the reaction disappeared at 37°C. The reaction however, re-appeared when these sets of test-tubes were cooled down to 20°C. Thus the reversibllity of the reaction was apparent.<br>The colder the temperature, the higher the agglutinin titer. With group B and O cells, titers of 64 were obtained at 0°C and at 5°C, titers of 16, 8, 4 and 2 were obtained at 10°C, 15°C, 20°C and 25°C, respectively. At 37°C, no reaction occurred.<br>Once the agglutinins were consumed in the cold agglutination, the supernatant showed normal reactibility in cross-match tests. The absorbed agglutinins were eluted again from red cells with saline solution at high temperature.<br>The agglutinin titer was fairly stable. It did not decrease even after 30 days in an icebox. The agglutinin was resistant to the heating at 60°C for 30 days, but not at 65°C.<br>Normal specimens of group B tested for the control showed titers of cold-agglutinin raging from 1 to 16, and their average was 5. None of the control reacted at 20°C. The authors discussed the possibility of finding out such particular specimens, at the time of cross-match tests.
著者
小沼 杏坪
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.220-223, 2000

覚せい剤とは, 昭和26年に制定された覚せい剤取締法によって規定されており, フェニルアミノプロパン(一般名アンフェタミン)とフェニルメチルアミノプロパン(一般名メタンフェタミン)およびその塩類をいう. 我が国では現在, 乱用されているのはほとんどすべてメタンフェタミンである. 覚せい剤は経口, 静脈内注射, 煙霧の吸入などにより乱用される. 覚せい剤の使用を重ねていくうちに, 自力ではなかなか止められない薬物依存に陥る. 覚せい剤依存症の典型的な例では, 覚せい剤を周期的に使用することがみられ, 時期的に変化する三相構造が認められる. 周期的使用を繰り返すうちに, いわゆる幻覚妄想状態となる. このような覚せい剤による中毒性精神病は発病しても早期に治療に結びつけば, 薬物療法によって比較的容易に治療することができる. しかし, 治療しても, 覚せい剤の乱用をやめない例では, 使用の度毎に幻覚妄想などの精神病状態が繰り返し再燃することになる
著者
長浜 文雄 安田 恵也 中林 武仁 山本 征司 小六 哲司 斎藤 孝久 鏡 雄一
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.511-516, 1977

過去3年間の原発性肺癌307症例, 要入院治療の塵肺症613症例及び両者合併35症例について, 性別, 年令別, 組織型別並びに喫煙量(紙巻タバコの1日平均本数×喫煙年数; R. I. と略す)別にそれぞれの分布を推計学的に検討し, 次の成績を得た. (1)喫煙量が増す程各組織型とも多発. (2)非喫厘者(N. S. 群)では男女とも腺癌が多発. (3)原発性肺癌(c), じん肺症(p), 両者の合併(pc)のR. I. との間には, N. S. 群c>pc≒p; R. I. 400以内c≒pc<p; R. I. 400以上pc>c>p[ただし≒n. s. 〈または〉はP<0.05以上の有意差あり]<br>以上より原発性肺癌発症にはじん肺症発症因子すなわち粉塵以上に喫煙因子がより大きな影響を及ぼすといえる.
著者
伊藤 綏 加藤 督介 三宅 良彦
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.445-451, 1975

胃液酸度に関する研究は多いが, これに比べ胃液ペプシンについては基礎的なものの歴史は古いけれど, その臨床的研究はごく最近になつてからである. この原因は多くの研究者が指摘してきた通りペプシン測定法にあつたことは確かである. 我々は比較的簡単な操作で多くの検体を処理し得るSamloff-KleinmannのRadial diffusion法の今村氏変法を用いて胃液ペプシンと消化器疾患との関係を研究した. 目的は胃液酸動態の研究から最近では消化性潰瘍発生の主因はペプシンに移つていることと, 肝, 膵, 腸疾患にみられる消化性潰瘍の発生病理に対する従来の胃酸による説明は不可能であり, どうしても消化管ホルモンとそれに密接な関係を有するペプシン活性が問題となつてくるので, この点を解明することに重点を置いて研究を進めた. 今回は各種酸度を呈した胃炎, 胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 胃癌, 肝炎, 肝硬変症, 胆石症計78例について酸度とペプシンとの関係を観察した.
著者
永井 英明 池田 和子 織田 幸子 城崎 真弓 菅原 美花 山田 由美子 今井 敦子 遠藤 卓 大野 稔子 河部 康子 小西 加保留 山田 三枝子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.628-631, 2008

Human Immunodeficieny Virus (HIV)感染者の中で, HIV感染症は安定しているが中枢神経系の後遺症のために長期療養が必要な患者の増加が予想されている. 彼らを受け入れる可能性のある施設として, 介護老人保健施設, 特別養護老人ホーム, 療養型病床保有施設, 障害者施設等入院基本料の施設基準取得病院の4施設に対してHIV感染者の受け入れについてのアンケート調査を行った. 11, 541施設中3, 723施設(32.3%)から回答が得られた. HIV感染者を受け入れる基準を決めている施設は1.6%にすぎず, 75.5%は受け入れを考えていなかった. 受け入れられない主な理由としては, 院内感染のリスク・不安, 診療経験がない, 職員不足, 設備・環境が整っていない, 医療費の問題などが挙げられた. HIV感染者の受け入れを可能にするためには, 職員に対する積極的な研修活動が最も重要と思われた. さらに診療報酬の面からの支援および医療面での拠点病院の支援が必要であることが明らかになった.
著者
阿部 憲男 清水 博
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.98-101, 2006

国立療養所岩手病院は, 医師の名義を借りて診療報酬を不正受給したことにより平成12年6月1日に保険医療機関取消処分を受け, 3ヵ月後に再度保険医療機関として指定されたものの, 5年間にわたって, 標榜科と病床数の制限を受けた. 病院の存亡の危機に直面した時期に院長として務めたわれわれは, 職員の士気の昂揚を図り, 各人の意識改革を行うことに主眼をおいた. 岩手病院の存在の意義を明確にするために職員として何をなすべきかを明快で具体的な内容からなる「病院の目標と基本方針」を策定した. 一連の不祥事に学び, 「情報の共有」の重要性を認識し, 情報の共有の場として「診療支援委員会」を毎週1回開催した. また, 広大な敷地の環境美化を図り, その作業を通じて職員間の意思疎通を図ることを目的とした各職場の代表からなる環境整備の日を毎週1回1時間設けた. さらに, 従来の公務員像から脱却し職員の意識改革を行うために, 情報の共有, プラスα, 現場主義等のキーワードを盛り込んだ職員の行動指針として「十訓」を定めた. 以上の4つを, すべてに優先して病院運営の基本的な4本柱とした. その結果, 重症児(者)病棟では, 全国の国立療養所に先駆けて1週間の入浴回数を2回から3回に増やすことを実現し, 夕食の喫食時間の繰り下げ, 病棟配膳から中央配膳への変更, 在宅重症児(者)の短期入所の著明な増加, 食形態の見直し等へと繋がっていった. 病院全体としては, 独法移行後に労務系職員が本来業務を超えて職種横断的な機能的単位である「サービス班」を形成して, 班全体として院内清掃, 洗濯物の整理, 環境整備, 建物設備の補修等に当たる業務へのスムースな移行が可能になった. 看護業務を軽減するために, 看護課への各職場の協力体制が出てきた. 今後は, 国立病院機構の掲げる質の高い医療を遂行するためには, 病院を変えるリーダーとなりうる医師の確保こそが最大の課題である.
著者
鈴木 紘一 小尾 和洋 北洞 哲治 横田 曄 森 忠敬 宇都宮 利善 桐原 陽一
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.152-157, 1984

抗生物質起因性偽膜性大腸炎の成因として, 腸内嫌気性菌であるClostridium difficileの産生する毒素が重視されている. 同菌の検出及び毒素産生能を検索しえた症例を呈示し, 主として合成ペニシリンによる急性出血性大腸炎との対比検討を行つた. 症例は47才女性. 化膿性子宮内膜炎にて子宮内容掻爬術を施行後, FOM, ABPC, CEX, CETなどの抗生物質を持続的に投与中, 腹痛, 下痢, 粘血便, 裏急後重を来した. 大腸内視鏡検査にて直腸より下行結腸にかけて大小様々の黄白色を呈する偽膜と炎症性粘膜を認め, 糞便よりC. difficileを検出した. 同菌の培養濾液及び糞便濾液につき細胞傷害試験及び血管透過性因子をみる家兎腸管ループ試験, 皮内反応を行い毒素の存在を証明した. C. difficileは炎症消退後の固型便より再び検出されたが毒素産生能はみられなかつた. 急性出血性大腸炎とは異なる病態であり, 両疾患の相違につき言及した.
著者
飯野 京子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.410-414, 2001

国を挙げてのがん対策が功を奏し, がん患者の早期発見, 治癒率の向上などがん医療は著しく進歩した. しかし, 現在でもがんは死因の1位であることには変わりなく, 死に至る病として恐れられ, がん告知, 精神的ケアなどの問題をかかえている. また, 治療自体が侵襲的であることから, 患者のQOLの向上のために看護職の果たすべき役割は大きい.<br>近年, がん医療において看護婦が専門的な役割を担えるようになり, この分野で急速な進歩が見られている. 特に日本がん看護学会が臨床と教育の架け橋を行ってきたこと, がん看護研究の優先性が明らかにされたこと, 看護研究が進歩してきたこと, がん看護専門看護師・認定看護師などがん分野の専門的な看護職が育ってきたことが大きな要因と考えられる.<br>本論ではこれらを概観して, これからのがん看護の課題を論ずる.
著者
足立 克仁 川井 尚臣
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.38-41, 2008

本文では当院における神経・筋疾患のセカンドオピニオン外来の概略を示す. 当院の患者は介護を要する肢体不自由者が多いため介護者にも配慮し休日でも対応できることが望ましいこと, 平日では医師の配置がしにくいことなどの理由から土曜日に開設した. また神経・筋疾患患者は病気が長期にわたるため, 主治医とのつながりが強く, 紹介状を持参できない場合が多いこと, 本疾患の診断は問診と診察が重要で紹介状がなくても病状把握ができることが多く, 検査資料のみでも疾患の理解に役立つことが多いこと, などの理由から紹介状の有無にかかわらず受け付けることが望ましいと考えた. また, 経過観察も重要であることが多いので期間を置いて複数回相談の必要性が高い. このため相談医の人選はローテート医は不向きで経験豊富な専門医, 可能なら少人数複数が望ましい. 料金の設定には取り扱う疾患や地域の特殊性などに配慮を要する. さらにほかに神経・筋疾患の専門施設が少ないため, 当院での精査の必要が生じることもある. 本疾患は慢性に経過し治療が困難なため放置されやすいので, 機会ある毎にセカンドオピニオン外来をアピールし患者の要望に応える必要があると考えている.
著者
佐々木 昌弘
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.175-181, 2005

新潟県中越地震では, 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で教訓とされた初動体制について, 政府としては地震発生から4分で首相官邸に対策室を設置し, 緊急参集チームが召集された.<br>以降, 新潟県や関係機関と連携をとりながら対策を講じていくこととなるが, 医療面については, 国立高度専門医療センターや国立病院機構が, 急性期から亜急性期を経て地元の医療機能が回復するまでの期間を継続的に支援するなど, 比較的大きな問題もなく対応することができた.<br>この間の政府が担った役割について医療を中心に整理するとともに, 政府が具有すべき機能について考察する。