- 著者
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若田 宣雄
里吉 営二郎
木下 真男
高沢 靖紀
- 出版者
- The Japanese Society of Internal Medicine
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.12, pp.1399-1404, 1975
症例: 19才女子,会社員. 17才頃,ソフトボールの試合中,休んでいたら右上下肢の脱力が出現,約1日で回復したが,その後,運動後休息中によく脱力発作が起きるようになり,また,スイカを食べて少ししても起きるようになつた.父親も同じようにスイカを食べると脱力発作が生じるという.入院時,四肢近位筋のごく軽度の脱力と,わずかな叩打後筋不随意収縮を認めた. KCI5g経口投与により,血清カリウムは最高7.5mEq/<i>l</i>に達し,腰がふちつき,歩行困難となつた.また, 30分間,自転車をこいだのち休息していると,血清カリウムは3.7から4.7までしか上昇しなかつたが,やはり脱力発作が出現した.一方,ブドウ糖およびインスリン負荷試験では,血清カリウムは4.7から3.6まで変化したが,脱力発作は見られなかつた. acetazolamide 1g/日連続投与でも麻痺は起こらず,これらの結果から,家族性高カリウム血性四肢麻痺と診断した.しかし,麻痺は高カリウム血の時にのみ起きるとは限らず,過去にも,正カリウム血性として報告されたものが,のちに高カリウム血性として再報告されたこともあり,両者の区別は必ずしも本質的ではないと考えた.また, acetazolamideに対する態度などから,低カリウム性のものとも一部には共通点を有する面もあり,血清カリウム濃度の相違からのみ,周期性四肢麻痺の発現機序を論じることは正しくないのではないかと考えた.