著者
鈴木 一実 杉本 光二 林 博之 光明寺 輝正
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.395-398, 1995-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
16 22

フルアジナム(フロンサイド®)のハクサイ根こぶ病に対する作用特性を検討した。1ppm以上のフルアジナム存在下で休眠胞子を培養したとき,遊走子発芽はほとんど観察されなかった。フルアジナムに接触させた休眠胞子を接種した場合には根毛感染の頻度が減少した。フルアジナムを土壌施用したところ,根毛感染および根こぶ形成は著しく阻害された。根毛感染成立後,第二次遊走子放出前にフルアジナム含有非汚染土壌にハクサイ苗を移植した場合,根こぶ形成は阻害されたが,皮層感染成立後では防除効果は認められなかった。以上から,フルアジナムは休眠胞子に殺菌的に作用するとともに根毛感染および皮層感染を阻害し,その結果根こぶ形成阻害をもたらすことが示唆された。
著者
宮川 経邦
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.224-230, 1980-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
21 27

ガラス室内の条件下で,接木接種によってCitrusおよび近縁植物におけるリクビン(アジア系グリーニング病)の病徴を観察した。 CitrusおよびFortunella属幼実生または接木苗におけるリクビンの典型的な病徴は,成葉における発病初期の不規則な葉脈に沿った黄斑,さらに罹病度の進展にともなう黄化葉,ならびに節間短縮による小葉化,矮化症状の発現であった。これらの病徴は28~32Cの好適条件下においては接木接種後2~3カ月目から現われた。 供試したカンキツ品種のなかで,ポンカンおよびオーランドタンゼロの病徴がとくに顕著で検定植物としての利用価値が高い。ついでスイートオレンジ,ウンシュウミカン,シークワシャーなどであった。サワーオレンジ,グレープフルーツ,セクストンタンゼロなどのCTV-SY反応型品種はリクビンによっても黄化,矮化症状を現わすが, CTV-SYによる病徴がより顕著に現われることから,被検試料にCTV-SYが保毒されるときは検定植物としては不適当である。 カラタチは外見上無病徴か,まれに軽い黄化葉を現わしたが,これらの実生苗にポンカン,スイートナレンジなどの感受性品種を接木すれば顕著なリクビンの病徴を現わした。ミカンキジラミの好適な宿主植物であるゲツキツは接木接種によって外見上感受性を示さなかった。
著者
豊田 秀吉 松田 克礼 平井 篤造
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.32-38, 1985-01-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
4 9

本研究では,マイクロインジェクション法によりトマトのカルス細胞にタバコモザイクウイルス(TMV)を接種するための方法を検討した。トマト品種福寿2号の腋芽から誘導したカルスの単一細胞を,Murashige-Skoogの培地(寒天濃度,0.8%)に包埋した。それを,ペトリ皿に作製した同固形培地(寒天濃度,2%)の中央の穴(直径,3cm)に,厚さが3mm以下になるようにプレートした。包埋された細胞は,インジェクトスコープの位相差顕微鏡により生体観察され,ペトリ皿の中央部底壁面に刻入された格子線によって識別された。マイクロインジェクションには,活発に原形質流動を示す細胞を選び,滅菌ガラス針(先端口孔,0.1∼0.3μm)に無菌濾過したTMV接種液(TMV濃度,100μg/ml)を入れ,その先端部約3μmを原形質に10秒間挿入した。接種操作の成否は,ガラス針をぬいたあとにもその細胞に活発な原形質流動が認められるがどうかで判定した。なお,口径が0.5μm以上のガラス針を接種に使用した場合,そのほとんどの細胞において原質流動の停止や細胞質内容物の流出が認められ,フルオレッセイン二酢酸による生体反応も消失した。TMV接種後,細胞をすみやかに固定しフルオレッセインイソチオシアネートラベル抗体で染色した場合には,螢光化細胞はまったく認められなかったが,接種後26C, 3,000-4,000ルックスの照明下で2日間培養した場合には,接種したほとんどの細胞において顕著な螢光化が観察された。以上の結果から,本方法によってトマトのカルス細胞に効率よくTMVを接種できることが判明した。
著者
由崎 俊道 村山 大記
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.260-266, 1966-12-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

紫外線照射によって不活性化されたTMVを活性TMVに混ぜて植物に接種すると,照射TMVの干渉作用によって,活性TMVの感染は阻止された。この照射TMVの干渉作用は接種した植物によって異なり,Datura stramoniumでは最高の阻止率を,Nicotiana glutinosaでは最低の阻止率を示した。照射TMVの干渉作用はpH 5.2とpH 7.0では大差がなかった。活性および照射TMVの混合液の感染力は蒸溜水で希釈することによって回復した。干渉(阻止)作用はTMVの蛋白によって示され,紫外線照射によって不活性化されたTMV-RNAでは認められなかった。また,照射TMVを接種したナス科植物汁液のTMV感染阻止作用をしらべたが,未接種植物汁液の阻止作用との間に大きな差は認められなかった。以上の結果から,照射TMVの干渉作用はTMV蛋白の接種植物に対するある種の作用に起因するものと考えられた。
著者
小室 康雄 明日山 秀文
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.77-82, 1955
被引用文献数
4

1) 主として東京附近で採集した各種植物モザイク株から判別植物に汁液接種して, キユウリ・モザイク・バイラス (CMV) の分離を試みた。1949年から55年に至る間47科150種 (試料数573点) の植物を供試したが, その中32科68種 (試料数202点) からCMVが分離された。<br>2) 外国でCMVの分離されている植物の中, トマト, タバコ, セルリ等37種の植物では本調査でもCMVを検出することができた。この中わが国で栽培または自生が比較的普通であり, モザイク株からの分離率が50%以上を示したものはキユウリメロン, タバコ, プリムラ, セルリ, ムシトリナデシコ, ハコベ, イヌビユ, フダンソウ, ホウレンソウ, ツユクサ, トウモロコシ等である。しかし次の植物では全く或いは殆んど分離されなかつた。キク, ダリア, マリーゴールド, キキヨウ, トウガラシ, ホオズキ, インゲン, エンドウ, アイリス, スイセン, ヒヤシンス, チユーリツプ, カラー, ユリ類。<br>3) 自然のモザイク株から今回始めてCMVが分離された植物は, シユンギク, カラスウリ, マクワウリ, ヘチマ, ワスレナグサ, シナワスレナグサ, オオトウワタ, ニチニチソウ, オトメザクラ, キバナ, クリンザクラ, ミツバ, イロマツヨイ (ゴデチア), ホウセンカ, アルサイク・クロバー, ダイコン, コマツナ, ヨウシユナタネ, カラシナ, キヤベツ, ハクサイ, セキチク, カワラナデシコ, スイセンノウ, カスミソウ, ミミナグサ, スベリヒユ, センニチコウ, ハゲイトウ, ソバ, ミヨウガ, ムラサキツユクサ, ヤブミヨウガ, サトイモ等30数種である。この中本調査で分離率が50%以上であり, かつわが国で比較的普通に栽培されるものは, シユンギク, ヘチマ, マクワウリ, ミツバ, ダイコン, ソバ, サトイモ等である。<br>4) 東京附近の雑草でCMVによるモザイク株が屡々観察されたのはツユクサ, ハコベ, ミミナグサ, カラスウリ, ミヨウガ等であつた。
著者
三好 孝典 橘 泰宣
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.729-734, 1994-12-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
2

A selective medium for isolation of Pseudomonas syringae (SPS), the causal agent of bacterial blossom blight of Kiwifruit was developed. The composition of the medium was as follows: NH4H2PO4 1.0g, KCl 0.2g, MgSO4⋅7H2O 0.2g, adonitol 2.0g, phenol red 20mg, methyl violet 1mg, pheneticillin potassium 50mg, cetrimide 10mg, agar 15g, pH 6.8 per 1.000ml of distilled water. Thirty two P. syringae strains pathogenic to Kiwifruit were grown on the medium and 31 strains showed convex colonies with entire margin. Color of the colonies was purple at the center and opalescent white at margin. One strain formed small opalescent white colonies. Colony forming efficiency of the medium was less than those of King's medium B. Twenty one isolates of Pseudomonas from Kiwifruit except P. syringae and 21 strains of phytopathogenic bacteria belonging to 5 genera were grown on the medium and they didn't grow with few exceptions which showed distinctive colonies from that of P. syringae. SPS was used for isolation of P. syringae from field-grown Kiwifruit. One hundred candidates were isolated and tentative characterization showed that all of them were identical with the P. syringae. Those results indicated that the possible application of the medium was useful for ecological studies of the bacterium in fields.
著者
赤石 行雄 關口 昭良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3-4, pp.129-132, 1953-07-31 (Released:2009-04-21)
参考文献数
12

1. 苹果紫紋羽病は青森縣に於て數十年前より發生して大害を見て居たが,筆者等は本病原菌の純粋分離中本菌に對し拮抗性を有する多數の微生物を發見分離した。2. 分離した微生物について種々調査した結果,拮抗性の強力なるもの假稱A.B.C.D.E.の5型を選出し其の性質について種々調査した。3. 拮抗作用の強度を調査せるに混合培養法に於いてA.E.D.C.B.,培養基混合法に於いてE.A.D. C.B.,培養基點状移植法に於いてE.D.B.C.A.,塗布培養法ではE.C.D.A.B.の順位であつた。4. 又各種培養基について其の生育状況を調査せるに大豆粕培養基は生育最良なるのみならず微生物増量材料としても好適である。又培養液稀釋量に拮抗性との關係を調査せるに5萬倍まで本菌に對し極めて強力なる拮抗性を認めることが出來た。
著者
本間 善久 鈴井 孝仁
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.643-652, 1989
被引用文献数
35

<i>Pseudomonas cepacia</i> RB425およびRB3292は,抗生物質ピロールニトリンおよびシューダン(HMQ, NMQ)を生産し,ダイコン種子にコーティングすることによって,<i>Rhizoctonia solani</i>による苗立枯病を抑制した。<i>Cymbidium</i> spp.の褐色斑点細菌病菌<i>P. cepacia</i> A2およびA4は,シューダンは生産しないがピロールニトリンを生産し,発病抑制効果が認められた。<i>P. cepacia</i> ATCC No.25416は,いずれの抗生物質も生産せず,抑制効果がなかった。ニトロソグアニジンで誘導したRB425の突然変異株8菌株は抗生物質生産性に変異が認められ,培地上の3種の抗生物質生産性と,<i>R. solani</i>の幼苗への着生率抑制および発病抑制能との間に高い相関関係が認められた。種子当り10<sup>7</sup>cfuのRB425の生菌または,1.0μgの純化したピロールニトリンを種子にコーティングすることによって,およそ50%の発病抑制率が得られた。シューダンを種子当り40μgコーティングした場合には,ほとんど抑制効果がなかった。RB425のリファンピシンおよびナリジキシ酸耐性菌株を用いて播種後の菌数を測定したところ,種子当り9.4×10<sup>6</sup>, 4.7×10<sup>5</sup>および9.4×10<sup>4</sup>cfuコーティングした場合,7日目に幼根1g当り4.6×10<sup>5</sup>, 1.8×10<sup>4</sup>および5.3×10<sup>3</sup>cfuであった。種子コーティングしたRB425は,播種後,幼根表皮細胞の縫合部に沿って生育し,根圏で増殖するのがSEMによって観察された。これらの結果から,<i>P. cepacia</i> RB425はダイコン幼苗根圏で増殖でき,種子コーティングによるダイコン苗立枯病の抑制効果にピロールニトリンが重要な役割を有すると考えられた。
著者
佐藤 衛 福本 文良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.393-396, 1996
被引用文献数
11

香川県の3点のキャベツ,三重県の2点および鳥取県の1点のブロッコリーから<i>Peronospora parasitica</i>のサンプルを集め,各サンプルから5菌株,合計30の単胞子分離株を調製し,これらの宿主範囲を調査した。供試植物として,<i>Brassica oleracea</i>(カリフラワー,キャベツおよびブロッコリー18品種)の他,<i>B. campestris</i>(タイサイ,ミズナ,アブラナ,ハクサイおよびカブ8品種),<i>B. juncea</i>(カラシナ1品種),<i>B. napus</i>(ルタバガ1品種)および<i>Raphanus sativus</i>(ダイコン2品種)を用いた。接種試験の結果,分離源と同種の植物である<i>B. oleracea</i>の3作物の16品種は高い感受性を示し,本種は宿主植物と考えられた。また,<i>B. napus</i>は中程度の感受性を示したことから宿主となる可能性が示唆されたが,<i>B. campestris</i>, <i>B. juncea</i>, <i>R. sativus</i>は抵抗性を示したことから非宿主と考えられた。供試したべと病菌はすべて同じ系統に属し,<i>B. oleracea</i> (<i>B. napus</i>も含む可能性がある)を宿主とする系統と考えられた。<i>B. oleracea</i>の中でキャベツの2品種,ゴールデンベストおよびYR-さわみどりは抵抗性を示した。供試した単胞子分離菌株で病原性に違いは見られなかった。
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987
被引用文献数
9

ユウガオつる割病はユウガオの重要な土壌伝染性病害であるが,その連作にかかわらず,発生が認められない圃場が存在し,これらの圃場ではユウガオと共にネギの混植が慣行的に行われている例が多かった。そこで,この原因を調べたところ,現地のネギ地下部からは高率に<i>Pseudomonas gladioli</i>が分離され,これらはユウガオつる割病菌(<i>Fusarium oxysporum</i> f. sp. <i>lagenariae</i>)に対して高い抗菌性を示した。そこで,<i>Pseudomonas gladioli</i>を中心に,20種の植物より分離した<i>Pseudomonas</i>属細菌4種90菌株について,つる割病菌に対して強い抗菌性を有し,かつネギの地下部に定着性のある菌株を探究したところ,<i>P. gladioli</i> M-2196が選抜された。ネギおよびニラの地下部に本菌株を浸根接種し,ユウガオつる割病汚染土にユウガオと混植したところ,つる割病の発病が著しく抑制され,その実用性が確認された。以上の結果,抗菌性を持つ細菌と定着植物を用いた土壌病害の生物的防除の可能性が明らかになった。
著者
後藤 岩三郎
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.447-455, 1978
被引用文献数
12

標識品種H-79に銀河をもどし交配し,そのB<sub>5</sub>F<sub>4</sub>からもつれ銀河を育成した。もつれ(<i>la</i>)は戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>と密接に連鎖する。戦捷×もつれ銀河,戦捷×もつれ亀の尾,銀河×H-79等の分析から次のことが明らかになった。(1)銀河には戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>がとりこまれていない。これが銀河のいもち病抵抗性を低下させる主な要因と考えられる。田戦捷,真珠,双葉,秀峰やほまれ錦も銀河と同程度の抵抗性を示し,戦捷よりは弱い。したがって戦捷の高度抵抗性導入の育種過程の早い段階で低下したものである。(2)銀河には2対の抵抗性遺伝子があり,その相加的な効果で本品種の中程度の抵抗性を支配する。この2対は戦捷の他の2対の抵抗性遺伝子と複対立関係にあるか,あるいは極めて近く連鎖する。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
平田 正一
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-24, 1953

バイラス罹病の馬鈴薯,大根,蕪菁及び甘藷の塊根並に莖の搾汁ガーゼ濾液の透明度を日立製光電光度計で測定し健病間の比較を試みた。その結果は以下の如くであつた。<BR>(1) 馬鈴薯の透明度は收穫時から貯藏中漸次低下して來る。健薯は病薯よりも高く,その較差は小である。罹病度に應じて透明度は低くなり塊莖の大小とは相關は認められず,又多數塊莖の平均透明度は健薯が高いけれども各個體値は相當亂れている。健病薯間で較差の最大は稀釋度1/8で表される。<BR>(2) 大根の汁液の透明度の健病差は馬鈴薯よりも更に大幅であるがその傾向は兩者共同樣であつた。幼齡期の罹病株では或物質の増大が行われるが老齡化に伴う病勢の進行と共に物質の移動或は生成は阻害され,透明度は幼齢期低く,老化と共に高くなる傾向がある。根部の上位は透明度大で,健病較差の最大値は稀釋度1/8に於て示された。<BR>(3) カブラは大根と略々同樣の傾向であるが,甘藷の健病透明度の差は小さかつた。<BR>(4) この實驗に於ける生體汁液の透明度は含有蛋白量の多寡と略々反比例的に示され,汁液の溷濁度は蛋白量に依て決定される。この整律に從わない場合は多くは汁液中の蛋白イオンの自己脱電による凝集と沈澱の起るためであつて,この事實は採汁後時間を經過した試料において或は罹病體汁液において示される。透明度と蛋白量との關係曲線は比例直線として示されず物質定量のための透明度測定として利用し難いが,診斷上に於ける健病の比較方法としては利用し得る。
著者
西村 範夫 冨山 宏平
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.159-166, 1978
被引用文献数
5

ジャガイモ品種リシリ(R<sub>1</sub>-gene)およびダンシャク(r-gene)の塊茎を厚さ1mmのスライスにして24時間,18C中に静置した。ジャガイモ疫病菌race 0またはrace 1を接種し,一定時間後に<sup>3</sup>H-ロイシン,H<sub>3</sub><sup>32</sup>PO<sub>4</sub>または<sup>86</sup>RbClを50分間,接種面から吸収させた。磨砕した後,20,000×g上清部の放射能活性を測定した。接種1.4時間後に<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は無接種区に比較して約25%低下した。この時間に,ほとんどの遊走子は発芽し始めているが宿主細胞には侵入していなかった。接種2.4時間後から<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は,親和性の組み合せに比較して非親和性の組み合せで顕著に低下した。この時間に非親和性の組み合せにおいても宿主の細胞死はほとんど起っていなかった。<sup>86</sup>Rbの吸収では,非親和性菌を接種したスライスの吸収量は非感染および親和性菌に感染したスライスより高かった。また10Cで吸収させると差はほとんどなくなった。<br><sup>3</sup>H-ロイシンによる予備実験の結果から20,000×g上清部の放射能活性をスライスへの取り込み量とみなすことができる。以上の結果は感染初期(侵入菌糸の貫入とほとんど同時)に宿主原形質膜が感染の影響を受けることを示す。また,親和性,非親和性の認識が侵入菌糸の貫入とほとんど同時におこなわれていることを示していると考えられる。また<sup>86</sup>Rbの結果は<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの場合と異なるが,その理由は不明である。