- 著者
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松村真宏
三浦麻子
柴内康文
大澤幸生
石塚満
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.3, pp.1053-1061, 2004-03-15
「2ちゃんねる」は日本最大のオンラインコミュニティサイトである.ところが,そこに書き込まれる情報はときとして「便所の落書き」と揶揄されるように,一見すると意味のない言葉や記号にしか見えないものも多い.これは非常に奇妙な現象である.というのも,便所の落書きを見るために毎日数十万人もの人が訪れるとはとても考えられないからである.ではなぜ2ちゃんねるはあれほど盛り上がっているのだろうか.実は傍から見れば意味がないように思える言葉や記号のやりとりが2ちゃんねるのユーザには意味があり,これが2ちゃんねるが盛り上がる要因となっているのかもしれない.このような動機から本稿では,2ちゃんねるにおけるコミュニケーションの特徴に着目して,2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズムを解き明かすことを目指す.特に,コミュニケーションの特徴として,メッセージのサイズや投稿数,返信率,投稿される早さなどの基本的な属性に加え,2ちゃんねるに特徴的な名無しと,2ちゃんねる語やアスキーアート(AA)などの定型的な表現技法に注目する.共分散構造分析により構築した「2ちゃんねるモデル」は,定型的表現傾向が議論発散傾向と議論深化傾向に及ぼす関係などを明らかにしている.