著者
石王 拓斗 神田 智子
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では、人間の視線行動の分析に基づく視線モデルを眼球の操作可能なロボット及びCGエージェントに実装し、エージェントの実体性と凝視量の変化が、ユーザーのエージェントに対する性格特性認知に与える影響を分析した。その結果、同じ視線行動でも凝視量を変化させることにより、エージェントの外向性や自信に関するパーソナリティを表出することが可能であることが示唆された。また、凝視量の増加に伴う外向性評価の変化はエージェントの実体性により異なり、CGエージェントは凝視量の増加に比例して外向性の評価が上昇するのに対し、ロボットは凝視量の増加に対して外向性の評価が対数的に上昇する傾向となることが示された。
著者
神谷 万里子 松本 眞 川口 真帆 水上 修作 向井 英史 川上 茂
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染・重症化予防において、新規プラットフォームであるmRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNP)ワクチンの高い臨床効果が実証された。mRNA-LNPワクチンの保存方法について、企業から提示される情報はあるが、様々な条件下での保存安定性についての系統的な情報はほとんどない。そこで我々はmRNA-LNPの物理化学的性質や細胞レベルでの発現を指標に、mRNA-LNPの安定性と物理化学的性質、タンパク質発現との相関について評価した。【方法】ホタルルシフェラーゼmRNA(fLuc-mRNA)を封入したLNPをマイクロ流体法により調製した。保存条件の検討項目は保存温度、振動条件、光安定性、バイアルからの採取とした。各条件下での物理化学的性質は、平均粒子径・多分散指数PdI・mRNA封入率により評価した。また、ヒト肝がん由来細胞株HepG2細胞に対してfLuc-mRNA-LNPを添加し、ルシフェラーゼ発現量を比較した。【結果】保存温度の検討では、対照群とした4 ℃保存群におけるLNPの平均粒子径100 nm程度に対し、-80 ℃保存群では平均粒子径1,500 nm程度の凝集体が認められた。同様に振動条件の検討では、ボルテックス5分間振動群で平均粒子径700 nm程度の凝集体が認められた。これらの物理化学的性質が変化したmRNA-LNPについてはタンパク質発現活性が有意に低下した。一方、光安定性の検討において、光安定性試験ガイドライン規定の120万lx・hr曝露群ではmRNA-LNPの物理化学的性質の変化は認められなかったが、タンパク質発現活性は顕著に低下した。【考察】mRNA-LNPのタンパク質発現活性は、温度や振動で変化したLNPの物理化学的性質の変化だけでなく、内封mRNAの生物活性が変化した可能性が考えられる光曝露の影響にも相関することが示された。mRNA-LNPとしての保存安定性において、LNPの物理化学的性質に加えて、mRNA-LNPのタンパク質発現活性を同時に評価する重要性が示唆された。
著者
松崎 太郎 前薗 大聖 山中 千博
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

大地震の先行現象として、地震発生の直前約40~50分前に震源上空の電離圏において総電子数(TEC)の異常が発生していることが、1994年から2017年までのM8を超える11以上の地震で報告されている(Heki, 2011)。一般にTEC異常は、磁気嵐や大規模伝搬性電離圏擾乱(LSTID)など太陽活動を起源としていることが多く、このほか大気重力波などの高層大気の力学的影響があることが知られている。しかし、地震の直前に見られるTEC異常は、震源上空に固定される局所的なもので、全地球的に影響を及ぼす宇宙起源のTEC異常やLSTIDとは区別することができる。さらに2011年に発生した東北沖太平洋地震では、震源の磁気共役点である北部オーストラリアで、同時にTEC異常が発生したことが確認されており(Heki, 2018)、これらの観測結果から一連の現象は、大気力学的なものというより、地震に先行する電磁気現象と考えられる。一つの仮説として、震央付近で臨界的な圧力が加わることによって、地殻中にマクロスケールな電気分極が発生し、分極による誘導電場と地球磁場によって電離層に影響を与えていることが考えられる。地殻中における圧力誘起分極として、ケイ酸塩鉱物中の過酸化架橋構造における正孔励起説(Freund, 2006)があり、地震前のTEC異常が観測される約40分の間、持続的に電荷を発生することができる点で注目されている。本研究では、応力印加による分極現象における正孔の移動・拡散による寄与を調べるために、極めて良い絶縁体である高純度のMgOセラミックスを用い、最大10MPaの一軸圧縮下で応力誘起電流値の変動を室温で計測した。結果として、ケイ酸塩鉱物と同様に、数ピコアンペア程度の応力誘起電流を観測できた。発表では、正孔移動の温度・吸水率依存性、および岩石データとの比較を行った上で、実験から得られた電流値を実際の地殻スケールで概算し、TECへの影響について議論する。
著者
澁谷 孝希 尾﨑 麟太郎 井浦 瑞葵 太田 真衣佳
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

長野県松本市女鳥羽川周辺の地質調査により堆積岩のたまねぎ状風化を発見した。水平に堆積した砂や泥の層が風化の過程でたまねぎ状になっていくことを不思議に思い研究を始めた。現地調査・掘削、モデル実験、Feイオン量の測定実験を行った結果に基づいて、以下のように物理的風化と化学的風化の相互作用によって形成されると考察した。1.地層に水平方向と鉛直方向の節理が生じ、そこから水が入って最外殻ができる。2.外側から内側に向かって皮の層ができる。3.2の時に、Feイオンが岩石内の鉱物から水に溶けて溶脱し皮の部分に集まる。外側の(古い)皮は、水が多く流れたためにFeイオンも皮の外へ流出する。