著者
小川 仁 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 長尾 宗紀 羽根田 祥 渡辺 和宏 工藤 克昌 佐々木 巌
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.455-459, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は23歳女性.5年前にスプレー缶の蓋を膣内に留置してしまったが医療機関を受診せず放置し,次第に月経周期に類似した下血と腰痛が出現したため近医を受診した.大腸内視鏡検査で膣内異物と直腸膣瘻を指摘され経肛門的に異物除去術が施行されたが,2カ月後も瘻孔が閉鎖しないため当科を紹介された.初診時2横指大の直腸膣瘻と膣狭窄を認めた.回腸にループ式人工肛門が増設されたが6カ月後も瘻孔は閉鎖せず,根治目的に手術が施行された.瘻孔周辺の直腸と膣は高度の線維化により強固に癒着しており直腸・膣の修復は不可能であったため,再手術により子宮摘出・直腸切除,結腸肛門吻合術が施行された.3年2カ月の間にこれらの手術を含む計6回の手術が行われ直腸膣瘻は根治した.膣内異物による直腸膣瘻はまれな病態であるが,治療に難渋した自験例を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
佐々木 巌 赤柴 恒人 堀江 孝至
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-65, 1992-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者の両心機能を, 安静時, 運動負荷時に, RIアンジオグラフィーで検討した. COPD群16名, 対照群8名を対象に, Tc-99mで生体内赤血球標識し, マルチゲート法で記録した. 運動負荷は臥位エルゴメータによる多段階漸増法で, 心室容積測定は standard voxel count 法によった. その結果, COPD群では両心室とも収縮能障害の存在が示唆され, また, 右心カテーテルを施行した12症例において, 左心機能低下と高炭酸ガス血症との関連性が示唆された. 安静時の全肺血管抵抗指数および平均肺動脈圧と, RI法による安静時右室収縮末期容積指数との間に, 各々γ=0.769 (p<0.01), γ=0.631 (p<0.05) の正相関を認めた. 一方, 運動負荷時の一回拍出量は, 16例中10例で増加が見られず, その半数例で, 運動中の両心室拡張末期容積が減少しており, COPD群では肺過膨張などの機械的影響が, 心循環動態に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された.
著者
佐々木 みのり 佐々木 巌 増田 芳夫
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.38-42, 2007 (Released:2008-10-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

bowenoid papulosis (以下BPと略す) は尖圭コンジローマと臨床所見が酷似するハイリスクHPV関連のSTDである. 本疾患は, 病理所見はBowen病に類似するが, 臨床経過は良性で自然消退の報告も多い. しかし同時に悪性化や子宮頸癌合併の報告もあり注意深い経過観察が必要な疾患でもある. 今回我々はBPの一例を経験したので報告する.症例は34歳女性. 2002年8月に肛門性交の機会があり, 同年秋頃より肛門周囲に丘疹が出現. 皮疹の増加と拡大を認め2003年1月当院受診した. 肛門周囲に尖圭コンジローマと, その中に混在する黒褐色の扁平な丘疹を認めた. BPを疑い混在する尖圭コンジローマと同時に切除焼灼した. 皮疹の組織像ではボーエン病類似の像を呈しBPと診断した. その後BPと思われる皮疹の再発を二度繰り返したが, その都度切除焼灼を行い2003年6月を最後に再発を認めていない.
著者
渡辺 和宏 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 上野 達也 長尾 宗紀 羽根田 祥 松野 正紀 佐々木 巌
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.517-521, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

術前診断が可能であった右傍十二指腸ヘルニアを経験したので報告する. 症例は71 歳の男性で, 突然の右側腹部痛で発症した. 小腸造影にて, 口側, 肛門側での狭窄を伴う, 空腸係蹄の集塊像を右側腹部に認めた. 上腹部CTにて, 右側腹部で被膜に包まれ嚢状塊となった拡張した小腸を認め, 上腸間膜動静脈の腹側を扇状構造の腸間膜が走行していた. 右傍十二指腸ヘルニアの診断にて, 発症から14日後, 開腹手術となった. 開腹所見にて下結腸間膜窩に発生した右傍十二指腸ヘルニアと診断され, 嵌入した腸管を還納した後ヘルニア門を閉鎖した. 腸間膜側壁窩に発生する一般的な傍十二指腸ヘルニアでは, ヘルニア嚢は上腸間膜動静脈の背側を走行するが, 自験例では上腸間膜動静脈とは独立した位置関係であった. 下結腸間膜窩をヘルニア門とするヘルニアは我々が検索した限りでは報告がなく, 極めてまれな症例であると考えられた.
著者
佐々木 巌 畑中 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.103, pp.23-26, 2013-06-21

当研究室では,頭部MRA (Magnetic Resonance Angiography)データの観察を目的としたノート PC上で動作する携帯型MRA画像データ観察端末の研究・開発を行っている.この端末では, MPR (Multi Planar Reconstruction:多断面再構成)像やMIP (Maximum Intensity Projection:最大値投影法)像を得るための位置決めが,血管網構造(血管の解剖学上の位置)を位置参照とすることにより,容易にできるように考えている.本ツールをスマートフォン上で動作させることにより,時間的・地理的な制約を受けずにMRA画像データの観察を行うことが可能となる.本報告では,Apple社製のスマートフォンiPhone 3Gへの携帯型MRA画像データ観察端末の試作とその結果について報告する.
著者
小川 仁 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 長尾 宗紀 羽根田 祥 渡辺 和宏 工藤 克昌 佐々木 巌
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.455-459, 2004-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は23歳女性.5年前にスプレー缶の蓋を膣内に留置してしまったが医療機関を受診せず放置し,次第に月経周期に類似した下血と腰痛が出現したため近医を受診した.大腸内視鏡検査で膣内異物と直腸膣瘻を指摘され経肛門的に異物除去術が施行されたが,2カ月後も瘻孔が閉鎖しないため当科を紹介された.初診時2横指大の直腸膣瘻と膣狭窄を認めた.回腸にループ式人工肛門が増設されたが6カ月後も瘻孔は閉鎖せず,根治目的に手術が施行された.瘻孔周辺の直腸と膣は高度の線維化により強固に癒着しており直腸・膣の修復は不可能であったため,再手術により子宮摘出・直腸切除,結腸肛門吻合術が施行された.3年2カ月の間にこれらの手術を含む計6回の手術が行われ直腸膣瘻は根治した.膣内異物による直腸膣瘻はまれな病態であるが,治療に難渋した自験例を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
小川 仁 佐々木 巌 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

当初、無菌マウスに腸内細菌叢を導入した際の肛門を用いて研究を行う計画であったが、無菌マウスの購入が不可能となり、この計画は中止せざるを得なかった。直腸切断術の手術標本から肛門組織を採取し、免疫染色等で肛門免疫機構について研究を行った。肛門には、肛門腺付近を中心とした豊富な免疫担当細胞が存在するが、機能的な解析には至らなかった。また、肛門免疫機構と密接に関連すると考えられる回腸嚢炎について研究を行った。回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術後に発症する長期合併症であり、多くはciprofloxacinやmetronidazoleなどの抗菌薬内服により軽快する。我々はこれらの治療に抵抗した回腸嚢炎患者の便中にClostridium Difficile toxin(以下、CD toxin)を検出した3例を経験した。3例中2例は以前の回腸嚢炎に対しては通常の抗菌薬が奏効していたが、再燃時には効果を認めず、この時点で便中CD toxin陽性と判明した。残り1例は回腸嚢炎初発の時点で通常の抗菌薬治療が効果なく、便中CD toxin陽性と判明した。3例とも「C.Difficile関連難治性回腸嚢炎」と診断し、vancomycin内服により治療したところ速やかに軽快した。通常の抗菌薬治療によって改善しない回腸嚢炎ではC.Difficileの関与を疑い、適切な抗菌薬治療を行う必要がある。これらの研究成果を学会、論文で発表した。
著者
舟山 裕士 増田 高行 中村 正孝 佐々木 巌
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.移植腸管浸潤リンパ球サブセットおよび接着分子発現の部位的検討【方法】経時的に屠殺し摘出したgraftをPLP固定後凍結切片上で免疫組織学的に各種リンパ球サブセットおよびICAM-1、LFA-1につき発現部位の相違につき検討した。【結果】MHCclassII抗原(Ia)は拒絶群で早期に粘膜固有層および陰窩上皮に発現した.ICAM-1は対照群と異なり血管内皮および間質細胞に強く反応し拒絶後期にはむしろ反応性は低下した.LFA-1は元来白血球の表面抗原であるが拒絶群の血管内皮にも一部反応性がみられた.特に、拒絶時には血管に接着し凝集像を示す白血球に強い陽性像がみられた.2.小腸保存と粘膜バリア【方法】移植前に1,4,8次間のEuro-Collins液または生食液にて冷保存したgraftで移植後のbacterial translocationを血中エンドトキシン濃度で検討した.【結果】Euro-Collins液で保存したgraftでは血中エンドトキシン濃度の上昇はみられなかったが、生食液で保存した群では8次間保存群で血中エンドトキシンは高値を示した.したがって、短時間の保存であれば生理食塩水で十分と考えられたが、保存時間は4時間を超えるべきではないと考えられた.3.移植におけるPCO-OH(過酸化リン脂質)の白血球刺激作用について【方法】30分阻血、最灌流30分後の小腸においてLTB4拮抗剤、allopurinolを前投与し粘着障害について検討した.【結果】LTB4拮抗剤、allopurinolの両者において粘膜障害を抑制したが、PCOOHの産生はallopurinolの前投与群でのみ抑制された.PCO-OHの過酸化に関わるラディカルは白血球に由来すると従来いわれていたが、むしろキサンチンオキシダーゼ系でありPCOOHは粘膜障害産物由来というよりは白血球活性化因子の一つであることがこの実験から明らかとなった.【研究のまとめと今後の展望】小腸移植における拒絶では早期にClassII抗原の発現とともに血管内皮上にICAM-1の発現があり、第1相とともに白血球の活性化が起こることが明らかにされたが、それとともにPCCOHが白血球の強い活性化因子であることが判明した.PCOOHは拒絶モニタリングに有用てあるばかりでなく、PCOOH産生を抑制することにより拒絶による粘膜障害を軽減する効果があることが期待される.
著者
佐々木 巌
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.181-182, 2001

本論文は,永久磁石材料の性能を左右する問題として残されている,保磁力発生の機構解明をテーマに取り上げ,高圧窒化法を用いて合成された良質なSm_2Fe_17N_3をモデル系として,実験的研究を行った結果を論じたものである。本論文は7章から構成されている。第1章は序論として,永久磁石材料の性質および研究の歴史を概観し,Sm_2Fe_17窒化物について,その研究の歴史,結晶構造,磁気特性であるCurie点および飽和磁化について概説した後,研究の中心となる技術,高圧窒化法について概説している。さらに保磁力のこれまでの研究を概観し,その問題点を指摘した。第2章は,本論文の研究目的を記述している。これまでの保磁力研究は基礎的な疑問に対して明確な回答を与えていないという問題点を指摘し,本研究の意義を論じている。さらに,具体的にSm_2Fe_<17>N_3が取り上げられた理由を述べている。第3章では,本研究で行なった実験の種類及び方法など実験手法について記述している。第4章では,強磁場磁化測定の実験結果を基に,以下のような事実を明らかにした。保磁力の目安を与える磁気異方性のパラメーター,一軸磁気異方性定数K_<U1>=2.3×10^3 J/kg,K_<u2>=2.5×10^3 J/kgを得た。この値を用いて,絶対零度でJ-混成が無視できると仮定することにより,結晶場パラメーターA_2^0は&acd;-660K/a_0^2であると評価した。この値はバンド計算による理論的研究より求められた値とよく一致している。この窒化により誘起される一軸磁気異方性は,c面内のSm原子付近のN-2p電子とSm-5d電子との異方的混成による価電子の非球対称電荷密度によるA_2^0の増強として説明できる。第5章では,磁気異方性から決定される異方性磁場H_Aと保磁力H_cとがどのように結びついているかを明確にするため,メカニカルグラインド法(MG法)による粉砕法を用いた保磁力の粒径依存の実験結果を基に以下のような事実を明らかにした。(1)MG法を用い粉砕したSm_2Fe_<17>N_3粒子において,2μm以上の粒径では,保磁力は平均粒径の減少により増大する。これは保磁力が粒径に反比例するという逆磁区の核生成型(ニュークリエーション型)による磁化反転機構と一致する。一方,2μm以下では,保磁力はほとんど飽和する。この飽和は粒径減少による保磁力増大効果とMG中の表面元素析出,内部歪などのニュークリエーションサイトの増加による保磁力減少効果の競合によるものと推論された。(2)最高保磁力値は1.32Tが得られたが,この値は異方性磁場に比べるとなおオーダーが1桁小さい。これは,保磁力を低下させる様々な要因の存在を想定し,中でも粒表面における逆磁区の発生が保磁力低下を導いていると推論された。(3)飽和磁化は粒径の減少とともにわずかながら減少した。これは,MG粉砕中に表面相からわずかに窒索が抜け,それに伴い磁化が低下するものと推論される。なお,この高圧窒化法により合成した良質なSm_2Fe_<17>N_3粒子をMG法により粉砕した実験により,Sm_2Fe_<17>N_3における世界最高の(BH)_<max>値&acd;330kJ/m^3を得た。第6章では,保磁力の粒径依存性から推察された保磁力に対する粒表面効果すなわちニュークリエーションサイト発生の効果を明らかにするために,Znとの合金化で粒表面のニュークリエーションサイトを磁気的に除去する実験結果を基に以下のような事実を明らかにした。まず,保磁力が1TにおよぶSm_2Fe_<17>N_3を,等重量のZnと共に磁気的に等方的なZnボンド磁石を作製することにより,保磁力が3Tにおよぶことを推定した。これにより,保磁力に対する表面の効果が極めて大きいことが確認でき,本研究で用いたSm_2Fe_<17>N_3において,ニュークリエーションサイトが粒子全体に分布するのではなく,主に表面に分布すると推論できた。次に,平均粒径40μmのSm_2Fe_<17>N_3粒子を用いて磁気的に異方性のZnボンド磁石を作製し,保磁力の温度変化の測定により,保磁力の表面処理効果に関して以下の事を明らかにした。(1)保磁力は,温度上昇とともに単調に減少する。この時の保磁力は,異方性磁場H_Aのべき乗則に従い,表面処理前において保磁力はH_Aの2乗に従っていたのが,表面処理後はほぼH_Aに比例する。これは表面の清浄効果によるものと推論された。(2)保磁力の温度変化は熱活性型過程の2つの重ね合わせで表わされることを明らかにした。つまり,高温領域(100&acd;200℃)ではニュークリエーションサイトが生成する頻度が保磁力の温度依存を決め,低温領域(-200&acd;-150℃)では生成した磁壁が試料を通過する時のポテンシャルの深さが保磁力の温度依存を支配していることを明らかにした。従って,低温領域において表面処理効果は顕著に現われず,高温領域で表面清浄効果が顕著に見られたと結論された。
著者
舟山 裕士 佐々木 巌 宮下 英士 溝井 賢幸 土井 孝志 松野 正紀
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.1113-1116, 1994-05-01
被引用文献数
22

症例は69歳の男性. 腹部手術の既往はない. 1990年5月突然激烈な左下腹部痛が出現し, 急性腹症の診断にて開腹したところ, 回腸の一部が180度時計方向に軸捻転をおこしていた. 小腸の血流は良好であったため, 捻転整復のみにて閉腹した. 術後, 退院し何事もなく生活していたが, 1993年1月再び腹痛を訴え, 小腸軸捻転の再発の疑いにて開腹した. 開腹したところ中部小腸が反時計方向に360度軸捻転を生じておりその間の腸管は壊死状態であった. 捻転部を解除し壊死腸管を切除し腸管を端々吻合にて再建した. 術後経過は良好で現在再発は認められていない. 成人の原発性小腸軸捻転症は本邦ではまれな疾患でこれまでに11例の報告があるのみである. また, これまでに再発の報告はなく, 本症例が最初である.