著者
伊東 正博 サエンコ ウラジミール 中島 正洋 三浦 史郎
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

福島第一原発事故後,若年者の甲状腺スクリーニングは世界で初め実施され予想を越える甲状腺癌症例が発見された。その甲状腺癌の増加が放射線の影響かスクリーニング効果か結論は出ていない。チェルノブイリ事故後に多発した小児甲状腺がんでゲノム解析がなされてきたが、放射線特異的な遺伝子異常は未だ見いだされていない。本研究ではチェルノブイリ症例に加えて、福島第一原発事故後に周辺地域の検診で発見され切除された症例を加え、二つの異なる地域と異なる被曝線量を背景とした若年被曝による放射線誘発甲状腺がんの高リスク分子機構を、ゲノムDNA変異解析に加えエピジェネティックな変異解析の両面から解明することを目的としている。
著者
松山 睦美 蔵重 智美 七條 和子 岡市 協生 平川 宏 三浦 史郎 中島 正洋
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.257, 2010 (Released:2010-12-01)

小児期の甲状腺濾胞上皮は放射線に高感受性で、放射線は甲状腺発がんの危険因子である。一方、被爆者甲状腺癌の大部分は成人期被曝であるが、成人期での放射線外照射の発がんへの影響は一般的に低いとみなされる。ラットでは、成熟甲状腺濾胞上皮に放射線誘発DNA損傷応答とFISH法による転座型遺伝子異常が観察される。本研究では、甲状腺濾胞上皮の放射線感受性に対する年齢の影響を評価するために、放射線外照射後のラット甲状腺の組織変化とp53経路を中心としたDNA損傷応答分子の発現を経時的に解析した。成熟(7~9週齢)雄性Wistarラットに0.1 Gy, 8 GyのX線を外照射後24時間まで、甲状腺を経時的に摘出し解析に供した。対照として放射線高感受性臓器である胸腺を同時に解析した。照射前甲状腺濾胞上皮に増殖マーカーKi-67陽性細胞は2%であり、TUNEL法によって検出される細胞死は照射後甲状腺濾胞上皮細胞に誘導されなかった。一方、未熟(4週齢)ラットでは、照射前甲状腺濾胞上皮のKi-67陽性細胞は10%であり、照射後経時的に減少(3時間5%, 24時間2%)し、8Gy照射後6時間でTUNEL陽性の細胞死が検出された。胸腺では照射後多数のリンパ球にTUNEL陽性細胞死が観察された。Western blot法では、成熟甲状腺で照射後3時間よりp53, Ser15リン酸化p53の発現増加が見られたが、p21, Puma, Cleaved caspase-3発現は有意な変化を認めなかった。DNA二重鎖切断(DSB)後の修復系である非相同末端結合(NHEJ)に機能するKu70は照射後に発現が増加した。成熟甲状腺は、未熟甲状腺や胸腺と異なり、放射線照射後G1期停止や細胞死が誘導されず、DNA DSBはNHEJ により修復されていて、その後の発がん過程に影響している可能性がある。
著者
田中 智貴 三浦 史郎 呉林 英悟 山下 武廣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.561-567, 2022-05-15 (Released:2023-05-20)
参考文献数
15

背景:生理食塩水負荷Pd/Pa(saline induced Pd/Pa ratio;SPR)は冠血流予備量比(fractional flow reserve;FFR)計測の際に行う薬剤負荷を必要としない虚血診断検査である.SPRはResting Pd/Paと同様にニコランジルを用いたFFR(N-FFR)計測と比較しても副作用が少なく,患者にとって負担の少ない方法であるが,N-FFRとSPRの相関や診断精度に関する報告はいまだ十分に行われていない. 目的:SPRとN-FFRを同時施行し,両者の相関を調べ,FFR<0.80となるSPRのカットオフ値を決定する. 方法:2012年4月から2021年1月の間に当院に安定狭心症の診断で入院した898名の患者のうち,侵襲的冠動脈造影後に同一の中等度冠動脈狭窄(目視30-90%狭窄)に対してSPRとN-FFRを同時施行した448症例520病変を本研究の解析対象とした.これらの患者に対してSPRとN-FFRの関係を解析し,さらにN-FFRのカットオフ値0.80を基準としたSPRのカットオフ値をROC曲線(receiver operating characteristic curve)にて算出した. 結果:両者の中央値はSPR 0.92(IQR 0.87-0.96),N-FFR 0.85(IQR 0.78-0.90),SPRとN-FFRは強い正の相関(r=0.89:p<0.01)を認めた.N-FFR≦0.8に対する予測解析では,ROC曲線から算出したSPRのカットオフ値は0.89(感度85%,特異度87%),曲線下面積(area under the curve;AUC)は94%であり,カットオフ値0.89を用いた際の診断精度は87%であった. 結論:SPRはN-FFRと強い正の相関を示し,高い診断精度を認めた.SPRは薬剤負荷を必要としないため,より侵襲性の低い機能的虚血評価が可能なことから有用な検査方法の1つとなりうる.
著者
荒川 千恵子 三沢 浩 新井 啓一 三浦 史郎 渡辺 政利 新井 英明
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.203-214, 2000 (Released:2018-05-01)

本研究は公的集合住宅の建替時に,居住環境の連続性を確保するため,居住者から各人の「エピソード記憶」を聴き,建替計画に生かす手法の提案である。ふるさとに等しい住み慣れた団地に,彼らが喜んで戻れる計画手法がないからである。そこで4団地を対象に調査を行ない,「生活用語」を手掛かりにして記憶を引き出し,かつ自由記述で暮らしの状況をみた。加えて住まいの「空間用語」を使い,空間の良し悪しを聴いた。結果として,今までの計画では普遍性がないとして排除された個人の記憶を,建替時に活用し得ることが分かってきた。この手法は馴染みある団地の再建が期待でき,かつ居住者に計画への参加を広げる可能性も持っている。
著者
山下 万平 黒木 保 佐伯 哲 北里 周 三原 裕美 三浦 史郎
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.758-763, 2020

<p>症例は64歳男性,検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に隆起性病変を指摘された.精査にて粘膜下に限局する10mm大の副乳頭部腫瘍を疑うもEUS下穿刺吸引細胞診で確定診断には至らなかったため,内視鏡的副乳頭部切除術による切除生検を行った.病理組織診にてInsulinoma-associated 1(INSM1)陽性,核分裂像0/10HPF,Ki-67<1%で副乳頭部神経内分泌腫瘍(NET)G1の診断,筋層への浸潤と腫瘍細胞の断端露出を認めたため,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本は断端陰性,No.6,14,17bリンパ節への転移を認めた.副乳頭部NETは腫瘍径が小さくてもリンパ節転移を高率に認めるため,腫瘍径にかかわらず膵頭十二指腸切除術と標準的リンパ節郭清を基本とした術式が妥当である.</p>