著者
上神 貴佳
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1_220-1_240, 2008 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

This paper examines the relationship between a democratization of party leadership selection and party organizational change in Japan. The Liberal Democratic Party, the long ruling party, became used to utilizing votes by party members as a method of electing its presidents. Compared with the Democratic Party of Japan, the second largest party, LDP has a much larger number of members, but its factional linkage which holds diet members and rank and file party members together has dwindled. By contrast, the organizational support base of DPJ remains weak, so the demand of local party organizations for votes by party members does not increase. In sum, as a result of many LDP members voting individually, they are coming on the stage of party leadership selection as new actors. Both because the incentives of candidates and members change, votes by party members became popular in LDP.
著者
上神 貴佳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.26-37, 2010 (Released:2017-05-08)
参考文献数
25

政治的リーダーシップとは,個人的な資質から生まれるものなのか,それとも構造に依拠するものなのか,いずれが正しいのであろうか。日本においても,小泉首相が発揮した(とされる)強力なリーダーシップをめぐって,政治改革や行政改革など,制度的な要因の帰結なのか,「ポピュリスト」的なスタイルの産物なのか,様々な議論がある。本稿も同様の問題意識に立ち,二つの要因の役割について考察する。具体的には,自民党総裁選における党員投票を分析の対象とする。党員投票とは,党内民主主義を促進するための制度であるだけではなく,党首が指導力を発揮するために必要な政治的エネルギーを調達するための装置でもある。そこで,選挙制度改革が党員投票を伴う総裁選の常態化をもたらすメカニズムを検証し,構造的な変化と政治家の個性が果たす役割について,インプリケーションを得ることを目標とする。
著者
上神 貴佳 陳 柏宇 堤 英敬 竹中 治堅 浅羽 祐樹 朴 志善 成廣 孝
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019・2020年度は全体会合を3回、台湾チームとの会合を1回実施し、そのほかにも複数回の個別ミーティングを実施した。まず、2019年6月に全体会合を開催し、データベース構築のためのフォーマット作成、作業チームの編成について議論した。同年10月の全体会合では、北東アジアを中心に、各国の政治制度、政党政治の基本的な配置を確認した。これらを受けて、同年11月にフォーマットの素案を提示し、研究チームの了承を得た。しかし、試行的な文献調査などの結果から、北東アジアと東南アジアでは、政党の成り立ちや組織の有り様が異なることが判明した。そこで、組織構造だけではなく、オンライン上の選挙戦略の有無や類型を捉えるべく、新たに項目を追加した。また、2020年1月の台湾チームとの会合においては、現地インフォーマントの協力を得るべく、その来日に合わせて実施した。その後、新型コロナウィルス感染症に起因する渡航制限のため、海外出張の中止など、作業に大きな制約が生じた。困難な状況ではあったが、北東アジアを先行させてデータ収集を進め、同年10月には、全体の進捗状況を確認するためのオンライン会議を実施した。前後して、東南アジア政治の専門家を招聘し、改めてフォーマットの妥当性について確認した。なお、アジアの政党発展を理論的に説明する枠組み論文の執筆については、2019年度に合計9回、個別の会合を実施した。本科研の関連業績のうち顕著なものとして、日韓台の比較政党政治に関する論考、日本政治に関する論考がそれぞれ海外の有名学術出版社から出版された(分担執筆)。
著者
堤 英敬 上神 貴佳 稲増 一憲
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、有権者と政党の関係が希薄化した政党脱編成期において、両者の関係を再構築する役割を担うと期待される投票支援アプリケーション(VAA)の効果を検証し、その可能性と課題を探ることを目的としている。平成28年度には、VAAの効果に関する2つのサーベイ実験を実施した。第1に、7月に実施された参議院議員選挙において、VAAの利用に期待される効果を検証することを目的としたサーベイ実験を実施した。具体的な実験方法としては、クラウド・ソーシングで募集した本調査への協力者ならびに研究組織のメンバーが所属する大学の学生を対象として、ランダムに選ばれた人たちに参院選前にVAAを使用してもらい、VAAを使用しなかった人との間に(参院選後の調査で尋ねた)参院選での投票参加や、参院選前後における政治意識、情報接触パターンに差異が生じるかを確かめた。VAAを利用することで情報コストが軽減され、投票者が増えることや、新たな情報を得ることで、政治への関心や政治的有効性感覚が高まったり、政治情報の取得に積極的になったりすることを予測していたが、実験の結果は必ずしもこうした予測とは一致しないものであった。第2に、VAAが利用者に対して政党の政策的立場に関する正確な情報を提供できる点に着目し、その効果を測定するサーベイ実験を行った。具体的には、調査会社のモニターを対象としたインターネット調査において、一般に認知度が低いと考えられる2つの政策争点における自民党、民進党の政策的立場をランダムに選ばれた調査回答者に提示し、それ以外の回答者との間に、政党に対する好意度や政治的有効性感覚、政治情報の取得の積極性に違いが見られるかを検証した。結果としては、政党の政策情報を示された人の方が若干ではあるが、むしろ政策情報の取得に消極的になるとの結果が得られた。
著者
上神 貴佳 佐藤 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-73, 2009

本研究の目的は,政党や政治家の政策的な立場を推定するために考案されてきた様々な方法論を概観し,その現状と発展の可能性について考察することである。政党や政治家の政策的な立場を推定する方法を大別すると,公約の内容分析とアンケー ト調査の二種類に分けることができる。アンケート調査とは異なり,内容分析には,政党や政治家の立場を明らかにすべき争点の選択が客観的であるという長所がある。しかし,この方法には分析コストの高さや結果の信頼性について改善の余地がある。そのための手段として,本研究はコンピュータによるコーディングの自動化を提案する。具体的には,政策の内容分析に必要であるコーディング作業について,「教師付き学習に基づく分類の自動化」を行う。実際に,2005年総選挙と2007年参院選における各党のマニフェストにこの方法を適用し,その有用性と可能性を示す。
著者
上神 貴佳
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3/4, pp.39-80, 2008-03-14

国政レベルにおける政党再編成は,なぜ地方政治に浸透しないのであろうか.本稿は岩手県釜石市議会議員に対するアンケート調査を用いて,国と地方における政党政治が連動する程度は政治家間のリンケージのあり方と地方議会の選挙制度によって左右されるとの仮説を検証する.分析の結果によると,国政レベルの政党再編成の影響を強く受けている県政とは対照的に,釜石市議会においては,党派的変容の痕跡を見出すことが難しい.国会議員と釜石市議の関係はインフォーマルな系列関係によって結ばれており,政党によって媒介されない割合が高いこと,釜石市議を選出する定数26の大選挙区制においては,政党ラベルに基づく棲み分けよりも地域的な棲み分けが有効な選挙戦略であることの双方が確認された.我が国の市町村議会においては,系列関係と大選挙区制の組み合わせが比較的に多いと考えられるため,本稿の分析結果には釜石市の事例を超えるインプリケーションがあるといえる.
著者
上神 貴佳 堤 英敬
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目標は、事実上、日本の首相を決める、自民党総裁選のメカニズムを解明することにある。とりわけ2000年代に入ってから、毎回、党員投票が実施されるようになるなど、同党の総裁選には大きな変化が生じている。一方、国会議員の投票行動には変化が生じているのか否か、(生じているとすると)どのような変化なのか、地道なデータの収集を通じて、その解明を試みた。現在、詳細な分析を続行中であるが、投票行動における派閥要因の低下が予想される。無派閥議員の増加など、派閥の拘束力低下をうかがわせる傾向と軌を一にする結果が得られるはずである。
著者
上神 貴佳
出版者
木鐸社
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.1, pp.220-240, 2008
著者
堤 英敬 上神 貴佳
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.33-48, 2007-03

本論文は,2003年総選挙の公約データを用いて,「政党・政策中心の選挙」の現状と政党内における政策的な分散を説明する「選挙制度不均一モデル」を検証する.前者については,自民党と民主党,二大政党間の政策的な違いは大きいといえず,両党内の政策的な凝集性も低いことを示した.また,「選挙制度不均一モデル」が予測する衆議院と都道府県議会において異なる選挙制度の効果については,系列関係の程度や地方議会選挙における競合のあり方に応じて,国政レベルの政策対立が末端まで浸透しないことを部分的に確認した.