著者
名取 良太 福元 健太郎 岸本 一男 辻 陽 堤 英敬 堀内 勇作
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.105-115, 2014 (Released:2018-02-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

参議院選挙は,戦後日本政治の変動に,何度も重要な役割を果たしてきた。しかし,従来の日本政治研究,特に選挙過程の分析は,そのほとんどが衆議院を対象にしたものであり,日本政治の理解もこの範囲を出なかった。参議院選挙データはほとんど分析されず,参院選が日本政治に与えた影響は解明されてこなかったのである。その状況をもたらした原因の一つは,参院選データが十分に整備されていないことである。そこで我々は,参院選の市区町村別データを収集し,データベースを開発した。参院選研究を活性化させ,日本政治に対する参院選の意義や,二院制の意義そのものの再検討を促したり,選挙研究の理論モデルを発展させたりすることが狙いである。本論文は,その参院選データベースの内容と利用方法を説明するものである。
著者
品田 裕 大西 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 山田 真裕 河村 和徳 高安 健将 今井 亮佑 砂原 庸介 濱本 真輔 増山 幹高 堤 英敬 平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、国会議員を主とする政治家と有権者の関係、あるいは政治家同士の関係がどのように変容しつつあるのかを調査し、その変化の要因を実証的に解明することを目的として開始された。その結果、本研究では、選挙区レベルの詳細な観察・データを基に、実証的に現代日本の選挙政治の変容を明らかにすることができた。取り上げた研究対象は、集票活動・有権者と政治家の関係・政治家同士の関係・議員活動・政治家のキャリアパス・政党下部組織など、多岐にわたった。これらの分析から得られた成果を基礎に、さらに、国会のあり方や選挙制度にまで分析を進めることができ、現代日本の選挙政治理解に一定の貢献を果たすことができた。
著者
堤 英敬
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.89-99,270, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

The 1996 general election was the first election after the new electoral system has adapted. When this elecoal system is justified, it is stressed that under the election system, selection would be party and policy centered. The aim of this paper is to answer whether the 1996 general election was party and policy centered or not, through an analysis of candidates' campaign pledge and voting behavior. Concretely, I investigate the cleavage of the parties, how the pledges of candidates are formed and whether or not the pledges affect the voters' behavior.In the 1996 general election, the policies mentioned by many candidates were administrative reform, promoting welfare, saving protecting agriculture and objection to rising consumer tax and so on. Through factor analysis, the pledges have four dimensions. They can be interpreted as “administrative and fiscal reform”, “distributive policy”, “conservative or reformist” and “post-materialistic policy”. However, I cannot find any large difference in these dimensions among the candidates of different parties. Except the first dimension, these dimensions are not new one and from the first dimension, no cleavage can be found.The main factor in forming the pledges is which party the candidates belong to. In some policy areas, the regional characteristics or candidates' career are significant. However, the degree of closeness of conpetion has no influence.Finaly, I found the relation between the campaign pledges of policy package and voting behavior. But compared with oher factors of voting behavior, the pledges' influence is very small. So it is diffecult to say that the 1996 general election was a party and policy centered election.
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
堤 英敬
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.76-89, 2019 (Released:2022-09-12)
参考文献数
32
被引用文献数
1

2000年代半ば以降,自民党では公募や予備選といった開放的な方法を通じた候補者選定が行われている。候補者選定は議会政党の構成を規定する重要な機会であるにもかかわらず,なぜ自民党は党によるコントロールを弱めるような改革を進めてきたのだろうか。本稿では,自民党の候補者選定が地方組織主導でなされていることに着目し,選挙区レベルでの地方組織を取り巻く環境やその組織的性格が,開放的な候補者選定方法の採用に及ぼす影響について検討を行った。2005年以降の国政選挙を対象とした候補者選定方法の分析からは,選挙でのパフォーマンスが振るわない選挙区や(衆院選では)伝統的な支持団体の動員力が弱い選挙区で,公募等の開放的な方法が採用されやすいこと,また,公募制を採用するにしても,既存の支持団体や党員組織に配慮した候補者選定方法が採られていることが明らかになった。
著者
上神 貴佳 陳 柏宇 堤 英敬 竹中 治堅 浅羽 祐樹 朴 志善 成廣 孝
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019・2020年度は全体会合を3回、台湾チームとの会合を1回実施し、そのほかにも複数回の個別ミーティングを実施した。まず、2019年6月に全体会合を開催し、データベース構築のためのフォーマット作成、作業チームの編成について議論した。同年10月の全体会合では、北東アジアを中心に、各国の政治制度、政党政治の基本的な配置を確認した。これらを受けて、同年11月にフォーマットの素案を提示し、研究チームの了承を得た。しかし、試行的な文献調査などの結果から、北東アジアと東南アジアでは、政党の成り立ちや組織の有り様が異なることが判明した。そこで、組織構造だけではなく、オンライン上の選挙戦略の有無や類型を捉えるべく、新たに項目を追加した。また、2020年1月の台湾チームとの会合においては、現地インフォーマントの協力を得るべく、その来日に合わせて実施した。その後、新型コロナウィルス感染症に起因する渡航制限のため、海外出張の中止など、作業に大きな制約が生じた。困難な状況ではあったが、北東アジアを先行させてデータ収集を進め、同年10月には、全体の進捗状況を確認するためのオンライン会議を実施した。前後して、東南アジア政治の専門家を招聘し、改めてフォーマットの妥当性について確認した。なお、アジアの政党発展を理論的に説明する枠組み論文の執筆については、2019年度に合計9回、個別の会合を実施した。本科研の関連業績のうち顕著なものとして、日韓台の比較政党政治に関する論考、日本政治に関する論考がそれぞれ海外の有名学術出版社から出版された(分担執筆)。
著者
堤 英敬 上神 貴佳 稲増 一憲
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、有権者と政党の関係が希薄化した政党脱編成期において、両者の関係を再構築する役割を担うと期待される投票支援アプリケーション(VAA)の効果を検証し、その可能性と課題を探ることを目的としている。平成28年度には、VAAの効果に関する2つのサーベイ実験を実施した。第1に、7月に実施された参議院議員選挙において、VAAの利用に期待される効果を検証することを目的としたサーベイ実験を実施した。具体的な実験方法としては、クラウド・ソーシングで募集した本調査への協力者ならびに研究組織のメンバーが所属する大学の学生を対象として、ランダムに選ばれた人たちに参院選前にVAAを使用してもらい、VAAを使用しなかった人との間に(参院選後の調査で尋ねた)参院選での投票参加や、参院選前後における政治意識、情報接触パターンに差異が生じるかを確かめた。VAAを利用することで情報コストが軽減され、投票者が増えることや、新たな情報を得ることで、政治への関心や政治的有効性感覚が高まったり、政治情報の取得に積極的になったりすることを予測していたが、実験の結果は必ずしもこうした予測とは一致しないものであった。第2に、VAAが利用者に対して政党の政策的立場に関する正確な情報を提供できる点に着目し、その効果を測定するサーベイ実験を行った。具体的には、調査会社のモニターを対象としたインターネット調査において、一般に認知度が低いと考えられる2つの政策争点における自民党、民進党の政策的立場をランダムに選ばれた調査回答者に提示し、それ以外の回答者との間に、政党に対する好意度や政治的有効性感覚、政治情報の取得の積極性に違いが見られるかを検証した。結果としては、政党の政策情報を示された人の方が若干ではあるが、むしろ政策情報の取得に消極的になるとの結果が得られた。
著者
上神 貴佳 堤 英敬
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目標は、事実上、日本の首相を決める、自民党総裁選のメカニズムを解明することにある。とりわけ2000年代に入ってから、毎回、党員投票が実施されるようになるなど、同党の総裁選には大きな変化が生じている。一方、国会議員の投票行動には変化が生じているのか否か、(生じているとすると)どのような変化なのか、地道なデータの収集を通じて、その解明を試みた。現在、詳細な分析を続行中であるが、投票行動における派閥要因の低下が予想される。無派閥議員の増加など、派閥の拘束力低下をうかがわせる傾向と軌を一にする結果が得られるはずである。
著者
建林 正彦 村松 岐夫 森本 哲郎 品田 裕 網谷 龍介 曽我 謙悟 浅羽 祐樹 大西 裕 伊藤 武 西澤 由隆 野中 尚人 砂原 庸介 堤 英敬 森 道哉 藤村 直史 待鳥 聡史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、現代の民主主義における政党組織の共通性と各国固有の特徴とその規定要員を明らかにするために、日本の民主党、自由民主党の政党本部、各地の地方組織(都道府県連合会)に対する聞き取り調査と、都道府県議会議員に対するアンケート調査を行い、これらの情報・データをもとに国内比較、国際比較の観点を加えつつ、研究会を積み重ねながら様々な分析を行った。
著者
堤 英敬 上神 貴佳
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.33-48, 2007-03

本論文は,2003年総選挙の公約データを用いて,「政党・政策中心の選挙」の現状と政党内における政策的な分散を説明する「選挙制度不均一モデル」を検証する.前者については,自民党と民主党,二大政党間の政策的な違いは大きいといえず,両党内の政策的な凝集性も低いことを示した.また,「選挙制度不均一モデル」が予測する衆議院と都道府県議会において異なる選挙制度の効果については,系列関係の程度や地方議会選挙における競合のあり方に応じて,国政レベルの政策対立が末端まで浸透しないことを部分的に確認した.