著者
王 一凡 永崎 研宣 下田 正弘
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2016-CH-110, no.7, pp.1-7, 2016-05-07

複層的な伝承経路に由来する膨大な活字種を内包した 『大正新脩大藏經』 所収 「一切経音義」 「続一切経音義」 本文の分析にあたり,版面画像から各グリフ画像を自動的に切り出して全文コーパスに対応づけるシステムに加え,画像を手動で適切に分類・修正するためのクロスプラットフォームな GUI 環境を開発した.これによりコーパスの継続的な保守が可能になるばかりでなく,一連の手法は他の活字化仏典をはじめ戦前期和文活字本のコーパス構築に広く応用できると考えられる.
著者
永崎 研宣 清水 元広 下田 正弘
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2013-CH-97, no.4, pp.1-6, 2013-01-18

コンピュータ上で外字を扱うことは,人文学研究,とりわけ古典を扱う場合には避けることが難しい事柄である.やみくもに外字を増やすことは望ましいことではないが,字形の違いをなかったことにしてしまうことには潜在的な問題がある.したがって,包摂を前提とする UCS 符号化文字集合をそのまま全面的に導入することは困難である. SAT 大蔵経テキストデータベース研究会では,外字の扱いを巡って検討を重ねてきており,近年普及しつつある IVS を利用することで UCS 符号化文字集合の適切な利用方法を模索することを開始すると同時に,約 3000 字の漢字に関して IRG に対して符号化提案を行った.本稿では,そこに至る検討過程について報告するとともに,外字を UCS 符号化提案した際の具体的なデジタル技術の活用の仕方についても紹介する.
著者
下田 正弘
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.525-535, 2017

<p>After having not been of concern for some time, the matter of whether or not Buddhist studies should be seen as an independent discipline has recently resurfaced within related academic communities. Now that the environments of scholarship in the arts and humanities are being radically transformed in terms of elucidating, preserving, and transmitting knowledge under the strong influence of radical innovations in information communication technologies, another moment has apparently arrived where this subject needs to be brought into careful consideration. In this new digital horizon of research, each product of research that heretofore conveniently existed independently cannot help from getting involved in one vast interconnected context, in which their mutual methodological relationships need to be clarified. This paper, paying attention to the question of "the linguistic turn" in history, reviews the methodologies of Buddhist studies and discusses the great significance of the concept of "textuality" in Buddhist studies in this new environment.</p>
著者
下田 正弘
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.283-308, 2007-09-30

神仏習合の裏面の問いとしての神仏分離には、近世から近代にかけて中央集権国家を構築した日本の歴史全体が反映する。仏教の迫害と変容の基点となった明治維新をとりまく暈繝には、権力支配の構造の変容と諸知識体系化の歴史が重なりあう。経世済民の思想、国学の進展、一国史編纂の企図は一体化して明治国家の理念を形成し、仏教を非神話化しながらあらたな神話を完成する。この構造全体を読み解いて未来をみすえるとき、生活世界に基礎をおく解釈学としての仏教学の構築が強く望まれる。
著者
永崎 研宣 鈴木 隆泰 下田 正弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.57, pp.33-40, 2006-05-26
参考文献数
9
被引用文献数
2

大正新脩大蔵經テキストデータベースは、すでにすぺてのテキストの入力を終了し、その正確性を高めるという次の段階に入っている。これを効率的に行っていくためには、より効率的かつユーザフレンドリーなコラボレーションシステムの開発が有効である。コラボレーションシステムは、それまでの作業のルーティンを損なうことなく、その問題点を解消できるものでなければならない。そのため、Webベースのシステムを基本としつつ、コア部分では、作業者のスキルの格差を考慮し、ローカル側での作業に比重を置くインターフェイスと、Web上ですべての作業を行うインターフェイスの二種類を併用する形とした。The text-database of the Taisho Tripitaka has entered a correction phase since inputting of all texts has been finished. It is useful to develop a more efficient and user-friendly collaboration system to solve previously experienced problems without disturbing the routine of the work. Therefore,we developed a Web-based collaboration system which has two interfaces accomodating the differences of workers,skill levels. One is based on the work done on the local computers and the other is carried out entirely on the Web.
著者
斉藤 明 末木 文美士 高橋 孝信 土田 龍太郎 丸井 浩 下田 正弘 渡辺 章悟 石井 公成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、H15年5月に開催された第48回ICES(国際東方学者会議、東方学会主催)におけるシンポジウム(「大乗仏教、その起源と実態-近年の論争と最新の研究成果から」)を皮切りに、総計10名の研究分担者がそれぞれの分担テーマに取り組み、これまでに12回の研究会、8回の講演会、印度学仏教学会等の国内学会、IAHR(国際宗教学宗教史学会)、ICANAS(国際アジア北アフリカ研究会議)、IABS(国際仏教学会)、ICES(国際東方学者会議)他の国際学会等を通して研究発表を重ね、'ここに研究成果をとりまとめるに至った。また、研究成果の一部は、H18年度の第51回ICESにおいて「大乗仏教、その虚像と実像-経典から論書へ」と題するシンポジウムにおいて公開した。本シンポジウムでの発表内容の一部は、H20年に刊行されるActa Asiatica,The Institute of Eastern Cultureの特集号(vol.96,"What is Mahayana Buddhism")に掲載予定である。本研究により、在家者による参拝という信仰形態をふまえ、新たなブッダ観・菩薩観のもとに経典運動として-既存の諸部派の中から-スタートした大乗仏教運動は、時期的には仏像の誕生とも呼応して、起源後から次第に影響力を増し、3世紀以降には最初期の経典をもとに多くの論書(大乗戒の思想を含む)を成立させるに至ったという大乗仏教の起源と実態に関する経緯の一端が明らかとなった。大乗仏教徒(mahayanika,mahayanayayin)とは、こうして成立した『般若経』『華厳経』『法華経』『阿弥陀経』等の大乗経典をも仏説として受け入れる出家、在家双方の支持者であり、これらの経典はいずれもそれぞれを支持するグループ(菩薩集団)独自のブッダ観あるいは菩薩観を、宗教文学にふさわしい物語性とともに、空や智慧、仏身論や菩薩の階梯などを論じる論書としての性格を帯びながら表明している。本研究では、これらの詳細を各研究分担者がそれぞれの専門を通して解明するという貴重な研究成果を得ることに成功した。本研究成果報告書は、いずれもこの研究期間内に研究代表者、研究分担者、および上記ICES,IAHRにおけるシンポジウムへの招聴研究者がもたらした研究成果の一端である。
著者
下田 正弘 小野 基 落合 俊典 蓑輪 顕量 永崎 研宣 宮崎 泉 鶴岡 賀雄 中村 雄祐 MULLER Albert 苫米地 等流 三宅 真紀 田畑 智司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究成果の概要(和文):知識の蓄積・発信の手段が紙からデジタル媒体へと大規模に移行し、ウェブをとおして知識が世界規模で連結されつつある現在、研究資源と研究成果の双方を適切に継承する知識の枠組みを構築することは、人文社会学における喫緊の課題となっている。本研究は、国内の学会や機関、およびドイツ、アメリカ等で進める関連諸事業と連携して、仏教研究の知識基盤をSATデータベースとして構築し、次世代人文学の研究モデルとして提供するものである。http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/参照。