著者
中山 俊
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.388-418, 2016-05

一九世紀前半のトゥールーズの都市計画には、町の衛生の改善や経済的利益の獲得だけではなく、美しい景観の創造や記念物の保存を通じて、学術・芸術の町、「パラスの都市」として栄えていたという地元の歴史的記憶の想起を企図したものもあった。その代表例がフランス革命以前から構想されていたサン=セルナン教会堂の隔離工事である。市は教会勢力等の反対意見を抑え隔離を実行に移す中で、教会堂に隣接し見栄えの劣る旧サン=レイモン寄宿学校の解体を予定したが、中央政府と愛好家はこの計画を中止させた。中央政府はこの記念物にフランスにとって重要な歴史的価値等を、愛好家は地元の歴史的記憶等を見て取ったからだった。隔離工事の実行過程は、一九世紀前半からすでに中央と地方による歴史的記念物の評価に強調点の差異があったこと、地元の愛好家はフランスへの愛着を世紀後半期と比べるとさほど強調していなかったことをも明らかにするものだった。
著者
豊蔵 勇 杉山 雄一 清水 惠助 中山 俊雄
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.3-4, pp.410-430, 2007-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

The Central Disaster Management Council presents several scenarios of hazardous earthquakes that might strike the Tokyo metropolitan area in the near future. After the Great Hanshin Earthquake (January 17, 1995, M7.3 on the JMA scale) which caused devastating damage to both human lives and economic activities, studies on major active faults throughout Japan were accelerated to evaluate their potential for producing serious earthquakes. Within the past decade, three inland earthquakes of M6.9 to 7.3 occurred in Japan without obvious surface ruptures. The faults that caused those earthquakes, had not been identified previously by active fault researchers.Since historic times, the Tokyo metropolitan area has been heavily inhabited and artificially modified by various constructions ; therefore its original geomorphologies, with which active faults are deciphered, have been almost lost to date. The authors summarized data on Quaternary faults found at three construction sites and twelve records of seismic profiles, and reexamined borehole data on restricted places in the metropolitan area. This revealed four concealed faults displacing middle to late Pleistocene deposits in Chuo Ward and one in Koto Ward. These concealed Quaternary faults are classified as Class C active faults with an average slip rate of 0.1 to 0.01m/1000 years. Active faults, however, have not been studied in the central metropolitan area for some reasons. The authors would like to call for an immediate full-scale active fault study to prepare for earthquake disasters in the heart of Tokyo.
著者
中山 俊秀 大島 稔 中山 俊秀
出版者
東京外国語大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

本研究最終年度である平成14年度は、研究成果の取りまとめに力を入れる一方、引き続き現地調査も行い、言語資料の量・質両面でのよりいっそうの充実をはかり、古アジア諸語研究の基盤整備をすすめることができた。また、これまで蓄積されてきた古アジア諸語の記述研究の成果をより広いコンテクストにおくべく、北太平洋を挟んで対峙する北米北西海岸地域の言語・文化の記述研究も並行して行った。チュクチ・カムチャツカ語族のアリュートル語に関しては、研究協力者の永山ゆかり(北海道大学大学院)が、ロシア連邦カムチャツカ州のコリヤーク自治管区においての現地調査を実施した。アリュート語については、研究協力者の大島稔(小樽商科大学教授;H14文部科学省在外研究員)がコマンドルスキー諸島ベーリング島においてアリュート語ベーリング島方言及びメドヌイ島方言に関する調査を実施した。研究代表者および研究協力者の中山久美子(カリフォルニア大学大学院)は北米北西海岸側の調査をカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島西岸で行った。これらの現地調査で得られた言語の一次資料はこれまでの調査研究による資料とともに電子化した。語彙・文法データはデータベース化し資料の利用価値・利用効率を高め、音声はデジタル化し音質の劣化を防ぐとともにやはりデータとしての扱いやすさを向上させた。調査研究の成果刊行物としてはさらに文法概説およびテキスト集3編をまとめ、さらに、ロシア人研究者の著したアリュートルの言語と民話についての記述の翻訳作業を進めた。
著者
古矢 旬 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹 酒井 啓子 中山 俊宏 西崎 文子 林 忠行 遠藤 泰生 久保 文明 大津留 智恵子 橋川 健竜 廣部 泉 常本 照樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

現代アメリカの国民意識、国家意識はいかなる要素、要因によって構成され、どのような理由でどのような過程を経て変容してゆくのか、本研究はこの問に対し、歴史、政治、政治思想、外交・国際関係、経済、文化、文学、宗教などの多元的な専門領域を通して接近を図った。それにより、建国期に形成された啓蒙主義的政治理念を主柱として成立したアメリカのナショナリズムが、その後の移民の波によってもたらされた様々なエスニック文化、宗教的観念を取り込みながら、国際秩序の内で次第に重きをなしてゆくプロセスに新しい光を当てることができた。