著者
石田 惣 中田 兼介 西 浩孝 藪田 慎司
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.334-344, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
30

生物研究者が撮影した動画を収集し、利用公開するアーカイブを運用する上で起こり得る課題を抽出するため、アーカイブに対する研究者のニーズ、対象データの潜在量や記録媒体、データ提供者が認容できる利用条件等について研究者にアンケート調査を行った。教育目的での利用可能性には提供者・利用者双方の立場のニーズがある。課題として、・デジタル化により増大する動画量への対応、・レガシー媒体への対応、・ウェブ公開や営利利用、目的を問わない利用に提供者側の抵抗感があり、アーカイブやオープンサイエンスの意義について理解を求める必要性、・データの利用時の編集の是非、・データのウェブ公開可否の判断基準、等が見出された。
著者
中田 兼介
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

クモでは、交尾の際にオスがメスの交尾器を破壊して、その再交尾能力を奪う種類がいることが知られている。ゴミグモ属は、そのような種が最もたくさん見られると予想されているグループだが、その中でマルゴミグモ種群に属するクモでは交尾器破壊についてわかっていないことが多く、本研究では交尾行動とオスの交尾器の形を詳しく観察し、またこれまで知られている他の種とも比較することで交尾器破壊の進化について解明する。
著者
中田 兼介 森 貴久
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.590, 2005 (Released:2005-03-17)

円網性クモは網を定期的に張り替えるが、その際にしばしば網の大きさや横糸の間隔を変える事が知られている。この現象はクモが網場所の質に応じて網糸への投資量を調節しているためであると考えられている。この調整が餌収益の上昇に結びつくためには網場所の質を知る必要があるが、クモは過去の採餌経験からこれを推定していると考えられる。この意味で円網は採餌のためのデバイスであると同時に情報獲得のデバイスでもあると言える。一方、円網性クモは、餌捕獲量の減少、網の破壊、成長に伴う最適な造網場所の変化などの理由によってしばしば網場所を移動させる。このとき新しい網場所は過去に利用した事のない場所である事が一般的で、クモは移動直後にはその場所の質を知る事無しに、どのような網を張るかについて意思決定しているだろう。本研究では、このようなクモの網場所移動直後の造網行動がどのようなものになるのかを、「採餌経験からの網場所の質の推定には誤差が伴うが、その誤差は網サイズが大きくなればなるほど小さくなる」という仮定の元で最適網糸投資モデルを作り解析した(この仮定を置いた理由は、網サイズが大きくなる事は、より広い空間をサンプリングする事であり、推定の際のサンプリング量の増加は推定の精度の上昇に繋がると考えられるからである)。その結果、網場所移動率が小さいほど移動直後には最適網糸投資量が大きくなる、という結果が得られた。このような最適モデルからの予測が実際に当てはまるかどうかについて、コガネグモ科の円網性クモ数種を使い、1)野外で人為的に網を壊してやることで網場所移動を引き起こし、新しい場所に造網させた時の最初の網の総糸量、2)連続した二日間同じ場所に造網している頻度、計測し、これらのデータを種間で比較する事で検討した。
著者
石田 惣 藪田 慎司 中田 兼介 中条 武司 佐久間 大輔 西 浩孝
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

自然史博物館が動画資料を体系的に収集・公開するしくみがあれば、公共財としての研究・教育資源になる。本研究では動画を収蔵資料とするための課題を抽出し、その解決策を探り、収蔵モデルを構築した。主な課題は寄贈者が受け入れやすい利用許諾条件と、資料の安全な保管である。そこで、寄贈される資料に他の博物館も同一条件で利用できるサブライセンスを設定し、他館と複製を共有するしくみを考えた。これにより、多くの寄贈者が認容する教育目的の利用機会が増えるとともに、資料の分散保管が実現できる。この枠組みに基づき、メタデータセットやウェブ公開時のチェック項目等を設定して、動画資料データベースを作成した。
著者
畑田 彩 平山 大輔 村上 正行 梶川 裕司 谷垣 岳人 中田 兼介 野崎 健太郎
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は研究目的の(2)環境学系科目担当教員が持っている教材、人材情報、授業デザインなどを収集・共有する に関する活動を行った。研究代表者、研究分担者が行った教材開発は以下のとおりである。(畑田)小麦アレルギー者のためのグルテンフリー代替メニューの開発・エコバッグ一体型学生鞄の開発・カフェインレスのコーヒーがコーヒーの代替品となりうるかの実験・アクアポニックスを利用した小学校の総合的な学習の授業デザイン・キャンパスラリーを利用した環境学系授業の授業デザイン (平山)学校の校庭の樹木等を教材とした自然観察授業・森林機能に関する教材(授業プログラム)の実践・三重県内の学校教員を対象とした環境教育の研修講座の実施 (谷垣)京丹後市での保全型農業の実施とゲンゴロウ米の販売 (中田)ぬまがさワタリ著「図解 なんかへんな生き物」の監修 (野崎)大学生を対象にした河川生態系の多様性を理解するための宿泊型自然体験学習の実践・愛知県現任保育士研修会での講演 (村上)没入型授業映像視聴環境のためのハンドジェスチャインタフェース今年度は、研究代表者・研究分担者各自の教材開発にとどまり、共有化のシステムを構築することができなかった。共有できる教材が集まってきたため、早急にHP上で共有できるシステムを構築したい。研究目的の(3)座学の授業で利用可能なハンズオン型教材の開発を行う については、以下の活動を行った。(畑田)ミネラルウォーターと水道水の利き水・紙は何回二つ折りにできるか(ワークショップ)・視覚と臭覚なしでかき氷の味が見分けられるか(ワークショップ)・よく飛ぶ紙飛行機を作ろう(ワークショップ)3Dプリンタを用いた昆虫模型の制作は、ゼロ工房提供の15種類の昆虫のフリーデータを用いて、試作を行った。
著者
藪田 慎司 中田 兼介 千嶋 淳 藤井 啓 石川 慎也 刈屋 達也 川島 美生 小林 万里 小林 由美
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.195-208, 2010-12-30

哺乳類の生態や行動に関する野外調査には,しばしば複数の調査者の協力が必要となる.多くの哺乳類は寿命が長く行動範囲が広いからである.このようなチーム研究を維持するには,各メンバーのデータを集約保存し,メンバー全員で共有するシステムが必要である.本論文では,ゼニガタアザラシ(<i>Phoca vitulina stejnegeri</i>)の個体識別調査を支援するために開発したシステムについて報告する.このシステムは2つのデータベースからなる.野外で撮影された写真を管理する写真データベースと,識別された個体についての情報や観察記録を管理する個体データベースである.システムはインターネット上に置かれ,メンバーは,どこからでも新しいデータを登録でき,また登録済みデータを研究のため利用することができる.近い将来,本システムは以下のような研究に貢献すると期待される.上陸場間の移動行動の研究,生活史パラメーター(齢別死亡率,出産間隔等)の推定,個体数の推定,社会構造の研究,等である.<br>
著者
中田 兼介 藪田 慎司
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.166-173, 2006-08-31
被引用文献数
4

自然教育の目的の一つは、子供たちに自分の身の回りの自然を好きになってもらう事である。動物の行動は人間の行動と機能的、外形的に共通する部分が多く、子供たちを自然の中で振る舞う動物を観察するよう導く事は、自然への親近感・共感を引きだす事に通じ、自然教育の目的に適うものである。そして、動画資料を使用する事で自然教育における行動観察の効果がより高められるだろう。動画を事前学習で使えば、子供たちの観察に対するモチベーションやセンスを高める事ができる。自然観察の最中では、人の目ではなかなか見る事のできない現象を見せる事ができる。そして動画撮影を行なう事を目的とする事で、観察会を一過性のイベントに終わらせる事なく、後の議論や成果発表に繋げて行く事ができる。一方、動物を扱うフィールド生物学者はしばしば研究対象を動画に撮影する。このような動画資料を研究者が持ちより、広く利用できるように公開すれば、自然教育の現場を支援すると言う意味で重要な貢献になるだろう。筆者たちを含む有志のグループは、このように考え2003年からインターネット上で「動物行動の映像データベース」(http://www.momo-p.com)というウェブサイトを立ち上げて運営している。このサイトには研究者と教育関係者を含む一般の利用者とを繋ぐ様々な機能が用意されており、研究者は特に教育関係者の事を考慮せずとも、自ら所有する動画資料をインターネットに接続されたコンピュータから登録するだけでよいのである。