著者
牧野 亜友美 森本 淳子 柴田 昌三 大澤 直哉 中西 麻美
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.286-289, 2002-08-31
参考文献数
10
被引用文献数
2 6 3

京都市近郊のヒノキ二次林において合計0.21 haの施業区を設置し, 生物多様性を回復させることを目的として針葉樹11本と落葉広葉樹26本を残しすべての植生を伐採した。伐採後の木本植生の多様性の変化を, 萠芽更新と実生更新に着目して調査を行った結果, どの斜面位置においても伐採前に比べて伐採後に種数が増加した。新たに出現した種は28種であり, それらは主に鳥類によって散布された種子と埋土種子からの発芽であると考えられた。保残木施業による天然更新を促す手法を用いた小面積伐採は, 木本植生の多様性を回復させるのに一定の効果があることが示された。また, 遷移が進行した都市近郊二次林では, 林相の種組成が単純であるため周囲からの新しい種の供給は小さく, 新しい種の供給源として埋土種子の役割が重要であると考えられた。
著者
本藤 聡仁 鈴木 啓太 中西 麻美 山下 洋
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-42, 2023 (Released:2023-04-27)
参考文献数
20

Under the guidance of Field Science Education and Research Center of Kyoto University, Kyoto Prefectural Nishimaizuru Senior High School has conducted annual surveys in riverine and coastal environments in late July since 2006 (in early August only in 2020). The survey areas consisted mainly of Isazu River, Maizuru Bay, and Tango Bay, Sea of Japan. Although the survey data were analyzed and summarized by high school students every year, the publication of the whole data sets will contribute to meta-analyses among regions and/or periods, and to environmental education at other high schools. Here we provide the following data sets: 1) surface water quality including temperature, pH, electric conductivity, turbidity, and concentrations of dissolved oxygen, dissolved organic carbon, suspended solid, and nutrients in 2006-2021; 2) species composition and density of coastal macrobenthos including fish and invertebrates in 2012-2021; 3) latitudes and longitudes of coastal surveys in 2012-2021; 4) vertical profiles of coastal waters in 2012-2021. As an example of the application of the data sets, interannual changes in nutrient concentrations and macrobenthos communities were analyzed.
著者
深田 英久 徳久 潔 中西 麻美
出版者
高知県立森林技術センター
雑誌
高知県立森林技術センター研究報告 (ISSN:13486004)
巻号頁・発行日
no.39, pp.83-110, 2015-03

仁淀川上流域の標高640~910mの北向き斜面にあるスギ・ヒノキ人工林に調査プロットを設置し、間伐後概ね5年間の林分変化に伴う下層植生への影響を調査した。間伐前のRyはスギが0.82~1.00、ヒノキが0.69~0.96で、相対的にスギのRyが高かったが下層植生タイプの貧植生型を示す割合はスギが50%、ヒノキが100%であった。スギは材積間伐率が20%までの間伐によって貧植生および落葉木本型からより土壌保全効果の高い草本・地表植物型に移行したが、ヒノキは材積間伐率が20%以上必要であった。また材積間伐率が41%および45%のヒノキ間伐区では高木性広葉樹の樹高成長および植被率の増加がみられた。高知県内での間伐効果の持続期間を10年とした場合の材積間伐率はスギが15%程度、ヒノキが25%程度である。また、個体サイズのバラツキが大きい林分では下層間伐となることが多く、材積間伐率が本数比に比べて大きく低下する。現在、高知県の森林整備では概ね本数間伐率30%以上の間伐率とされているが、水土保全機能の増進または維持を目的とした場合は、ヒノキ林ではスギに比べて間伐強度を高く設定する必要性が考えられた。
著者
中西 麻美 稲垣 善之 深田 英久 渡辺 直史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.113, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

樹木の成長は土壌中の窒素や水分などの資源量と資源利用効率に影響を受ける。葉の窒素濃度は窒素吸収量の指標として、葉の炭素安定同位体比(δ13C)は水分利用効率の指標として用いられている。これらの指標を用いて窒素利用と水分利用がヒノキの成長量に及ぼす影響を高知県内の林齢28~73年のヒノキ人工林30林分で評価した。葉の窒素濃度は7.8~12.3mg/g、δ13Cは-28.4~-26.2‰を示した。窒素濃度とδ13Cには有意な関係は認められず、窒素濃度が高く、光合成活性が高い条件でδ13Cが増加する傾向は認められなかった。樹高成長量は0.08~0.53m/年、材積成長量は1.4~11.0Mg/ha/年を示した。林齢と窒素濃度を説明変数として成長量を予測する重回帰モデルでは、林齢が若く、生葉窒素濃度が高い林分ほど樹高および材積成長量が大きい傾向を示した。これらの重回帰モデルで、樹高成長量では53%、材積成長量では30%を説明できた。δ13Cと樹高や材積成長量には有意な傾向は認められなかった。したがって、高知県におけるヒノキの成長には窒素資源が重要であり、水分資源の制限は小さいことが示唆された。
著者
今西 亜友美 柴田 昌三 今西 純一 寺井 厚海 中西 麻美 境 慎二朗 大澤 直哉 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.641-648, 2008 (Released:2009-11-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

ヒノキ林化した都市近郊二次林をアカマツまたは落葉広葉樹主体の林相に転換させることを目的として,母樹を残した小面積 (0.06~0.09 ha) の伐採を行った。3 つの伐採区 (上部,中部,下部) のいずれにおいても伐採後に消失した種はなく,伐採後3 年目には10 種以上の種数の増加が確認された。中でも,落葉広葉樹林の主要構成要素を含むブナクラスの種が上部と中部では6 種,下部では4 種増加し,林相転換に一定の効果が得られたと考えられた。前生稚樹は伐採後にほとんどの個体が枯死し,伐採後の林相には大きく寄与していなかった。散布種子についてはその大部分がヒノキで占められており,風散布種であるヒノキはプロット内に多量の種子を散布することで伐採後の林相に大きな影響を与えると考えられた。また,伐採後3 年目には新たな種の出現がほとんどみられなかったことから,林相が単純なヒノキ林では周囲からの新たな種の供給は少ないと考えられた。伐採面積の最も大きかった上部の伐採区 (0.09 ha) では,相対日射量が60% 以上あり,ヒノキの発芽と生存率が抑制されたと考えられ,アカマツとヒノキの混交する林相への転換が期待された。一方,中部と下部の伐採区では,全実生個体数のうちヒノキが50% 以上を占めており,今後,選択的除去などの人為的な管理が必要であると考えられた。
著者
縄田 栄治 樋口 浩和 坂本 正弘 中西 麻美 小坂 康之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

現在、熱帯地域で急速に進行する経済発展とグローバリゼーションにより脅かされている、伝統的な植物資源利用を明らかにし、いくつかの植物資源をとりあげ、近年の分布域の変化、遺伝的多様性を明らかにすることを目的として4年間の研究を実施した。臨地調査により、伝統的な焼畑地では、休閑林の生態系が急速に変化しつつあること、ホームガーデンでは、種の多様性はある程度維持されているものの、利用に関する知識が失われつつあることが明らかになった。また、野生のマンゴーの利用は、東南アジア大陸部全域に広がり、今なお、多様な利用が見られるものの、地域差が大きいことが明らかとなった。