著者
川嶋 太津夫 平田 光子 小方 直幸 白鳥 義彦 両角 亜紀子 山本 清 米澤 彰純 福留 東士 丸山 文裕 佐藤 郁哉 渡部 芳栄 吉川 裕美子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

大学が自立した学術経営体として環境変化に迅速かつ柔軟に変化に対応するためには、大学のガバナンスとマネジメントの改革が喫緊の課題となっている。本研究は、マネジメントの側面に注目し、国際比較を行い、主として学術面のマネジメントに従事する「学術管理職」と財務や総務といった間接部門のマネジメントに従事する「経営管理職」の相互作用の分析を行った。その結果、日本の大学に比して、海外大学では二つの経営層の一層の職位分化と専門職化が進行していること。にもかかわらず、二つの経営層が機能し、影響力を及ぼしているドメインには共通性が見られること。しかし、職能形成には大きな相違が見られることが明らかになった。
著者
丸山 文裕 両角 亜希子 福留 東土 小林 雅之 秦 由美子 藤村 正司 大場 淳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大学へのファンディングと大学経営管理改革との関係を検討するのが本研究の目的である。平成29年度は、一つには、日本において大学へのファンディングの方法の変化が、大学での研究生産性に及ぼす影響を考察した。大学へのファンディングは、国立大学への運営費交付金など基盤的経費の削減と、他方科学研究費補助金などの競争的資金の増加にシフトしているが、それが研究の生産性にマイナスの効果を持つことを、専門分野の異なる全国の大学の研究者にアンケート調査することによって得られたデータにより証明した。また平成29年秋の参議院選挙まえに突如争点となった自民党や有識者会議「人生100年時代構想会議」等が主張する教育無償化について、それが高等教育機関の経営管理に対する影響も含め、検討した。教育無償化案は、大学進学者や大学経営にポジティブな影響をもたらすものと推測されるが、一方で政府財政の立て直しや、大学に配分される研究費にとって、必ずしもポジティブな効果をもたらさないことを論じた。消費税増税分の一部を無償化に回すことで、国際公約となっている公的債務削減が遅れ、政府財政の健全化に支障をきたすこと。また文教予算のうち高等教育無償化を推進するため、日本学生支援機構への奨学金事業費が増加するものの、その分国立大学運営費交付金および私立大学への経常費補助金が削減される可能性があること、の2つが危惧される。以上2つの研究成果は、論文として平成29年度に公表した。
著者
丸山 文裕
出版者
日本比較教育学会
雑誌
比較教育学研究 (ISSN:09166785)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.18, pp.129-140,210, 1992

This paper firstly analyzes the relationship between the level of tuition fees and the characteristics defining university quality in Japanese private universities, secondly, compares these results with other research findings gained from a study of U. S. private universities, and finally, examines the differences in higher education policy conerning private university tuition in the two countries, Japan and the U. S.<BR>An empirical analysis uses data related to the following university characteristics: tuition fees, admission selectivity, age of the institution, enrollment, number of faculty members, student/teacher ratio, and an additional six variables. A simple correlation is calculated using these twelve variables, and the tuition fee is regressed on admission selectivity. The results show that in Japanese private universities, tuition fees are positively correlated with selectivity; there is no correlation between tuition fees and the number of students enrolled; and the higher the tuition fees, the larger, strangely enough, the number of students per faculty. Regression analysis gives a figure for marginal tuition revenue in four 'gakubu'(schools); 3, 781 yen in the School of Literature, meaning that the school can expect 3, 781 yen revenue increase per student as the selectivity goes up by an additional one unit; 5, 106 yen in the School of Economics; 11, 193 yen in the School of Engineering; and minus 93, 875 yen in the School of Medicine.<BR>The research results show that the more prestigious the school, the more expensive its tuition in both countries. This can be called the "market mechanism" in higher education, whereby the stronger the demand and the better the quality are, the higher the price (tuition fees). This market mechanism, however, comes into conflict with the social need for highly talented manpower and an equal opportunity policy, because the abler students are likely to be more reluctant to go to presitious colleges and universities, where they will have to pay higher tuition fees. American system resolves this conflict through its strong and varied scholarship programs, while in Japan with its poorer scholarship programs, there is still a problem about providing equal opportunity in higher education.
著者
丸山 文裕 馬越 徹 (1985) 馬越 徹 竹花 誠児 JOE Hicks 山崎 博敏 山下 彰一 HICKS JOE E.
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本研究は、ドーア(Ronald P.Dore)教授の「学歴病(Diploma Disease)」仮説を、アジアの現状に即して検討することであった。すなわち、学歴獲得競争は後発工業国ほど激しく、それゆえに学校教育は本来の教育機能よりも選抜機能を強め、一種の病的症状を呈するという考え方である。われわれは東アジア(中国,韓国),東南アジア(フィリピン,インドネシア,マレーシア,タイ)の各国を対象に検討を重ね、次のような結論を得た。1.アジア各国では、教育機会は拡大しているにもかかわらず、なおそれを上回る上級学校進学要求が根強く存在している。特に大学への進学要求はますます高まっており、競争は激しさを増している。このため、学校教育のすべての段階で「試験」のための教育という圧力にさらされている。」2,国家・社会は、その経済発展政策において、大学卒のマンパワーをますます必要としており、高等教育の拡大に力を入れているが、雇用市場の方は、大卒者を十分に吸収できる条件が必ずしも整っているとはいえない。そのため、大卒失業者が出ている国もある。また、大学教育の内容(カリキュラム)が、社会の要求に合わず、大学と社会の間に不適合現象がみられることが多い。3.いわゆる「学歴病」の克服に、明確な処方箋を発見した国は今のところ見当らないが、上記のような問題を改善するために、各国とも、1)高等教育制度の多様化、2)教育内容・教授法の改革、3)教員のスタッフ・デベロップメントの強化、4)入試制度の改善、5)高等教育財源の増大、などに懸命に取組んでいる。
著者
丸山 文裕
出版者
独立行政法人国立大学財務・経営センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本の大学における収入は、長年にわたって専ら政府予算、家計の負担、付属病院など事業収入で構成されてきた。大学システムの規模が小さければ、政府の負担によってのみ大学の運営をすることは可能であろうが、より多くの人々が大学教育を受けようとすると、財政規模は莫大になり、政府の負担だけでは賄えない。これは日本のみならず、高等教育人口がより大きいアメリカでも共通の現象である。本研究課題は、大学の授業料の検討であるが、授業料問題は政府の負担と家計の負担のバランスの問題でもある。本研究では、このバランスをまずデータをもって検討した。他方、大学の経営にとっては、政府予算が削減されると、それを補う方法として授業料の値上げが考えられる。2004年の法人化以後は、国立大学も私立大学と同じように、経営の自立性が求められ、授業料設定も部分的に自由化された。経営の健全化からは、授業料値上げが必要な大学もある。しかし国立大学は国民に安価な授業料で、良質な高等教育機会を提供するという使命を有している。また授業料の値上げは、優秀な学生の確保の点から見て安易にはできない。このように授業料設定は、大学の使命、高等教育機会、大学の経営、学生募集の問題とも密接にかかわっている。本研究は、日本とアメリカの大学での授業料問題を、高等教育費負担、高等教育機会、大学経営、学生募集などの観点から、理論的およびデータを分析し実証的に検討した。そこで得られた数々の知見は、政策的意義を持ち、今後の国立大学授業料水準を考える上で有用と思われる。