著者
久保田 雄大
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100286, 2015 (Released:2015-04-13)

赤石山脈を通過するリニア中央新幹線のトンネル建設は、史上最大の環境破壊である。東京—名古屋間で約250 kmのトンネルを掘り、残土の量は6200 m3にのぼる。通気口、非常坑口もあちこちに掘られ、とてつもない範囲で環境に影響が出る。 その中でも一番の渦中にあるのは大鹿村だ。南アルプスに抱かれるような谷間集落が点在するこの美しい村は、過去50年間人口流出に悩まされて来たが、いま大鹿にのこって住んでいる人々は、不便な中にも辺境の村で暮らす幸せを持っている。移住者も増え、200人とも300人とも言われている。 大鹿村は10年以上リニアトンネルの掘削工事に悩ませることとなる。残土運搬ダンプの台数は、最大一日1700台という数字が示された。トンネル付近の沢では50~80%の水量低下、生活用水の影響など、アセスメントで示されたものだけでも生活に相当のダメージを与える。「リニアによるメリットは、大鹿村には、何も無い」。住民も、村役場も、JRでさえもこのことを認めている。 住民は、様々な方法で要望を伝えて来た。パブコメで。役場を通じて。環境アセスメントの手続きにのっとり、県知事意見書経由で。JRは、しかし、一度たりもまともな説明はなく、現場で工事が次々と始まっているのが現状である。 10月に国交省の着工認可が出て、工事に関係する東京-名古屋間の市町村すべてで、すぐに説明会が始まった。2014年11月10日JR東海が大鹿村で開いたリニア中新幹線の事業説明会には約300人の住民が集まり、質疑応答は延長に延長を重ね2時間半に及んだ。工事への理解を求めるJR東海に対し、住民からは「リニア計画は白紙に戻すべきだ」「山に手をつけなければ失われる命(山、水、動植物)はない」「風景は一度失ったら取り戻せない」など根本的な反論が相次いだ。今までJRが説明責任を果たして来なかった不満も爆発した。JRは「地元との合意がなければ、着工できないとおもっています」という言葉を繰り返した。議論はなく、結局は平行線に終わった。 11月下旬、JRは地区単位の説明会を行った。それも骨抜きの内容で「今後、詳しく説明します」に終始し、地主と直接交渉をし、集落の至近距離の土地を借り上げ、工事を着手している。 JRとの合意形成に住民が関わる最後の場として、大鹿村では、他の町村に先んじて「対策委員会」がつくられたが、突如「着工ありき」議論しかしてはいけないことになり、残土置き場をどこにするか、JRが議論するダンプの通行道ルートどの道にするかなど具体的な妥協案を住民がだしていくことが求められた。JR+政府⇒役場⇒住民という力でねじ伏せて行くやり方への不快感が、「対策委員会」メンバーの住民や村会議員からも聞こえてくる。 南アルプスを貫くトンネル工事や、残土処理に関しては、地元在住の専門家達が最も危険を警告していることである。世界でも造山運動が最も活発な南アルプスの掘削と、断層段丘である伊那谷での残土処理は、最近頻発する集中豪雨による災害の危険と隣合わせだ。国交省自身が、伊那谷のほとんどの場所が深層崩壊の危険地に指定しているので、矛盾している。アセスでは残土処理に関してはすっぽり抜けていて、地域に処理の方法を考えさせようとしている。責任を回避しようとしているように感じられる。自民党色の強い自治体では大量の残土で土地を造成する計画を既に進めているところもある。
著者
久保田 雄大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

赤石山脈を通過するリニア中央新幹線のトンネル建設は、史上最大の環境破壊である。東京&mdash;名古屋間で約250 kmのトンネルを掘り、残土の量は6200 m<sup>3</sup>にのぼる。通気口、非常坑口もあちこちに掘られ、とてつもない範囲で環境に影響が出る。 その中でも一番の渦中にあるのは大鹿村だ。南アルプスに抱かれるような谷間集落が点在するこの美しい村は、過去50年間人口流出に悩まされて来たが、いま大鹿にのこって住んでいる人々は、不便な中にも辺境の村で暮らす幸せを持っている。移住者も増え、200人とも300人とも言われている。 大鹿村は10年以上リニアトンネルの掘削工事に悩ませることとなる。残土運搬ダンプの台数は、最大一日1700台という数字が示された。トンネル付近の沢では50~80%の水量低下、生活用水の影響など、アセスメントで示されたものだけでも生活に相当のダメージを与える。「リニアによるメリットは、大鹿村には、何も無い」。住民も、村役場も、JRでさえもこのことを認めている。 <br> 住民は、様々な方法で要望を伝えて来た。パブコメで。役場を通じて。環境アセスメントの手続きにのっとり、県知事意見書経由で。JRは、しかし、一度たりもまともな説明はなく、現場で工事が次々と始まっているのが現状である。 10月に国交省の着工認可が出て、工事に関係する東京-名古屋間の市町村すべてで、すぐに説明会が始まった。2014年11月10日JR東海が大鹿村で開いたリニア中新幹線の事業説明会には約300人の住民が集まり、質疑応答は延長に延長を重ね2時間半に及んだ。工事への理解を求めるJR東海に対し、住民からは「リニア計画は白紙に戻すべきだ」「山に手をつけなければ失われる命(山、水、動植物)はない」「風景は一度失ったら取り戻せない」など根本的な反論が相次いだ。今までJRが説明責任を果たして来なかった不満も爆発した。JRは「地元との合意がなければ、着工できないとおもっています」という言葉を繰り返した。議論はなく、結局は平行線に終わった。 11月下旬、JRは地区単位の説明会を行った。それも骨抜きの内容で「今後、詳しく説明します」に終始し、地主と直接交渉をし、集落の至近距離の土地を借り上げ、工事を着手している。<br> JRとの合意形成に住民が関わる最後の場として、大鹿村では、他の町村に先んじて「対策委員会」がつくられたが、突如「着工ありき」議論しかしてはいけないことになり、残土置き場をどこにするか、JRが議論するダンプの通行道ルートどの道にするかなど具体的な妥協案を住民がだしていくことが求められた。JR+政府&rArr;役場&rArr;住民という力でねじ伏せて行くやり方への不快感が、「対策委員会」メンバーの住民や村会議員からも聞こえてくる。 南アルプスを貫くトンネル工事や、残土処理に関しては、地元在住の専門家達が最も危険を警告していることである。世界でも造山運動が最も活発な南アルプスの掘削と、断層段丘である伊那谷での残土処理は、最近頻発する集中豪雨による災害の危険と隣合わせだ。国交省自身が、伊那谷のほとんどの場所が深層崩壊の危険地に指定しているので、矛盾している。アセスでは残土処理に関してはすっぽり抜けていて、地域に処理の方法を考えさせようとしている。責任を回避しようとしているように感じられる。自民党色の強い自治体では大量の残土で土地を造成する計画を既に進めているところもある。
著者
秋山 和也 大塚 雅之 久保田 雄亮 重藤 博司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.88, no.812, pp.799-807, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)
参考文献数
15

This study aims to evaluation of carrying performance when water saving toilets are connected to drainage pipes in various configurations, and makes use of it for plumbing design. Internationally, ISO 31600:2022 was established as a standard for labeling and performance testing of water-using equipment, including toilets. However, this standard is limited to equipment and do not take into account the waste carrying performance. In this report, carrying performance when the amount of flushing water, the pipe diameter, and the gradient are changed in straight pipe is experimentally identified.
著者
久保田 雄也 荒木 実穂子 山本 達 宮脇 淳 藤澤 正美 原田 慈久 角田 匡清 和達 大樹 辛 埴 松田 巌 田口 宗孝 平田 靖透 保原 麗 山本 真吾 染谷 隆史 横山 優一 山本 航平 田久保 耕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.1273, 2016

<p>SPring-8 BL07LSUにて分割型クロスアンジュレータと電磁石位相器を組み合わせ、唯一の軟X線高速連続偏光変調光源を実現した。さらにその光源を用いた軟X線領域における光学遅延変調法を世界で初めて開発した。この手法は磁性体の磁気円二色性(MCD)と旋光性を同時にかつ高精度に測定できる。本講演では新規光源と手法の詳細を述べると共に、それを用いた鉄系磁性体のMCD及び磁気光学カー効果(MOKE)測定の結果を報告する。</p>
著者
久保田 雄也 赤井 久純 平田 靖透 松田 巌
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.646-651, 2019

<p>磁性は自然科学で長年注目されてきた研究分野であり,さらにその技術応用は現代社会においてなくてはならないものとなっている.実験研究においては光をプローブとし,磁気光学効果を介して固体の磁性を調べる手法が19世紀より広く用いられている.さらに,多種元素を組み合わせた接合界面や超格子薄膜などがスピントロニクスの研究分野で近年注目を集めている背景を受け,吸収端での元素選択性と共鳴現象を利用した軟X線領域の磁気光学効果が,それら埋もれた磁性層を調べる有用な手法として期待されている.しかし,これまで軟X線領域で行われてきた研究では,磁気光学効果の一部である磁気円二色性(magnetic circular dichroism, MCD)にしか着目できておらず,もう一つの磁性パラメータである磁気旋光性も観測できる新しい測定手法と包括的な議論が求められている.</p><p>別の磁気光学効果として,可視光領域で発展してきた磁気光学カー効果(magneto-optical Kerr effect, MOKE)がある.MOKEとは右図にあるように,直線偏光の光を磁性体に照射したとき,反射光がMCDにより楕円偏光となり,さらに偏光角が磁気旋光性により変化する現象である.このときの偏光角の変化分をカー回転角といい,楕円偏光の楕円率とともに磁性情報を持つ.これら二つの物理量を測定するため,入射光の偏光を連続的に変調させる光学遅延変調法が利用されてきた.このMOKEにおいて入射光の波長を軟X線領域の磁性元素の吸収端に合わせることで,元素選択性を付加できるとともに,共鳴効果により可視光を用いるよりも巨大なカー回転角を観測でき,高精度な測定が可能であることが最近わかってきた.しかし,これまでの共鳴MOKE測定では偏光変調が可能な軟X線光源が存在しなかったため,主にカー回転角にのみ注目し,楕円率は比較的測定が困難であった.</p><p>以上の背景を受け,両者が測定可能な軟X線領域の手法として,分割型クロスアンジュレータの特性を活かした連続型偏光変調軟X線磁気分光法の開発を目指し,世界で初めてその実現に至った.分割型クロスアンジュレータに含まれる電磁石移相器へ周波数<i>ν</i>の交流電流を加えると,左右の円偏光が<i>ν</i>で連続的に切り換わるような偏光変調光源を実現できる.その光源を磁性体に入射すると,楕円率が<i>ν</i>成分として,カー回転角が2<i>ν</i>成分として得られ,ロックイン手法と組み合わせることでカー回転角と楕円率を同時にかつ精密に測定できる.この光学遅延変調法共鳴MOKEをFeナノ薄膜に対して実施し,高効率なカー回転角と楕円率の同時測定が軟X線領域において成功した.さらに,カー回転角と楕円率が同時測定可能ということは物質固有の誘電率テンソルの非対角項を完全に決定でき,物質中の電子構造や光学遷移を考察できる.実際にこのFeナノ薄膜に対するMOKE測定で得られた結果から,磁性情報を持つ誘電率テンソルの非対角項を実部虚部ともに完全に決定でき,第一原理計算による理論値と良い一致を示すことができた.</p><p>本研究において,元素選択性,バルク敏感,高感度,誘電率の決定というメリットを持ち,物質評価や理論計算に非常に有用な測定手法の開発に成功したと言える.今後,希薄磁性体や埋もれた磁性体を対象としたさらなる研究展開が期待できる.</p>
著者
植田 公雄 藤村 亮 中野 才治 平島 浩 久保田 雄 服部 禎男 伊藤 力生 平塚 法夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.428-435, 1987

A slab-type, large-scale fluidized bed reactor has been proposed as a means to obtain an adequate heat transfer area satisfying the limit of critical safe size, for use in the denitration reaction of highly enriched U. More specifically, with respect to the reactor, 120-mm wide, 1, 900-mm long, 4, 000-mm high, capable of 4% U enrichment, 3 t-U/d, examinations were conducted of its fundamental fluidization characteristics and the characteristics thus obtained showed that the reactor can be used with no ploblem and in a more stable manner than the conventional cylindrical reactor. The results are as follows:<BR>(1) It was found possible to approximate the reactor's fluidization initiation gas rate to the values obtainable by Babu's and Leva's formulas.<BR>(2) It was shown that the bed expansion can be approximated to 0.65 as calculated by Babu's formula.<BR>(3) Kato's formula can be applied, with some modifications, to the calculation of the bubble size in the fluidized bed.<BR>(4) An empirical formula was established for measuring the height of "jumping" particles, which is necessary in designing the reactor.<BR>(5) It was also found that the slab-type fluidized bed reactor operates with much less slugging and in a more stable manner than the cylindrical reactor.
著者
森 耕平 久保田 雄大
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.66-71, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
12

We describe a tractable numerical procedure using polynomial kernel functions to prove the nonexistence of Lyapunov functions. The algorithm terminates in polynomial time of the dimension of the state space, the number of sample states, the degree of the polynomials appear in the system,and the degree of the Lyapunov candidate polynomial functions. The algorithm is also avairable to construct Lyapunov functions with SOS techniques. We demonstrate the appearance by some simple numerical examples.
著者
船戸 康幸 高木 望 虫明 基 久保田 雄輔 赤石 憲也 長嶋 孝好
出版者
鈴鹿工業高等専門学校
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1.LaB6陰極を用いたスパッタイオンポンプ構造の追求。ポンプ真空容器としては、直径6インチ、長さ200mmのSUS-304製とし、平行平板およびペニング型放電電極を設置した。陰極として厚さ5mm、直径50mmのLaB6円板を使用した。この形状でのグロー放電プラズマスパッタにより、容器壁にボロン系薄膜を形成し、水を主体とする排気実験を行った。測定系として、超高真空電離真空計、マスフィルタ型分圧計、ピラニ真空系を接続する。粗引きポンプで排気したあと、LaB6スパッタ放電を開始する。このときの放電パラメータと排気特性(Pump-Down特性、排気速度特性、分圧特性、)の相関について詳細実験を行った。その結果、ボロン及びLaB6膜の水に対する高排気速度の実験的検証を得た。:2.プラズマパラメータと排気特性の相関関係の測定。グロー放電プラズマの電子密度、電子温度、空間電位の測定を、ラングミュアプローブを用いて行った。その結果スパッタ放電とポンプ排気特性の関連が明白となり、さらに高効率の排気を得るための条件を追求した。ペニング型放電電極構造の基礎実験を行い、磁場の印可が有効であることの検証をした。放電途中のガス放出・吸収挙動を四重極質量分析計と作動差動排気システムとの組み合わせによって詳細実験を行い、本研究の主目的を検証した。:3.ボロン系薄膜の物性評価。生成薄膜の評価をX線光電子分光法を用いて行った。スパッタターゲット材料の分析およびサンプル片上生成薄膜の組成分析を行い、プラズマパラメータとの関連が明らかとなった。更に、薄膜の深さ分布測定から、酸素、炭素、等、ポンプ特性に重要な影響を与える成分の、膜中分布が理解できた。この結果を、壁とのリサイクリング挙動、気相中での分圧特性、ガス放出特性に関する従来の実験結果、分担者の理論的検討、と比較し、新しいタイプのスパッタイオンポンプの可能性に資する成果を得た。