著者
佐原 直日 北原 信介 松永 貴志 小林 誠一郎 藤井 知紀 大野 伸広
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1530-1534, 2022 (Released:2022-12-08)
参考文献数
15

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はしばしば微小血管における血栓形成を助長し重要臓器を障害する。今回COVID-19に後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を合併した症例を報告する。症例は全身性エリテマトーデスの既往のある44歳男性。COVID-19を発症時に溶血性貧血と著明な血小板減少を認めた。ADAMTS13活性が測定感度以下でADAMTS13 inhibitorを検出したため後天性TTPと診断した。失語,見当識障害,せん妄などの動揺性精神神経症状が出現したが血漿交換,prednisolone, rituximabを投与し改善した。COVID-19にTTPを合併した報告は少なく本邦では本症例が初めてとなる。TTPは稀ではあるがCOVID-19の重要な合併症の一つで速やかに診断し早期に治療を開始することが重要と考えられた。
著者
小野寺 直人 櫻井 滋 吉田 優 小林 誠一郎 高橋 勝雄
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-65, 2008 (Released:2009-01-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

岩手医科大学附属病院(以下,当院)では院内感染予防のための新たな支援策として,実施すべき予防策を指標色制定(color coding)により視覚的に周知させることを意図した,当院独自の「感染経路別ゾーニング・システム」を2005年4月から導入した.   本論文では,システム導入の経緯を示すとともに,新たな支援策が各種の感染制御指標に及ぼす影響について,1) 擦式手指消毒薬および2) 医療用手袋の使用量,3) MRSAの発生届出件数,4) 入院患者10,000人当たりのMRSA分離報告件数,5) 院内のアウトブレイク疑い事例に対するICTの介入件数の5指標を,システム導入前(2004年度)と導入期(2005年度),導入後(2006年度)の各年度で比較した.   調査の結果,導入前,導入期,導入後でそれぞれ,1) 擦式手指消毒薬の月平均総使用量は242L, 250L, 235Lと差が認められず,2) 医療用手袋の月平均使用量は261,700枚,338,000枚,410,100枚で導入期・導入後に増加,3) MRSA月平均発生届出件数は23.6±4.3, 20.3±5.5, 19.8±4.6と導入後有意に減少,4) MRSA月平均分離報告件数は21.1±5.1, 14.5±3.9, 13.6±3.1で導入期・導入後に有意に減少,5) 年間ICTの介入件数は7件,5件,3件と減少した.以上から「感染経路別ゾーニング・システム」の導入は院内感染対策の充実,特に大多数を占める接触感染の予防支援策として有効と考えられた.
著者
中林 誠一郎
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

1.ネットワークの集団挙動の制御興奮性結合と抑制性結合を用いて、ネットワークのクラスター化と集団挙動が観測できる。集団挙動は、電極が最近接する結合節(ノード)の興奮・抑制で支配される場合(対称グラフ)は易しい。結合強度が空間変調される非対称グラフの場合、数理モデルは、常微分方程式では、取り扱えない。ネットワークの動態の記述は、泳動・拡散を露わに含む偏微分系へと変化するので、ab initioな計算は難しい。そこで、実験的に求めたArnold Tongueから、結合定数を経験的なパラメーターとして、連立常微分方程式から半経験的な数理モデルを構築した。2.生理神経回路の構成的研究同一の機能を発現する複数のネットワークの中から、生体系が特定の回路を選んだ背後には、生理的あるいは発生学的な拘束条件があると思われる。腎盂機能を再構成した際には、腎臓細胞と尿管の平滑筋細胞の解剖学的な配列を手引きとして、経験的にトイモデルに機能を発現させた。ネットワークの数理の見通しが良くなれば、計算機を補助的手段として、この逆問題を実験でもとめる。得られた振動子配列から、生理系の設計図を読み解く事ができる、このことを、腎盂のしごき運動を例に実証した。このように、電気化学系のモデルで記述される緩和振動子の同期の特徴およびメカニズムは、神経系の緩和型ニュウロンの連成および電気化学振動子の連成計でみられた実験結果と一致した。連成電気化学振動子系が、神経系の緩和型ネットワークの多くの特徴を模擬できることが示された。
著者
久野 純治 坂田 清美 丹野 高三 坪田(宇津木) 恵 田鎖 愛理 下田 陽樹 高梨 信之 佐々木 亮平 小林 誠一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-266, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
50

目的 大規模自然災害後の被災地では生活不活発病が問題とされ,それに伴う転倒予防の必要性が高まっている。本研究では東日本大震災後の被災高齢者の新規転倒要因を明らかにすることを目的とした。方法 2011年度に岩手県沿岸部で実施された大規模コホート研究(RIAS Study)に参加した65歳以上の高齢者のうち,転倒や要介護認定,脳卒中・心疾患・悪性新生物の既往がなく,2012~2016年度までの調査に毎年参加した1,380人を対象とした。本研究では毎年の質問紙調査で一度でも転倒したと回答した者を新規転倒ありとした。新規転倒要因には,2011年度実施した自己記入式質問票,身体計測,および,握力検査から,自宅被害状況,転倒不安,関節痛,認知機能,心理的苦痛,不眠,外出頻度,既往歴(高血圧,脂質異常症,糖尿病)の有無,飲酒状況,喫煙状況,肥満度,握力を評価した。新規転倒の調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を,年齢と居住地域を調整した多変数ロジスティック回帰分析を用いて算出した。その後,前期高齢者と後期高齢者に層化し,同様の解析を行った。結果 5年間の追跡期間中,参加者の35.5%(男性31.9%,女性37.9%)が新規転倒を経験した。新規転倒と有意に関連した要因は,男性では認知機能低下疑い(OR[95% CI]:1.50[1.01-2.22]),女性では認知機能低下疑い(1.82[1.34-2.47]),不眠(1.41[1.02-1.94]),脂質異常症の既往(1.58[1.11-2.25]),過去喫煙(4.30[1.08-17.14])であった。年齢層では,後期高齢女性で自宅半壊(7.93[1.85-33.91]),心理的苦痛(2.83[1.09-7.37])が有意に関連した。結論 男女ともに認知機能低下,女性では不眠,脂質異常症の既往,過去喫煙が新規転倒要因であった。後期高齢女性では自宅半壊と心理的苦痛が新規転倒要因となった。大規模自然災害後の転倒予防対策では従来指摘されている転倒要因に加えて,環境やメンタル面の変化にも注意する必要があることが示唆された。
著者
中林 誠一郎
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞性粘菌の飢餓集合をモデルにして、単細胞生物から多細胞生物への生物学的変化の熱力学的原因を解明した。二匹の粘菌細胞が接近するに伴ってNADH量が減少し、接触したときに最小値を示し、その後細胞の分離とともに上昇する事が判った。細胞性粘菌集団の総NADH 量を,飢餓による集合体形成前後で測定しても、集合体形成により総NADH量は減少した。これら2つの実験結果は、互いに調和的であり、多細胞化の初期過程は、多細胞化によるエネルギー代謝効率改善に支えられたと考える事ができる。
著者
中林 誠一郎 曽越 宣仁
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.8-11, 2006
参考文献数
3
被引用文献数
1

液体の水は我々にとってなじみの深い物質であると同時に,地球環境の維持に大切な役割をもっている。水の興味深い物性を決める最も大きな要因は水素結合である。磁性の観点から水を見ると,水は磁場とほとんど相互作用しない平凡な物質である。しかし10Tまでの非常に強い磁場中に水をおいて,精密にその性質を調べると,興味深い磁場への応答性がうかがえた。従来の水の研究について概観しつつ,筆者らの新しい知見について解説する。
著者
今里 雅之 林 恒男 田中 精一 上田 哲哉 竹田 秀一 山本 清孝 武藤 康悦 磯部 義憲 上野 恵子 山本 雅一 小林 誠一郎 羽生 富士夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.80-84, 1990-01-01
被引用文献数
5

症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.
著者
若林 誠一郎
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2008-2011
著者
山下 俊一 小西 眞人 中山 晋介 中林 誠一郎 國分 眞一朗
出版者
日本平滑筋学会
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:13428152)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.J-38-J-38, 2006-04

rights: 日本平滑筋学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110006194618/
著者
魚崎 浩平 SHEN Y.R. OCKO Benjami DAVIS Jason DOBSON P. HILL H.A.O. 佐藤 縁 水谷 文雄 叶 深 近藤 敏啓 中林 誠一郎 YE Shen DAVIS Jason.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

まず研究開始時に2年間の研究を効率的に実施するために、国内側のメンバーの間で研究方針を十分検討し確認した。ついで、研究代表者がオックスフォード大学を訪問し、研究方針の確認を行った。以後、これらの打ち合わせで決定した内容に基づき、以下の通り研究を実施した。なお、2年目には新規メンバー(オックスフォード大Jason J.Davis、ブルックヘブン国立研究所Benjamin Ocko、カリフォルニア大Y.R.Shen)を加え研究をより効率的に実施した。初年度1.オックスフォード大における生物電気化学研究のレベルを十分に理解するために、北大において、オックスフォード大研究者による情報交換セミナーを実施した。2.本研究では自己組織化法のセンサーへの応用を念頭に置いており、そのために最適な構造をもったマイクロ電極の設計とその形成法の検討を行った(オックスフォード大)。さらに、このようにして形成したマイクロ電極の電子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)による評価を行った。さらに、より高度な評価をめざして、新しい走査プローブ顕微鏡を考案、設計、製作を行い、性能確認を行った(北大)。3.また、本研究では生体機能を念頭においており、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた(生命研)。4.界面機能の動的評価を目的に、自己組織化分子層の電気化学反応に伴う構造変化をその場追跡可能な反射赤外分光システムを構築し、生体機能との関連でも重要なキノン/ヒドロキノン部位を持つ自己組織化単分子層に適用した。酸化還元に伴う構造変化を明確に検出できた(北大)。2年度1.新しい界面敏感な手法である和周波発生分光法(Sum Frequency Generation:SFG)および表面X線回折法(Surface X-Ray Diffraction:SXRD)の本研究への導入の可能性を各々Shen教授、Ocko教授の研究室への訪問と討論を通して検討し、その有用正を確認した(カリフォルニア大、ブルックヘブン研究所)。2.水晶振動子マイクロバランス法(Quarts Crystal Microbalance:QCM)および走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:STM)によるアルカンチオールの自己組織化過程の追跡を行った(北大)。3.STMによるプロモータ分子の自己組織化過程の追跡をオックスフォード大Jason J.Davis氏が北大の装置を用いて行い、世界で初めて当該分子層の分子配列をとらえた(北大、オックスフォード大)。4.昨年度に引き続き、生体機能を念頭において、チトクロームcと電極との間の電子移動を促進するための界面構造の設計を目標に、種々の混合自己組織化膜表面での電気化学特性を調べた。また、この時の界面構造を詳細に調べるために、アルカリ溶液中での還元脱離およびSTMによる表面構造観察を行った(北大、生命研)。5.以上の成果を国際学術誌をはじめ、国内外の学会で発表した。
著者
高崎 健 小林 誠一郎 鈴木 茂 鈴木 博孝 武藤 晴臣 原田 瑞也 戸田 一寿 済陽 高穂 山名 泰夫 長岡 巍 朝戸 末男 林 恒男 喜多村 陽一 平山 芳文
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.759-765, 1980-07-01
被引用文献数
16

食道静脈瘤に対する直達手術としての食道離断術には, 経胸的, 経腹的の二通りの方法がある. この両術式は単に食道離断を胸部で行うか, 腹部で行うかといった差ではなく, 血行郭清の考えか方に大きな相違がある. しかしながら一般にはこの点について誤解があると思われ, 経腹的な方法では血行郭清が不十分であると思われているむきがある. われわれの経腹的食道離断術100例の成績は手術死亡6例, 再出血は6例であるが, 血行郭清に改良を加えた最近の58例には再吐血は認められておらず, 経胸的方法にくらべ何ら遜色ない術式であると考え, 食道静脈瘤の成り立ちより考えた両術式の血行郭清の相違点につき明らかにしたい.
著者
小林 誠一郎 高崎 健 浜野 恭一 山田 明義 鈴木 茂 青木 暁 武藤 晴臣 原田 瑞也 秋本 伸 岩塚 迪雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.686-690, 1977-11-30

腸管吻合器の消化管手術分野への応用について, 私どもの58例の臨床経験を述べた. 食道静脈瘤に対する食道離断術, 食道癌に対する食道胃吻合術 (胸壁前および胸腔内吻合) 噴門部癌に対する食道空腸吻合術, 直腸結腸病変に対する低位前方切除術などに関して, その利用方法, 手術手技について略述した. 器械を用いることの利点としては, 吻合の確実性, 手術時間の短縮, ひいては手術侵襲の軽減などがあげられよう. とくに下部食道噴門部癌に対する経腹的操作のみによる, 縦隔側高位での食道切離食道空腸吻合術については, 吻合器使用の良い適応であると考えている.