著者
井ノ崎 敦子 葛西 真記子 Atsuko INOSAKI Makiko KASAI
出版者
鳴門教育大学地域連携センター
雑誌
鳴門教育大学学校教育研究紀要 = Bulletin of Center for Collaboration in Community Naruto University of Education (ISSN:18806864)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.27-33, 2019-02

本研究は,学生相談における恋愛問題解決支援のあり方を探求するために,国内外の大学生の恋愛に関する心理学的研究を概観することを目的とした。研究1では,学術情報データベースを用いて収集した国内外の査読学術論文を概観した。その結果,国外の研究論文が45本,国内の研究が21本収集された。恋愛関係進展度別に論文数を調べたところ,国外,国内ともに恋愛関係継続時の論文が最も多かった。研究1の結果,国内における事例研究が皆無であったことから,恋愛問題の解決を部分的に支援している事例研究の有無とその特徴を概観することを目的に研究2を実施した。研究2では,青年の事例研究を多く掲載している3つの学術誌(心理臨床学研究,学生相談研究,精神分析研究)から収集した。その結果,39本の論文が収集された。また,女性クライエントが女性セラピストに対して,母親からの情緒的応答の体験不足の影響と思われる恋愛関係継続時の悩みを訴える事例研究が最も多いという特徴が見られた。これらの結果から,学生相談において恋愛問題解決を支援する際には,背景に養育者の情動的応答体験不足があることを理解した上で,セラピストが適切な情動的応答を行なうことが肝要であることが示唆された。
著者
井ノ崎 敦子 葛西 真記子 Atsuko INOSAKI Makiko KASAI
出版者
鳴門教育大学地域連携センター
雑誌
鳴門教育大学学校教育研究紀要 = Bulletin of Center for Collaboration in Community Naruto University of Education (ISSN:18806864)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-8, 2020-02

本研究は,大学生の恋愛の発達と自己の発達との関連を検討することを目的とした。大学生352名を対象に,自己構造の安定性に関する質問紙,恋愛様相尺度,及び主な養育者による被受容感尺度を用いて調査を実施した。交際経験のある203名を対象に適合性の高いモデルにおいてジェンダー差を検討した結果,男性では,自己対象体験不全が自己の発達を阻害するが,自己の発達は恋愛の発達に影響しないことが見出された。一方,女性では,自己対象体験不全が自己の発達を阻害し,自己の発達不全が恋愛の発達も阻害することが見出された。恋愛相談においては,身近な他者からの共感と助言を求める学生が多いことが見出された。これらの結果から,大学生の恋愛の発達と自己の発達が関連するという仮説が部分的に支持された。今後は,主な養育者以外との間での自己対象体験と恋愛や自己の発達との関連を検討することが課題である。
著者
井ノ崎 敦子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.84, pp.PS-004-PS-004, 2020

<p>本研究の目的は,学生相談における恋愛相談の実態を把握することである。全国の大学786校の学生相談機関の学生相談従事者を対象に実施した。欠損値のない回答者は101名となり,女性が男性よりも多く(女性74名,男性27名),カウンセラーが最も多かった(73名,72.3%)。また,約8割の者が恋愛相談を経験しており,恋愛相談を経験している者が未経験者よりも多かった。さらに恋愛相談者では,女子学生が男子学生よりも多かった。そこで女子学生の恋愛相談事例を分析したところ,恋愛関係進展度別では,恋愛関係継続時における恋愛問題での相談が最も多く,全体の38.8%を占めていた。また,恋愛相談に関する学生相談従事者の意見や感想では,恋愛問題の背景理解の重要性を訴える内容の記述が多く見られた。これらの結果から,恋愛相談のために学生相談を利用する学生が多く存在する中で女子学生のほうが多かった理由として,自己感の安定と恋愛状況との関連が強いことが影響していると推察された。また,学生相談で恋愛相談に対応する際,単なる表面的対処だけでなく,来談学生の人生課題にも焦点を当てることの重要性が示唆された。</p><p> </p><p>演題名訂正</p><p>(誤)</p><p>学生生相談における恋愛相談に関する実態調査</p><p>(正)</p><p>学生相談における恋愛相談に関する実態調査</p>
著者
井ノ崎 敦子 葛西 真記子 Atsuko INOSAKI Makiko KASAI
出版者
鳴門教育大学地域連携センター
雑誌
鳴門教育大学学校教育研究紀要 = Bulletin of Center for Collaboration in Community Naruto University of Education (ISSN:18806864)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-8, 2020-02

本研究は,大学生の恋愛の発達と自己の発達との関連を検討することを目的とした。大学生352名を対象に,自己構造の安定性に関する質問紙,恋愛様相尺度,及び主な養育者による被受容感尺度を用いて調査を実施した。交際経験のある203名を対象に適合性の高いモデルにおいてジェンダー差を検討した結果,男性では,自己対象体験不全が自己の発達を阻害するが,自己の発達は恋愛の発達に影響しないことが見出された。一方,女性では,自己対象体験不全が自己の発達を阻害し,自己の発達不全が恋愛の発達も阻害することが見出された。恋愛相談においては,身近な他者からの共感と助言を求める学生が多いことが見出された。これらの結果から,大学生の恋愛の発達と自己の発達が関連するという仮説が部分的に支持された。今後は,主な養育者以外との間での自己対象体験と恋愛や自己の発達との関連を検討することが課題である。
著者
井ノ崎 敦子 上野 淳子 松並 知子 青野 篤子 赤澤 淳子
出版者
大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター
雑誌
学校危機とメンタルケア (ISSN:1883745X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.49-64, 2012-03-31

近年、10代や20代の若者のカップルにおける暴力、すなわちデートDVが深刻な社会問題として注目されている。デートDV予防の重要性が指摘され、様々な実践活動が各地で展開されているが、生起メカニズムに関する研究はほとんどない。デートDVは暴力問題の1つでもあるが、不健全な恋愛関係の1形態でもある。恋愛関係に関しては、愛着理論に基づく研究が進んでいる。それらの中で、不健全な愛着を示す者は、不健全な恋愛関係を形成しやすいことが指摘されている。このことから、デートDVの生起が愛着の不健全さと関連があると考えられる。そこで、本研究では、デートDVの加害及び被害経験の程度と愛着の不健全さとの聞に関連が見られるかを検討することを目的とした。729人の大学生を対象に調査した結果、男女ともデートDV経験と愛着の不健全さとの聞に関連が見られ、男性の場合は、デートDV加害経験と親密性の回避と関連があり、女性の場合、デートDV加害及び被害経験と見捨てられ不安との聞に関連が見られた。また、男女でデートDV経験のリスクの高い愛着スタイノレが「とらわれ型」であったが、男女でデートDV経験の生起に関係する愛着の次元が異なった。以上のことから、性別の違いによって、愛着の不健全さとデートDVの経験の形の関連には違いがあり、デートDV予防にもジェンダーを考慮したプログラムの開発が必要であることが示唆された。
著者
赤澤 淳子 井ノ崎 敦子 上野 淳子 松並 知子 青野 篤子
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.11-23, 2011-12-30

本研究では,デートDVを当事者間の親密性や関係性などの関係的変数から検討することを目的とした.具体的には,衡平性の認知による,恋愛スタイルやデートDV被害・加害経験の差異,また,衡平性に関する各変数および恋愛スタイルが,デートDVの被害加害経験に及ぼす影響について分析した.調査への参加者は,大学および短期大学の学生329名であった.分析の結果,過小利得者は,衡平利得者や過大利得者より関係満足度が低かった.また,過小利得者では,パートナーとの関係性に没頭する狂気的な愛のスタイルや,パートナーとの間に距離を保とうとする遊び半分のゲーム感覚的な愛のスタイルという対称的な感情が高いという特徴が示され,アンビバレントな感情をパートナーに対して抱きやすいことが示唆された.さらに,自己投入がManiaを経由して,DV被害加害経験を生起させることが明らかとなった.つまり,関係のアンバランスさが,嫉妬,不安,抑うつのような強い感情を高め,デートDVの加害・被害を引き起こしている可能性が示唆された.
著者
井ノ崎 敦子 大辻 隆夫 大辻 隆夫 OTSUJI Takao
出版者
京都女子大学発達教育学部
雑誌
京都女子大学発達教育学部紀要 (ISSN:13495992)
巻号頁・発行日
no.6, pp.61-71, 2010-02

本研究は, DV被害女性のためのサポートグループの開発とその効果について検討することを目的とした。研究1では, DV被害女性のためのサポートグループの効果に関する仮説を提示することを目的として, サポートグループに参加した7名のDV被害女性のプロセス分析を行った。その結果, 1.DV被害への囚われ, 2. DV被害の客観的理解, 3.過去のトラウマ体験への直面, 4.自己肯定感の表明, 5.現在最も深刻な被害への直面, 6.現実的対処の提案という6つの段階を経て心理的自立を促進させるという仮説が見出された。続く研究2では, 研究1で提示されたサポートグループの効果に関する仮説を検証するために, 別のグループに参加した3人のDV被害女性のプロセス分析を行った。その結果, 5の段階を除く, 5つの段階(1~4, 及び6)が妥当なものとして確認された。これにより, サポートグループの効果に関する仮説はほぼ支持されたと言える。