- 著者
-
井上 達也
- 出版者
- 一般社団法人日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.10, pp.814-817, 1995-10-05
人為的であれ自然現象に対してであれ,一般に設計はある要求条件に対しそれを充足するよう行われる.速くという条件に対し高速鉄道を設計したり,地震に耐えるという要求に橋梁の耐震設計を実施したりである.特に要求が自然現象に対してである場合,自然現象の詳細な特性把握が適切な設計を実施する上で重要であり,それが厳密性を有し正確であればあるほど要求に対する適合性或いは耐力の高い設計となる.原子炉の耐震設計も自然現象に対してであるからこれと同様であって,一連の設計の中で要求条件の特性把握に相当する"想定する地震の大きさの決定"が重要である.これを含め,わが国原子力発電所の耐震設計は,学者,専門家らによって策定された国の耐震設計審査指針によって設計されており,ここに紹介する原子炉の耐震性もそれをもとにした設計の考え方の紹介である."原子炉"と総称したが,具体的には原子炉建屋に入力する地震動の大きさ決定に説明の主眼を置いており,それを受けて建屋,原子炉本体などの順で実施する建物・機器の解析・設計についても言及している.なお,耐震設計技術指針が同設計審査指針を解説しており,背景,算定式,評価法が詳述されている.阪神・淡路大震災の発生により地震時の安全性に高い関心が寄せられている.関連して,原子炉の安全性は大変高いといわれているが,それは何故か.解説するよう依頼を受け説明を試みた.