著者
亀井 文 坂岡 優美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】 レジスタントスターチ(RS)は難消化性のでんぷんで、大腸において発酵し短鎖脂肪酸を産生することから腸内環境に重要であることが明らかになってきている。長芋は草本蔓性の多年草で,日本には平安時代に中国から伝来したとされており、青森県,長野県,北海道,茨城県が主産地である。長芋は他のやまのいも類に比べ水分が多く粘り気が少ないことが特徴で、シャキシャキとした歯触りを生かして山かけや千切りとして生で食するほか,揚げ物のつなぎや和菓子としても利用されている。生の長芋にはRSが多く含まれていることはこれまでの研究で報告されているが、調理形態や加熱による長芋のRSに関する研究は少ないことから、本研究においては、長芋のすりおろし状態と半月切り状態の二つの調理形態別の加熱処理温度の違いによるRS量の変化について調べることを目的とした。【方法】 実験には青森県産の長芋であるガンクミジカ(平成28年産)を用いた。直径4.5cm厚さ1cmの半月切りとすりおろした生の長芋、70℃15分加熱処理した半月切りとすりおろした長芋,沸騰水浴中10分加熱した半月切りとすりおろした長芋の6条件のRS量を測定した。RS量測定は脱水操作後、Megazyme社のRS測定キットを使用した。【結果】 生の長芋のRS量は半月切りが33.54%、すりおろしが20.21%であった。70℃加熱のRS量は半月切りが5.24%、すりおろしが3.25%、沸騰加熱のRS量は半月切り4.73%、すりおろし6.11%であったことから、生の長芋のRS量は70℃および沸騰加熱後のRS量と比べて5~6倍のRS量であることが明らかとなった。調理形態については,生において半月切りのRS量はすりおろしたRS量と比較して有意に高かったが、70℃加熱処理、沸騰水浴中加熱処理においては有意な差が見られなかった。このことより、生のすりおろしていない長芋の摂取によりRSをより多く摂ることができることが示唆された。
著者
亀井 文 高橋 遥
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-07-08)

目的:レジスタントスターチ(RS)は胃や小腸で消化されず大腸に達するでんぷんであり、大腸の健康に重要な役割を果たしている。しかし、でんぷん性食品の加熱調理条件や保存条件によるRS生成の違いを調べている研究、特にさつまいもについての研究は少ない。そこで本研究はさつまいもを試料とし、茹で、蒸し、焼きの調理方法の違いと調理後直ぐ(直後)、24時間冷蔵保存(冷蔵)、冷蔵保存後電子レンジ再加熱(再加熱)のRS量の変化について調べた。 方法:試料は徳島県産なると金時(平成24年11月)で、皮なし直径約4㎝で2㎝厚さのものを用いた。茹では沸騰15分間、蒸しは20分間、焼きはオーブン予熱無しでアルミホイルに包み160℃20分間加熱した。水分量とRS量は各調理方法の、直後、冷蔵、再加熱の3条件を測定した。RS量測定は脱水操作後、Megazyme社のRS測定キットを使用した。 結果:茹でのRS量は直後6.17%、冷蔵7.32%、再加熱7.16%、蒸しのRS量は直後5.45%、冷蔵6.27%、再加熱5.78%、焼きのRS量は直後3.06%、冷蔵3.51%、再加熱3.06%であった。茹でのRS量は、直後、冷蔵、再加熱後の3条件とも一番高く、次いで蒸し、焼きの順であった。また、茹でについては、直後より冷蔵および再加熱後のRS量が有意に高く、蒸しでは直後より冷蔵後のRS量が有意に高い値となった。
著者
亀井 文 渡邉 明恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】 さつまいも(芋)は食物繊維(DF)を多く含むでんぷん性食品である。先行研究では、生と加熱調理した芋のDF量を比べると、加熱調理によって不溶性食物繊維(IDF)量が増加傾向にあることが報告されている。レジスタントスターチ(RS)は胃や小腸で消化されることなく大腸に達するでんぷんであり、DF様のプレバイオティクスとして近年注目されている。また、RSは水に不溶であるので、定法の分析ではIDFの一部とされている可能性が高い。我々は先に、芋の蒸し加熱、電子レンジ加熱のRS量を報告している。本研究では、加熱調理した芋のRS量とIDF量を測定し、加熱調理によるIDF量の変化とRS生成との関わりについて検討した。<br>【方法】 徳島県産の鳴門金時(平成22年11月収穫)を用いて、生、茹で加熱(沸騰後15分間)、蒸し加熱(蒸気20分間)、電子レンジ加熱(200w・5分間)の4条件で試料調製を行った。RS測定用試料は、生と加熱直後にメタノールを加えて乳鉢中で磨砕しながら脱水した。その後、メタノールとアセトンで洗浄後、室温で乾燥しRS量を測定した。IDF測定用試料は生と加熱調理後に40℃20時間乾燥させたものを試料とした。RS量及びIDF量はメガザイム社のキットを用いた。<br>【結果】 RS量は、生が12.0%、茹でが8.8%、蒸しが10.2%、レンジ加熱が5.2%であった。IDF量は、生が5.0%、茹でが7.3%、蒸しが6.0%、レンジ加熱が6.2%であった。茹でおよび蒸し加熱はRS量がIDF量よりも多く、レンジ加熱はRS量がIDF量よりも少ない結果であり、芋のRS量とIDF量は定量法の違いにより数値を比較することは難しいと考えられた。
著者
亀井 文 弓座 成美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

[目的] 胃や小腸で消化吸収されることなく大腸にまで到達するデンプン、レジスタントスターチ(RS)は食物繊維同様に腸内細菌の発酵基質として利用され、そこで産生された短鎖脂肪酸は大腸の健康に重要な役割を果たしている。しかし、でんぷん性食品のRS量が、調理によってどのように変化するのかを調べた研究はあまり多くない。前回は米の炊飯時の加水量の増減に対してRS量には変化がなく、加水量の異なる炊き立て飯とRS量との間に関係性は見られなかったことを報告した。今回は炊飯時の加熱温度上昇の違いによる炊き立て飯とRS量について実験を行った。<br>[方法] 本実験は平成23年新潟県魚沼産コシヒカリを用いた。加熱条件は鍋を用いて100℃まですぐに上昇させて高温を維持する標準的な炊飯(A)、100℃まで一定に近い温度上昇変化での炊飯(B)、低温を長時間維持する炊飯(C)、炊飯器炊飯(日立RZ-DM3)(D)、電子レンジ炊飯(E)の5条件で行った。炊き上がり後、飯を均一化し、バットに広げて荒熱を取った後脱水操作を行い、炊き立て飯としてRS量を測定した。RS量測定はRS測定キット(メガザイム社)を用いて行った。<br>[結果] 条件CのRS量は0.34%であり他の条件と比べて有意に低い値であった。条件DのRS量は0.57%であり、条件A(0.45%)、B(0.45%)と比べて有意に高い値であった。この結果より、温度上昇変化およびそれに伴う炊飯時間の違いがRS量増加に関与していることが示唆された。
著者
広島県食文化研究グループ 三好 康之 岡本 洋子 前田 ひろみ 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 亀井 文 上村 芳枝 倉田 美恵 土屋 房江 三谷 璋子 吉永 美和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.369-377, 2006-12-20
被引用文献数
1

広島県で摂取されている魚料理を把握する目的で,広島県在住者171名を対象として質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。回答数は4,551件であった。魚料理にはあじ,いか,ぶり,あさり,さばがよく用いられ,広島県で漁獲量の多い牡蠣,ちぬ,たちうお,こいわし,なまこはこれらより少なかった。また,島嶼地域では,自給の魚介類で調理する魚料理が他の地域よりも多かった。調理法は,焼き物が最も多く,なま物,煮物,揚げ物の4つの調理方法で総回答数の75.1%を占めていた。和風調理が多く,焼き物の64.4%を塩焼きが,煮物の75.2%を煮付けが占めていた。対照的に,こしょう,バターなどを用いた洋風調理は少なかった。広島県特有の魚介類であるこいわしは,天ぷらや刺身として,ちぬは塩焼きとして,えびじゃこは汁物や塩茹でとして料理されていた。
著者
亀井 文 星 千裕
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.165-170, 2023-03-31

レジスタントスターチ(RS)は、食物繊維と類似の生理作用を持つ機能性成分として注目されている。本研究においては米飯の炊飯直後から約20℃までの温度降下の初期老化過程において、米飯のRS含量がどのように変化するかをおにぎりの形態で明らかにすることを目的とした。炊飯後すぐにおにぎりを作製し、①おにぎりを皿に置き、そのまま放冷と②おにぎりを皿に置き、皿ごとラップをかぶせて放冷の2条件で2時間室温放冷したときの温度変化とRS量の経時変化を比較検討した。①の条件下では、温度は0分から30分において急激に低下しRS量は時間経過ごとに有意にRS量は増加した。②の条件下では、温度の低下は①の条件の温度低下と比べて緩やかな低下となり、時間の経過によるRS量に有意な差は見られなかった。このことから、老化が始まるとされる60℃までのおにぎりの急激な温度低下とその後の継続的な温度低下がRSの生成に関わることが示唆された。
著者
岡本 洋子 土屋 房江 前田 ひろみ 三谷 璋子 三好 康之 吉永 美和子 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 上村 芳枝 亀井 文 倉田 美恵 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.160, 2005

<br>【目的】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:魚介類」の一環として、広島県において調査を行った。今回は、あなご、かき、まだこ(食品成分表の食品番号10015:10292:10361)の利用実態について調べることを目的とした。<BR>【方法】広島県内の14地域で、質問紙調査を実施した。14地域を島嶼部、都市沿岸部、都市内陸部、中国山地に4区分した。調査項目は、魚介類の種類、入手方法、手作り・購入、調理法、日常食・行事食度等である。調査対象者は20歳代から70歳代の171名である。調査時期は2003年10月_から_2004年2月。<BR>【結果】(1) 記載魚介類は212種類(食品成分表)、総記載料理数は4,684であった。(2) 調査者数に対するあなごの出現比率では、島嶼部83.5%、都市沿岸部80.6%、都市内陸部45.9%、中国山地18.8%であった。調理法では、焼き物と飯料理が多くみられ、照り焼き、ちらしずし、あなご飯、巻きずし、刺身(島嶼部)、雑煮、茶碗蒸し等に調理された。(3) かきの出現比率では、島嶼部63.1%、都市沿岸部91.2%、都市内陸部89.5%、中国山地73.0%であった。調理法では、4地域いずれにおいても、フライ、鍋物、酢がきが多くみられた。殻付き素焼きやグラタン料理もみられた。(4) まだこの出現比率では、島嶼部69.9%、都市沿岸部63.1%、都市内陸部36.3%、中国山地75.3%であった。調理法では、4地域いずれにおいてもなま物(刺身、酢の物)や茹で物(ゆでだこ、ぬた)が多くみられ、揚げ物(島嶼部ではたこ天)、たこの煮物やたこ飯(都市沿岸部)、にぎり寿司、たこ焼き等に調理された。
著者
亀井 文 渥美 令菜
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education
巻号頁・発行日
vol.52, pp.211-217, 2018-01-31

Background and objectives:Traditional Japanese sweets are very popular and are often eaten in middleage and elderly people. A lot of traditional Japanese sweets are made from adzuki bean paste, which is called “An”. Adzuki beans are a good source of carbohydrate as well as of protein, because they are starchy pulse. Resistant starch(RS)escapes digestion until reaching colon and acts like dietary fiber. Recently, many researchers suggest taking this new type of dietary fiber for our health benefits. The purpose of this study was to investigate that the effect of different cooking times on RS contents and particle morphology of adzuki bean paste “An”.Methods:Adzuki beans were boiled 50, 70, 90 minutes with five times volume of water. After grinding, the mixture was strained through a sieve in order to remove husk and put into cheesecloth. Then, 6kg of stone was placed on the cheesecloth for 1 hour to dehydrate “An”. Each treatment of “An” was analyzed RS contents and observed “An” particles by optical microscope.Results:RS contents of “An” of 50, 70, 90 minutes cooking time were 6.4%, 5.0%, 4.4%, respectively. These results showed that the longer adzuki beans were cooked, the less amounts of RS were formed. Optical microscope observation showed that longer cooking time increased damaged or ruptured “An” particles.Conclusions:These results indicated that damaged “An” particles had more digestible than intact “An”particles. It might be possible that intact “An” particles resist digestive enzymes. Furthermore, starch inside ‘An’ particles might be altered their structure during cooking. These change would be affected RS contents of adzuki bean paste “An”.