著者
伏見 正則
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.350-359, 1981-12
被引用文献数
2

本論文は、吉典的ないわゆる秘書選びの問題(secretary poblem、以下SPと略す)に対する解が、雇用がある種の競合状態にある場合にはどのように変わるかについて考察したものである。基本的なモデルは次のとおりである。二つの会社がそれぞれ1人の秘書を採用しようとしている。n人の応募者が、ランダムな順番で毎朝1人ずつ現われ、各社は他社と独立にこの応募者と面接する。採否の決定は、その日の午後応募者に伝えられる。採用通知を出した会社は、残りの応募者の面接は行なわない。一社だけから採用通知を受けた応募者はその会社に採用されるが、両社から採用通知を受けたものは、等確率でいずれか一方を選んで就職する。両社の目標は、n人の候補者の中の最良のものの採用に成功する確率を最大にすることである。この問題は、二人非零和非協力ゲームの一種である。SPをゲーム論的に扱ったモデルは従来いくつかあるが、それらに対するNash均衡解は、どのプレーヤーの戦略も同じで、SPの場合よりも早めに採用を決めようとするものである。われわれのモデルにおける均衡解は、これらと対照的に、一社はSPの場合よりも早めに採用を決めようとし、他社はSPの場合よりも遅めに採用を決めようとする戦略である。雇用が競合する状態になると、各社が競って早期に採用を内定しようとする、いわゆる青田買い競争の現象がしばしば見られるが、本論文の結果は、そのような競争が必ずしも得策でないという教訓を含んでいる。最後に、他社の採否の情報が伝わる場合についてのモデルについても論じている。
著者
鈴木 敦夫 長谷川 利治 伏見 正則 尾崎 俊治 澤木 勝茂 佐々木 美裕 鈴木 敦夫
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の成果は3つテーマに関して得られた。具体的には,Iインフラストラクチャーの最適運用・設計に関する研究,その中に,I-1高速道路の最適運用に関する研究,I-2救急車の最適運用に関する研究,I-3ハブ空港の最適配置の研究,I-4配置の数学モデルに関する研究,I-5その他最適化手法の応用,派生研究として,IIセンサーネットワークに関する研究,IIIファイナンス工学に関する研究にまとめられる。IIは,都市内のインフラストラクチャーの維持管理にワイアレスセンサーを用いることができる可能性から研究を進めた。IIIは,都市の開発プロジェクトをリアルオプションと呼ばれるファイナンス工学の応用手法をもちいることで定量的に評価できる可能性から研究を進めた。Iでは,高速道路の交通量データの分析,災害時避難経路問題の解法、救急車の配置問題の解法の提案、競争化でのハブ空港の配置問題,都市内の商業施設の競争的な配置の問題の解法の提案を行った。災害時に地下街や大学キャンパスから避難する方法をシミュレーションの手法を用いて分析を行った。IIでは,都市内の配置問題から派生して,センサーネットワーク関連の配置問題に取り組んで成果を挙げた。センサーネットワークの問題は,例えば,都市のインフラのひとつである橋梁の保守などにも用いることができる。橋梁の要所にセンサーを配置し,亀裂などの崩壊の兆しを事前に感知して警報を発することなど広く応用が期待される。ここでは,効率的なセンサーの配置について研究を行った。IIIでは,金融商品の分析、特に転換社債のゲーム論的な分析を行った。今後は都市内のプロジェクトを金融派生商品として評価する金融手法の基礎となる研究成果である。
著者
鈴木 敦夫 李 明哲 佐々木 美裕 鵜飼 孝盛 大山 達雄 三浦 英俊 栗田 治 田口 東 稲川 敬介 小市 俊悟 古田 壮宏 鳥海 重喜 藤原 祥裕 高松 瑞代 田中 健一 腰塚 武志 石崎 文雄 伏見 正則 腰塚 武志
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

都市内の災害時の人の流動に関する総合的な研究として,本研究ではテーマを3つ設定した.1)交通ネットワークシステムの頑健性と効率性の評価:道路,鉄道,航空網それぞれについて,GISデータ,時刻表,交通量データを用いて頑健性と効率性の評価を行った.2)緊急時の都市内・都市間流動に関するモデル:過大な交通量が流れているときの鉄道の遅延を記述する数理モデルを開発した.また,都市内で早急な避難が必要なほどの重大な事故が発生したときの都市内経路の解析について研究を進展させている.3)コンパクトな都市空間の設計原理:鉄道網の発達が平面を時間的に縮小させる効果について数理的に分析した.
著者
伏見 正則 腰塚 武志 大山 達雄 田口 東 栗田 治 三浦 英俊
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1.ネットワーク構造を有するシステムの安定性,頑健性,信頼性等の定量的評価のための基礎理論の構築・手法の開発を行い,その応用として,東京都の水道網,マニラ市の道路交通網,等について数値計算を行った.2.都市の道路網において,交通規制や事故,工事,震災などにより一部分が通行不可能となった場合に全体が受ける影響の評価や,救急車の最短経路を求めるシステムの構築などを行った.3.首都圏に直下型地震が発生した場合を想定して,首都圏の鉄道利用者の被災状況を詳細に計算した.これらの結果は,救急活動の新しい検討資料として有効であると考えられる.4.首都圏の電車ネットワークを利用する通勤客を対象として,時間依存の利用者均衡配分問題を解くモデルを作成した.さらに,急行電車を廃止して,乗り換えによる混雑と電車の遅延をなくすことが,結果として乗客の円滑な輸送に効果があることをしめした.この対策は,ある私鉄線で実際に導入されて効果を挙げている.5.電力自由化問題を取り上げ,各種分散型電源の普及形態を探る数理計画モデルを構築し,種々の観点からのぞましい分散形態を探った.6.都市間移動のための施設としての新空港を建設した場合に,利用者の予測をするモデルを提案した.7.鉄道輸送に関しては,経済性を考慮して軌道の最適保守計画を策定するモデルを作成した.また,CO_2の排出削減の観点から,トラックによる貨物輸送を貨物列車による輸送に転換できるかどうかを検討するモデルを作成し,東海道線を例として実証的分析を行った.8.空間相互作用モデルの一般化に向けて,立ち寄り型のエントロピーモデルの開発と周遊モデルの提案を行った.
著者
尾崎 俊治 伏見 正則 青山 幹雄 土肥 正 岡村 寛之
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究プロジェクトでは,最終製品としてのソフトウェアシステムの品質を確保する目的で,ソフトウェアテストの妥当性検証およびソフトウェアの信頼性評価を行う手法に関する研究を行った.具体的には,(i)ソフトウェアテストにおけるランダムテストをより発展させた準ランダムソフトウェアテストあるいはランダムテストに基づいたより効率的なテストケース生成手法の確立,(ii)(準)ランダムテストに基づいたソフトウェア信頼性評価技術の精巧化を行った.
著者
大山 達雄 丹羽 冨士雄 諸星 穂積 伏見 正則 杉野 隆 吉井 邦恒 森地 茂
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)わが国における過去20年間の鉄道事故を事業者、形態、原因という3つの観点から実証データをもとに統計的解析を行った。鉄道事故の推移を確率現象として捉えた上で、それらの形態を説明する数理モデルとして事故データを最も良く説明する確率モデルを提示し、特に踏切事故削減対策の効果分析を行った。(2)ネットワーク構造を有するライフラインシステムの頑健性の定量的評価のための基礎理論の構築と手法の開発を行った。その現実のシステムへの応用として、マニラ市(フィリピン共和国)と東京都における道路交通網を対象としたネットワークの連結強度解析に経路数え上げ法を適用し、両者の比較分析を行った。(3)都市交通・輸送、公共施設配置などの分野に対するOR手法の適用可能性に関する基礎研究として、わが国の主要な公共輸送システムとしての鉄道システムの軌道保守計画システムの構築、消防署等の公共施設最適配置のための数理計画最適化モデルの構築と検証、さらにはシステムモデル解の実用化を試みた。(4)わが国の危機管理対応策の一環として、食料安全保障問題を取り上げ、食料自給率向上のための最適戦略を求め、その効果分析を行うための最適化モデル構築を目的として、モデルの概念設計、データ収集、最適化計算を行った。(5)わが国における電力自由化問題を取り上げ、それに伴って増加が予想される各種分散型電源の望ましい普及形態を探る数理計画最適化モデルを構築し、供給者、需要家、そしてグローバルな観点という相互に異なる評価基準を有する主体にとって望ましい分散型電源の普及形態がどのようなものかを探った。(6)国内外における公共政策評価の理論と実際を整理するために、評価の現状、概要、事例紹介、経緯分析等からなる著書の編著を行った。本研究の最終報告書の作成を行った。
著者
伏見 正則 田口 東 大山 達雄 腰塚 武志 三浦 英俊 栗田 治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.都市の平面交通に関する数理的研究:東京都のような放射・環状道路網を有する都市,あるいは札幌や京都のような直交格子状道路網を有する都市において、通勤や物資の輸送等のために生ずる交通量について、種々の特性を数理的に求め、それに基づいて、渋滞を避けるために必要な道路面積、就業地域と住宅地域の最適な配分等についての知見を得た。また、東京都を例にとって、実際のデータと理論の整合性についても検討した。2.都市の高層ビルにおける移動時間の分析と、ビルの効率的面積配分に関する研究:高層ビル内の移動に関して重要な役割を果たすエレベータとエスカレータに関して,適切な役割分担、ゾーニング方式の最適設計、移動に必要な部分の面積とオフイスに使える面積を考慮したビルの最適形状等について数理的な検討を行った。また、ビル間の移動に要する時間を考慮した場合に、交通路と居住地をどのように配分するのが適切かについても数理的に論じた。さらに、新宿の高層ビル群で移動に要する時間の実地調査を行い、数理的なモデルの妥当性を検証するためのデータを得た。3.都市間交通網の評価:道路網あるいは鉄道網による都市の結びつきの強さをグラフ理論を使って評価する方法を検討し、それを使って、北海道の道路網およびユーラシア鉄道網の評価を行った。このような研究は、新線建設の重要度評価などのために有用であると考えられる。4.公共施設の最適配置:高額な高度医療機器や老人福祉医療施設などの公共施設の配置に関する地域間格差を調査し、それに基づいて、施設を適正に配置するための数理的手法について検討を行った。