著者
黒川 博文 佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.50-66, 2017 (Released:2018-02-03)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本研究では,A社の協力のもと,社員を対象に,様々な行動経済学的特性に関する質問を含んだ独自調査を行い,その個票とA社より提供を受けた残業時間に関するデータと組み合わせて,長時間労働者の特性を明らかにする.また,A社で導入された,残業時間上限目標を月45時間とし,働く時間と場所を自由に選べるという新たな人事制度の政策評価も行う.分析の結果,いくつかの行動経済学的特性と残業時間は統計的に有意な関係が観察された.例えば,時間選好の特性では,後回し傾向がある人の深夜残業時間が長い.社会的選好の特性では,平等主義者の総残業時間が長い.ビッグ5の性格特性では,誠実性が高い人の深夜残業時間は短いが,総残業時間は長い.一方,新人事制度の導入は残業時間を有意に削減した.特に,導入以前において月45時間以上働いていた人への残業削減効果が大きかった.
著者
佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.110-120, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
54
被引用文献数
1

本稿では,これまでに,医療・健康分野でどのような行動経済学研究の成果が蓄積されてきたかを整理する.本分野の研究は,患者を対象に,以下二つの分類で進められてきた.一つは,患者の意思決定上の行動経済学的な特性が積極的な医療・健康行動を取りやすくしたり,逆に,阻害したりしていることを明らかにする実証・実験研究である.具体的には,リスク回避的な人ほど積極的な医療・健康行動を取りやすいこと,一方で,時間割引率の大きい人・現在バイアスの強い人ほど取りにくいことがさまざまな医療・健康分野で観察されている.もう一つは,患者の行動経済学的な特性を逆に利用して,積極的な医療・健康行動を促進しようとする,ナッジの介入研究であり,実際に,ナッジが患者の行動変容を促すことが,多くの研究で報告されている.さらに,近年の研究動向として,医療者を対象にした行動経済学研究を紹介するとともに,長期的かつ安定的に効果を発揮するナッジの開発の必要性について議論する.
著者
佐々木 周作 若野 綾子 平井 啓 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.91-94, 2017 (Released:2017-06-01)
参考文献数
12

看護師は利他的であることが望ましい,という通説がある.しかし,本研究は,行動経済学の利他的選好のうち,“純粋な利他性”を強く持つ看護師ほど心理的に燃え尽きやすいことを実証的に示した.本研究では,日本国内の医療機関に勤務する看護師501名を対象にインターネット・アンケート調査を実施し,その中の仮想的実験質問を使って看護師の利他的選好の種類を識別した.重回帰分析の推定結果から,他人の効用が自分の効用と正に相関する純粋に利他的な看護師は,いずれの種類の利他性を持たない看護師に比べバーンアウト指標の中の情緒的消耗感が高いこと,また,精神安定剤・抗うつ剤を常用している可能性が高いことがわかった.
著者
佐々木 周作 明坂 弥香 黒川 博文 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.100-105, 2015 (Released:2016-05-07)
参考文献数
24

社会的地位の上昇は長寿や健康を促進するだろうか.両者の相関関係はよく知られているが,前者から後者への因果効果を検証することは難しい.本研究では,日本で最も権威ある文学賞として知られる芥川賞と直木賞のデータを使用して,因果効果の有無・方向性・程度を分析した.具体的には,受賞者と非受賞候補者の同質性が高いと考え,受賞による社会的地位の上昇が余命にどのような影響を及ぼすかを検証した.純文学の新人賞である芥川賞では,初回候補時点から30年を経過するまでの受賞者の死亡確率は,候補者よりも67.5%程低い.予測値から算出した受賞者の平均余命は,候補者よりも3.3年程長い.一方,大衆小説作品の賞で中堅作家を主な対象とする直木賞では受賞者の死亡確率は35.4%程高く,平均余命も3.3年程短い.これらの結果は,受賞には平均余命の延命効果と短縮効果の両方が存在すること,社会経済的基盤の不安定な時には延命効果が相対的に大きいが,安定後には短縮効果の方が大きくなるという可能性を示唆している.
著者
佐々木 周作 石原 卓典 木戸 大道 北川 透 依田 高典
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S14-S17, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
8

本研究では,日本全国に居住する20–69歳の男女個人8,520名を対象にオンライン実験を行い,その中で2つの寄付先活動(植林活動・被災者支援活動)を設定して,マッチング寄付・社会比較・両者の組合せの介入がそれぞれの活動に対する寄付額選択にどのような影響を及ぼすかを明らかにした.分析から,以下の結果が得られた.まず,平均介入効果は寄付先活動によって大きく異なることが分かった.具体的には,マッチング寄付単体の介入は植林活動では平均的に寄付額を上昇させる正の効果を持つが,被災者支援活動では同様の効果を持たなかった.さらに,機械学習の手法を使用して回答者ごとの介入効果を推定して,介入効果の分布の特徴と寄付先活動による分布の違いを明らかにするとともに,同一個人内で寄付先活動毎の介入効果を比較することにより,寄付先活動の違いによらず同様の介入効果を持つケースと,寄付先活動の違いによって異なる介入効果を持つケースの両方が存在することを明らかにした.
著者
佐々木 周作 平井 啓 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.132-135, 2017 (Released:2017-06-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究は,行動経済学におけるリスク選好が日本人女性の乳がん検診の受診行動に及ぼす影響を検証する.乳がん検診の主対象である40歳台・50歳台の女性のうち,自治体検診・主婦検診の乳がん検診の対象者と想定できる者602名に対し,インターネット・アンケート調査を実施した.その中に,プロスペクト理論に基づいた仮想的実験質問を設定し,回答者の,利得局面と損失局面それぞれでのリスク回避度を抽出した.分析結果から,利得局面でリスク回避的に意思決定する人ほど乳がん検診を受診する確率が低いこと,また,損失局面でリスク愛好的に意思決定する人もまた受診する確率が低いことが分かった.さらに,追加分析によって,乳がんに関わる選択の結果を利得局面で認識する人と損失局面で認識する人の両方が存在する可能性を示した.
著者
佐々木 周作 黒川 博文 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S18-S21, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
8

本研究では,「寄付金控除」による還付施策と「マッチング寄付」による上乗せ施策が寄付行動に与える影響を,経済実験を使って比較した.インターネット調査会社の回答モニターから,性別と年代(20歳から69歳まで)の割合が均等になるように抽出して,金銭的報酬で動機づける経済実験を行った(N=2,300).分析の結果,たとえ優遇率が同じであっても,寄付するときの自己負担額を還付によって下げる寄付金控除に比べて,第三者の上乗せによって下げるマッチング寄付の方が高額の寄付を誘発する効果が大きいことが分かった.具体的に,50%の寄付金控除の群に割り当てられると,実際の寄付支出額が統制群に比べて約126円下落したのに対して,100%のマッチング寄付の群(優遇率は50%控除と実質的に同じ)に割り当てられると,逆に実際の寄付支出額が約56円上昇した.この結果は,海外の一連の先行研究で観察された結果と一致している.日本でも,マッチング寄付が寄付行動を促進する効果が相対的に大きい可能性が示唆された.
著者
黒川 博文 佐々木 周作
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.14, no.Special_issue, pp.S1-S4, 2021 (Released:2022-03-18)
参考文献数
5

本研究では,健康管理アプリ上で,ウォーキングによる身体的活動の促進を目的にしたフィールド実験を行った(N=498).歩数に応じた金銭的インセンティブの提供を受けるが,受取りの辞退可能なオプトアウト群,提供を受けるには自己申請が必要なオプトイン群,インセンティブの無いコントロール群の3群に参加者を割り当てた.オプトアウト群のインセンティブ加入率は100%であったのに対して,オプトイン群の加入率は約30%であった.この違いは,参加者が受取り方法に関する初期設定に強く影響を受けていることを示唆している.オプトアウト群では,歩数の有意な増加は観察されなかった.オプトイン群全体では,インセンティブの提供を受けられる期間の前半で,1日当たり約710歩増加した.実際にインセンティブを受け入れた人たちの間では,その期間の歩数は約2,280歩増加した.自己申請の上でインセンティブを受け取るオプトイン形式の方が,運動促進効果は高い.
著者
佐々木 周作 明坂 弥香 黒川 博文 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.100-105, 2015

社会的地位の上昇は長寿や健康を促進するだろうか.両者の相関関係はよく知られているが,前者から後者への因果効果を検証することは難しい.本研究では,日本で最も権威ある文学賞として知られる芥川賞と直木賞のデータを使用して,因果効果の有無・方向性・程度を分析した.具体的には,受賞者と非受賞候補者の同質性が高いと考え,受賞による社会的地位の上昇が余命にどのような影響を及ぼすかを検証した.純文学の新人賞である芥川賞では,初回候補時点から30年を経過するまでの受賞者の死亡確率は,候補者よりも67.5%程低い.予測値から算出した受賞者の平均余命は,候補者よりも3.3年程長い.一方,大衆小説作品の賞で中堅作家を主な対象とする直木賞では受賞者の死亡確率は35.4%程高く,平均余命も3.3年程短い.これらの結果は,受賞には平均余命の延命効果と短縮効果の両方が存在すること,社会経済的基盤の不安定な時には延命効果が相対的に大きいが,安定後には短縮効果の方が大きくなるという可能性を示唆している.
著者
加藤 大貴 佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Special_issue, pp.S22-S25, 2022 (Released:2023-03-20)
参考文献数
6

本研究は,日本の風しん追加定期接種において2019年度から実施されたクーポン券送付施策の効果を,地方自治体の行政データと全国規模のオンライン調査データを用いて検証する.追加定期接種は,日本が風しんに対する集団免疫を獲得するために,抗体保有率の低い40~57歳の男性を対象に実施されるものである.クーポン券は自治体を通じて段階的に送付され,初年度の2019年度には,40~46歳の男性に限定して送付された.47~57歳の男性がこの年度中にクーポン券を受け取るには,居住地域の自治体に自分から申請する必要があった.分析では,年齢によって2019年度にクーポン券が自動的に送付されるかどうかが決まることを利用した回帰不連続デザインで,クーポン券の送付の効果を推定した.その結果,クーポン券の送付は,申請の取引費用の抑制と追加定期接種の認知度の向上を通じて,抗体検査の受検率とワクチン接種率を高めることが明らかになった.
著者
佐々木 周作 河村 悠太 渡邉 文隆 岡田 彩
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.14, no.Special_issue, pp.S9-S12, 2021 (Released:2022-03-18)
参考文献数
5

個人寄付の促進施策は,寄付金控除やマッチング寄付などの金銭的インセンティブを用いる施策から,過去の寄付者や有名企業・著名人の寄付情報といった提供情報の内容や表現を工夫する施策まで多岐に渡る.行動経済学研究を含む学術研究によって施策の有効性が実験で確認されているものも多いが,非営利組織の実務で活用されるかどうかは資金調達業務を担当するファンドレイザーが施策を効果的と評価しているかどうかに依存すると考えられる.本研究では,282名の現役ファンドレイザーにアンケート調査を独自実施して,12種類の施策の,寄付を促進する効果と寄付者満足度を高める効果に対する主観的評価を測定した.ファンドレイザーの回答傾向を相対化する目的で,497名の寄付者にも同様の調査を実施した.結果として,いくつかの施策に対する評価が二者間で大きく異なることが分かった.例えば,ファンドレイザーは「間接経費無し・振込み手数料の負担無し」の施策を12種類の施策の中で相対的に寄付を促進せず,寄付者満足度を高めないと評価したのに対して,寄付者は,寄付を促進し寄付者満足度も高めると真逆の評価をしていた.
著者
平井 啓 佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.10, no.Special_issue, pp.S20-S25, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
11

本研究では,乳がん検診の受診行動と乳がん罹患や乳がん治療に関するヘルス・リテラシーとの関連性について検討を行った.40歳台・50歳台の女性を対象として,横断的デザインによるオンライン・アンケート調査を実施し,1,628名を対象とした解析を行った結果,乳がん検診の受診経験および計画意図と,乳がんの罹患リスク認知の高さ,乳がん検診と乳がん治療の効果に関する利得の認識の高さ,乳がん治療に対する知識の豊富さ,すなわちヘルス・リテラシーの高さが関連することが明らかになった.この結果は,乳がん検診の受診により,実際よりもかなり大きめの罹患リスクの認識を形成し,それが検診受診の目標意図を形成すると解釈することが可能である.一方,乳がん罹患のリスク認知を大きく高めることが受診意図の形成に貢献する可能性も考えられる.これらの因果関係の識別には,ランダム化比較試験等を採用した介入研究による検証が今後必要である.
著者
水野 篤 平井 啓 佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S32-S40, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
16

日本における乳がん検診受診率は欧米諸国の受診率(60–80%)と比較し低い水準にあり,受診率向上に向けた取り組みが重要と考えられる.本研究では,行動経済学的観点から利得フレーム・損失フレームに基づく受診推奨メッセージが与える影響に関して検討する.乳がん検診の主対象である40・50歳代の女性のうち,自治体検診・主婦検診の乳がん検診の対象者と想定できる者1,047名に対し,インターネット上で検診受診意図に利得フレームと損失フレームが与える影響をランダム化比較試験にて評価した.利得フレームと損失フレームでの実行意図,受診意図を認めた対象者は,それぞれ234 (45.0%) vs 250 (47.4%), 450 (86.5%) vs 477 (90.5%) であり,実行意図は有意ではなかったが,受診意図に対しては有意に損失フレームが影響を与えた.乳がんの検診受診においては危険回避度のみではなく,同定確率および治癒率を含めたモデルでより説明が可能であることを実験的環境で示し,本データでも再現性を確認した.
著者
髙橋 勇太 植竹 香織 津田 広和 大山 紘平 佐々木 周作
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S9-S13, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
7

本稿では,日本の地方自治体へのナッジの実装を推進する横浜市行動デザインチーム(YBiT)について,体制構築及び普及戦略の観点から分析することで,地方自治体におけるナッジの展開方法への示唆を得る.まず,体制構築については,先行研究をベースに海外諸都市のナッジ・ユニットとの比較を行った上で,専門性や行政・政治からのサポートなどの必要要素について整理した.地方自治体では,専門的な人材全てを内製化することが困難であるため,外部の専門家との連携が必須であると考えられる.次に,普及戦略については,地方自治体内にナッジを普及させる上での課題とそれへの対策について,独自に検討した普及プロセスモデルに基づき整理した.今後はこれらの実践モデルが理論化され,国内地方自治体でのナッジの実装や,国内のエビデンスが蓄積され,政策効果及び効率が向上されることが期待される.
著者
黒川 博文 佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.10, pp.50-66, 2017

<p>本研究では,A社の協力のもと,社員を対象に,様々な行動経済学的特性に関する質問を含んだ独自調査を行い,その個票とA社より提供を受けた残業時間に関するデータと組み合わせて,長時間労働者の特性を明らかにする.また,A社で導入された,残業時間上限目標を月45時間とし,働く時間と場所を自由に選べるという新たな人事制度の政策評価も行う.分析の結果,いくつかの行動経済学的特性と残業時間は統計的に有意な関係が観察された.例えば,時間選好の特性では,後回し傾向がある人の深夜残業時間が長い.社会的選好の特性では,平等主義者の総残業時間が長い.ビッグ5の性格特性では,誠実性が高い人の深夜残業時間は短いが,総残業時間は長い.一方,新人事制度の導入は残業時間を有意に削減した.特に,導入以前において月45時間以上働いていた人への残業削減効果が大きかった.</p>
著者
佐々木 周作 奥山 尚子 大垣 昌夫 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.126-130, 2015 (Released:2016-05-07)
参考文献数
15

人は思いやりの気持ちを持つ.一方,誰にでも等しく思いやるわけではないことも知られている.本研究では,米国・ドイツ・シンガポール・韓国・日本の5ヶ国で実施した相互比較可能な全国規模調査のデータを用いて,社会的関係性の異なる複数の他人をどのくらい等しく思いやるか,という思いやりの傾向の国際差を検証した.具体的には,「あなたの家族」および「同じ地域(市町村や集落)に住む人」「同じ都道府県や州に住む人」「同じ国の人」「外国の人」の5者に対する思いやりの水準を計測し,その水準を5ヶ国で比較した.主要結果は二つある.一つは,思いやりの水準を各国内で比較すると,どの国においても,対象が家族から外国の人に向けて移行するにつれ,思いやりの水準が下落する傾向があることがわかった.次に,5ヶ国間で比較すると,思いやりの水準は国によって異なることがわかった.特に,家族以外の4者に対する日本・韓国の思いやりの水準が,他の3ヶ国よりも低かった.