著者
大垣 昌夫 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.75-86, 2019 (Released:2019-04-10)
参考文献数
43

日本を筆頭に世界の国々で少子高齢化が進むなかで,各国の人口の大きい割合を占める高齢者の認知能力が低下することになる.また,女性の社会参画のために,保育サービスの重要性が増す.認知能力が大きく低下した高齢者や子供が市場メカニズムを一人では有効に使えないことを考えると,市場メカニズムと共同体メカニズムをどのように混合させていくことが社会にとって望ましいかという問題が重要である.行動経済学がこの問題に取り組むための研究の枠組みをすでに完成させたとは言えないが,内生的選好モデルに徳倫理という倫理観を導入する理論研究など,すでにこのような問題に取り組むために役立つさまざまな研究が行われている.本稿ではこのような視点から,規範行動経済学と共同体について概観する.
著者
赤林 英夫 妹尾 渉 敷島 千鶴 星野 崇宏 野崎 華世 湯川 志保 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 山下 絢 田村 輝之 繁桝 算男 小林 雅之 大垣 昌夫 稲葉 昭英 竹ノ下 弘久 藤澤 啓子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究では、経済格差と教育格差の因果関係に関するエビデンスを発見するために、親子を対象とした質の高い長期データ基盤を構築し、実証研究と実験研究を実施した。さらに、経済格差と教育格差に関する国際比較研究を実施した。具体的には、テスト理論により等化された学力データを活用し、学力格差と経済格差の相関の国際比較、親の価値観が子どもの非認知能力に与える影響の日米比較の実験研究、子ども手当が親の教育支出や子どもの学力に与える影響に関する因果分析等を実施した。
著者
佐々木 周作 奥山 尚子 大垣 昌夫 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.126-130, 2015 (Released:2016-05-07)
参考文献数
15

人は思いやりの気持ちを持つ.一方,誰にでも等しく思いやるわけではないことも知られている.本研究では,米国・ドイツ・シンガポール・韓国・日本の5ヶ国で実施した相互比較可能な全国規模調査のデータを用いて,社会的関係性の異なる複数の他人をどのくらい等しく思いやるか,という思いやりの傾向の国際差を検証した.具体的には,「あなたの家族」および「同じ地域(市町村や集落)に住む人」「同じ都道府県や州に住む人」「同じ国の人」「外国の人」の5者に対する思いやりの水準を計測し,その水準を5ヶ国で比較した.主要結果は二つある.一つは,思いやりの水準を各国内で比較すると,どの国においても,対象が家族から外国の人に向けて移行するにつれ,思いやりの水準が下落する傾向があることがわかった.次に,5ヶ国間で比較すると,思いやりの水準は国によって異なることがわかった.特に,家族以外の4者に対する日本・韓国の思いやりの水準が,他の3ヶ国よりも低かった.