著者
佐々木 達
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

<b>1.課題の設定</b> <br>&nbsp; 東日本大震災から時間がたつにつれて地域経済の再構築は被災地にとって喫緊の課題となっている。とくに、地域経済の一翼を担う農業の復興を図るうえで障害となっているのは、農産物に対する風評被害である。除染やサンプル検査などが行われる中で沿岸部では津波被害からの営農再開が進みつつある一方で、安全とされる農産物が敬遠され、消費者も農産物を安心して消費できない状況が継続している。 しかし、風評被害問題も農産物が売れないという単純な話でとらえるべきではない。原発事故を契機とした問題の長期性と根深さが加わっているが、農産物流通のあり方や地域農業の再建、そして今後の地域の在り方をどうするのかという問題の立て方が必要である。それらの課題に先立ち、本報告では、福島県いわき市を対象にして、消費者の農産物の購買行動を把握することにより風評被害の実態を明らかにすることを目的とした。今回は、アンケート結果の中から野菜の購買行動を中心に検討を行う。&nbsp; <br><br>&nbsp;<b>2.アンケート結果の分析</b> <br>&nbsp; 分析の結果、明らかになったのは以下の点である。①野菜の購入先は食品スーパーが主流である。震災前後で購入先に大きな変化は見られない。②野菜を購入する際に重視されているのは産地、鮮度、価格の3要素である。風評と関連する放射性物質の検査はこれに続く結果となっており、原発事故以降に新たな判断材料として加わったと見ることができる。③購入産地は県外産にシフトしているのが現状である。ただし、産地表示や検査結果を気にしている反面、その判断する情報リソースは二次情報、三次情報である可能性も否定できない。④購買行動において国の基準値や検査結果に対して認知されているが,信頼度という点においては低い結果となっている。野菜の購買基準は,「放射性物質の検査」と答える人も多いが,風評とは関連性のない「価格」を挙げる人が多い。しかし、「価格」要因は消費者サイドに起因するのではなく現在の小売主導の流通構システムから発生している可能性がある。一般的に風評被害は、消費者が買わないことにばかり目を向けがちであるが、市場・流通関係者の取引拒否や産地切替などの流通システムからも風評は生まれることを看過してはならない。 &nbsp; <br><br><b>3.復興支援のあり方―調査から発信・共有へ―</b> <br>&nbsp; 風評被害は、消費者だけでなく小売店、農業生産者など様々な主体の思惑が錯綜する中で実体化している。今後、風評被害を払拭するための支援のあり方には、地元の消費者と情報を共有・発信しながら課題認識の場を作り出していくことが重要であると考える。なぜなら風評被害に対する正確な現状把握や調査もほとんど手が付けられておらず、「目に見えないもの」に生産者や消費者がただただ翻弄される状況がいまだに続いているからである。正確な現状認識のための研究調査の重要性を認めつつ、その成果を地域の住民とともに共有し、課題を乗り越えるための復興支援調査との両輪で被災地の復興に参加することが重要であろう。
著者
中澤 昌彦 吉田 智佳史 佐々木 達也 陣川 雅樹 田中 良明 鈴木 秀典 上村 巧 伊藤 崇之 山﨑 敏彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

【目的】本研究では,急峻で複雑な地形と大径材搬出への適用が期待できる欧州製タワーヤーダを用いた作業システムを開発することを目的に,間伐作業の功程調査を行った。前報で架線下の上荷集材作業について報告したので,本報では上荷横取り集材作業を中心に報告する。【方法】搬器にShelpa U-3toを搭載したMM社製WANDERFALKE U-AM-2toを用いて,上荷横取り集材作業を実施し,時間分析を行なった。【結果】魚骨状に4列伐採し,27サイクル,28本,計17.87m3を集材した。平均荷掛量は0.66m3,平均集材距離は156.6m(135.7~194.6m),平均横取り距離は25.7m(5.1~48.1m)で,打ち合わせや遅延時間を除く横取り集材作業時間の合計は10,371秒となった。既存タワーヤーダであるツルムファルケ(平均荷掛量0.37m3)と比較すると,横取り作業時間が約2割短かった。以上から,本調査区における上げ荷横取り集材作業の生産性を求めると6.2m3/時となり,架線下だけでなく横取り集材作業においても既存タワーヤーダより高い生産性が期待できることが示唆された。
著者
佐々木 達司
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.268-281, 1973-04-20 (Released:2010-06-28)

Mianmi-Yokohama Thermal Power Station (Tokyo Electric Power Co, LTD.) is the first power station in the warld, which burns L. N. G. only.This article discribes the installations and actual results during about two years after construction of the power plant.
著者
関根 良平 佐々木 達 小田 隆史 増田 聡
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

報告者らは2013年1~2月に本報告と同じ福島県いわき市の市民を対象に食料品の購買行動と意識に関して調査を実施し、2013年日本地理学会秋季福島大会において佐々木(2013)として報告している。そこでは①野菜の購入先は食品スーパーが主流である。震災前後で購入先に大きな変化は見られない。②野菜を購入する際に重視されているのは産地、鮮度、価格の3要素である。風評と関連する放射性物質の検査はこれに続く結果となっており、原発事故以降に新たな判断材料として加わった。③購入産地は県外産にシフトしている。ただし、産地表示や検査結果を気にする反面、判断に用いる情報ソースは二次情報、三次情報である可能性も否定できない。④購買行動において国の基準値や検査結果に対して認知されているが,信頼度という点においては低い。野菜の購買基準は,「放射性物質の検査」と答える人も多いが,風評とは関連性のない「価格」を挙げる人が多い。しかし、「価格」要因は消費者サイドに起因するのではなく現在の小売主導の流通構システムから発生している可能性がある。といった諸点を指摘した。本報告は、こうした風評被害の特性と構造の変化、もしくはその「変容しにくさ」が働くメカニズムを解明したい。これは、事故より3年を経てもなお、汚染水や除染廃棄物問題が復興の足かせとなっている福島県では、調査研究においても一過性ではない継続的な視点が不可欠と考えるからである。
著者
佐々木 達行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1、成熟した社会を担う子どもたちにふさわしい新たな義務教育としての造形教育理念の構想。義務教育としてすべての子どもたちに必要な図画工作・美術科の理念とあり方を考察、構想し、仮説をたてた。2、義務教育としての新たな造形教育理念に基づいた教育課題、活動課題と授業課題の抽出。仮説に基づいて、図画工作・美術科の教育課題を3つの課題要素と6つの活動課題に、また、それぞれの活動課題に対して具体的な授業課題を抽出し、それらをカテゴリーとしてまとめた。3、教育課題と授業課題を実現するための適切なカリキュラム構造の構築。活動課題を骨格、構造としたカリキュラム構造論、「カリキュラムの構造と教育課題」を設定した。4、新たなカリキュラムの骨格、構造を基にしたカリキュラム編成方法の確立。仮説を立てた「活動課題を骨格、構造としたカリキュラム構造論」をもとに、カリキュラムの編成方法を考察する。具体的に、それぞれの活動課題を骨格とした活動課題領域を設定し、それらの領域に対する学年の配当割合と活動/授業内容に対する可能性の考察を行った。5、新たな教育課題、活動課題と授業課題を達成するための教材開発と実践授業研究。教材開発と実践授業研究を行うために、現職の教員による「カリキュラム編成モデル研究開発プロジェクト」チームを組織し(2006.11.1)、カリキュラムを編成するための授業の内容開発研究を行った。6、各学年で開発した教材をカリキュラムとして配列、編成。新たなカリキュラムの編成方法による初等、低、中、高学年、及び中学、第2学年に対し、3つの「課題要素領域」、6つの「活動課題領域」、「表現内容領域」を骨格とするカリキュラムの編成方法を基に、各学年で開発した教材をカリキュラムに配列(題材配列例表)し編成モデルを作成した。7、本研究の研究成果を研究紀要として執筆。研究課題名「造形を通した美術教育の課題とカリキュラム編成方法、及び編成モデルの研究開発」として、仮説を立てた理論と実践研究を組み合わせ、研究成果としてまとめた。