著者
山口 穂菜美 佐竹 隆宏 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.117-125, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
10

食後の嫌悪的な結果と食物による感覚的な特徴の回避という回避・制限性食物摂取症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:ARFID)様の症状を呈した自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)のある9歳の小児に対して入院にて心理教育とトークンエコノミー法を用いた行動的介入を行った症例を報告した.入院開始時,患児の摂食量は1日1口程度であったが心理教育と行動的介入の開始後徐々に摂食量および体重が増加したため149日目に退院となった.心理教育によって食後の嫌悪的な結果への対処行動を身につけたこと,トークンエコノミー法によって経口摂食の動機づけが高まったことが有効であったと考えられる.さらに,保護者を通した心理的介入を行ったことや,ASD特性に配慮した方略を用いたことが重要な役割を果たした.また,精神科医,小児科医,心理職の多職種連携を行ったことで,身体面,栄養面,行動面の多面的な治療を行うことができたと考えられる.
著者
福田 朱里 内海 真生 杉浦 則夫 佐竹 隆顕
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.9-18, 2007 (Released:2018-03-10)
参考文献数
28

筑波大学構内の沼沢「松美池」において淡水産巻貝有肺類であるサカマキガイ(Physa acuta Draparnaud)とヒメモノアラガイ(Austropeplea ollula Gould)は同じnicheを占める競争関係にあり、ともに歯舌を用いて大型水生植物表面の付着性藻類を摂食している。同じ資源を巡る複数種においては、その体サイズの相違によって食い分けを行うことで食性を分化させ種間競争を回避する方法が知られているが、松美池では両種のサイズ分布に年間を通じてほとんど差がないことが演者らにより明らかにされている。そこで本研究では同所的に生息している両貝において、餌となる池の付着性・浮遊性ケイ藻類と両貝が摂食したケイ藻類組成の季節変動を比較することで、両個体群が共存するために食い分けの戦略をとっているのか考察した。対応分析を用いて6-12月の貝の腸管内のケイ藻類と池の付着性・浮遊性ケイ藻類の属構成を解析した結果、貝の食性は付着性・浮遊性ケイ藻類の季節変動より変化に富んでいた。選択指数の解析により、選択的に摂食したケイ藻類の属数は、サカマキガイよりヒメモノアラガイのほうが多いことが示された。本研究により、サカマキガイとヒメモノアラガイの食性にわずかに違いがあることが明らかとなった。2種間で明確な食い分けはないと考えられるが、2種間の食性の違いが松美池で2種が共存するための要因の1つとなっているかもしれない。
著者
北村 豊 杉山 純一 佐竹 隆顕
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.91-98, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Webベースで登録された農産物・加工食品の生産情報およびレシピ情報をインターネット接続したパソコン(ICタグ端末)に転送・閲覧できる情報開示システムを構築した.ICタグ端末は,ICタグを封入した農産物や加工食品,レシピカードを付設のリーダーにかざすことにより,ICタグの固有番号にリンクされる情報を画面上に表示する.ICタグ端末をつくばみらい市のモデル住宅の台所に設置して,500名弱の男女からその試用体験に関するアンケート調査を実施した.回答結果の解析により,情報開示システムの利用可能性や情報の有用性,ICタグ端末の設置場所およびその利用形態の考え方など,今後の改良および用途開発のための基礎資料が得られた.
著者
佐竹 隆
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.253-262, 2006 (Released:2008-01-25)
参考文献数
92
被引用文献数
2 1

The study of human growth and development is a basic science, and such studies focus on age-related changes in morphology and physiology mainly during the first 20 years of life. During this period, rapid changes occur in size, physique and body composition and in various body systems. Already, many issues related to such changes have been suggested by the Subcommittee on Growth and Development of the Japanese Society of Physical Education. The study of growth and development as a rule does not deal with urgent problems; rather, issues related to age- and sex-associated variation and to the timing and tempo of the growth spurt and sexual maturation tend to dominate research in this area. This paper reviews several issues related to these broad topical areas: longitudinal studies, secular trends, the human growth curve, physiological age, and physical performance and activity. (1) Longitudinal studies are essential for understanding the processes of growth and development, especially for investigating individual differences among individuals. There are, however, difficulties associated with longitudinal designs so that there have been relatively few complete longitudinal studies. (2) Secular trends in body size and the timing of maturation were general phenomena in Japan, Europe and the United States, although the trends have slowed and/or stopped in some countries. It is, however, still important to understand factors that underlie secular trends. (3) Translating data for individuals into growth curves is a common method for analyzing human growth. To this end, mathematical fitting of curves to data for individual children is an important method that permits identification of important markers, especially peak height velocity and age at peak height velocity, among others. There are several protocols for curve fitting. (4) Physiological age is a concept that relates to the biological maturity status of individuals. Bone (skeletal) age and dental age are common indicators, but there have been only a few applications in clinical areas and in biological anthropology/human biology. (5) Interest in growth- and maturity-related changes in physical performance and activity is rapidly increasing, especially in the context of the current epidemic of childhood obesity and the apparent decline in physical fitness and activity. Physical activity is often considered important to support normal growth and maturation, but its specific effects require systematic evaluation.
著者
佐竹 隆顕 古谷 立美 太田 芳彦
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.173-184, 1999

共同選果包装施設や予冷・保冷施設をはじめとする農業施設の建設予定敷地内の最適配置設計問題に対して, ヒューリスティックアルゴリズムの一つであるシミュレーテッド・アニーリング (SA) を援用した合理化施工支援のための基本プログラムをC言語により新規に作成するとともに, 実用プログラム開発の知見を得るための準備的な配置設計シミュレーションを行った。<br>配置設計上の制約条件とした施設と敷地内トラックヤードないしは道路との重なり程度, 施設の出入口と同トラックヤードの距離, および各施設の図心間の積算距離などを総合的に評価するコスト関数に基づいてシミュレーションの解の評価を行った。<br>また, 同じく組合せ最適化問題の解法の一つである山登り法 (HC) による最適解と比較検討を行った結果, シミュレーテッド・アニーリングによるコスト評価値は平均で約100低減するとともに解のばらつきも抑えられており, 局所的最適解に捕らわれにくいシミュレーテッド・アニーリングの長所が認められた。
著者
永井 明子 松野 昌展 葛西 一貴 網干 博文 川村 全 佐竹 隆 金澤 英作
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.232-240, 1998-08-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16

アジア太平洋モンゴロイド集団の下顎小臼歯についてその舌側咬頭数を調べ, 出現頻度を各集団ごとに比較した。第1小臼歯については舌側1咬頭性のものが日本で54.9%と半数以上を占めており, 2咬頭性のものは41.5%であった。1咬頭性の頻度を集団ごとに比較すると, モンゴルでは68.1%と高く, ついで日本が54.9%, ミクロネシアのキリバスは51.9%, 台湾のヤミでは半数以下の44.1%, 太平洋集団のサモア, フィジー, そしてオーストラリア先住民は40%以下の低い頻度であった。2咬頭性のものはモンゴルでは29.8%と低い頻度を示すが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民は50%以上を占めていた。第2小臼歯では舌側2咬頭性のものがどの集団でも70%以上を占めている。1咬頭性のものはモンゴル, 日本, ヤミ, キリバスでは10%以上の頻度でみられるが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民での頻度は低い。また3咬頭性のものがフィジー, オーストラリア先住民では20%以上の頻度であった。第1小臼歯と第2小臼歯を比較すると, 第2小臼歯の方が舌側咬頭数の変異は少ない。集団間では太平洋集団で第1・第2小臼歯ともに舌側咬頭数が多いものの頻度が高いことがわかった。
著者
佐竹 隆
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.37-46, 2010-06-01
参考文献数
15

フルドリチカ生誕140周年の今年(2009年)9月2日から5日までの4日間,第5回フルドリチカ国際人類学会がチェコのプラハとフルドリチカの生地フンポレツ(Humpolec)で,"Quo vadis homo…societas humana?"をスローガンに開催された。学術発表は17のセクションに分けて3つの会場で行われた。午前にPlenary SessionがInstitute of Anatomy, Charles University in Pragueで行われ,午後はOral SessionとPoster SessionがNational MuseumとFaculty of Science, Charles University in Pragueで行われた。3日目の午後はフンポレツに場所を変え,記念講演とフルドリチカ・メダルの受賞式が行われた。公式発表による参加者総数は約350名,Plenary session 11題,Oral session 103題,Poster session 58題の発表があった。学会で配布された資料をもとにフルドリチカの生涯について簡単に最新の情報から紹介する。<br>