著者
井上 政則 中塚 誠之 曽我 茂義 吉川 裕紀 長谷 学 鳥飼 秀幸 田村 全 塚田 実郎 屋代 英樹 小柳 喬幸 山岸 敬幸 陣崎 雅弘
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.134-146, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
19

リンパ系システムは水分バランスの調整に於いて重要な役割を担っている.従来リンパ系システムの重要性は認識されてきたが,臨床的にリンパ系システムの画像化が困難であり,インターベンションによる治療介入も他の脈管系と比較して遅れをとってきた.しかし近年発達してきた鼠径部リンパ節からのリンパ管造影やMR lymphangiographyは新たな画像診断とインターベンションへのへの門戸を開いた.リンパ系システムの異常はリンパ浮腫とリンパ漏に大別される.この中で,リンパ漏れまれであるが重篤になり得る状態である.術後リンパ漏はリンパ漏の原因では頻度が高く,乳び胸水や腹部リンパ漏に代表される.適切な画像診断を行い,漏れを描出することでインターベンションにて治療可能となる.本稿では,総括的に臨床に重要なリンパ管解剖,リンパ管造影,適切なリンパ管造影の選択や様々なリンパ漏に対するインターベンションによる治療戦略を概説する.
著者
山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.68-74, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

房室中隔は右心房と左心室を隔て, 心房中隔と心室中隔に連なる組織である. 房室中隔は房室管の心内膜床から発生する. 原始心筒がloopingし, 心房・心室が形態的に明らかになる頃, 房室管部では心ゼリーが残存・増生する. 心内膜から上皮間葉転換により遊離して形質転換した間葉系細胞が, その心ゼリーの中に侵入し, 心内膜床が形成される. 心内膜床は, 主に上方(背側)および下方(腹側)から隆起して発達する. 上・下心内膜床の中央部での癒合により房室中隔が形成され, 房室管が右側と左側の房室弁口に分割される. 上・下心内膜床は房室管に対して垂直な方向にも伸展し, 心房中隔一次孔の閉鎖と膜様部心室中隔の形成にも関与する. 房室中隔, 心室中隔, 心房中隔の発生異常により, 多くの先天性心疾患が発症する.
著者
剣持 龍介 小林 知世 山岸 敬 佐藤 卓也 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.236-244, 2013-06-30 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

【目的】 Rey-Osterrieth Complex Figure Test (ROCF) の模写課題における認知症患者の遂行機能障害を評価する簡易な尺度を作成し, 妥当性を検討する。【対象】 新潟リハビリテーション病院神経内科を初診し, 数唱, MMSE, Alzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS), Frontal Assessment Battery (FAB)および ROCF の模写課題を施行した認知症患者で MMSE 得点が15 点以上かつ25 点以下の97 症例。【方法】 評価項目は, 計画的で効率的な模写遂行のために適切な順序で模写されているか否か(模写時方略)を評価する 2 項目と, 体系的な模写遂行のために重要な ROCF の部位がまとまった形態として抽出されひと続きで模写されているか否か(骨格要素の抽出)を評価する 5 項目の計7 項目とした。評価項目ごとに得点あり/なしを従属変数とし, MMSE 得点および教育年数を共変量, 年齢, ADAS 下位項目のうちの単語再生, 構成, 観念行為, 見当識, 単語再認の減点, FAB 得点いずれかを独立変数とする logistic 回帰分析を施行した。【結果】 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した logistic 重回帰分析において, 評価項目のうちの(1)模写時方略のa)大きな長方形の描き方, b)大きな長方形内部の描き方, (2)骨格要素の抽出のa)大きな長方形, b)大きな長方形内の2 つの対角線, d)大きな長方形内の水平な中央線の 5 項目でFAB 得点との間に有意な関係また有意ではないものの関係する傾向が認められた。これら5 項目の合計得点を従属変数とし, 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した重回帰分析においても, FAB 得点に有意な偏回帰係数が得られた。【結論】 本研究では, 評価項目の多くと遂行機能障害との関係が確認され, 尺度として一定の妥当性が示唆された。これらの評価項目を用いた尺度は, 認知症患者の ROCF 模写課題における遂行機能障害を評価する簡便な評価方法であり, 物忘れ外来などの日常的な臨床場面での使用に一定の有用性を有すると考えられた。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

政治学の枠組みで医療制度の歴史的発展をオバマケアを含めて分析する試みは、多くは見られず、特に退役軍人医療サービスを分析枠組みに含むものは存在しない。本申請研究は歴史的制度論という分析的枠組みを用いながら日米の医療制度の発展を論じようとするものであり、このような手法で日米を比較しようとする研究は類を見ない。申請期間中、4冊の著書、5本の論文、4件の学会発表、国内外の講演による成果発表の機会を得、1960年代から現在のオバマ改革に至る日米の医療制度の政治的・社会的変化について考察を深め、今後我が国における医療保険制度の議論を進めるための助けとなるよう、著書、論文の形で還元することができた。
著者
山岸 敬
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-19, 2008-03-31 (Released:2009-04-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ミトコンドリア脳筋症後に重度のブローカ失語・発語失行を呈した中学生に対し,全体構造法の考え方を参考に言語訓練を施行した。本例は構音・喚語不能から日常会話可能へと,約2 年以上に亘り持続的・飛躍的な改善を示し,本疾患・若年の失語症例に対する長期アプローチの必要性が示唆された。またその改善過程から,喚語機能形成,発語失行の構音再構築,日常会話への般化について全体構造法の主張をふまえ考察した。
著者
前田 潤 安田 幹 小柳 喬幸 柴田 映道 河野 一樹 古道 一樹 福島 裕之 山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.186-191, 2012 (Released:2012-11-26)
参考文献数
16

Fontan型手術後遠隔期の合併症である蛋白漏出性胃腸症(PLE)は予後不良であり, その治療はいまだに確立されていない. 近年, 肺血管拡張薬であるsildenafil(SIL)がPLEを改善させるという報告が散見される. 今回Fontan型手術(TCPC)後にPLEを発症し, SIL投与により症状の改善を得た3症例を経験した. 【症例1】単心室の21歳, 男性. TCPC6年後にPLE発症. SIL 30 mg/日内服を開始, 40 mg/日まで増量し, 浮腫が軽快. 【症例2】単心室, 左肺動静脈瘻の17歳, 男性. TCPC2年後にPLE発症. SIL 1 mg/kg/日内服を開始, 4 mg/kg/日まで増量し, 浮腫, チアノーゼが改善. 【症例3】両大血管右室起始の12歳, 女児. TCPC1年後にPLE発症. steroid不応性であり, SIL 0.5 mg/kg/日内服を開始, 8 mg/kg/日まで増量し, 腹水が改善. 3症例ともSILの副作用は認められなかった. SILはPLEに対する安全な治療薬で, 用量依存性に効果を示す症例もあることが示唆された.
著者
山岸 敬
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-19, 2008
被引用文献数
1

ミトコンドリア脳筋症後に重度のブローカ失語・発語失行を呈した中学生に対し,全体構造法の考え方を参考に言語訓練を施行した。本例は構音・喚語不能から日常会話可能へと,約2 年以上に亘り持続的・飛躍的な改善を示し,本疾患・若年の失語症例に対する長期アプローチの必要性が示唆された。またその改善過程から,喚語機能形成,発語失行の構音再構築,日常会話への般化について全体構造法の主張をふまえ考察した。
著者
平山 良一 山岸 敬道 三田 勝久 北島 三郎 飛田 満彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.11, pp.1684-1687, 1977
被引用文献数
3

1,4-ナフトキノンを窒素下で塩化ロジウム(III)と20時間煮沸すると,暗赤色のクロロジウム錯体とともに白色の生成物[1]が得られた。[1]は酸化鉛(W),塩化鉄(III)あるいは酸素などの比較的おだやかな酸化剤によって青色の色素[2]を与えたスペクトルおよび元素分析の結果,[1]は4,4'-ジエトキシー1,1しジヒドロギシー2,2'-ピナフタレンであることがわかった。[2]は別途合成によって得られた4,4,-ジエトキシー2,2'-ビナフチリデン-1,1'-ジオン(Russigue)と-致した。
著者
山岸 敬幸 内田 敬子 山岸 千尋 土橋 隆俊 古道 一樹 牧野 伸司 湯浅 慎介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

心臓流出路の発生には、おもに二次心臓領域と心臓神経堤由来の2種類の心臓前駆細胞の働きが必須であるが、これらの細胞の相互作用によって正常な流出路が形成される機序はいまだ明確でない。私たちは、二次心臓領域に発現し、心臓神経堤細胞の遊走に関与する神経血管誘導因子・Sema3Cの発現制御機構を明らかにすることにより、流出路発生における両細胞間相互作用に関与する分子機構を解明した。Sema3CのenhancerにlacZ遺伝子を連結・導入したtransgenicマウスの解析とChIP およびluciferase assayを組み合わせ、Sema3Cの上流直接活性化因子としてFoxc1/c2を、上流抑制因子としてTbx1を特定した。遺伝子改変マウスの解析によって、Tbx1の発現低下によりSema3Cが神経堤細胞に異所性に発現し、その遊走を障害することが示唆された。さらに両細胞間相互作用を担う候補タンパクの検討により、Tbx1のSema3C抑制機構は、心臓神経堤細胞において分泌因子Fgf8を介することが推定された。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、アメリカ合衆国の医療保険が1950年代から1960年代にかけて医療保険分野で、どのように政治的ダイナミズムが変化し、1960年代にメディケア(高齢者向け公的保険)とメディケイド(貧困層向け公的保険)が成立したのかを明らかにすることである。より具体的には、退役軍人向けの医療プログラムと、福祉政策の発展がどのように利益集団政治を変容させていったのかに焦点を当てる。平成20年度は国内外で主に資料の収集を行った。特にワシントンDCでの資料調査では退役軍人団体であるAmerican Legionに関する古い資料を入手することができた。本研究の最終年度に当たる平成21年度は主に前年度に収集した資料を使いながら論文執筆を行い三本の論文を執筆した。
著者
山岸 敬弘 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.171, pp.31-36, 2008-07-21
被引用文献数
5

近年,携帯電話の普及に伴って移動通信サービスが大きく展開され,実用化が進んでいる.しかしながら実用段階まで進んでいる歩行者ナビゲーションサービスの研究は屋外環境に限ったものである.本稿では,屋外と比較して複雑な構造を持つ屋内環境におけるナビゲーションサービスに着目し,各ユーザに特化した最適な経路を提供することを目的として,ユーザの嗜好を反映させた経路探索手法を提案する.まず可視グラフを利用して対象とする屋内環境に特化したネットワークデータを提案する.次に,取り入れるべき嗜好項目を調査し,「最短経路」への要求は70%強,階段やエレベータ,エスカレータ等の「階層移動手段」に対し,特に高齢者から80%以上の要求があることを示す.これに加えて人混みを避けた経路に対し60%強の要求があった.そこで「最短経路」,「階層移動手段」さらに「混雑状況」という時間的因子を考慮した経路探索手法を提案する.提案手法の有効性を示すために実地調査を実施し,数種類に及ぶシミュレーション実験の結果から各ユーザにとって最適な経路が出力されることを示す.