著者
大室 健治 佐藤 正衛 松本 浩一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.112-118, 2015 (Released:2016-09-15)
参考文献数
15

本稿では,農研機構が開発した「Web版農業経営診断サービス」(以下,Webサービス)の特徴を詳述したうえで,Webサービスの試行版に対する利用者のユーザ評価結果を整理し,ユーザ要求に沿ったWebサービスの今後の改良方向を提示する。これまで,各種団体が農業経営診断ツールを開発してきているが,それらに共通する課題は,営農類型・規模などを考慮した標準値データベースを持たないため,診断対象の値と標準値との比較考量ができない点にあった。Webサービスは,農林水産省が保有する個票データの解析結果に基づく標準値データベースを内蔵しており,各診断指標についての標準値との比較,ならびに良好・不良などのランク判定が可能である。Webサービスの今後の改良方向は,外部診断者の業務内容に沿った対応,営農類型の特殊性を踏まえた診断手法の組込み,6次産業化などの多角的な農業経営への対応である。
著者
佐藤 正衛 竹内 正彦 山端 直人 平田 滋樹
出版者
関東東海北陸農業経営研究会
雑誌
関東東海北陸農業経営研究 = Kantō Tōkai Hokuriku journal of farm management (ISSN:21897646)
巻号頁・発行日
no.107, pp.55-61, 2017-02

わが国では、野生鳥獣による農業被害や自然生態系への影響が深刻化しており、農作物被害額については、ここ十数年、年間200億円前後で推移している。鳥獣被害の深刻化、広域化の背景として、江成は、農山村の体力低下と野生動物との関わりの変質化を指摘している。具体的には、過疎化、高齢化による耕作地、樹園地の放棄、撤退、狩猟者減少等の体力低下が生じた。これに加え、薪から石油、牛馬から自動車へといった生活様式の変化に伴う里地利用の事実上の消滅から、野生動物が集落内の環境を利用するようになり、また、野生鳥獣の経済的価値も低下し、人との距離感、捕獲指向が変化した。その延長での農地侵入、被害の増加、拡大という構図が考えられることから、被害対策としては、野生動物と人との距離感を広げる環境整備と確実な技術と実施方策に基づく被害防除に加え、加害個体の捕獲の3つを連携させた「総合対策」が重要である。こうしたなか2007年に成立した鳥獣被害防止特別措置法にもとづき市町村が主体となって被害防止対策に取り組まれてきたものの鳥獣被害を軽減させることができなかったことから、さらなる対策の強化が必要とされた。そこでの捕獲目標は、シカ、イノシシの生息頭数を平成35年度までの10年間で半減させるというものであり、これを実現するためにICT等を用いた大量捕獲技術の導入や捕獲鳥獣の食肉加工利用の推進を図ることとされている。そして、これら対策の実施主体は市町村に設置される鳥獣被害対策実施隊であることから、今後は実施隊への支援策の拡充が重要な課題であるといえる。その具体策のひとつとして新しい捕獲技術導入の採否や捕獲鳥獣の食肉加工利用の適否を判断するための情報の提供があげられる。桑原・加藤は、イノシシ対策としてのワイヤーメッシュ柵設置コストを試算し政策支援額の目安を提示した。しかし捕獲は分析対象とされておらず、今後提供されるべき支援情報として必ずしも十分ではない。そこでこうした課題に応えるため、本稿では、まず捕獲の技術体系データの構築方法を検討し、次に手順にそってデータ構築を実施する。そして、構築データを用いて従来の狩猟方法との比較分析を実施する。さらに、分析結果をふまえて、主に実施隊への有用情報の提供可能性の観点から技術体系データの利活用方法を考察する。
著者
佐藤 正衛 南石 晃明
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.53-65, 2011
被引用文献数
1

本研究の目的は,農薬使用の環境影響に配慮しうる営農計画支援システムを開発し,本システムを経営意思決定に活用する方法を提示することである.こうしたシステムの機能では,経済性,環境管理指標の営農指標群を同時算出する経営シミュレーションが実施できること,経営シミュレーションに利用する環境情報と財務情報等を整理・蓄積し,利用者独自のデータを組織内で共有利用する仕組みの実現が課題であった.そこで,以下のシステム機能を開発し,FAPS-DBとの統合化を行った.主な開発機能は,(1)農薬環境リスク指標算出,(2)温室効果ガス排出量推計,(3)独自データベースの管理とそのデータを利用した経営シミュレーションサービスの提供,(4)農業技術体系Excelデータブックの拡張である.開発システムとFAPS-DBとを統合化して経営シミュレーションを実施することにより,作付体系変更や価格変動等の経営内部・外部環境の変化による環境管理指標,経済性指標等の経営指標への影響を数量的,グラフィカルに把握可能であることを確認した.さらに,当システムによる営農シミュレーション分析を営農計画の意思決定場面でどのように活用するかを,組織内の各主体の役割との関係において考察し,環境配慮を支援する営農計画システムとしての利用可能性を明らかにした.<br>
著者
南石 晃明 土田 志郎 飯国 芳明 二宮 正士 山田 優 金岡 正樹 淡路 和則 内山 智裕 八木 洋憲 西 和盛 澤田 守 竹内 重吉 藤井 吉隆 木下 幸雄 松下 秀介 佐藤 正衛 星 岳彦 吉田 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究の目的は、次世代農業経営革新の基礎となる人材育成システム構築に有益な知見を、学際的かつ国際的な視点から体系化することである。主な研究成果は以下の4つに区分できる。第1にスイス、フランス、ドイツ、デンマーク、イギリス、オランダ、スペイン等の欧州主要国の職業教育訓練の現状と課題について明らかにした。第2に、わが国の先進農業経営に人材育成の実態と課題を統計分析と事例分析を組合わせて明らかにした。第3に知識・情報マネジメントの視点から、情報通信技術ICT活用および農作業熟練ノウハウ継承について明らかにした。第4にこれらの知見の基礎的考察と含意を考察し、次世代農業人材育成の展望を行った。
著者
南石 晃明 木南 章 伊東 正一 吉田 泰治 福田 晋 矢部 光保 堀田 和彦 前田 幸嗣 豊 智行 新開 章司 甲斐 諭 樋口 昭則 石井 博昭 松下 秀介 伊藤 健 亀屋 隆志 八木 洋憲 森高 正博 多田 稔 土田 志郎 後藤 一寿 佐藤 正衛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食料・農業・環境に関わる諸問題は,相互に密接に関連しており,その根底には「リスク」が深く関与している.このため,食料・農業・環境に関わる諸問題の解決には,「リスク」に対する理解が不可欠である.食料・農業・環境に潜むリスクには,どのようなものがあり,それらはどのように関連しており,さらにどのような対応が可能なのか?本研究では,学際的かつ国際的な視点からこれらの点について明らかにした.