著者
佐藤 温
出版者
日本近世文学会
雑誌
近世文藝 (ISSN:03873412)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.41-57, 2016 (Released:2017-04-28)

Shunurō-shi-shō (1854) is a collection of poems by Fujimori-Kōan, a Confucian scholar of the late Edo Period. Several editions of the collection are imperfect because they were partly deleted by censors. Those editions can be classified into two types; the completely censored editions and the approximately reinstated ones which were revised in the early Meiji Period. Censorship of this poetry collection had been conducted under the guidance of the Shōheizaka Academic Institute until around 1857. Shunurō-shi-shō was checked by this agency because in some poems the author used unacceptable words and phrases related to the foreign powers which then threatened to overthrow the status quo. But as the standards of censorship were very arbitrary, the real aim of the authorities must have been not only to suppress his poems but also to degrade Kōan himself who gained reputation as an imperial loyalist. In other words, they censored his literary work as a way to prevent his political influence from becoming greater through it.
著者
佐藤 温子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.45, 2017 (Released:2018-07-01)

本稿は、フィンランドにおける放射性廃棄物処分政策形成を巡る歴史的背景を、ドイツとの比較の視座から分析することを目的とする。Högselius(2009)の挙げる、世界の使用済み核燃料処分政策の相違に関する5つの説明要因のうち、特に軍事的野心と核不拡散、政治的文化と市民社会、エネルギー政策を扱う。両国とも核兵器を所有しないが、ドイツにおいては冷戦を背景に一時核武装論へと傾斜、核不拡散条約を巡り公に国内で対立、核武装疑惑につながりうる再処理を1989 年まで追求した一方、フィンランドにおいては北欧非核兵器地帯(NWFZ)協定構想が提案され、1980 年頃に再処理の選択が放棄された。さらにフィンランドでは東西両陣営からの原発を有しており、反原発運動が分断された。フィンランドが世界で初めて高レベル放射性廃棄物処分場計画を決定した理由の一つに、冷戦の文脈で、強い反原発運動が不在だったことが指摘されうる。
著者
小黒 章 佐藤 温重 福島 祥紘
出版者
明倫短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

特定病態下(骨粗鬆症,腎炎,糖尿病)ならびに日常よく用いられる薬剤ないし嗜好品(カフェイン,エタノール,ニコチン,アスピリン,ワルファリン)との併用経口投与時における,マウスへのNaF投与(5.26mM=100ppmF,10日間)に関して,飲水量,体重変化,血中フッ素濃度,骨髄幹細胞の非特異エステラーゼ,クロロアセテート・エステラーゼ発現,細胞表面抗原Mac-1,Gr-1,MOMA-2,F4/80の発現,また,細胞生存率,NBT還元能,LPS刺激によるNO産生(NO_2生成),LDH,β-glucuronidase, acid phosphatase(ACP)活性,貪食能,付着/浮遊細胞数比,核/細胞質比,ライト・ギムザ染色像,位相差像などの検索を行った.血中フッ素濃度は飲水中のフッ素により有意に上昇したが,LDH,β-glucuronidase, ACP活性を除く他のマーカーに顕著な変化を認めなかった.しかし,疾患動物における所見は不安定であった.マウス骨髄細胞を,1,25-dihydroxyvitamin D_3とNaF存在下において培養したところ,1,25-dihydroxyvitamin D_3ではなくNaF量に依存してMac-1,Gr-1,クロロアセテート・エステラーゼが発現し,非特異エステラーゼは影響されなかった.細胞生存率とNBT還元能は0.5mMにおいて損なわれ,NO産生,LDH,β-glucuronidase, ACP活性は0.2ないし0.6mMにおいて極大を示した.貪食能,付着/浮遊細胞数比,核/細胞質比,ライト・ギムザ染色像,位相差像には顕著な変化を認めなかった.In vivoでのNaFと薬物同時負荷,疾病罹患動物へのNaF負荷に際して,LDH,β-glucuronidase, ACP活性以外の上述の検査項目に差を見いだすことができない.疾病動物であっても,恒常性維持機能がNaF負荷に対応する結果と思われ,上述のようなin vitro実験によって先ず骨髄細胞分化の指向性を見い出し,しかる後,in vivo実験によって確定するのが確実のように見える.
著者
谷山 松雄 鈴木 吉彦 榎本 詳 佐藤 温 杉田 江里 杉田 幸二郎 渥美 義仁 松岡 健平 伴 良雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.401-404, 1995-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9

The substitution of guanine (G) for adenine (A) at positioln 3243 of mitochondrial DNA, first demonstrated in MELAS patients, has been found in some diabetics, and this mutation seems to be one of genetic factors for diabetes mellitus. Because mutational mitochondria coexist with normal mitochondria (heteroplasmy), conventional PCR-RFLPm methods may not detect a mutation When a majority of the mitochondrial DNA in leukocytes is normal. We tested the efficacy of specific PCR amplification in detecting the 3243G mutation using a primer whonse 3' base was complementary to the mutational base. This mutation-specific PCR amplification method permitted detection of the mutation in 2 patients with MELAS and in a diabetic patient whose mutation was detected by the PCR-RFLP method in biopsied muscle but not in peripheral leukocytes, and in two other diabetic patients.Specific PCR amplification for detection of the 3243G mutation is a simple and senisitive method and is useful inevaluating this mutation in diabetes mellituls.
著者
宅間 永至 杉田 幸二郎 真木 寿之 伴 良雄 佐藤 温
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.343-355, 1988-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
42

未治療の原発性甲状腺機能低下症61例を対象として, 無選択的に筋障害について神経学的面から検討を加えた.1) 筋脱力感を89%に訴え, 動作緩慢80%, 他覚的脱力51%, 筋肥大89%に認めた.深部反射の弛緩相の遅延 (Lambert徴候) は92%, mounding現象71%, 異常感覚は46%が訴え, 他覚的感覚障害は25%に認めた.2) 筋症状の程度に関係なく, 大腿四頭筋生検材料を用いて組織学的検索 (21例) を施行し, 全例に筋原性変化を認めた.その内容は筋線維の大小不同16例 (76%) , 筋鞘核の増加11例 (52%) , 中心核13例 (62%) , リンパ球浸潤6例 (29%) , ムコ蛋白沈着4例 (19%) であった.21例中17例の組織化学検索では, ミトコンドリア異常はsubsarcolemmal hyperactivity5例 (29%) , moth eaton所見4例 (24%) に認めた.Small angulated fiber, 小群集萎縮は21例中12例 (57%) , そのうち, 明らかなneuromyopathy例は3例 (14%) であった.3) 甲状腺機能重症度を血中T4値およびTSH値から判定し, その重症度を組織学的筋障害程度と対比して検討した結果, 組織学的筋障害程度とは関連性がみられなかった.4) 甲状腺機能低下症の罹病期間と組織学的筋障害程度の関連をみると, 罹病期間が短い症例は筋組織病変が軽度であり, 10年以上の症例は高度な筋原性変化に加えて神経原性変化の混在所見も高率となった.5) 筋線維タイプ別分類からみると, 17例中16例 (94%) はタイプII線維数の占める比率が, タイプI線維より高いか, 同率であった.また, タイプII線維の萎縮が8例 (47%) と多く, タイプ1線維の萎縮を2例 (12%) , 筋組織病変が高度になると両型線維の萎縮を3例 (18%) に認め, atrophy factorも高値となった.肥大筋線維はタイプI線維の肥大を2例, 両型線維の肥大を1例認めた.6) 腓腹神経の検索 (6例) では有髄神経線維数の減少, 節性脱髄, endoneurial fibrosisが主体で, 軸索の変化は軽度であった.7) 髄液検査 (21例) では蛋白増加を10例 (48%) に認め, 筋生検施行例 (13例) では髄液圧亢進, 蛋白量増加は筋組織上の神経原性変化とは関連がなかった.筋電図 (23例) は15例 (65%) に異常を認め, 15例中筋原性パターン13例 (87%) , 多相性電位8例 (53%) , 高振幅電位3例 (20%) で, 罹病期間が長期例では神経原性パターンが高率にみられた.末梢運動神経伝導速度は, 正中神経 (16例) で2例 (13%) , 脛骨神経 (7例) で2例 (29%) に遅延を認めた.
著者
武内 透 杉田 幸二郎 佐藤 温 鈴木 義夫 福井 俊哉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.362-369, 1995-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
20
被引用文献数
4 6

本邦では, 高齢発症の重症筋無力症 (以下MG) は最近, 増加傾向にあるが, 臨床的に検討した報告は極めて少ない. 我々は60歳以上で発症した高齢者全身型MG 11例の臨床像, 誘発・増悪因子, 合併症, 治療上の問題, 予後などを検討した. 初発症状は眼瞼下垂, 複視などの眼症状, 球症状が高率で, これら所見は非高齢者MGと同様であるが, 他覚的所見に対する訴えの乏しさが特徴的であった. 11例の内訳は, 当科初診時にMGと診断された2例のほかは, 6例 (54.5%) は脳血管障害, 1例は頭蓋底腫瘍疑いと診断されていた. MGの誘発・増悪因子では, 嫁姑関係, 夫の死亡, 老人ホームへの入所, 農作業の高齢化などの家庭内のトラブル5例 (45.5%) と高齢者MG例に特有な要因が認められた. 抗Ach-R抗体は, 11例中10例 (90.9%) に明らかな上昇を認めた. 頭部CTでは全例とも加齢による萎縮所見のみで, 知的機能は, 11例中1例に軽度の低下を認めるのみであった. 合併症では, 胸腺腫4例 (36.4%) のほか甲状腺疾患の合併が5例 (45.5%) と多く, その内訳は, 橋本病は3例, バセドウ病に伴う甲状腺眼症, 単純甲状腺腫がそれぞれ1例認められた. その他, 陳旧性心筋梗塞, 消化管潰瘍, 高度な変形性脊椎症, 前立腺肥大などの合併を認めた. 治療としては抗ChE剤に加えて, 副腎皮質ホルモンを5例 (うちパルス療法2例), ガンマグロブリン療法を1例, 胸腺腫に対する放射線療法を3例, 胸腺摘出術を1例に施行した. 10年間の経過追跡では, 11例中7例 (63.6%) が死亡し, その内訳は, 肺炎・気道閉塞が4例, うっ血性肺水腫, 胸腺摘出術後十二指腸穿孔, 胃癌の全身転移がそれぞれ1例であった. 非高齢者MGと異なり, 高齢者MGでは老人一般の管理に加えて, 環境因子にも充分に注意し, 治療法の選択においても, 非高齢者MGとは異なった観点から検討すべきと思われた.
著者
日景 盛 熱田 充 佐藤 温重
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.642-647, 1989-09-25
被引用文献数
1

鶏胚大腿骨の器官培養を応用して接着性レジンの細胞への影響を明らかにすると共に, 生体材料の安全性評価における器官培養法の有用性について検討した.スーパーボンドC&BとパナビアEXを直径0.35mm, 長さ2mmに整形して試料とした.試料を鶏胚大腿骨の骨端部に挿入し, 37℃7日間回転培養後, 相対成長率と相対湿/乾燥重量比(W/D), 組織像を調べた.その結果, 相対成長率に関してはスーパーボンドC&BもパナピアEXも影響はなかった.しかしW/DにおいてパナビアEXは対照より大きな値を示し, 組織所見では隣接する組織に幼弱な軟骨細胞の存在と軟骨基質形成不全を認めた.これらの結果から, パナビアEXは軽度の組織障害性を有していることが示唆された.