著者
佐藤 裕子
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, 2002

旧ソ連・ロシア史は,女性史を考察する上でも,種々興味ある示唆に富んでいる。19世紀のロシアでは,新しい息吹の中で女性解放運動が盛んに行われ,社会革命の機運を支えた。ところが世界の女性解放が進む中で,社会主義女性解放運動を実現したはずのソ連では,フェミニズムは反体制としてのみ生き残れたという不可解な現象が起きていた。1980年3月にレニングラード市内でロシアにおけるフェミニズム運動の諸問題に関する会議が行われたが,そこでは「ロシアのフェミニストたちは,精神的,宗教的価値を重要視するため,ロシアのフェミニズムは西側のようにマルクス主義的世界観の基盤をもてない。レニングラードのフェミニズム運動参加者の多くが,キリスト教的世界観を奉じている。」と同会議の特色が記されている。キリスト教は(1)信念の体系(教義や神学),(2)社会制度(教会や宗派),また(3)象徴や儀礼の体系として,現代においてフェミニズムから批判および再評価を受けている。だがロシア正教がフェミニズムの立場から検証されることは殆ど無いに等しい。今回の発表では,ロシア正教の土壌で「女性の自由・平等・人権」を求めるフェミニズムがどのような様相で立ち現れているかを理論と実践の両面から概観しようと試みた。ロシア正教における女性の立場と意義を,まずは教義と組織の面から考察した。ローマ・カトリック教会と比較対照しながら,生神女マリアの教義上の立場と役割,ロシア正教会の聖書解釈に見られる女性観,生神女マリアのイコンに見られる聖母信仰,また,東方正教会組織における女性の地位等について触れた。ハッブズのようにロシア正教の歴史を,ロシアの大地(女性原理)がキリスト教(男性原理)に蝕まれたという見方も出来るが,旧ソ連邦時代の反体制フェミニズム運動の歴史が証言するように,女性信徒の国の制度に依らない活動そのものがフェミニズムを内包していたことも事実である。史実を紐解くと,信仰者が社会で抑圧され苦しむ女性の声を集め,保護していく,そのような流れがロシア史の中に息づいていたことが分かる。例えば動乱と戦争の19世紀を通じて,多くの女性達を実際に救い支えたのはロシア正教会であり,また,自発的に派生した宗教コミュニティ(ジェンスカヤ・オプシナ)であった歴史などがそれを裏付ける。それは人々の心の拠り所として,また,経済的自立を助ける存在として機能し続けたのである。時には体制に対する草の根レジスタンス運動の拠点として,時代を超えて社会的に発言及び運動を起こす女性達のための連帯と集合の場を提供し続けている。
著者
黒柳 正典 梅原 薫 柴田 和利 砂山 玲子 遠藤 深春 佐藤 裕子 白須 直美 上野 明
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.36, pp.9-16, 1994-09-20

Although much attention has been given to cell differentiation inducers as new types of anti-tumore agent, only a few studies has been reported on differentiation inducers from plant sorces. Therefore, we have searched for naturally occouring substances which induce differnciation of leukemia cells. From Condurango Cortex (Marsdenia condurango) (Asclepidaceae) and Periplocae Cortex (Periploca sepium B.) (Asclepidaceae), many kids of pregnan derivatives and some cardenolides. From withania (Withania somnifera) (Solanaceae) (using Indian market withania and withania cultivated at the medicinal plant garden of this university), more than thirty kinds of withanolides were isolated. From Physalis alkekengi (Solanaceae), physalin and neophysalin derivatives were isolated. Structural elucidation of these 60 kinds of steroid derivatives were carried out by means of spectral methods, especially using NMR spectroscopy including H-H COSY, H-C COSY, HMBC, NOE technics. These steroidal derivatives were tested on cell differentiatio inducing activity against mouse myeloid leukemia (M1) cells. Many kinds steroid derivatives showed the activity. Of these active compounds, some kinds of withanolids, 27, 33, 34 and 35 having 4β-hydroxy-5β,6β-epoxy-2-en-1-one structure of AB ring, showed potent differentiation inducing activity.
著者
古川 明彦 永井 未央 佐藤 裕子 大野 浩一 亀井 翼 眞柄 泰基 Rahman M. Hamidur
出版者
北海道大学衛生工学会
雑誌
衛生工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
no.9, pp.238-241, 2001-11-01

第9回衛生工学シンポジウム(平成13年11月1日(木)-2日(金) 北海道大学学術交流会館) . 5 リスク評価と環境修復 . 5-4
著者
田中 勤 馬場 一成 小原 智香子 鈴木 覚 山崎 大樹 朝烏 邦昭 関内 久美子 中野 清子 黒川 千恵 島嵜 紀子 佐藤 裕子
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1101-1107, 2000-07-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
9

透析患者では日常生活上の制限等のストレスから心因反応としての精神症状や身体的愁訴を呈する患者が少なくない. 様々な症状を呈する患者に対しては包括的治療の観点から生活指導のほかに薬物治療も有効なアプローチとなる. 【目的】透析患者の不安や抑うつ等の精神症状やその他の不定愁訴に対する新規セロトニン作動性抗不安薬Tandospirone (TAN) の有効性および安全性を検討する. 【対象・方法】当院に通院する透析患者29例に心理テストの一つSTAIを施行し, 神経症, 抑うつ状態の領域にあった5例に対しTAN 30mg/日を投与した. 投与4週目にSTAIを指標として有効性について検討し, 安全性については, 透析開始時のダイアライザー通過前後および透析終了時のTAN血清中濃度を測定することで, 蓄積性とダイアライザー除去率を検討した. 【結果】 (有効性) STAIの得点から投与5例中3例に改善が認められた. 特にイライラ感等の自覚症状の改善が認められ, 透析療法の受容が向上した. (安全性) 副作用は全例において認められなかった. 血清中濃度は投与4週目においても健常者の血清中濃度と殆ど変わらず蓄積性は少ないと考えられた. ダイアライザーによる除去は投与開始時の除去率16.9%, 透析4時間による最終的な除去率80.4%であった. 【結語】TANは抗不安・抗うつ作用を併せ持つ新しいタイプの抗不安薬であり, 透析患者の精神症状や不定愁訴を改善する. 従来のBZ系抗不安薬と異なり筋弛緩作用がないことから透析後ふらつきを呈しやすい症例に用いやすく, 特に依存性のない点は長期フォローが必要な透析患者のストレスマネージメントに有用と考えられる.
著者
宇佐美 幸彦 佐藤 裕子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ベルリンの大衆と芸術について、その具体的な例として、ハインリッヒ・ツィレおよびビルダーボーゲンという大衆的芸術活動の特徴をまとめた。ツィレが生涯一貫して風刺画のテーマとして描き続けたのは、彼が「第5階級」と呼ぶ社会の底辺で生きる人々の姿である。ビルダーボーゲンに関しては、グスタフ・キューン社の出版物を中心にその特徴の推移を検討した。この絵物語が20世紀に発展する漫画の先史となっていることは、大衆的芸術研究にとっては重要である。
著者
佐藤 裕子 中木 高夫 濱田 悦子 川島 みどり 木村 義 齋藤 彰 平木 民子 奥原 秀盛
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は看護学生の論理的思考を育成する教育方法の1つとして、看護方法学の授業教材として使用できるコンピューター・ソフトウェアの作成を目指した。このソフトウェアの基盤を構築するために未だ明らかにされていない看護者に特有な推論構造を解明する目的で平成10年度に予備調査を実施した。結果、経験の厚い看護者の推論をより密着して詳細に調査することが必要となり、平成11年度には本調査を実施した。結果、手がかりから仮説へと至る看護者の推論プロセスの特徴、対・患者場面で看護者の即座の行為を導く推論の特徴、さらに看護者に追加される情報によって推論が発展していくことが明らかとなった。得られた資料を土台として、平成12年度から平成13年度にかけて、ソフトウェアの主軸となるルールセットを構築していった。このルールセツト作成作業では現象データからどのような推論が生まれてくるかをシミュレーション化したうえで、現象→推論→根拠→否定手段の4要素のルールからなるセットを蓄積していった。これらをシステムに組み込む作業を経たうえで、ユーザーインターフェイスを開発、ソフトウェア化していった。これと平行し本研究で作成するソフトウェアの適用対象となる看護学生の思考発展調査を平成12年度から13年度にかけて行った。結果、看護学の専門的知識を学習する前の時期は自らの生活体験や身近な家族・親戚、ぞして講義などの影響が大きい学生の思考は、基礎実習を経ることによって、さらに看護過程や看護専門知識の学習を経ることによって、現象を見る視点が多様化し語彙量が増え、表現豊かになっていくという思考の発展が明らかとなった。学生の思考発展に応じた適切な時期と活用法を考慮に入れながら論理的思考を育成することを目指す本ソフトウェアの授業教材化と評価が今後の課題である。