著者
名倉 卓弥 秋山 英三
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.B-N11_1-9, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)
参考文献数
28

Communication through SNS (Social Networking Services) and function of SNS platform can cause two phenomena polarization and echo chambers. In previous study [sasahara 21] about the communication on SNSs regarding a single topic, it has been shown that there is a correlation between these two phenomena and also that SNS functions facilitate the occurrence of these phenomena. In this study, focusing on the fact that real SNS users often deal with multiple topics on a daily basis, we analyzed an agent-based model of SNS communication regarding multiple topics. The analysis revealed that polarization of opinions occurs even when the number of topics increases but that echo chambers are less likely to occur as the number of topics increases. We have also found that there is little correlation between polarization and echo chamber under the condition with more than certain number of topics. Additionally, some functions of SNS such as user recommendations and reposts was found to facilitate echo chambers regardless of the number of topics. This result implies that the findings of previous research are robust even in multiple topics environment. These results suggest that topic diversity and function of SNS platform amendment may be a means of reducing the occurrence of echo chambers. In this model, we cannot take into account the impact of an individual’s interest in a specific topic on such as unfollowing behavior. In future research, we should expand our model to implement these user’s real behavior.
著者
小田 秀典 藤井 宏 秋山 英三
出版者
京都産業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

研究計画に従って、ATR脳イメージングセンターで不確実性下での意思決定(100パーセントで4000円受けとる選択肢と50パーセントで8000円受けとる選択肢のいずれを選ぶかなど)の脳活動計測実験を実施した。さらに当初の計画にはなかった時間選好の意思決定(今日5000円受けとる選択肢と1週間後に6000円受けとる選択肢のいずれを選ぶかなど)の実験を不確実性下での意思決定と比較可能なかたちで実施した。これは標準理論に対して同様のアノマリー(90パーセントと80パーセントは程度の差だが100パーセントは特別に重視される、明日と明後日は程度の差だが今日は特別に重視される)が観察されている2つを比較することで、不確実性下での意思決定の特徴をはっきりさせるためである。現時点での暫定的結論は、将来の報酬を選択するとき、被験者は(現在の自分から将来の自分への)セルフ・プロジェクションと理解される脳領域をいっそう活発化させ、不確実性な報酬を選択するとき、被験者は計算と評価と理解される脳領域を活発化させるというものである。さらに実験が必要であるが、時間選好と不確実性下の意思決定が異なる脳活動に基づくこと、および時間選好がセルフ・プロジェクションと関係することは脳科学にとっても経済学にとっても示唆するところが大きい。経済理論の観点からは、とくに一貫する個人の意思決定ではなく、現在の自分と将来の自分とのゲームとして時間選好を理論化することに現実性のあることを示唆する。以上の(2008年3月の学会ではじめて報告された)本研究の主要な成果に加え、脳科学の基礎的理論とゲーム的状況(他人の意思決定を推測しなければいけないとき)の脳活動についての研究を実施して発表した。
著者
木村 博道 秋山 英三
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.56-81, 2009 (Released:2017-06-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

古典的な経済学では,通常,投資家は完全合理的な行動を行うと仮定する.そのような仮定をおいた理論では,市場均衡の存在を証明することが可能であるが,現実の投資家にとって重要な,スプレッド(アスクとビッドの差)やマーケットインパクト(注文に対して価格がどのぐらい変動するか)を説明することは難しい.その一方で,近年,投資家の合理性をまったく仮定せず,注文はポアソン到着に従って到着すると仮定する「ゼロインテリジェンスモデル」が提案されている(Smith et al. 2003).このモデルでは,スプレッドや価格の拡散係数を定量的に説明することが可能である(Farmer et al. 2005).しかしながら,ゼロインテリジェンスモデルでは,マーケットインパクトを表現する量の一種である,Kyleのλ(単位株数の注文に対して平均してどのぐらい価格が変動するか)を説明することはできなかった.本研究では,まず,東京証券取引所の実データを用いて,指値注文分布や直前の注文に依存して注文到着率がどのように変動するかなどの性質を調べた.次に,ゼロインテリジェンスモデルにそれらの性質を導入し,シミュレーションを行った.このモデルを「ローインテリジェンスモデル」と呼ぶことにする.その結果,ローインテリジェンスモデルでは,スプレッドや拡散係数に加えて,Kyleのλをも説明できることが分かった.このことは,金融市場の流動性を理解するには,注文と注文分布の相互作用,あるいは注文同士の相互作用が重要である可能性を示唆する.
著者
謝 凡 秋山 英三
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.AG21-A_1-8, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
22

To enhance the stability of the financial markets, price limits have been implemented in numerous financial markets. The effects to markets’ stability and traders’ profitability of price limits have been discussed by previous research. But it has not been discussed when there is difference between traders on speed of information acquisition. The asymmetry of information acquisition between traders can be observed in many situations, e.g., overseas investors and domestic investors, insiders and outsiders. Because methods, languages, etc. they use to get information are different, they obtain information about the fundamental values of financial commodities with different speeds. We used a double-auction artificial market to simulate when difference on speed of information acquisition exists, how price limits effect the stability of the financial market, and the profitability of traders who has different speeds to obtain the information about fundamental value. We found if there is difference of speed for getting information between traders, price limits do not always enhance the stability of market. When the band of price limits is loose, the volatility of market price will rise if the ratio of traders with fast speed of information acquisition is relatively large. And when the band of price limits is loose, some traders who has slower speed of information acquisition may be hurt by price limits. Our work shows it is necessary to consider the difference on speed of information acquisition when designing some market institutions like price limits.
著者
石津 亮輔 秋山 英三 鳥海 不二夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.477, pp.1-5, 2013-03-04

近年FacebookやTwitterを始めとしたマイクロブログがスマートフォンなどのモバイル端末の普及と共に急激に普及している。特にTwitterは手軽にリアルタイムな情報を多くのユーザに伝搬出来るため社会に多くの影響を与えている。現にTwitterは2011年3月11日に発生した東日本大震災時に、携帯電話がつながらない状況下での有用な連絡手段として活躍した。しかし、その有用性は時にデマや誤情報も大量に拡散させる手助けとなってしまっている。例えば東日本大震災時では数十種類のデマや誤情報が情報として拡散されてしまい、日本中を混乱させた。震災時のように連絡手段が限られた状況はこれからも発生する可能性は十分にあり、対策が必要である。そこで本研究では被験者実験で震災時に拡散したデマtweetを幅広く収集し、ツイートにデマを含むか否かを判定してもらった。そして、デマや噂、Twitter等のソーシャルネットワーキングの分析を始めとした、様々な分野の研究に役立てるようにそのデータをもとに東日本大震災時に投稿されたツイートがデマか否かを示すデータベースの作成をし、分析を行った。
著者
石田 雄大 秋山 英三
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.AG21-J_1-8, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
18

Though modern organization theory views organizational decision making from a very rational perspective, it is known that actual organizational decision-makings are often done through organized anarchy with “many autonomous actors operating with bounded rationality in an environment with ambiguous goals, an unclear link, between cause and effect, and fluid participation with the activities and subgroups of the organization”, which is well-described by so-called “the garbage can model.” In this study, we investigate how much the introduction of time constraints into the decision of garbage cans (opportunities) can improve the problems arised from organized anarchy. The analyses show that the introduction of time constraints can decrease the number of unsolved problems and also that the number of solved problems is maximized at some length of time constraints in specific organizational structures. These results as a whole indicate the mere introduciton of deadline may improve problems caused by organized anarchy.
著者
米納 弘渡 秋山 英三
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 知識ベースシステム研究会 89回 (2010/3) (ISSN:24364592)
巻号頁・発行日
pp.03, 2010-03-29 (Released:2021-07-14)

人間社会においては、互いに一度しか付き合うことのない非血縁者間でも協力行動が見られる。しかし、社会全体のことを考慮せずに自分のためだけを考えれば、協力しない方が常に得であるのも事実である。そしてそのように考えるならば、利己的な個人にとっては、自発的に他者に協力行動を取るべき理由は存在しないはずである。このような協力行動の進化を説明するために、これまで多くの人々が「集団間での闘争・淘汰では、集団の中に協力的な個体がより多い集団の方が生き残りやすい。」と主張してきた。しかし人類の場合、それに加え、その人を取り巻く人々や社会、文化によっても大きな影響を受けている。そのような文化的な慣習・制度の一部(単婚性や食料資源の共有)は、集団内での淘汰のメカニズムの効果を弱め、協力行動の進化を促進させる可能性がある。本研究はこのような考えの先行研究に基づき、集団構造を持ったエージェントシミュレーションを行う。そしてその結果を用いて、「人類社会で、どのような条件で協力が進化しうるか」を調査する。\n
著者
秋山 英三 金子 邦彦
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.974-979, 1996-08

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。ポスター
著者
秋山 英三
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.38-48, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
44

社会集団や組織における協力行動の形成の問題は,様々な分野の研究者の興味を引いてきた.本稿では,集団における協力状態を実現するメカニズム,特に,直接互恵,関節互恵,マルチレベル淘汰,ネットワーク互恵を,計算機シミュレーション研究を中心とした近年の動向を踏まえつつ概説する.
著者
鳥海 不二夫 秋山 英三 岡田 勇 山本 仁志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ネット炎上などソーシャルメディア上で生じる社会問題を過剰懲罰の枠組みから説明し,その心理的メカニズムをゲーム理論などの理論分析や被験者実験を用いて検討する.特に量的過剰懲罰をスラックティビズムに基づいた心理モデルの点から,質的過剰懲罰を合理的無知によって説明し,過剰懲罰現象を実データに基づき分析・数理モデル化し,そのリスク低減を実現する社会システムを設計する.
著者
木村 博道 秋山 英三
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG19(TOM19), pp.1-9, 2007-12-15

投資家が,あまり価格を動かさずに素早く株式を売買できる市場を「流動性の高い」市場という.また,買い指値注文の中で最も高い注文の価格と,売り指値注文の中で最も安い注文の価格の差をスプレッドという.先行研究によって,流動性が比較的高い銘柄に対し,スプレッド縮小率が流動性の指標になりうることが分かっている.そこで,本研究では,流動性が低い銘柄に対してもスプレッド縮小率が流動性の指標となりうるかどうかを検証した.具体的には,まず,東証1,2部の銘柄を対象に,先行研究の方法を参考にしつつ,スプレッド縮小率とある流動性指標の相関を調べた.すると,両者の相関は十分高いものとなった.次に,スプレッド縮小率以外の複数の流動性指標に対して主成分分析を行い,「流動性の統合指数」と呼べるものを作り,その統合指数とスプレッド縮小率の相関を調べた.やはり両者の相関は十分高かった.以上の分析から,スプレッド縮小率は流動性の低い銘柄についても流動性の指標と見なせることが確認できた.このことは,流動性の低い銘柄では,トレーダがアスクとビッドの間に売り(買い)指値注文を行う場合,アスク(ビッド)付近に注文を行うことを意味する.
著者
河又 裕士 张 晓泉 秋山 英三
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2019年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.117-120, 2019-08-31 (Released:2019-08-30)

代表的なWeb広告に検索連動型広告がある。検索連動型広告の掲載順位は主に、キーワードに対する一般化第二価格オークションで決まる。Zhang & Feng (2011)は、現実の検索連動型広告市場において、広告主らの入札額が鋸(ノコギリ)歯状の循環的な変動をする場合があることを発見している。更に彼らは、2人の広告主の競争を数理モデル化することで、鋸歯状の循環的変動の発生機構を説明している。本研究では、鋸歯状以外にも様々なタイプの循環的変動が現実に現れることを実データから示す。また、これら様々なタイプの循環的変動の発生機構を、多人数(3人以上)の広告主の競争を仮定した数理モデルで説明できることを示す。
著者
大澤 義明 鈴木 勉 秋山 英三 吉瀬 章子 宮川 雅至 小市 俊悟 渡辺 俊 堤 盛人 藤井 さやか 竹原 浩太 有田 智一 田中 健一 小林 佑輔 櫻井 一宏
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は,老朽化する都市インフラ整備の選択集中に関して,独自にデータ収集し,実証分析を実行し,同時に理論的知見を導くことを通じ,施設整備に関する具体の政策を提言することを目的としている.最初に研究基盤を構築した上で,逐次廃止手法の効率性評価,リスク分析における効率性と冗長性とのトレードオフ構造等に関する理論研究・実証研究を展開した.様々な自治体と意見交換・情報収集することから,実装対象を北海道網走郡津別町,茨城県土浦市,茨城県常総市に絞り,研究・理論の自治体への実装を進めた.
著者
秋山 英三
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.71-116, 1995-10-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
鈴木 真介 秋山 英三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.37, pp.7-12, 2006-03-28

非血縁個体間でみられる協力行動の進化は,しばしば直接的互恵性の理論と間接的互恵性の理論によって説明される.本研究では,直接的互恵性に基づく協力行動の進化と間接的互恵性に基づく協力行動の進化を比較した.計算機シミュレーションによる分析の結果以下のことが分かった: (1)グループの人数が多いとき,間接的互恵性に基づく協力行動は直接的互恵性に基づく協力行動に比べて進化しにくい; (2)グループの人数が少ないときは,「一人でも評判の悪いメンバーがいるグループ内での裏切りを正当な行為とみなす」評判基準(standing)を用いることで,間接的互恵性に基づく協力行動は直接的互恵性に基づく協力行動と同程度に進化しやすくなる.The evolution of cooperation among unrelated individuals is often explained using direct reciprocity or indirect reciprocity. In this study we investigate the relation between direct and indirect reciprocity. The results of the computer simulation show the followings: (1) for large group size, indirect reciprocity cannot facilitate cooperation as effectively as does direct reciprocity; (2) for small group size, indirect reciprocity can facilitate cooperation as effectively as does direct reciprocity if a reputation criterion (standing), under which an individual who has defected in the group with some individuals whose reputation is bad does not change, is adopted.
著者
秋山 英三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本プロジェクトでは、様々なゲーム状況における戦略の進化を比較・検証し、特に、ゲーム構造と評判の効果の関係を分析した。分析は、進化ゲーム的手法とシミュレーションにより行い、また、シミュレーションでは、プレーヤーのモデルとして意思決定機構を有限状態オートマトンとして記述し、その進化の様子を分析した。その結果、囚人ジレンマがさらに拡張された状況の評判の効果に関する一連の発見があったほか、指導者ゲームの分析によるリーダーシップ論の進化的解釈の可能性が示され、また、確率過程によるモデル化により華厳ゲームの新たな進化的分析が行われるなど、研究の様々な発展可能性が示された。
著者
吉田 和男 井堀 利宏 石黒 馨 竹内 俊隆 鈴木 基史 依田 高典 江頭 進 橋本 敬 瀬島 誠 藤本 茂 遊喜 一洋 秋山 英三 八横 博史 山本 和也 中川 真太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

テロや紛争、環境破壊、通商摩擦、金融危機といった今日の世界の秩序を脅かす諸問題は、相互に複雑に関連しあっているため、その解決には従来の個別対応的な方法では不十分である。本研究は、これら諸問題を総合的に分析し処方箋を提示するため、グローバル公共財(GPG)概念に依拠したシミュレータ(GPGSiM)を構築し、世界規模での秩序形成に必要なメカニズムを理論的・実験的に解明して、政策提言に役立てることを目指した。