著者
林 拓人 前田 敦司
雑誌
第56回プログラミング・シンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.121-130, 2015-01-09

従来のクラスベース・オブジェクトシステムは,メソッドをクラスに格納するものと総称関数に格納するもの(メソッドがクラスに属すものと総称関数に属すもの)とに分けられる.本論文はこれらのいずれとも異なり,環境にメソッドを直接格納する新しいオブジェクトシステムを提案する.クラスや総称関数といった枠を廃し,クラス名とメソッド名の組をキーとして環境にメソッドを直接格納する.これにより変数に対して行えるあらゆる操作がメソッドに対しても自然に行えるようになり,従来の方式に比べシンプルな仕組みで柔軟なオブジェクト指向プログラミングが可能となる.提案する手法の有用性を実証するため,このオブジェクトシステムを搭載する独自言語Suzuの処理系を実装した.Suzuの特徴を生かすプログラム例として言語内DSL(Domain Specific Language)の構築例を挙げる.従来のオブジェクトシステムにおける類似した概念等との関連についても議論する.
著者
矢口 拓実 池袋 教誉 前田 敦司
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.14-14, 2016-02-26

Packrat Parsingは,広範囲な構文規則を解析できる構文解析手法である.この手法では,解析が成功するまで構文を探索するバックトラックを用い,一度解析した解析対象文字列の位置と結果を保存するメモ化と呼ばれる手法によって解析時間を線形時間に保っている.既存の多くのPackrat Parsing実装は,PEG(Parsing Expression Grammer)で記述された文法規則を,再帰呼び出しによるバックトラックとメモ化表を用いるプログラムに変換するが,このような処理系の実行速度は,正規表現に基づいて表引きを用いた字句解析器と,同じく表引きとスタックを用いて処理を進めるLALR(1)などのパーサアルゴリズムの組み合わせと比較すると,一般的に劣っている.本発表では,Packrat Parsingの高速化のため,解析の意味が変化しない範囲で表引きによって構文解析を進める手法を検討する.本発表では,Packrat Parsingの処理の中に可能な限り表引きをとり入れることで,実行速度を向上させる手法を提案する.また,基本的な実行方式としてはMedeirosらの提案した仮想マシン方式を改良したものを採用している.既存の手法と比較した性能評価の結果を示す.
著者
岩田 力 磯谷 正敏 原田 徹 金岡 祐次 亀井 桂太郎 前田 敦行 高山 祐一
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.773-776, 2013-05-31

要旨:経肛門的直腸異物は,精神障害や性的嗜好あるいは事故により肛門から異物が挿入され,抜去不能となったものである。瓶類,玩具や缶の蓋などの報告例は多いが,石膏による直腸異物の本邦報告例はない。今回,われわれは石膏を経肛門的に注入し,全身麻酔下にS状結腸に切開を加え異物を摘出した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。症例は32歳男性,既往歴は特になし。10年以上前より自慰行為にて肛門より液体状の石膏を注入していた。2011年6月に液体状の石膏500mLを注入,排出困難のために当院救急外来受診した。血液検査では炎症反応の高値を,腹部CTでは直腸からS状結腸におよぶ高吸収体を認めた。石膏注入後約15時間後に全身麻酔下に経肛門的に摘出を試みたが不可能であり,開腹手術へと移行した。開腹して腹腔内よりS状結腸の異物を肛門側に押し出そうとしたが押し出せず,S状結腸に切開を加え18×6×6cmの石膏を摘出した。直腸粘膜の損傷を認めたために低位前方切除術を施行した。術後経過は良好で第11病日に退院した。
著者
遠藤 仁 前田 敦司 山口 喜教
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.38-38, 2011-09-22

CPU の性能向上手法がクロックの高周波化からマルチコア化へとシフトした現在,CPU の性能を活用するために処理の並列化を図ることはますます重要性を増している.広く用いられているプログラミング言語の構文解析手法の多くは,有限の (多くの場合 1 つの) トークンを先読みすることによって逐次的に処理を進めるものであり,並列化は困難である.筆者らは,バックトラックによる再帰下降構文解析とメモ化を組み合わせた構文解析アルゴリズムである packrat parsing において,下位の非終端記号の解析結果を記録するメモ化表を,別のスレッドを用いてあらかじめ埋めておくことによって,上位の構文解析スレッドの動作を高速化できるのではないかと考えた.本研究では,Medeiros らの PEG 仮想マシンにメモ化機能を加えて packrat parsing 仮想マシンとし,さらに上記のアイディアを用いて並列化を行った.PEG で表記した文法を与えると,構文木を作成する並列 packrat parser を生成するパーザジェネレータを試作し,生成されたパーザに対して実際のプログラムを入力として評価実験を行い,並列処理の有効性を確認した.Parallelization of programs is getting more importance because recent performance improvement is driven mainly by increasing number of cores, rather than increase in clock frequency. Many of parsing algorithms used in programming language implementations rely on directing their actions by lookahead of finite (in many cases, only one) tokens, thus severly limiting the possibility of parallel processing. Packrat parsing is a variant of backtracking recursive descent parsing combined with memoization. In packrat parsing, memoization table for low-level nonterminals can be filled by distinct prefetch thread to accelerate processing of higher-level nonterminals. Following the idea, we have parallelized packrat parsing abstract machine, which is based on PEG machine by Medeiros. We built a parser generator that generates parallel packrat parser from grammar description written in PEG. We evaluated performance of the generated parser using real program as input, confirming the effectiveness of our approach.
著者
田中良夫 松井 祥悟 前田 敦司 中西 正和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会記号処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.94, no.49, pp.17-24, 1994
被引用文献数
1

通常ガーベッジコレクション(GC)はリスト処理を中断して行なわれる.GCをリスト処理と並列に行なう(並列GC)ことにより,GCによる中断時間をなくし,リスト処理の実時間化が可能となる.並列GCではGCの処理中にリスト処理によってデータが書き換えられるので,GCの正当性を保証するために特殊な処理が必要となる.そのため並列GCは停止型GCに比べてあまり効率が上がらず,実用化されているものもほとんどない.mark and sweep方式の並列GCにおいては,ゴミセルの回収効率が停止型GCに比べて約1/2になってしまうことが知られている.これらの欠点の改善は,並列GCの実用化へ向けての重要な研究テーマである.本論文では,mark and sweep方式の並列GCの欠点を改善したGCである,Partial Marking GC(PMGC)の提案,実装および評価に関する報告を行なう. PMGCはmark and sweep型の並列GCに世代別GCの概念を導入したGCである.PMGCを実装し様々な実験を行なった結果,PMGCによってゴミセルの回収効率は従来の並列GCに比べ最大で2倍に改善されることが確認された.PMGCは並列GCの実用化に向けての有効なGCである.
著者
新井 利幸 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 磯谷 正敏 堀 明洋 青野 景也 森 直治 前田 敦行 河合 正巳 高野 学 山口 竜三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2135-2140, 1994-09-01
被引用文献数
21

最近10年間に経験した消化器外科手術後に発症した急性肺塞栓症例8例を臨床的に検討した. それらは同期間の手術例の 0.07% に相当し, 平均年齢65.5歳 (55∿75), 1例が男性, 7例が女性, また7例が悪性疾患, 1例が胆石症であった. 術後の安静解除の時期に呼吸困難, 胸痛, 胸部不快感あるいは急性循環不全の症状がみられ, 心エコーで右心の拡張が認められれば急性肺塞栓症が強く疑われる. 肺動脈造影は診断のもっとも確実な方法であり, これを施行した5例全例で塞栓が証明された. 8例中5例は線溶・抗凝固療法で軽快したが, 3例は死亡した. そのうち2例は発症後数時間で失ったが, 1例は補助循環下に線溶・抗凝固療法を行い11日間の生存が得られた. 急性肺塞栓症に対しては, 必要なら補助循環を併施し, 強力な循環管理下に線溶・抗凝固療法をまず行うのがよいと思われる.
著者
飯星 貴裕 山口 喜教 前田 敦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.180, pp.1-6, 2008-07-29
被引用文献数
1

ネットワークのセキュリティシステムの一つにネットワーク侵入検知システム(NIDS)がある.このNIDSのスループットを向上させるため,ボトルネックとなっているパターンマッチング処理を専用ハードウェアで行う試みがなされている.しかしながら,一般的に専用ハードウェアには膨大なパターン集合とのマッチングを高速に行うために,回路規模を大きくせざるをえないという問題がある.そこで,本稿ではパターンマッチング回路の回路規模の増大を抑えるために,NFAハイブリッドアーキテクチャに着目した.このアーキテクチャは,その特性上高い回路効率を持つと考えられるが,必ずしも詳細な評価が行われていない.ここでは,NFAハイブリッドアーキテクチャの詳細な回路を実装・評価した上で,さらに回路効率を向上させるための手法を考案し,評価を行った.その結果,入力文字数が小さいときにおいて,従来のNFAアーキテクチャよりも高い回路効率を持つことを実証し,さらに提案した効率化手法が有効であることを示した.
著者
船戸 潤一 前田 敦司 中西 正和
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.21-22, 1996-03-06

Lispは1962年のLisp1.5の発表以来、記号処理用言語として発展し続けている。そのなかで、ISO(International Organization for Standardization)により設計されたLispの標準化案に、ISLispがある。ISLispは、Common Lispをベースの言語とし、小さく、効率の良い処理系の作成を目的として設計されたLisp言語である。本研究は、ISLisp言語処理系の実装を目的とする。本システムは原始プログラムを中間コードに変換するコンパイラ部分と、中間コードを解釈、実行するインタプリタ部分とから成り、中間コードにはバイトコードを用いる。本稿ではISLisp言語処理系のインタプリタ部分であるバイトコードインタプリタILBIについて、その実装方法と、インタプリタの効率化について報告する。