著者
加納 靖之
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.171-182, 2017-11-10 (Released:2017-12-12)
参考文献数
64

It has long been believed that a M6.1 earthquake occurred on November 14, 1831 in Saga, southwest Japan. The event relies on a single entry from note of “Tenpo Zakki,” which is a collection of miscellaneous notes between 1831 and 1844. Here we propose that the location for the earthquake is likely misinterpreted. Reexamination of the note shows that the earthquake occurred on November 13, 1831, as was recognized in 1919. The original location was thought to be in Saga because according to the note the earthquake was reported from “Hizen-no-kami” (lord of Saga). Analyses of the time it took for the news to reach Edo (Tokyo) show that the location of the earthquake is possibly not Saga, but Aizu, in northeast Japan. The note of “Tenpo Zakki” shows that the information of the event reached Edo in 5 days. However, it was impossible to deliver a letter from Saga to Edo in 5 days at that time. No description on the earthquake was found in diaries written around Saga. “Tenpo Zakki” might have mistaken “Higo-no-kami” (lord of Aizu) for “Hizen-no-kami.” This result contributes to improvement of the list of historical earthquakes for Japan.
著者
竹之内 健介 加納 靖之 矢守 克也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_31-I_39, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
3

平成29年九州北部豪雨では,中山間地を含む多数の集落で甚大な被害が生じた一方,5 年前の災害経験などを踏まえ,住民が無事避難した事例も確認されている.本研究では,そのような避難に成功した地区などを対象に住民への聞き取り調査を行い,詳細な対応行動や避難につながった背景の分析を行った.調査の結果,地域独自の判断基準の存在が災害対応に効果的に機能していた事例が確認されるとともに,そのような判断基準が地域で継続して定着するような社会環境が存在していた.また当時の住民の対応行動の時系列分析を行い,各種災害情報との対応関係から,実際にその判断基準が災害時に有効に機能していたことを確認した.これらの結果を踏まえ,地域独自の判断基準(防災スイッチ)を災害時に有効に機能させる地域防災の検討と推進を提案する.
著者
加納 靖之
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.5, pp.1-3, 2020-01-25

歴史地震研究の成果としての地震史料集や歴史地震のカタログ(年表)がデジタル化されつつある.既にいくつかの研究プロジェクトによってデジタル化が試みられ,また実用的なデータベースとして公開されてきた.既存のデジタル資源の大部分は地震学,歴史学,情報学の協働によって実現したものである.これらを活用した歴史地震研究を紹介するとともに,今後新たに構築すべきデータベースや取り入れるべき技術や仕組みについて議論したい.
著者
加納 靖之
出版者
日本地震学会
雑誌
地震. 2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.171-182, 2017-11

It has long been believed that a M6.1 earthquake occurred on November 14, 1831 in Saga, southwest Japan. The event relies on a single entry from note of “Tenpo Zakki", which is a collection of miscellaneous notes between 1831 and 1844. Here we propose that the location for the earthquake is likely misinterpreted. Reexamination of the note shows that the earthquake occurred on November 13, 1831, as was recognized in 1919. The original location was thought to be in Saga because according to the note the earthquake was reported from “Hizen-no-kami” (lord of Saga). Analyses of the time it took for the news to reach Edo (Tokyo) show that the location of the earthquake is possibly not Saga, but Aizu, in northeast Japan. The note of “Tenpo Zakki” shows that the information of the event reached Edo in 5 days. However, it was impossible to deliver a letter from Saga to Edo in 5 days at that time. No description on the earthquake was found in diaries written around Saga.“Tenpo Zakki”might have mistaken“Higo-no-kami”(lord of Aizu) for “Hizen-no-kami".This result contributes to improvement of the list of historical earthquakes for Japan.
著者
加納 靖之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

歴史地震の研究において,ある地震の有無(実在・非実在)や発生日時の認定は,もっとも基本的な作業といえる.しかしながら,文書の作成時から現代にいたる伝来(特に書写)の過程や,現代における解読や解釈などの各場面において,日時の取り違えが発生しうる.ここでは,規模が比較的小さい地震もふくめ,日時の取り違えのある地震を取りあげ,修正案を提示する.日時の取り違えは,次のような場合に発生すると考えられる.(1)史料そのものが違っている場合,(2)自治体史などの編集時に間違えた場合,(3)史料集の編集時に間違えた場合.(1)の史料そのものが違っている場合に該当するのは,天保二年の会津の地震である.これについては,史料が1点だけの場合,間違いの可能性に気づくことは困難である.史料の記述そのものに矛盾がないかを丁寧に検討することにより,あるいは,同じ日に複数の史料があれば,相互に矛盾がないかを検討することにより,間違いをみつけることができる可能性がある.(2)の自治体史などの編集時に間違えた場合に該当するのは,飛越地震の際の『天保一五年(弘化元年)御林山内取調箇所附帳』の扱いである.これは(1)と同様に記事そのものから間違いに気づくことは難しい.しかしながら,原史料にもどって検討できれば,記述を訂正することができ,それにより地震についての正しい情報を得られる可能性がある.(3)の史料集の編集時に間違えた場合には,宝永地震についての『南牟婁郡誌』の記事,享保の『月堂見聞集』の京都の地震,享和の畿内・名古屋の地震,文政の中部・近畿の地震,天保の佐賀の地震,善光寺地震の際の越後高田の記事が該当する.日記の省略部分を補う際に生じた年月日の取り違えが多い.本文はきちんと解読できており,場合によっては,史料集の他の部分に同文で収録されているにもかかわらず.編集の際に,いわば勘違いにより別の日付のところに入ってしまったものもあると考えられる.日付に関しては,干支でかかれることも多く,年月日との対応を確認することで間違いを防ぐことができるだろう.年月日の取り違えによって,単に発生年月日が間違って認定されるだけでなく,場合によっては実在する地震が複製されて,実在しない地震として認定されてしまうことがある.『月堂見聞集』に書かれた複数の地震や1847年2月15日の越後高田の被害のような例である.これらの間違いを放置すると,地震活動度を過大評価してしまう可能性がある.特に,無被害の中小地震もふくめた有感地震の活動度を検討するような場合,結果に大きく影響する可能性がある.
著者
林 晋 橋本 雄太 加納 靖之 久木田 水生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

古文書のWEBを実現するにおいて、最も重要なことは古文書の翻刻、つまり、古文書のテキストを文字列にすることである。それにより、古文書のテキストの検索、リンクづけなど、WEBと呼ぶにふさわしい文書の集合体を作成することができる。その実現法の一つとして、市民のボランティア参加による翻刻方法、クラウド翻刻(Crowd transcription)が知られており、英国などでの成功例が知られている。しかし、日本の古文書に対しては、成功例がなかったが、地震関係の古文書を対象にして、ボランティアが崩し字の読みを学習できるようにした、「みんなで翻刻」システムを開発し、これを初めて成功させた。
著者
MORI James Jiro 伊藤 久男 柳谷 俊 松林 修 加納 靖之 木下 正高 MA Kou-fong
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.