著者
小川 佳純 井藤 寛志 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.116, 2017 (Released:2017-10-16)

Guénguen (2014) は身体魅力の中でも特にハイヒールに着目して研究を行っており,女性がハイヒールを履くことが男性の援助行動に影響を及ぼすことを報告した最初の論文である。今回は日本においてGuéguen (2014)の実験3を追試し実際にフィールド実験を行うことで,この結果が通文化的な結果であるのかということを検討することを目的とした。場所は日本の愛知県豊橋市で行い,協力者の女性は0㎝5㎝9.5㎝の3種類の靴を履き,実験参加者の前で気づかないふりをしてわざとパスケースを落とし,拾ってもらう回数と援助までの時間がヒールの高さによって違いが生じるのかということを検証した。結果は援助率と援助までの時間においてヒールの高さで違いは見られなかった。このことから考えられることとして文化差の他に実験の状況の統制の要因が挙げられる。傍観者効果の影響や,実験参加者の年齢まで視野に入れる必要があった。
著者
井関 紗代 伊藤 紀節 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<br><br>マーケティングにおいて、顧客の忠誠心を獲得することは必要不可欠である。先行研究では、地域の店舗への忠誠心に影響を与える購買動機が検討され、その購買動機に対して性差が生じることが示されているが、購買時の文脈が想定されていない。本研究では、コンビニエンスストアにおいて、性別と購買動機が、地域の店舗への忠誠心に影響を与えるプロセスを、モデル化し検証した。その結果、女性は男性よりも、多くの品揃えの中から商品を選びたいと考え、目的なしに店内の商品を探求する傾向があることが明らかになった。品揃えを重視する人は情報獲得を重視し, ユニークな商品を探す傾向が強くなることもわかった。また、 商品探求をする傾向の強い人ほど、ユニーク探求, 社会的接触を重視し、利便性を重視しないことも示された。情報獲得、ユニーク探求、利便性、社会的接触を重視する人ほど店舗に対する忠誠心を高めやすいということも明らかになった。
著者
高橋 知世 北神 慎司 宮代 こずゑ 原田 悦子 須藤 智
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.1-8, 2012-05-10

画像認証は,新しい電子的本人認証システムの1つである.このシステムの利用者は,思い出の写真やイラスト等を予め登録しておき,認証時に登録画像をディストラクタ画像の中から正しく選び出すことによって本人認証を行う.画像認証は従来のパスワード等と比べて,容易かつ強固な本人認証を実現できるものとして期待されている.画像認証のシステムの強度は登録画像の特性に大きく依存する.しかし,実際にどのような画像が登録されうるか,また,画像選択にどのような心理的要因が影響を及ぼすかについては未だ明らかにされていない.そこで本研究では,大学生47名に擬似的に認証画像の登録を求め,その後,個別の画像について登録の意思や登録への抵抗感を尋ね,画像への思い入れや認証画像としての適切性を自己評価させる質問紙調査を行った.その結果,画像を登録する意思には,登録画像の認証画像としての主観的な適切性,登録への抵抗感,画像への愛着,自分の登録画像であることの認識容易性といった要因が影響することが示された.したがって,画像認証システムの強度を向上させるためには,登録への抵抗感の低減させる必要があると考えられる.また,どのような画像が認証に適しているかについて,利用者への周知を行うべきであろう.The picture-authentication system is a new system that users can identify themselves in cyberspace by correctly picking out pictures registered by themselves. The picture-authentication is safer and easier to use than systems using a password because memorable photos and illustrations can be used instead of a letter string that are likely to be forgotten. However, no studies have revealed features of the pictures and psychological variables that may influence users' decision to choose the pictures. Thus, we asked participants (47 undergraduate students) to register their own pictures to a trial picture-authentication system, and examined their willingness to actually resister the pictures on the system after a two-months-interval. Results indicated that their willingness was positively related to the feelings of appropriateness, attachment, and identifiability of the pictures, and was negatively related to the feeling of resistance for the system. We suggest that it is important to reduce the resistance for registration and to popularize what kind of pictures are appropriate for the authentication.
著者
井関 紗代 北神 慎司
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.59-64, 2017 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
3

Previous research has shown that people hold a higher value for objects that they own, a phenomenon commonly known as the endowment effect. Studies suggest that even without actual ownership, merely touching an object can increase its psychological ownership, which produces the endowment effect. However, touchable commodities are not always available prior to purchase (e.g., during online shopping). When an individual is unable to touch an object, its psychological ownership can be increased with mental imagery of touching it. Imagining touching an object, also known as haptic imagery, has a similar effect on psychological ownership as physical touch, due to a difference in the perception of control. Imagining touching an object results in greater feelings of physical control compared to not imagining touching it. Factors that contribute to the effect of haptic imagery on psychological ownership remain unexplored. In this study, we examined whether haptic importance of objects could impact the effect of haptic imagery on psychological ownership when touch was unavailable. Participants were assigned to the haptic imagery condition or the no-imagery condition. They were asked to look at a piece of paper that introduced an object as if they were considering buying it. Participants in the haptic imagery condition were instructed to imagine holding the object in their hands and to think about how it would feel, keeping their eyes closed throughout the process. Subsequently, all participants were asked to fill out the questionnaire about psychological ownership, perceived control, and familiarity. Results showed a significant effect of haptic imagery on psychological ownership and perceived control, regardless of haptic importance of objects. In addition, when touch is unavailable, an individual痴 psychological ownership of objects with low haptic importance can be more than those with high haptic importance. These findings are applicable to product marketing, specifically for online e-commerce stores.
著者
高橋 知世 大塚 幸生 服部 陽介 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.34-34, 2011

これまで,エレベータ開閉ボタンの押し間違いという問題の解決を目的とした研究では,主に,開閉ボタンに用いられているピクトグラム(マーク)のデザイン面に焦点が当てられてきた.しかしながら,押し間違いの原因は,デザイン面のみならず,それを認知する人間側にもあると考えられる.そこで,本研究では,注意研究の基礎的なパラダイムを援用することによって,タイムプレッシャーおよび視点移動という認知的要因が,エレベータ開閉ボタンの押し間違いにどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果,マークを単独呈示した実験1,対呈示した実験2のいずれにおいても,視点移動の影響が最も大きく,逆に,タイムプレッシャーの影響は最も小さいことが分かった.これらの結果から,押し間違いというエラーを低減するためには,たとえば,開閉ボタンの配置上の工夫として,視点移動が最小限ですむように配慮すればよいということが考えられる.
著者
井関 紗代 北神 慎司
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.49-54, 2016
被引用文献数
5

商品を購入する際、その商品を「触る」という行為は、非常に重要な役割を果たしている。その理由の一つとして、ただ商品を触るだけで、自分の所有物ではないにも関わらず、「自分の物であるような感覚」、すなわち「所有感」が生じるからであることがわかっている。しかし、オンラインショップなどの普及に伴い、購買意思決定の際に、商品を触ることができない場面が急増している。先行研究では、実際に商品に触れることができない状況において、目を閉じて商品を「触るイメージ」をするだけで、その商品に対する、所有感が高まることが示されている。本研究では、この触るイメージが所有感を高める効果は、安い商品と高い商品という価格帯の違いに関わらず、一様に生じるのか、また、所有感が高まることにより、購買意図を促進するのか、という点について検証した。その結果、触るイメージが商品の所有感を高める効果は、商品の価格帯の違いに関わらず頑健であることが明らかとなった。また触るイメージは、商品に対する「コントロール感」と所有感を通して、間接的に購買意図を高めることも示された。このことから、市場において、顧客獲得のために、所有感を高めることは有益であり、その方略の一つとして、触るイメージの想起が非常に有効であると考えられる。
著者
北神 慎司 山縣 宏美 室井 みや
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.37-40, 2004-03-05
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では,視覚シンボル検出課題を用いて,北神ほか(2002)で示されたシンボルの認識容易性に対する白抜きシンボルの優位性を,背景の色を変更して再検討した.また,意味内容の事前学習,および,シンボル自体の意味の明瞭さの影響も併せて検討した.その結果,認識の速さという点において,白抜きシンボルの優位性はみられず,白抜きシンボルの優位性は,シンボルが配置される背景の色と,シンボルの地の色との関係によって変動する状況依存的なものである可能性が示唆された.また,先行研究と同様,事前に学習を行う方が,あるいは,もともと意味がわかりやすいシンボルの方が,認識が容易であることも示された.
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2014 (Released:2014-10-05)

美的ユーザビリティ効果とはWebサイトなどのインタフェースに対して、美しいものは使いやすいだろうと判断してしまう現象である。美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムはいまだ未解明であるが、大半の美しさが流暢性と呼ばれる情報処理の容易さに規定されることを踏まえると、流暢性によって美的ユーザビリティ効果を説明できる可能性があると考えられた。本研究では刺激として8種類のWebサイトのコントラストを4段階に変化させたものを用いた。参加者はこれらの刺激から8枚を順次提示され、美しさと使いやすさを測定する質問に答えるよう求められた。結果として、本研究でも美的ユーザビリティ効果が生じることが確認された。また、流暢性が高い刺激を提示された時ほど、美しさの判断および使いやすさの判断が高くなることも示された。よって、流暢性は美的ユーザビリティ効果の生起メカニズムを解明するための重要な要因だと考えられる。
著者
北神 慎司
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ジェンダーバイアス(own-gender bias)とは,異性の顔よりも同性の顔のほうが認識しやすく,記憶しやすいという現象である.本研究では,ジェンダーバイアスの生起に,接触経験などの知覚的熟達要因,あるいは,同性他者への興味・関心などの社会的認知要因が関与しているかどうかを検討した.その結果,特に,再認記憶におけるジェンダーバイアスには,知覚的熟達要因ではなく,社会的認知要因が関与していることが示唆された.