著者
野々垣 進 升本 眞二 根本 達也 中澤 努 中山 俊雄
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-10, 2020-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

近年,公共工事の際に作成された大量のボーリングデータが,機械判読可能なデータ形式で,国や自治体のウェブサイトを通して利用できるようになっている.本研究の目的は,地質学的解析におけるボーリングデータの有効利用を促進するために,岩相分布等をよく表現できるボクセルモデルを簡便に作成する手法を開発することである.本稿では,ボーリングデータに記録された岩相情報と,ボーリングデータの位置情報を基に得られるボロノイ図とを利用して,大量のボーリングデータから客観性の高い岩相ボクセルモデルを簡便に作成する手法を提案した.また,本手法の有効性を評価するために,東京都世田谷地域における約3,100本のボーリングデータを利用して,8種類の岩相から構成されるボクセルモデルを作成するとともに,その鳥瞰図および水平・鉛直断面図を作成した.その結果,本手法による岩相ボクセルモデルでは,対象地域の3次元的な岩相分布を概観できることを確認した.本手法は,3 次元地質モデリングにおけるボーリングデータの地層の対比処理の効率化に役立つと期待できる.
著者
大前 久美子 塩野 清治 弘原海 清 升本 眞二
出版者
Japan Society of Geoinformatics
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.10, pp.145-168, 1985-08-31 (Released:2010-02-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

In this paper, we presented the principle and the BASIC program for the numerical estimation of the dip-strike of a bed at any point from dip-strike data obtained at irregularly spaced outcrops (observation points) . In order to represent numerically the attitude of the bed, we defined a new term of “a normal vector of abed” (an unit vector which is normal to the bedding plane and is oriented in the direction of the geologically upper side of the bed) . The dip-strike is calculated here from the weighted average of the normal vectors of beds at observation points. The presented program estimates dip-strikes at grid points and displayed them on the screen of a personal computer as the strike-line map.
著者
三田村 宗樹 中川 康一 升本 眞二 塩野 清治 吉川 周作 古山 勝彦 佐野 正人 橋本 定樹 領木 邦浩 北田 奈緒子 井上 直人 内山 高 小西 省吾 宮川 ちひろ 中村 正和 野口 和晃 Shrestha Suresh 谷 保孝 山口 貴行 山本 裕雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-188, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は,阪神地域に甚大な被害を生じさせた.阪神地域は都市化の進んだ場所で,人工的な地形改変が多くの場所で行われている.しかし,現在の地形図上では,その箇所が不明確であるため,過去の地形図との比較から人工改変地形の抽出を行ったうえで被害分布との関連を西宮・大阪地域について検討した.大阪地域では,基盤断層の落下側に被害が集中する傾向があり,基盤構造との関連性が存在することを指摘した.これについては,既存地下地質資料をもとにした地震波線トレースのシミュレーションの結果から,地震波のフォーカシング現象がかかわっているとみている.結論として,日本の大都市の立地する地盤環境は類似し,地震災害に関して堆積盆地内の厚い第四紀層での地震動増幅,伏在断層付近でのフォーカシング,盆地内の表面波の重複反射よる長時間震動継続,表層の人工地盤や緩い未固結層の液状化など共通した特性を有していることを指摘した.
著者
塩野 清治 升本 眞二 八尾 昭
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は,地下構造を探求する地質学的原理の定式化を通じて,地質調査データにもとづいて3次元地質構造を推定する計算機処理システムを具体化することである。地質学の原理に関する理論面での研究では,地層の分布域,地層・化石・地質年代の関係,地層の対比・区分など地質学の基礎概念が集合,関数,関係,同値関係,順序関係,ブール代数など離散数学の初歩的概念で表現できることを示した。また,地質学の基本原理である「地層累重の法則」に対して数学表現を与え,この法則が地層の形成順序や層序区分の基礎であることの理論的根拠を明らかにした。これは地層学的対象の計算機処理の原理を提示するとともに,「地質学の数学的基礎」という従来にない新しい研究分野への展望を与える重要な成果である。また,堆積作用と侵食作用で形成される地質構造に対する数学モデルにもとづいて,地層の分布域と体積面や侵食面に相当する曲面との間に成り立つ論理的関係(論理モデル)を一般表現する方法を導いた。論理モデルとの曲面の具体的形状が与えて地層の分布域が確定するという立場から,地質調査データから地質図を作成する過程を一連の数学的手続きとして形式表現した。これは地質図の計算機処理に対する理論的基礎を与えるものである。計算機処理の面では、露頭での観察データを入力して3次元地質構造を出力するアルゴリズムを研究した。処理システムは空間情報の入力・管理・解析・モデリングの標準基盤として多くの分野で実用されているGIS上で開発した。処理システムの有効性は既存の平面地質図を入力データとして、3次元地質構造を推定することによって検証した。2次元の空間情報を対象としたGIS上で3次元の地質構造を処理できる道を開いたことは3次元GISの発展や地質情報の活用を促進する上で重要な意義を持つ。