著者
牧迫 飛雄馬 阿部 勉 藤井 伸一 住谷 久美子 吉松 竜貴 徳原 理恵 小林 修二 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.203-206, 2005 (Released:2005-09-02)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

在宅における歩行能力評価としての可能性を探ることを目的に,1.5 m,5 mおよび10 m歩行を分析し,その妥当性を検討した。対象は,理学療法を実施している入院患者40例(平均年齢70±12歳)で,快適および最大速度歩行中の1.5 m,5 m,10 mの各地点を通過した所要時間,歩数を計測し,歩行速度,歩行率,歩幅を比較した。その結果,快適および最大歩行ともに歩行距離による歩行速度,歩行率,歩幅の有意差は認めなかった。また,歩行速度,歩行率,歩幅ともに快適速度,最大速度条件において1.5 m歩行は5 m歩行,10 m歩行のそれぞれと有意に高い相関関係を認めた。以上より,1.5 mでの歩行測定は,5 m歩行および10 m歩行同様に歩行能力評価指標のひとつとして活用できる可能性があると考えられた。
著者
大沼 剛 橋立 博幸 吉松 竜貴 阿部 勉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.151-160, 2014 (Released:2014-05-23)
参考文献数
30
被引用文献数
1 4

目的:本研究では,屋内生活空間の身体活動指標home-based life-space assessment(以下,Hb-LSA)を開発し,地域在住の要支援・要介護高齢者を対象にHb-LSAの臨床的有用性を検証することを目的とした.方法:対象は,要支援・要介護高齢者37人(平均年齢78.5±7.0歳)であった.Hb-LSAとともに,身体活動(life-space assessment(LSA)および離床時間),動作能力(bedside mobility scale(BMS)およびfunctional independence measure(FIM)),身体機能(握力,下肢筋力,片脚立位保持時間),認知機能(mental status questionnaire)を調査した.結果:Hb-LSAの成績は平均55.7±24.7点(最小値4点,最大値102.5点)であった.Hb-LSAの信頼性係数を算出した結果,級内相関係数ICC(1,1)=0.986,(1,2)=0.993と高い再現性を示した.Hb-LSAはLSA(r=0.897)および離床時間(r=0.497)と相関を有し基準関連妥当性および収束的妥当性が確認された.また,Hb-LSAは動作能力,身体機能の各指標と有意な相関を認めた.屋内移動自立群と屋内移動非自立群の2群に分けてHb-LSAを比較した結果,Hb-LSAは屋内移動自立群(75.8±18.8点)で,屋内移動非自立群(45.7±20.2点)に比べて有意に高い値を示した.結論:本研究において,屋内生活空間における身体活動の指標であるHb-LSAは,指標の信頼性および妥当性が確認された.また,屋内移動能力と関係する臨床的に有用な評価指標であることが示された.
著者
吉松 竜貴 加辺 憲人 橋本 祥行 牧迫 飛雄馬
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.145-150, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

〔目的〕脳卒中患者の回復期リハビリテーション病棟入院時情報から3ヵ月後の歩行自立を判別するための予測チャートを作成すること.〔対象と方法〕初発脳卒中患者251例を対象として,入院時の身体機能と認知機能,基本動作自立度,バランス能力,日常生活自立度から入院3ヵ月後の歩行自立を予測するための決定木を,信号検出分析法にて求めた.〔結果〕起居動作能力,バランス能力,認知機能が有意な予測因子として抽出され,入院3ヵ月後の歩行自立を予測するための決定木が得られた.〔結語〕脳卒中の回復期に適応した歩行自立の予測チャートが作成された.
著者
有竹 洋平 林 悠太 吉松 竜貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P2090, 2010

【目的】<BR> 意欲低下、自発性低下もリハビリテーションを行う上で、最大の阻害因子の一つであるという報告がある(大友.1986)。また、脳血管障害患者を対象とした在宅での日常生活動作(以下ADL)と生活意欲の関連報告や回復期病棟での1ヶ月間のADL変化と意欲の関連性を検討した先行研究もあり、リハビリテーションにおける意欲の重要性が伺える。そこで本研究では、東武練馬中央病院回復期病棟に入院する高齢患者を対象に、入院時の生活意欲と退院時までのADLの改善度の関連性について比較検討した。<BR>【方法】<BR> 対象はH20年11月からH21年10月までに当院回復期病棟に入院中であった65歳以上の高齢患者62名(男性19例、女性43例、年齢82.0±6.5歳、脳血管障害18例、整形外科疾患32例、脊椎脊髄疾患8例、廃用症候群4例)とした。入院中に急性増悪での転院や死亡退院した者は対象外とした。<BR>評価項目は、入院時と退院時の機能的自立度評価表(以下FIM)と入院時から退院時までのFIMの改善度であるFIM利得、入院時の生活意欲とした。生活意欲に関しては、認知症患者でも回答の有効性が高いとされているVitality Indexを用いた。Vitality Indexは鳥羽らによって開発された指標で、日常生活での行動を起床・意志疎通・食事・排泄・活動の5項目で評価し、高齢者のリハビリテーションや介護場面での意欲を客観的に測定するものである。各項目はそれぞれ0~2点まで配点された3つの選択肢からなり、満点は10点となる。カットオフ値とされる7点をもとに、8点以上を高得点群(以下High群)、7点以下を低得点群(以下Low群)の2群に分けた。<BR> 統計学的処理は、Stat view ver.5.0を使用し、入院時FIMと入院時Vitality Indexに対してはSpearmanの順位相関係数を求めた。また、FIM利得はMann-WhitneyのU検定、年齢・在院日数はt検定、性別はχ<SUP>2</SUP>検定を用いて群間の差を検討した。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 数値の公表に関して、統計量を用いるなど個人の特定がなされないよう配慮することで、対象より了承を得た。<BR>【結果】<BR> High群は39例(男11例、女28例、81.2±6.3歳)、Low群は23例(男8例、女15例、83.5±6.7歳)であり、全体のVitality Indexは8.0±2.5点、High群は9.6±0.7点、Low群は5.2±1.7点であった。入院時FIMと入院時Vitality Indexは0.759と高い相関を認めた。FIM利得、年齢、性別は群間で有意差を認めなかった。在院日数はHigh群ではLow群に比べ有意に高かった(p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 本研究では回復期病棟に入院する高齢患者に対し入院時の生活意欲と退院時までのADLの改善度との関連性について検討した。その結果、入院時FIMと入院時Vitality Indexに関しては高い相関が認められた。入院時のVitality Indexが低下している者はADL能力も低下していることが考えられる。また、入院時Vitality IndexとFIM利得との間に関連性は認められなかった。入院時の生活意欲と退院時までのADL改善度に対して関連性が低いと考えられる。以上より、入院時Vitality Indexが低い患者であっても、退院時までにADLが改善する可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 今回の結果から、回復期病棟へ入院してきた高齢患者は一様に意欲的であるとは言えず、意欲低下が認められる患者もいることは明らかである。意欲低下、自発性低下もリハビリテーションを行う上で、最大の阻害因子の一つであるという報告があるため、入院時に意欲低下が認められている患者はその後のADL改善を阻害する可能性も考えられる。そこで、本研究で回復期病棟に入院する高齢患者の入院時の生活意欲が退院時までのADLの改善度に与える影響について関連性を検討したことは、理学療法研究として意義があると考える。<BR>本研究の結果から、入院時Vitality Indexの得点で退院時までのADL改善度を予測することは困難であり、入院時の生活意欲低下が一様にADL改善度に対して阻害因子とはならないことが示唆された。よって、ADLの改善度に対しては疾病の器質的問題や障害重症度、個人因子など多角的な検討が必要だと考える。
著者
吉松 竜貴 島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 堤本 広大 上村 一貴 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】虚弱高齢者における体重減少や低体重は低栄養の指標とされる。低栄養は多くの健康問題との関連が指摘されている。しかしながら,高齢者の体重と身体機能の関連を体組成と血液学的データから包括的に検討した報告は,我々の知る限りみあたらない。本研究の目的は,地域在住高齢者の歩行速度低下と体重,体格,血液学的データとの関連について検討し,老年期の歩行速度低下に関する栄養学的な知見を得ることである。【方法】本研究の対象は,愛知県大府市で行われたObu Study of Health Promotion for the Elderly(OSHPE)に参加した65歳以上の地域在住高齢者5,104名から,パーキンソン病または脳卒中の既往歴がある者,Mini-Mental State Examinationが18点未満の者,採血が困難だった者を除外した4,654名(平均年齢72.0±5.6歳,女性2,417名,男性2,237名)とした。測定項目は歩行速度,身長,体重,体組成,血液学的データとした。歩行速度は2.4mの歩行路で通常歩行を5回行わせ平均値を採用した。なお,本研究における「歩行速度低下」の判断基準は,先行研究での検討より,通常歩行速度1.0 m/sec未満と定めた。身長は立位身長とし,裸足で計測した。体重と体組成は生体電気インピーダンス方式の体組成計(TANITA社製MC-980A)を用いて衣類着用下で測定した。得られた体組成値のうち体脂肪率(Percentage of body fat:以下%BF)と四肢骨格筋指数(Appendicular skeletal muscle index:以下ASMI)を分析に用いた。血液学的データとして以下の血清濃度を得た:総蛋白(Total protein:以下TP),アルブミン(Albumin:以下Alb),中性脂肪(Triglyceride:以下TG),総コレステロール(Total cholesterol:以下T-Cho)。統計学的分析として,第1に,測定値の群間比較を行った(t-test,χ<sup>2</sup>-test)。その際,検定の効果量も検討した。第2に,多重ロジスティック回帰分析により,歩行速度低下に関わる因子を抽出した。単変量分析にて有意差と一定の効果量が認められた変数を独立変数として採用し,年齢,性別,精神心理機能,医学的情報などで調整した。第3に,Receiver Operating Characteristic分析を用いて,歩行速度低下に強い影響があるとされた変数のカットオフ値を算出した。【結果】歩行速度低下に分類された対象者は511名であり,全体の12%であった。歩行速度が低下した者は,そうでない者に比べ,%BFが有意に高く(31 vs 28%,p<0.001,<i>d</i>=0.38,<i>r</i>=0.29),Albが有意に低かった(4.19 vs 4.33 g/dL,p<0.001,<i>d</i>=-0.53,<i>r</i>=0.38)。T-Choにも有意差を認めたものの,効果量が低かった(200 vs 209 mg/dL,p<0.001,<i>d</i>=0.27,<i>r</i>=0.08)。Body mass index(以下BMI)とASMI,TP,TGには有意差を認めなかった。歩行速度低下を従属変数,%BFとAlbを独立変数とした多重ロジスティック回帰分析では,調整後も両変数の有意性が保たれた(%BF[1%あたり],Odds ratio=1.05,p<0.001;Alb[0.1 g/dLあたり],Odds ratio=0.90,p<0.001)。歩行速度低下に対するAlbのカットオフ値は4.25 g/dLであった(Area under the curve=0.64,感度0.64,特異度0.43)。【考察】歩行速度が低下している地域在住高齢者は,そうでない者と比べて,体格(BMI)や四肢筋量(ASMI)は同程度だったが,%BFが高く,Albが低かった。地域在住高齢者にはサルコペニック肥満が潜在していることが懸念される。Albは,基礎情報での調整後も歩行速度低下と強く関連しており,地域在住高齢者の身体機能を検討するために重要な指標であることが示唆された。しかしながら,以上は横断研究による結果であるため,血液学的データと身体機能低下の関連についての更に明確な根拠を得るためには,縦断的検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】地域在住高齢者の身体機能を維持するためには,単に体重減少に着目するのではなく,体組成を考慮して体重管理を行う必要がある。本研究で示されたAlbのカットオフ値(4.2 g/dL以下)は,地域リハビリテーションにおいて,虚弱に陥り易い高齢者をスクリーニングするための新たな参考値として活用できる可能性がある。