著者
吉田 綾乃
出版者
東北福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の成果は以下の3点に集約される.1.ワーキングメモリキャパシティが乏しい者がピースミール処理を志向することは不適応に結びつく.2.キャパシティが乏しい者は対人認知においてカテゴリー依存型処理を行いやすい.3.キャパシティが豊富な者は認知資源が確保可能な場合にはピースミール処理を行うことができる.すなわち、ワーキングメモリキャパシティの個人差が対人的な情報処理過程において重要な機能を果たしていることが明らかになった.
著者
吉田 綾乃 浦 光博
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.120-130, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
6 3

自己卑下呈示を通じて適応が促進される過程は2つある。ひとつは自己卑下呈示を行うことそれ自体によって適応が直接的に促進される過程であり, もうひとつは自己卑下的に呈示した内容を他者から「そんなことはない」と否定する反応を受け取ることによって, 間接的に適応が促進される過程である。このような影響過程は, 自己卑下呈示規範を内在化する程度によって調整されることが考えられる。自己卑下呈示に対して他者が返す“否定反応”は, 受け手がその呈示を“卑下”として受け取ったことを示している。自己卑下呈示規範内在化高群は, 自己卑下呈示を行う際に否定反応が返されることを当然視しているが, 低群はそのように見なしていない。そのため, 低群にとって自己卑下呈示に対して“否定反応”が返されることが重要であると考えられる。本研究では, 3ヶ月の期間をおいた縦断的な調査において, 自己卑下呈示規範内在化高群では直接的な適応促進効果が見れるのに対して, 低群では間接的な適応促進効果が見られるだろうと予測し, 検討を行った。仮説はおおむね支持された。考察では, 直接的・間接的な効果が, 対人間適応あるいは個人内適応のいずれに影響を及ぼしていたのかを明らかにする必要性について論じられた。
著者
吉田 綾乃 浦 光博 黒川 正流
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.144-151, 2004

In this study, the authors have paid attention to people's reactions to others' self-derogative presentation. Study 1 indicated that people have the script that a self-derogative presentation would elicit a denial response, such as "I don't think so," from the receivers. Moreover, it was also suggested that the derogator has the tendency to believe that the receiver's reaction has an effect of either maintaining or enhancing self-evaluation. Study 2 suggested that the Japanese would make self-derogative presentations, not only on the basis of interpersonal motivations, but also on the basis of self-affirmative motivations. The necessity of examining the details of the effects of self-derogation and the receivers' reactions was discussed.
著者
入戸野 宏 吉田 綾乃 小森 政嗣 金井 嘉宏 川本 大史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は,3年間の研究期間の2年目であり,これまでに実施した実験や調査を継続・発展させるとともに,新しいテーマに取り組んだ。主な研究成果は,以下の5つである。(1) 接近-回避の潜在連合テストパラダイムを用いて,幼児顔と接近動機づけが連合していることを明らかにした。成人顔は接近動機づけとも回避動機づけとも連合していなかった。また,正立顔の方が倒立顔よりも効果が大きかったので,物理的形状(丸み)だけでなく,顔の全体処理が影響していることが示唆された。(2) 6か月齢の幼児顔を80枚収集し,それぞれに179点の標識点を入力した。200名の男女の評定に基づいて,かわいさの高い幼児の平均顔とかわいさの低い幼児の平均顔を作成した。さらに,それらをプロトタイプとして50枚の合成顔の変形を行い,かわいさを増強した顔と減弱した顔からなるデータセットを作成した。(3) 65歳以上のシニア層を対象とした「かわいい」に関するインタビュー結果(20名)について質的な整理を行った。キャラクター文化に対する関心は非常に低かったが,「かわいい」という感情そのものは肯定的に捉えていることが分かった。(4) 「かわいい」概念のプライミングが社会価値志向性に及ぼす効果を調べた実験データをまとめた。統計的に有意な効果が得られず,パーソナリティ要因の影響が大きいことが示唆された。(5)多変量の探索手法であるベイズ最適法を用いてかわいい造形物(二次元の模様)を生成するプログラムを試作した。
著者
吉田 綾乃 浦 光博 黒川 正流
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.144-151, 2004-11-22 (Released:2017-01-14)
被引用文献数
3

In this study, the authors have paid attention to people's reactions to others' self-derogative presentation. Study 1 indicated that people have the script that a self-derogative presentation would elicit a denial response, such as "I don't think so," from the receivers. Moreover, it was also suggested that the derogator has the tendency to believe that the receiver's reaction has an effect of either maintaining or enhancing self-evaluation. Study 2 suggested that the Japanese would make self-derogative presentations, not only on the basis of interpersonal motivations, but also on the basis of self-affirmative motivations. The necessity of examining the details of the effects of self-derogation and the receivers' reactions was discussed.
著者
吉田 綾乃
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.105-116, 2014

本研究では,自己卑下呈示が受け手の自己評価に及ぼす影響について検討した。自己呈示者と受け手の関係性(友人・知り合い)と,自己呈示の信憑性(高・低),自己呈示規範内在化傾向(高・低)の効果を検討した。133 名の女子学生を対象に質問紙調査を実施した。分析の結果,(1)知人による信憑性が低い自己卑下呈示は,受け手に自己批判傾向を生じさせる,(2)友人による信憑性の高い自己卑下呈示は,受け手に自己向上傾向を生じさせる,(3)自己卑下呈示規範内在化高群において,他者の自己卑下呈示は常に自己批判傾向の生起と結びついているが,自己卑下呈示規範内在化低群では,対人関係および信憑性が自己批判傾向の生起を左右することが示された。考察では,自己卑下呈示によって受け手に自己批判が生じることが文化的な自己呈示規範の形成に寄与している可能性について論じた。This study examined the influence of self-effacing presentation on perceivers' self-evaluation.We explored associations between interpersonal relationships( friends vs. acquaintances), the authenticityof self-presentation( high vs. low), and the internalization of self-presentational norms( high vs.low). One hundred thirty-three female Japanese university students completed a questionnaire.Results suggested that( 1) perceivers displayed self-criticism when exposed to an acquaintance's lowauthenticityself-effacing presentation, (2) perceivers displayed intentions towards self-improvementwhen exposed to a friend's high-authenticity self-effacing presentation,( 3) and individuals high in internalizationof self-effacing presentational norms always experience self-criticism as a result of exposureto others' self-effacing presentation. Conversely, the presence of self-criticism in individualslow in internalization of self-effacing presentational norms was influenced by interpersonal relationshipsand the authenticity of self-presentation. The paper concludes by discussing the possibility thatperceivers' engagement in self-criticism as a result of exposure to self-effacing presentation in otherscontributes to the formation of cultural self-presentational norms.