著者
遠藤 史郎 徳田 浩一 八田 益充 國島 広之 猪俣 真也 石橋 令臣 新井 和明 具 芳明 青柳 哲史 山田 充啓 矢野 寿一 北川 美穂 平潟 洋一 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.50-56, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3

2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.
著者
國島 広之 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3090-3096, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4 1

医療機関は免震性と大量の水,検査体制,物品や薬剤の必要量の確認・在庫の確保が必要である.避難所ではインフルエンザや感染性胃腸炎などの罹患者もみられ,医療機関では市中肺炎を主に対応した.災害時における感染症サーベイランス体制の整備,情報の共有,日頃からの感染症予防などについて更に推進する必要があり,地域における行政・医療機関・大学などの専門機関との連携が極めて重要である.
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 辻尾 芳子 木元 宏弥 方山 揚誠 西村 正治 秋沢 宏次 保嶋 実 葛西 猛 木村 正彦 松田 啓子 林 右 三木 誠 中野渡 進 富永 眞琴 賀来 満夫 金光 敬二 國島 広之 中川 卓夫 櫻井 雅紀 塩谷 譲司 豊嶋 俊光 岡田 淳 杉田 暁大 伊藤 辰美 米山 彰子 諏訪部 章 山端 久美子 熊坂 一成 貝森 光大 中村 敏彦 川村 千鶴子 小池 和彦 木南 英紀 山田 俊幸 小栗 豊子 伊東 紘一 渡邊 清明 小林 芳夫 大竹 皓子 内田 幹 戸塚 恭一 村上 正巳 四方田 幸恵 高橋 綾子 岡本 英行 犬塚 和久 山崎 堅一郎 権田 秀雄 山下 峻徳 山口 育男 岡田 基 五十里 博美 黒澤 直美 藤本 佳則 石郷 潮美 浅野 裕子 森 三樹雄 叶 一乃 永野 栄子 影山 二三男 釋 悦子 菅野 治重 相原 雅典 源馬 均 上村 桂一 前崎 繁文 橋北 義一 堀井 俊伸 宮島 栄治 吉村 平 平岡 稔 住友 みどり 和田 英夫 山根 伸夫 馬場 尚志 家入 蒼生夫 一山 智 藤田 信一 岡 三喜男 二木 芳人 岡部 英俊 立脇 憲一 茂龍 邦彦 草野 展周 三原 栄一郎 能勢 資子 吉田 治義 山下 政宣 桑原 正雄 藤上 良寛 伏脇 猛司 日野田 裕治 田中 伸明 清水 章 田窪 孝行 日下部 正 岡崎 俊朗 高橋 伯夫 平城 均 益田 順一 浅井 浩次 河原 邦光 田港 朝彦 根ケ山 清 佐野 麗子 杉浦 哲朗 松尾 収二 小松 方 村瀬 光春 湯月 洋介 池田 紀男 山根 誠久 仲宗根 勇 相馬 正幸 山本 剛 相澤 久道 本田 順一 木下 承晧 河野 誠司 岡山 昭彦 影岡 武士 本郷 俊治 青木 洋介 宮之原 弘晃 濱崎 直孝 平松 和史 小野 順子 平潟 洋一 河野 茂 岡田 薫
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.428-451, 2006-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
37
著者
玉澤 佳純 玉澤 かほる 高橋 正美 國島 広之
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.222-227, 2011 (Released:2011-10-05)
参考文献数
27
被引用文献数
2

血液・体液曝露の内,眼への曝露は,感染のリスクからは針刺し事例に匹敵することから,眼および眼周辺部への曝露に着目して,医科と歯科の統合後の当大学病院の2年半における,曝露者の職種,曝露物,曝露時の場所について検索した.   その結果,統合後の当大学病院では,血液・体液曝露事例は,全部で67件発生していた.そのうち,眼および眼周辺部への曝露事例は41件発生したが,職種では,看護師19名,医師9名,医学生4名,助産師3名,歯科医師2名,臨床工学技士2名の順であった.曝露物では,血液14件,体液7件,喀痰4件,注射液2件等であった.曝露場所では,手術室14件,一般病室10件,ICU4件,救急部3件,人工透析室3件,分娩室2件,採血室2件,歯科外来2件等であった.特に出産関係でまとめると,6件と多かった.また,曝露事例の総数は67件であったが,その内,眼および眼周辺部への曝露事例は41件であり,全体の61.2%を占めていた.当大学病院の調査結果から,手術室での眼および眼周辺部への曝露が最も多かったことから,手術室のスタッフはゴーグルの着用が必須であることが判明した.
著者
遠藤 史郎 山田 充啓 矢野 寿一 北川 美穂 平潟 洋一 賀来 満夫 徳田 浩一 八田 益充 國島 広之 猪俣 真也 石橋 令臣 新井 和明 具 芳明 青柳 哲史
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.50-56, 2012
被引用文献数
1 3

&nbsp;&nbsp;2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.<br>
著者
國島 広之 山崎 行敬 中谷 佳子 細川 聖子 駒瀬 裕子 三田 由美子 竹村 弘
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.123-126, 2017-05-25 (Released:2017-07-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

医療従事者の針刺し切創事例は,リキャップ禁止などの啓発活動や安全器材の普及により減少しているものの,全体に占めるペン型注入器用注射針の針刺し切創事例は増加傾向にある.今回,針刺し損傷防止機構付ペン型注入器用注射針(以下,「安全機構付注射針」)の導入による医療従事者の安全性への効果を把握するべく,3病院でのペン型注入器用注射針による針刺し切創発生件数を調査した.ペン型注入器用注射針による針刺し切創事例は,リキャップおよび廃棄に伴う事例が多く,安全機構付注射針の導入により月あたりの針刺し切創の発生件数は,0.33件/月から0.20件/月と減少がみられ,医療従事者の安全な就業環境の確保が得られたことが示唆された.
著者
國島 広之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2367-2372, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
22

不明熱を含めた発熱時におけるウイルス感染症では,プライマリ・ケア領域ではEBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)感染症とサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症がしばしばみられる.EBVによる初感染では,発熱,リンパ節腫脹,扁桃腫大,脾腫を伴い,末梢血に異型リンパ球がみられる.ペニシリン系薬で発疹がみられることから,溶連菌性扁桃腺炎との鑑別が重要となる.CMV感染症も近年の抗体陰性者の増加に伴い,感受性者が増加していることから,丁寧な評価が必要である.
著者
國島 広之
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.2-S29-2, 2021

<p>2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は、交通のグローバル化、ボーダーレス化のなか、日本を含めた国内外でパンデミックとなり、今なお世界中で多くの方が罹患している。わが国では2020年2月には神奈川に寄港した旅客船におけるアウトブレイク、次いで海外からの帰国者を発端とした流行が発生した。当時は、正確な感染性や病原性、感染対策が不明ななか、緊急事態宣言による人流の抑制もあり感染者の低減がみられた。2020年には医療施設や高齢者施設におけるクラスターも多く発生し、高齢者や基礎疾患を有する方に致死的な経過が多く発生した。2021年春には高齢者や医療従事者にmRNAワクチンが接種が行われ、高齢者の死亡例やクラスター事例は減少がみられた。度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置にも関わらず人流の低下がみられず、感染性のより高いα型次いでδ型変異株への置き換わりによって、2021年夏以降は、基礎疾患を有さない若年者に流行が拡大し、重症者や死亡例、後遺症患者がみられている。</p><p>新型コロナウイルス感染症の発生以来、医療と経済、社会における感染対策が大きな争点となっている。今後も若年者におけるワクチン接種のあり方も様々な議論があり、新型コロナウイルス感染症の終息はいまだ先と予想される。今後もおこりうる新たな感染症によるパンデミックのためにも、感染症専門家、医療者、研究者、行政、社会との連携協力の更なる発展が必要不可欠である。</p>