- 著者
-
和田 英夫
長谷川 圭
渡邊 真希
- 出版者
- 一般社団法人 日本血液学会
- 雑誌
- 臨床血液 (ISSN:04851439)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.7, pp.849-856, 2017 (Released:2017-08-05)
- 参考文献数
- 34
血栓性微小血管症(TMA)は,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),溶血性尿毒症症候群(HUS)ならびに非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)などを含み,血小板減少(<15×104/µl),微小血管障害性溶血性貧血(MHA,ヘモグロビン<10.0 g/dl),腎障害や神経症状などの臓器障害を呈する病態である。TTP,HUSならびにaHUSに対して,それぞれ診療ガイドラインが公表されているので,本稿ではこれらの診療ガイドラインに基づき,それぞれの病態,診断,ならびに治療について概説する。TTPはADAMTS 13活性<10%,HUSは志賀毒素産生病原性大腸菌(STEC)や志賀毒素の同定,ならびにaHUSは補体制御系の遺伝子解析などにより診断される。TMAの治療では,新鮮凍結血漿(FFP)はADAMTS13の補充を目的に先天性TTPに使用される。血漿交換(PE)はインヒビターの排除とADAMTS13の補充を目的に,後天性TTPに使用される。抗体産生を抑制するステロイドの併用は後天性TTPに行われ,リツキシマブはPEに反応しないTTPや高力価のインヒビター例に用いられる。補体の活性化を制御するエクリツマブはaHUSに用いられる。支持療法は急性期TMA,特にSTEC-HUSに必要であり,血小板輸注はTTPなどのTMAに原則禁忌である。TMAの診療は,その生命予後を改善するためにも,3つのガイドラインに従って行われるべきである。