著者
大儀 律子 齋藤 信也
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-35, 2022-01-31 (Released:2022-02-01)
参考文献数
22

療養病床の看護管理者には,看護職と介護職の協働関係構築という,一般病棟とは異なる取組みが要求される。この観点から,本研究は,「看護職と介護職の協働関係構築のための看護管理者の能力測定尺度試作版(介護職評価用)」を用いて,看護職と介護職の協働関係構築に対する看護管理者の取組みについて,介護職の評価に影響を及ぼす要因を中心に分析を行った。対象は,42病院の療養病床で働く介護職834名であった。尺度全体の平均得点及び5つのカテゴリー別得点を目的変数,介護職の属性及び職場環境を説明変数として,重回帰分析を行った。その結果,介護職の職場環境が看護管理者の取組みの全体的な評価に影響することが明らかとなったが,個人属性の影響は確認されなかった。本尺度を用いた介護職が評価する療養病床の看護管理者の能力の測定は,看護管理上に有用である可能性が示唆された。
著者
齋藤 信也
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.29-39, 2018-05-31 (Released:2018-07-09)
参考文献数
16

HTA (Health Technology Assessment:医療技術評価) の際に,費用対効果の結果以外の要素をいかに扱うべきだろうか? 費用対効果の結果を得るまでの過程をアセスメント (分析) とするなら,その後これに,社会的,倫理的要素等を加味して総合的に評価する過程は,アプレイザルと呼ばれる.このアプレイザルのあり方については,中医協 (中央社会保険医療協議会) 費用対効果評価専門部会で度重なる検討が行われ,その際に評価すべき倫理・社会的要素として,① 公衆衛生的観点での有用性 (感染症対策など) ② 公的医療に含まれない追加的費用 (介護費用や生産性損失など) ③ 長期に重症の状態が続く疾患での延命治療 ④ 代替治療が十分に存在しない疾患の治療 の 4 項目が採用された.当初重要な要素とされたイノベーションの評価は,薬価制度における加算とダブルカウントになる恐れがあるとのことで取り消された.①② に関しては,そうした観点を盛り込んだ費用対効果の結果を得ることは,理論上は可能なことから,アプレイザルの際にアセスメントの一部として扱うのか,それとも,定性的あるいは半定量的な要素として,考慮の対象とするのかについては議論が必要と思われる.一方 ③ については,我が国が範とした英国でも⌈終末期特例⌋という形で,QOL 値を高く評価したり,閾値を柔軟に適応するなどして,対象患者の治療へのアプローチを妨げないような工夫がなされている.ただ英国では,HTA を医薬品の償還の可否判断に用いているからこそ,こうした対応が必須となるわけであり,我が国のように HTA を医薬品の価格調整にのみ用いる場合は,これも価格を決める際に考慮すべき定性的項目の一つということになると考えられる.このように我が国の HTA におけるアプレイザルは英国モデルを下敷きにしているものの,その使用方法が異なるために,これまで議論が輻輳しがちであった.アプレイザルのあり方については,今後の費用対効果評価の本格導入に向けて,その違いに自覚的になったうえで,さらなる議論が必要と考えられた.
著者
盛次 浩司 齋藤 信也
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.34-41, 2017
被引用文献数
1

<p>非急性期ケアにおける尿道留置カテーテルの取り扱いの現状を把握するとともに,そこでのカテーテル関連尿路感染症(Catheter-associated Urinary Tract Infections:CAUTI)予防のあり方を探るためアンケート調査をおこなった.A県下の訪問看護ステーション(訪看)106施設,特別養護老人ホーム(特養)146施設,介護老人保健施設(老健)77施設,療養型病床(療養病床)130施設を対象とし,カテーテル取り扱いの現状,CDCの「カテーテル関連尿路感染の予防のためのガイドライン2009」にみられる各インディケーターの遵守状況について調査した.有効回答数は175(38.1%)であり,カテーテルの使用率は訪看10.5%,特養3.5%,老健3.8%,療養病床24.6%であった.カテーテル使用理由については,訪看では,医学的理由以外の「介護者の負担軽減」,「尿失禁ケア」の理由も多くみられた.療養病床では,「褥創治療」,「尿閉・神経因性膀胱」,「終末期ケア」の順であった.ガイドラインの遵守状況は施設類型間に差はみられなかったが,閉鎖式セットといった感染対策に役立つとされる材料の選択では,その必要性と使用比率との間に乖離がみられた.今後は,非急性期ケアの実情に適したカテーテルの材質やセット内容の改善,また,感染予防教育などを含んだ総合的な対策が必要と考えられた.</p>
著者
齋藤 信也 児玉 聡 安倍 里美 白岩 健 下妻 晃二郎[翻訳]
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.667-678, 2013-12

本報告書は,ガイダンス(推奨)作成に用いるプロセスを設計する際,およびガイダンスの各項目を作成する際にNICEが従うべき諸原則についてまとめたものである.これは主として,介入の効果と費用対効果に関する決定を行う際,とくにそれらの決定がNHSの資源配分に影響を与える場合に,NICEおよびNICEの諮問機関(advisory body)が適用すべき判断に関するものである.本報告書はNICE理事会によって作成された.これは2005年に作成された「社会的価値判断(Social value judgements)」第一版に基づいている.すべてのNICEガイダンスおよびガイダンスの作成にNICEが用いるプロセスは,本研究所の法的義務,および本報告書で記述された社会的価値の諸原則と一致していなければならない.NICEガイダンスのいずれかの部分がこれらの諸原則に従っていない場合,NICEと諮問機関はそれらを特定し,その理由を説明しなければならない.
著者
下妻 晃二郎 能登 真一 齋藤 信也 五十嵐 中 白岩 健 福田 敬 坂巻 弘之 石田 博 後藤 玲子 児玉 聡 赤沢 学 池田 俊也 國澤 進 田倉 智之 冨田 奈穂子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

経済状況の低迷が続く多くの先進国においては、公的医療資源の適切な配分は、費用対効果などの合理的な社会的価値判断に基づいて行われている。日本では従来そのような仕組みがなかったが、2016年度から、高額な医療用製品を対象に政策への施行的導入が予定されている。本研究では費用対効果分析による効率性の向上にむけて技術的課題の解決を図り、同時に、効率性の追求だけでは疎かになりがちな公平性の確保を図るために考慮すべき、倫理社会的要素の明確化とそれを政策において考慮する仕組み作りを検討した。