- 著者
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桑原 正貴
広瀬 昶
土井 邦雄
菅野 茂
- 出版者
- 社団法人日本獣医学会
- 雑誌
- 日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.4, pp.p637-642, 1992-08
- 被引用文献数
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高脂質血症と高血圧は, 動脈硬化発症における重要な危険因子として知られている. そして, 心臓血管系機能は自律神経系によって調節されているが, 過度の交感神経系の刺激は血圧の上昇を誘発すると考えられている. 高脂質血症と心臓血管系機能の変化は密接に関わっていると考えられるが, アドレナリン作働薬の心臓血管系反応に及ぼす高脂質血症の影響についてはあまり知られていない. そこで, 本研究では高脂質血症を誘発したブタを使用し, ノルエピネフリンとイソプロテレノールに対する心臓血管系の反応に関して, 対照群と高脂質血症群とを比較した. 対照群と高脂質血症群の薬物投与前における心血行動態パラメーターのコントロール値に, 有意な差は認められなかった. しかしながら, 高脂質血症群は対照群に比べて, ノルエピネフリンの血圧上昇作用は有意に高く, ノルエピネフリンとイソプロテレノールに対する心臓の収縮力は有意に高かった. そして, 血圧上昇に対する反射性徐脈は起こらなかった. これらの結果から, 高脂質血症が, 心臓血管系に対するアドレナリン作働薬の反応を増強していること, 心臓血管系の反射性調節に何等かの影響を及ぼしていることが明らかとなり, 動脈硬化発症の機序において高脂質血症と高血圧の連関が重要な一因を担っているものと考えられた.