著者
小林 健介 堀井 英雄 石神 努 千葉 猛美
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.56-65, 1985-01-30 (Released:2009-04-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

A sensitivity analysis of thermal hydraulic response in containment during a 'station blackout' (the loss of all AC power) accident at Browns Ferry unit one plant was performed with the computer code MARCH 1.0. In the analysis, the plant station batteries were assumed to be available for 4h after the initiation of the accident. The thermal hydraulic response in the containment was calculated by varying several input data for MARCH 1.0 independently and the deviation among calculated results were investigated.The sensitivity analysis showed that (a) the containment would fail due to the overtemperature without any operator actions for plant recovery, which would be strongly dependent on the model of the debris-concrete interaction and the input parameters for specifying the containment failure modes in MARCH 1.0, (b) a core melting temperature and an amount of water left in a primary system at the end of the meltdown were identified as important parameters which influenced the time of the containment failure, and (c) experimental works regarding the parameters mentioned above could be recommended.
著者
永井 愛子 小川 恵子 三浦 淳也 小林 健
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.108-114, 2014 (Released:2014-10-17)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

放射線治療装置や技術の発展にも関わらず有害事象である腸炎や口内炎は存在する。半夏瀉心湯は腸炎や口内炎に対する効果が報告されている。放射線による腸炎や口内炎に対する半夏瀉心湯の有効例を経験したので報告する。腸炎3例,口内炎5例の計8例に対して症状出現後1-35日に半夏瀉心湯7.5g/日または18錠/日(適宜漸減)を投与した。腸炎と口内炎の重症度は内服前後でCommon Terminology Criteria for Adverse Events と Numerical Rating Scale で評価した。口内炎5例中,改善,不変,増悪は各々3例,1例,1例,腸炎3例中では各々2例,1例,0例であり,増悪はなかった。放射線治療中の腸炎や口内炎などの早期有害事象を制御することは患者の負担軽減のみならず腫瘍制御率改善にもつながる。今後より多くの患者に対するランダム化比較試験の報告が望まれる。
著者
金 勲 阪東 美智子 小林 健一 下ノ薗 慧 鍵 直樹 柳 宇 菊田 弘輝 林 基哉
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.88, no.806, pp.300-306, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

From the early stages of the COVID-19 outbreak, there have been many reports on cluster infections in clubs and bars. Meanwhile, there is no report on the indoor air environment in those places and it will limit measures for infection control. This study aims to understand the indoor air and ventilation environment and to propose practical and appropriate improvement measures for related industries. In addition to measuring CO2 concentration in clubs and bars in Tokyo, we have surveyed the voluntary measures taken against COVID-19, outlines of building and ventilation/air conditioning equipment, ventilation regime, and so on.
著者
小林 健二 小林 健二
雑誌
鉄心斎文庫総目録稿 = Tetsushinsai-Bunko total catalog draft
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-28, 2019-03-29

○本目録稿は国文学研究資料館共同研究「鉄心斎文庫伊勢物語資料の基礎的研究」(研究代表者:小林健二)の成果報告である。
著者
松永 武 小林 健介
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-44, 2001 (Released:2010-02-25)
参考文献数
56
被引用文献数
4

The prophylactic use of stable iodine is one of the protective measures during a nuclear emergency. In order to know the resultant radiation dose to the thyroid gland and the effectiveness of iodine prophylaxis in the case of Japanese, a sensitivity analysis was performed for related physiological parameters for Japanese. As a result, the variances in the deposition efficiency of radioactive iodine aerosol in the respiratory tract due to changes in the respiratory parameters were found rather small between the standard Caucasian and Japanese. The changes due to the radioactive iodine aerosol size were more significant, suggesting the importance of understanding the physico-chemical status of aerobic radioiodine released in a nuclear emergency. Concerning the metabolic parameters of iodine, the result of the sensitivity analysis based on an iodine metabolic model showed that the most critical parameters are those which describe the transport of stable and radioactive iodine from the blood compartment to the thyroid gland. Accordingly, a confirmation of the transport model and the related parameters for Japanese are essential to clarify the effectiveness of iodine prophylaxis to reduce thyroid gland exposure of Japanese. (This work was performed under the auspices of the Science and Technology Agency of Japan.)
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.35, pp.55-80, 2009-02-27

劇中に登場する独武者の素性を解明する作業を通して、能《大江山》が酒呑童子諸本の中でも香取本「大江山絵詞」に拠って作られていることを確認し、その独武者が能《土蜘蛛》にも登場することから、能の世界で頼光物として連作されたことを考証した。さらに、「大江山絵訶」絵巻は室町将軍のもとで作成され、その周辺に伺候していた観世座の者によって《大江山》が作劇された可能性について考察した。By clarifying Hitorimusha's identity who appears in the Noh “Oeyama”, this paper proves that this Noh was created by Katoribon of “Oeyama-ekotoba” among various kinds of Shutendoji-monogatari's manuscripts. Since this Hitorimusha also appears in the Noh “Tsuchigumo”, I examine that these Nohs were written as series of Raiko-mono in the world of Noh. Then I consider that the picture scroll of “Oeyama-ekotoba” was made under the patronage of Ashikaga shogun, and there is a possibility that a certain person of Kanze school who was around Shogun composed the Noh “Oeyama”.
著者
石神 努 小林 健介
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.549-560, 1993-06-30 (Released:2010-04-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

As a part of the preparation of the database of calculated results on severe accident sequences for emergency preparedness at nuclear power plants, steam generator tube rupture initiated severe accident sequences at a reference two-loop PWR plant have been analyzed using the THALES/ART computer code. Estimation were made of the times of key events such as core uncovery, core melt and reactor vessel melt-through, and an amount of fission products released to the environment. The effects of recovery action on core integrity and the amount of environmental fission products released were studied with regard to the discussion on mitigation of or recovery from the accident by the feed and/or bleed operation in the primary and/or the secondary system. The analysis showed that (1) the ECCS has adequate capability of maintaining core integrity, and (2) the bleed operation in the primary system is effective to suppress the environmental fission products released even if the ECCS did not function.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.105-122, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害―大雨、洪水、土石流、地滑り、地震、津波、火山噴火、雪害、雹、暴風雨、高波、高潮、旱害、冷害、蝗害等、そして、人為的災害―疫病流行、戦乱、盗賊、略奪行為の発生等々、数え切れない程の災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興しながら、現在へと至る地域社会を形成、維持、発展させて来た。日本は列島を主体とした島嶼国家であり、その周囲は水(海水)で囲まれ、山岳地帯より海岸線迄の距離が短い。自然地形は狭小な国土の割には起伏に富む。その形状も南北方向に湾曲して細長く、列島部分の幅も狭い。日本では、所謂、「水災害」が多く発生していたが、それは比較的高い山岳地帯が多くて平坦部が少なく、土地の傾斜が急であるというこうした地理的条件に依る処も大きい。こうした地理的理由に依る自然災害や、人の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外でも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての個人の日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中でも、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定されるのである。筆者がかつて、『災害対処の文化論シリーズ Ⅰ ~古代日本語に記録された自然災害と疾病~』〔DLMarket Inc(データ版)、シーズネット株式会社・製本直送.comの本屋さん(電子書籍製本版)、2015年7月1日、初版発行〕に於いても指摘をした如く、都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。その分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みることとする。又、それらの記載内容と、作品ではない(古)記録類に記載されていた内容に見られる対災害観との対比、対照研究をも視野に入れる。
著者
山本 登朗 小林 健二 小山 順子 恋田 知子 ロバート キャンベル

本冊子は、国文学研究資料館の特別展示として、二〇一七年十月十一日(水)から十二月十六日(土)まで、国文学研究資料館展示室において開催する「伊勢物語のかがやき ―鉄心斎文庫の世界―」の展示解説である。本冊子の作品解説は、国文学研究資料館の基幹研究「鉄心斎文庫伊勢物語資料の基礎的研究」(二〇一六年度〜一八年度、研究代表者・小林健二)による研究成果に基づき、その成果報告を含む。
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学附属東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.45, pp.41-78, 2015-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、火山噴火、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった諸々の災害が発生当時の民衆に襲い懸かっていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成し、維持、発展させて来たのである。日本人に依る地域社会の形成は、災害に依る被害とその克服の歴史であると言っても差し支えは無いであろう。筆者は従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越え、対処をして来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している現在の新潟県域を具体的な研究対象地域の一つとして取り上げながら、その検証作業を行なっている処である。本稿では、平安時代より鎌倉時代にかけての時期に発生し、当該地域に甚大な被害を齎したとされる、「謎の巨大地震」に関し、新潟県出雲崎町と同長岡市所在の「宇奈具志神社」に就いて、その事例検証作業と共に、当時の人々に依る対処法とに就いて、検討を加えたものである。
著者
形井 秀一 篠原 昭二 坂口 俊二 浦山 久嗣 河原 保裕 香取 俊光 小林 健二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.576-586, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
21

1. はじめに2006年10月31日~11月2日の3日間、9カ国2組織が参加してWHO/WPRO (西太平洋地域事務局) 主催による経穴部位国際標準化公式会議がつくば市の国際会議場で開催された。会議のアドバイザー (発言権のある参加者) は、9カ国 (日本、中国、韓国、モンゴル、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、アメリカ合衆国、英国) と2組織 (WFAS=World Federation of Acupuncture Societies, AAOM=American Association of Oriental Medicine) から計20名であった。この会議で、過去3年間日中韓で検討してきた経穴部位案が正式に決定された。2. 経穴部位の合意本会議で決定された経穴部位は361穴であり、これまで日本で教育されてきた354穴より7穴多い。これまでの教科書と変更になるのは、 (1) 奇穴から正穴となったもの (2) 前腕長などの骨度の分寸の変更によるもの (3) 個別の理由で変更になったもの、などであった。また、最後まで一部位に決定出来ずに2部位併記経穴が6穴 (迎香、禾〓、水溝、中衝、労宮、環跳) あった。3. 今後の動きつくば会議で最終的な経穴部位標準化が達成されたが、WPROは、経穴部位のみでなく、 (1) 東洋医学用語の標準化、 (2) 東洋医学の医療情報の標準化、 (3) 鍼灸研究法のガイドライン作りなど、多岐にわたる標準化を進め、東洋医学全体の用語や考え方、枠組みの標準化を行い、それらを東洋医学の世界的な研究、臨床へ活用しようとしている。4. 経穴部位決定後の課題今後の課題としては、 (1) 経穴部位のより厳密な再検討。 (2) 標準化部位の国内普及。 (3) 「日本鍼灸」の明確化と世界への普及。などが上げられる。
著者
鈴木 昌 堀 進悟 小林 健二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.209-215, 2004-06-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

目的:病院内で心停止に早期除細動を実践するには,看護師による電気的除細動(DC)が不可欠であるが,多くの看護師はDC施行を躊躇してきた。本邦に看護師によるDCを普及させるには,看護師がDC施行を躊躇する原因を明らかにする必要がある。本研究の目的は,看護師によるDC施行に対する看護師の態度に関与する要因を明らかにすることである。方法:平成15年10月に,救命救急センターを併設する市中総合病院(644床,看護師555人)で行われた救急蘇生法に関する院内講演会に先立ち,出席した看護師242人を対象に無記名アンケート調査を行った。有効回答が164人から得られた(回収率67.8%)。アンケートでは,評点尺度法を用いた9問を用意し,看護師によるDCに関して,教育,経験,法解釈および態度について尋ねた。病院内でVFへの遭遇時に,医師の指示なしでDCを施行するか否かについての態度に関与した要因をcategorical regression analysisを用いて抽出した。結果:VF遭遇時に,医師の指示なしでDCを施行すると回答した看護師は21人(12.8%)であった。この回答に関与した要因は,看護師による緊急時のDC施行は許されているか否かについての法解釈,DCの施行経験,DC施行現場への遭遇経験,および卒前教育の有無であった(r=0.476, p=0.02,重要度:0.444, 0.202, 0.126, 0.111)。結語:医師の指示なしでDCを施行するか否かに関する看護師の態度に最も関与した要因は,看護師のDC施行に対する法解釈であった。本邦において,看護師によるDC施行を普及させるには,看護師によるDC施行の法的根拠を明確に示す必要がある。
著者
大橋 聖和 大坪 誠 松本 聡 小林 健太 佐藤 活志 西村 卓也
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.4, pp.565-589, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
108
被引用文献数
4 5

The 2016 Kumamoto earthquake occurred in the tectonically complex central Kyushu area where several forcing factors such as the subducting Philippine Sea plate, the Median Tectonic Line and the Nankai forearc sliver, the spreading Okinawa trough, and the migrating volcanic front are involved. Neogene–Quaternary tectonics of central Kyushu are revisited by integrating geological, seismological, and geodetical approaches. Deformation histories of the Futagawa and Hinagu fault zones, the source faults of the Kumamoto earthquake, are also established in an attempt to explain the relationship between geologic structures and rupture processes of the earthquake. The results show that present-day tectonics surrounding central Kyushu are considered to have originated in the last 1 Ma or younger, as a transtensional tectonic zone (Central Kyushu Shear Zone) characterized by combined dextral faults and rift zones (or volcanoes). Reflecting spatiotemporal variations of the crustal stress field and rift activity, the Futagawa and Hinagu fault zones show multi-stage deformation throughout the Neogene–Quaternary periods: normal faulting to dextral faulting for the Futagawa fault zone and sinistral to dextral faulting for the Hinagu fault zone. Those diverse histories of stress and strain fields in central Kyushu possibly led to the complexities of fault geometry and rupture process of the Kumamoto earthquake.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.81-103, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害や人為的災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興させながら、現在へと至る地域社会、国家を形成、維持、発展させて来た。日本は列島、付属島嶼を主体とした島嶼国家であり、そこでは「水災害」が多く発生していたが、こうした地理的理由に依る自然災害や、人々の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外にも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての私日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中に於いて、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定される。都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。しかしその分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みた。今回、具体的素材としては「伊勢物語」を取り上げながら、この課題に取り組んだものである。
著者
小林 健彦 KOBAYASHI Takehiko
出版者
新潟産業大学附属東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.41, pp.41-48, 2013-02

豊臣秀吉は、天正18年(1590)7月に小田原の北条氏を滅亡させ、その後徳川家康を関東へ移封したのを始めとして、大規模な移封や除封を行なった。彼は天皇家の持つ伝統的な権威を背景として惣無事(令)をも布告し、この段階を経て、最早関白としての軍を率いる秀吉に正面から戦いを挑む勢力は、少なく共、日本国内には存在しなくなっていたのである。そして、その直後から彼の眼は既に海外に向けられていた。翌年9月には朝鮮征討を下令し、朝鮮側が秀吉に依って要請された「征明嚮導」を拒否したことを一つの口実として、同20年3月には16万人、9軍編成からなる関白の軍が韓半島へと投入された。しかし、こうした軍事的な行動とは裏腹に秀吉に依る対東アジア政策には不明な点も多い。本稿では、彼の発給した外交文書等に関わる様式や内容の分析、そして再検討を通して、彼の目指していた明国を頂点とする東アジア的秩序の再構築構想に就いて検討を加えた。
著者
石川 正弘 谷 健一郎 桑谷 立 金丸 龍夫 小林 健太
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.291-304, 2016-07-15 (Released:2016-08-02)
参考文献数
71
被引用文献数
1

丹沢層群および丹沢複合深成岩体は,かつての伊豆小笠原弧の火成活動に伴うものと考えられ,丹沢層群と深成岩体は,伊豆小笠原弧の上部地殻と中部地殻が島弧衝突に伴って隆起・露出したと解釈されてきた.しかし近年,丹沢複合深成岩体について岩石学,地球年代学,地球化学,岩石磁気学的な手法を使った再検討が行われ,深成岩体は中部地殻断面ではなく,衝突マグマ活動によって形成されたことが明らかにされた.さらに,丹沢変成岩から組成累帯構造を持つ角閃石が見つかり,従来説の接触変成作用だけではなく,非常に暖かいスラブの沈み込みとそれに続く急上昇プロセスが明らかにされつつある.このように丹沢山地の深成岩と変成岩の形成プロセスに関する視点は今まさに大きく転換しつつある.今回の地質巡検では,伊豆衝突帯のジオダイナミクスという視点から丹沢山地に分布する丹沢層群,丹沢変成岩,丹沢複合深成岩体,足柄層群,神縄断層を案内する.
著者
形井 秀一 篠原 昭二 坂口 俊二 浦山 久嗣 河原 保裕 香取 俊光 小林 健二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.755-766, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
4

経穴部位の標準化は、1989年にジュネーブ会議で経絡経穴名 (奇穴八脈、奇穴も含む) が国際標準化されて以来、永年の懸案であり困難な課題とされてきた。それ以来、14年の時を経て2003年、WHO西太平洋地域事務局 (WPRO) 主導の下、日本、中国、韓国による経穴部位の国際標準化に関する非公式諮問会議が始まった。この会議は特別会議を含めると3年で9回を数え、標準化達成に向けて大きく前進した。そしてその目標は、2006年秋、日本 (つくば市) で開催される経穴部位標準化公式会議で結実する。これまでの経緯と今後の課題をまとめたので報告する。