著者
坂口 貴弘
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.5, pp.119-136, 2009-02
被引用文献数
1

諸外国では1980年代以降、アーカイブズに関する情報をいかに記述すべきかを定めた「記述規則」の標準化が進んだ。なかでも北米のものは、先行して制定されていた図書館界の目録規則をベースにしており、両者の比較分析によって、アーカイブズの特性やアーカイブズ学の理論・原則をどのように記述規則に反映させようとしたのかが明確になる。本稿では、北米のアーカイブズ記述規則として米国のDescribing Archives: A Content Standard (DACS)とカナダのRules for Archival Description (RAD)2008年改訂版を、図書館界の目録規則として英米目録規則第2版(AACR2)をそれぞれ取り上げた。各規則の全体的な構成と記述項目の構成について比較した後、「タイトル」「日付」「数量」の項目に関する個々の規定内容について比較分析を行った。その結果、1)「原則の声明」を収録している、2)ISAD(G)第2版が示す記述項目にほぼ対応している、3)タイトルについては記述担当者による補記が前提となっている、4)日付については年・月・日の記載が基本となっている、といった特性が2つのアーカイブズ記述規則に共通してみられた。これらは、記述データの生成をめぐってアーキビストに求められる主体性と密接に関わる点であると思われる。From the 1980s, archival data content standards were developed in many countries. Standards in North America were produced based on the cataloguing rules ill library community comparing both rules will clearly demonstrate how the characteristics of and principles on archival description have implemented in those standards. The following standards are examined in this article: Describing Archives: A Content Standard (DACS) in USA; Rules for Archival Description (RAD) 2008 version in Canada; and Anglo-American Cataloguing Rules 2nd edition (AACR2) as the library standard. The article analyzes overall structure and descriptive elements of those standards and comparing them with regard to some specific rules on Title, Date and Extent elements. I'll common characteristics of two archival content standards are: 1) both contain the Statement of Principles; 2) both of descriptive elements are basically compliant with those of ISAD(G); 3) both are based on the assumption that titles are supplied by archivists; 4) dates are entered as not only year but also month and day Such characteristics seem to be closely related to the ability to make decisions which is necessary for archivists creating descriptive data.
著者
坂口 貴弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.384-389, 2010-09-01
被引用文献数
1

アーカイブズ界では対象資料の独自性を踏まえつつ,図書館界の書誌コントロールに相当する領域を発展させるべく,各種の方法論や標準類が開発されてきた。本稿ではまず,記述に関する標準としてISAD(G)やDACS,EAD等について解説する。次に編成に関して,組織ベースの編成と機能ベースの編成を取り上げ,それぞれに関連する標準としてISAAR(CPF)とISDFに言及する。さらに電子記録のメタデータ付与に関する課題を指摘し,その標準化の取り組みのうちISO23081とMoReqについて扱う。アーカイブズの編成・記述をめぐる近年の動きには,図書館界の議論との共通点を多く見出すことができる。
著者
坂口 貴弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.47, pp.15-33, 2004-03-31
被引用文献数
1

記録史料として長期的に保存すべき記録を特定するプロセスである「評価選別」をめぐる従来の議論は、記録の生涯を現用、半現用、非現用の3段階に区分する「ライフサイクル」論にその基礎を置いていた。だが近年、電子記録の普及を契機として、記録と記録史料とを区別せずに統一的な実体としてとらえる「記録連続体」論が、ライフサイクルに代わる理論モデルとしてオーストラリアを中心に台頭しつつある。筆者はまず、この理論が登場し発展してきた過程を分析する。特に、同理論の主唱者として重要なアサートンとアップワードの議論を詳しく紹介する。さらに評価選別における記録連続体理論の適用例として、主に機能分析のプロセスに着目しつつ、オーストラリア国立公文書館における事例を検討する。
著者
坂口 貴弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.28-33, 2011
参考文献数
17

実証的な歴史研究等の材料となる文書・記録の信頼性について考察すべく,偽造されたヒトラーの日記,ライブドアの堀江貴文元社長が送ったとされたメール,沖縄返還時の密約文書に関する調査を事例として取り上げる。次に,文書の真偽鑑定から出発した古文書学が分析対象とするポイントとその成立過程を概観する。一方でアーカイブズ学は,同時代の視点と管理者の視点という独自のアプローチから,記録の信頼性という課題に取り組んできた点を指摘する。電子(化)記録の登場を契機にこれらの伝統的手法が再評価されつつあることに言及し,その信頼性確保のための手法として,電子署名,タイプスタンプ,光ディスクの評価,電子化作業の記録を紹介する。
著者
坂口 貴弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.384-389, 2010-09-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
17

アーカイブズ界では対象資料の独自性を踏まえつつ,図書館界の書誌コントロールに相当する領域を発展させるべく,各種の方法論や標準類が開発されてきた。本稿ではまず,記述に関する標準としてISAD(G)やDACS,EAD等について解説する。次に編成に関して,組織ベースの編成と機能ベースの編成を取り上げ,それぞれに関連する標準としてISAAR(CPF)とISDFに言及する。さらに電子記録のメタデータ付与に関する課題を指摘し,その標準化の取り組みのうちISO23081とMoReqについて扱う。アーカイブズの編成・記述をめぐる近年の動きには,図書館界の議論との共通点を多く見出すことができる。
著者
坂口 貴弘
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-38, 2008-01

アーカイブズ情報の共有化は、アーカイブズの保存と利用をめぐる一般の理解を広げるのに大きな効果があるという点で重要であり、全国のアーカイブズ機関による協同の成功を期すにあたっては、その方法論を綿密に検討する必要がある。そこで、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本において構築されている全国的アーカイブズ情報共有化データベースを対象に、共有化の仕組みとメタデータ標準類の活用方法について調査を行った。調査項目は「記述作成機関」「記述レベル」「記述項目」「検索項目」「記述規則」「シソーラス」「EADの活用」である。その結果、次のような点が明らかになった。1)データの記述は基本的にアーカイブズ資料を所蔵している各所蔵機関の役割とされていた。2)記述のレベルはフォンドに相当する単位を基本としていた。3)ISAD(G)で記述が必須とされている項目に加え、いくつかの項目が記述項目とされていることが多かった。4)作成者名称は、すべての国で検索項目となっていた。5)記述規則、シソーラス、EADの活用といった発展的な課題については、データベースによる相違が大きかった。Sharing of archival metadata is crucial in order to expand people's understanding of Management of and access to archival resources. Because the collaboration project between various archival institutions would be difficult, it is necessary to consider carefully about its strategy and methodology to develop archival union database successfully. This article is on an international survey of 5 national online union catalogs: A2A(UK), NUCMC(USA), Archives Canada, RAAM (Australia), and National Archival Information Database and Network (Japan). This survey focused on the system for collaboration and the use of metadata standards, especially on who create archival descriptions, levels of description contained, metadata elements, elements used for search, content standards, thesaurus,and use of EAD. The main findings are: 1)Basically, data creation is the role of each institution with archival holdings: 2) All databases contain fonds level description: 3) In addition to the elements identified as mandatory in ISAD(G), some elements are used. 4) Name of creator (s) is used as search elements in all databases. 5) There are wide variations on the use of content standards, thesaurus and EAD.
著者
坂口 貴弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.15-34, 2015-03-23 (Released:2017-03-24)

戦後日本の文書管理においては、なぜ不用文書の廃棄のみが重視され、アーカイブズの保存が重視されなかったのかについて、米国のレコード・マネジメント概念の受容との関連から考察した。第二次大戦前及び終戦直後に紹介されたファイリング・システムは、もともと文書廃棄を必ずしも重視していなかったが、米国の文書管理事情の翻訳が進むにつれて、徐々にその側面が強調されるようになる。行政管理庁もこのような動向を採り入れた文書管理改善運動を推進するが、ほぼ同時期に総理府が進めていた国立公文書館設置準備との連携は密接ではなかった。両府庁は文書管理とアーカイブズの連携を前提とした米国の方法論を各々に参照していたが、その原理への部分的・一面的理解と省庁セクショナリズムとが、公文書の国立公文書館への移管停滞と大量廃棄をもたらすことになった。
著者
坂口 貴弘
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

文書館等のアーカイブズ施設において近現代の公文書や個人・団体の資料を閲覧に供する際は、資料中に個人情報や企業情報、治安・防衛等に関する情報(以下「秘密情報」と総称する)が含まれているかを点検し、場合によっては公開を一定期間制限する必要がある。この作業は複雑かつ多大な労力を要し、特に小規模施設における資料公開を著しく阻害している。本研究では、諸外国のアーカイブズにおける秘密情報保護と公開促進の両立をめぐる歴史的経緯とその背景を検証するとともに、国内外の各種アーカイブズ施設の実地調査に基づき、近現代資料の受け入れから公開に至る方法論の適正化と標準化を図る。これまでの研究から、本テーマは単に文書館における保護・公開制度の現状を分析するだけでは不十分であり、記録管理及びアーカイブズのシステム全体を包括する視点から、通時的かつ領域横断的に考察する必要があることが判明した。そこで本年度は、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国における重要記録保護プログラム(vital records program)の普及に大きな役割を果たした全米記録管理評議会(National Records Management Council(NAREMCO))の活動について分析した。米国国立公文書館及び議会図書館等が所蔵する一次資料に基づき、NAREMCOが同プログラムの意義と役割をどのように説いていたかについて、その時代背景を踏まえつつ考察を進めた。その成果は、次年度に口頭発表および論文の形で公表する予定である。
著者
今西 祐一郎 ハルオ シラネ 久保 木秀夫 赤澤 真理 ファビアン ・アリバート・ナルス 伊藤 鉄也 坂口 貴弘 中村 康夫
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-16, 2010-04-26

●メッセージ法人化後第1期から第2期へ国文学研究資料館とコロンビア大学の協力協定の意味●研究ノート国文学研究資料館蔵古筆手鑑2点の紹介 その1中近世における古代寝殿造理解一理想の住宅像と考証研究―●トピックス日本文化とロランバルトのフォトバイオグラフィー公開開始 与謝野晶子の源氏訳自筆原稿画像データベース研究集会「アーカイブズ編成の理論と実践」の開催当館所蔵「春日懐紙」の重文指定について平成22年度展示会・講演会等平成22年度アーカイブズカレッジ(史料管理学研修会通算第56回)の開催総研大日本文学研究専攻の近況表紙絵紹介『伊勢物語』
著者
坂口 貴弘
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.5, pp.119-136, 2009-02
被引用文献数
1

諸外国では1980年代以降、アーカイブズに関する情報をいかに記述すべきかを定めた「記述規則」の標準化が進んだ。なかでも北米のものは、先行して制定されていた図書館界の目録規則をベースにしており、両者の比較分析によって、アーカイブズの特性やアーカイブズ学の理論・原則をどのように記述規則に反映させようとしたのかが明確になる。本稿では、北米のアーカイブズ記述規則として米国のDescribing Archives: A Content Standard (DACS)とカナダのRules for Archival Description (RAD)2008年改訂版を、図書館界の目録規則として英米目録規則第2版(AACR2)をそれぞれ取り上げた。各規則の全体的な構成と記述項目の構成について比較した後、「タイトル」「日付」「数量」の項目に関する個々の規定内容について比較分析を行った。その結果、1)「原則の声明」を収録している、2)ISAD(G)第2版が示す記述項目にほぼ対応している、3)タイトルについては記述担当者による補記が前提となっている、4)日付については年・月・日の記載が基本となっている、といった特性が2つのアーカイブズ記述規則に共通してみられた。これらは、記述データの生成をめぐってアーキビストに求められる主体性と密接に関わる点であると思われる。From the 1980s, archival data content standards were developed in many countries. Standards in North America were produced based on the cataloguing rules ill library community comparing both rules will clearly demonstrate how the characteristics of and principles on archival description have implemented in those standards. The following standards are examined in this article: Describing Archives: A Content Standard (DACS) in USA; Rules for Archival Description (RAD) 2008 version in Canada; and Anglo-American Cataloguing Rules 2nd edition (AACR2) as the library standard. The article analyzes overall structure and descriptive elements of those standards and comparing them with regard to some specific rules on Title, Date and Extent elements. I'll common characteristics of two archival content standards are: 1) both contain the Statement of Principles; 2) both of descriptive elements are basically compliant with those of ISAD(G); 3) both are based on the assumption that titles are supplied by archivists; 4) dates are entered as not only year but also month and day Such characteristics seem to be closely related to the ability to make decisions which is necessary for archivists creating descriptive data.