- 著者
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坪井 邦明
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.50, pp.345-346, 1995-03-15
民族音楽の研究などでは,必ずしも五線譜で表わせる情報だけで充分なわけではなく,五線譜では抜け落ちてしまうものに重要な意義のある場合がある.演奏された結果を,抜け落ちる情報を極力少なく,正確に表そうとするものを記述的記譜などと呼び,その際必要となる微妙な音程や音長も表現できるように,五線記譜法を拡張することもある.しかし,そのような微妙な情報も,その演奏者に意識されているとは限らない.演奏者にとっての音楽の意味を理解するには,その演奏者にとっての音楽の規範を検討する必要がある.演奏における規範を示すのに,奏法譜は有効である.例えば,音楽の種類によっては演奏法やそれによる音色の変化などに重要な意味がある場合がある.そのようなものは,いわゆる五線記譜法では表わし難いのに対し,奏法譜はまさにそれを表している.筆者らはこれまでにも,主に民族音楽学的な研究での利用を目的とした情報処理システムにおいて,尺八の奏法譜および三線(沖縄の三味線)の奏法譜「工工四」を扱って来た.今回は,三味線旋律のデータベース化を目指して,三味線(日本本土の)の奏法譜の一種である「文化譜」を対象にした情報処理を試みた.